2022年2月28日号(経済、経営)

2022.03.14


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年2月28日号
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発行日:2022年2月28日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2022年2月28日号の目次
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★中国市場は魔物の巣窟
◇新しい日本型資本主義の中身(5)
★今後の建設需要(25):DX・・できるの?
◇これからの近未来経済(15):山なり多重回帰曲線型経営(その6)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
ついにロシアがウクライナに軍事侵攻しました。
経済制裁を考えると軍事侵攻は割が合わないはずですが、独裁者に、その論理は通用しないと改めて認識させられました。
西側諸国は、経済制裁や武器供与を早く強く行うことで、プーチンの焦りを引き出すより他に手はありません。
それまで、ウクライナ軍の徹底抗戦が続くかどうかがカギです。
 
中国、ロシア、半島と、敵対国に囲まれている日本にとっては他人事ではありませんね。
 
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┃★中国市場は魔物の巣窟                       ┃
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キリンホールディングスが中国市場からの撤退を発表しました。
中国の巨大な市場規模に惹かれて進出した企業は多いですが、惨憺たる結果となる例が多いようです。
私の経験でも中国では負け戦ばかりでした。
しかし、「中国が悪い」と言うつもりはありません。
我々が「中国という国、そして中国人の深層思考」を知らなさ過ぎた結果なのです。
中学時代に読んだ司馬遷の「史記」以来、中国の歴史に深い関心を持ち、学んできました。
老子、孟子、孔子などの書を読み、経営者になってからは故武岡先生の「兵法塾」で、孫子や韓非子などを10年以上も学んできました。
ですから、中国思想を理解してきたと自負していました。
しかし、個々の付き合いでは「そこまではやらないだろう」と思ってしまうのが日本人です。
そうした日本人の一人である私も、そこで失敗してきたのです。
中国との付き合いは、「付き合いの全てが戦争なのだ」と心底思って挑むしかないのです。
 
アパレルメーカーを経営していた伯父の話です。
中国に生産工場を造るため、見本を持って現地企業と生産契約の交渉に入りました。
1ヶ月後、再訪問した現地には、質は悪いが見本と同じ製品が溢れていました。
 
中国進出で一時は時代の寵児となったヤオハンの和田一夫社長に直に破綻の真相を聞いたことがあります。
和田社長は、中国から約束されていた独占販売権と資金提供を一方的に破談にされたと話されていました。
しかし、ヤオハンへ約束していた頃、中国は伊藤忠へも同様の優遇処置を約束していたのです。
それが中国という国です。
 
このような話は山ほどあります。
こうした話を、経済界では「中国の掛け算の魔力」と言うのだそうです。
英国のある生地メーカーは、人口の多さに目を付け、「中国人全員のシャツの裾を30センチ長くさせられれば自社の工場を1日24時間ぶっ通しで稼働させられる」と目論みました。
しかし、実際に中国市場に足を踏み入れて、それが全くの夢物語だったことに気付きました。
伯父のアパレルメーカーの経験と同様、すぐに偽物が作られ、そして安売りをさせられる。
しかも、カネの支払いが滞ることが頻発し、撤退という事態に陥いりました。
 
2016年、サントリービールは、「13億人に自社のビールを1本飲んでもらうだけで13億本売れる」と踏んで「三得利」ブランドで60%ものシェアを獲得しました。
上海では「三得利」の看板が至るところで目に入り、地元会社のビールだと勘違いしていた人も多くいたということです。
しかし、本数の魔力に負け、低価格帯で勝負した結果、さっぱり儲けがでませんでした。
サントリーは、結局、10年ももたずに撤退する羽目になりました。
 
心配なのは日本の銀行です。
中国はドル覇権を崩そうと、2015年に人民元ベースの国際決済システム「CIPS」を構築しました。
米国に代わって国際決済を乗っ取る狙いです。
当然、世界でのシェアはまだ低いのですが、日本のメガバンクや地銀などが多く参加しています。
みずほ銀行のシステム障害のひどさを見れば分かるように、金融機関のシステム音痴ぶりは目を覆うひどさです。
今や、日本がCIPSの最大の協力国となっている現状には寒気を覚えます。
中国市場は魔物の巣窟なのですよ・・
 
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┃◇新しい日本型資本主義の中身(5)                 ┃
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アベノミクスとはいったい何だったのでしょうか。
多くの方が論評していますので、ポイントだけを以下に述べます。
 
この政策は、「3本の矢」というキャッチフレーズに全てが集約されています。
第1の矢「大胆な金融政策」は日本銀行による量的緩和策のことで、第2の矢「機動的な財政政策」は大規模な公共事業や補助金政策のことです。
そして、第3の矢が「成長戦略」の要(かなめ)となる「日本経済の構造改革」です。
 
このアベノミクスの狙いは至極単純です。
まず、第1の矢「量的緩和策」で日銀が国債を購入して市場にマネーを大量供給します。
このマネー供給で市場にインフレ期待が生じると、実質金利(インフレ率を差し引いた金利)が低下します。
借り入れの金利負担が減れば、企業の設備投資が拡大し、経済が成長するという単純シナリオが柱です。
 
ただし、金利負担の減少だけで企業の投資意欲が単純に上がるわけはありません。
安倍政権もそのことは理解していました。
そこで第3の矢「構造改革」で成長戦略を仕上げるとしたのです。
 
しかし、構造改革が一定の成果を上げるまでにはかなりの時間が必要です。
それで、その間の時間稼ぎとして、第2の矢「機動的な財政出動」を間に挟んだのです。
 
整理すると、アベノミクスとは、金融政策でデフレから脱却させ、財政出動で当面の景気を維持しつつ、その間に痛みを伴う構造改革を実施し、経済を成長軌道に乗せるという戦略構想なのです。
最初の2本の矢「量的緩和策」や「財政出動」は一時的な対症療法であり、3本目の矢「構造改革」こそが日本経済再生の本丸という位置付けでした。
 
このロジック自体は明確で正当な戦略です。
しかし、そもそもアベノミクスは安倍氏が考えた政策ではなく、安倍氏は政治的に乗っかったに過ぎません。
ゆえに安倍氏は、当初は構造改革について熱く語っていましたが、一向に進展しない改革に業を煮やし、やがて一切、口にしなくなりました。
この理論が、安倍氏自らの産物ではなく借り物だったことを露呈したわけです。
 
そもそも、構造改革などの根本改革が1代のリーダーでできるわけはありません。
江戸時代の上杉鷹山の改革は有名ですが、上杉藩が借金を完済したのは、鷹山の死から60年後だったと言われています。
改革には「名君が3代続く必要がある」ということを歴史は教えています。
実際、江戸幕府は3代家光の時代に、ようやく内戦が終わり、平和な時代が来ました。
近年でも、消費税の導入までに3人の首相が交代しています。
安倍氏は、歴史の勉強が足らなかったようです。
 
結局、本丸の構造改革ができないまま、アベノミクスの成長戦略は各種の補助金やゾンビ企業の延命策などに姿を変えてしまいました。
 
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┃★今後の建設需要(25):DX・・できるの?              ┃
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国交省が以下の政策を打ち出しました。
「DXセンターに3次元データを作成・編集できるソフトウェアを搭載し、ソフトウェアの提供者が利用者から料金を徴収する仕組みの構築を目指す。
BIM/CIMソフトウェアを保有していない建設企業がこの仕組を使うことで、進まない3次元データのDX化を推進する」
この記事に見られるように、昨今は国交省の前のめり姿勢と業界紙のDXオンパレードの記事が目立ちます。
しかし、業界の実態を見る限り、とてもオンパレードのようには見えません。
私見ですが、システムデータのDX化が建設業界で一般化するのは、かなり遠い未来となるでしょう。
 
40年前、私は建設会社でCAD導入の責任者の立場でした。
前職がコンピュータメーカーのSEだった経験から、通信回線を介してお客様とCADデータを共有するなどの技術で、大きなメーカー案件の受注につながったこともあります。
 
こんな昔話をするのは、あれから40年も経つのに、たいして進化が進まない建設産業のシステム化の現状を見るからです。
製造業に比べ大きく遅れている原因が業界の構造にあることは、みな分かっています。
しかし、その構造には微々たる変化しか現れていません。
DXという言葉だけが踊る記事を読んでいると、40年前と何も変わらない仕事環境に思いが飛ぶわけです。
冒頭に挙げた国交省の目論みなど、すぐに霧散してしまうでしょう。
言い方は悪いですが、私には「官僚の浅知恵」としか思えないのです。
多くの人は、口には出しませんが、業界全体に「DXへの抵抗感が強い」ことを分かっています。
いや、抵抗感というより無力感あるいは「虚しさ」といったほうが的確かもしれません。
システム化やDXに反対というわけではなく、「総論賛成、各論反対」の空気が業界を占めているのです。
 
無理もありません。
本当にDXが業界の常識となったら、従来の慣習や利害関係が根こそぎ変わってしまうからです。
その後にどんな世界になるか、自社がどうなるか・・
そんな想像もできない世界を望む者など、この業界に“どのくらい”いるというのでしょうか。
 
建設産業の重層下請け構造の闇は深く、利害を制する者の支配は崩れていません。
重機メーカーや鉄骨加工業など、現業に即したデジタル能力を持つ企業は、縦の産業である建設産業の下位に位置しています。
そのため、DXによる期待利益の多くは上位企業に吸い取られるだけの恐れがあり、そのノウハウの公開には後ろ向きです。
また、デジタル化が進展してくれば、消えゆく企業も相当の数に上るでしょう。
 
どの産業でも、業界全体の利益を考える力を持つのは、トップに君臨する大企業です。
しかし、建設産業のトップに位置するスーパーゼネコン5社にそれだけの力があるでしょうか。
残念ですが、自動車産業におけるトヨタのような力量も大きな戦略もありません。
5社が悪いというのではなく、企業規模や市場占有率が小さすぎるのです。
大手5社に準大手・中堅の10数社を加えて、2~3社に集約されるような劇的な業界再編成が成れば可能かもしれませんが、「ムリだろうな・・」と思うしかありません。
また、それが正解ともいえない難しさがあります。
さて、どうしたものでしょうか・・
 
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┃◇これからの近未来経済(15):山なり多重回帰曲線型経営(その6) ┃
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弊社は奇跡により「倒産やむ無し」の事態を乗り越えましたが、この時「会社整理の対局にある経営政策とは何だろうか」と考えました。
この山なり多重回帰曲線の「改革域」の先に待つのは「危機領域」そして「整理領域」です。
ここを回避する領域とはなんだろうかと考え続け、ひとつの結論に達しました。
私は、それを「第二成長域」と名付け、理論構築を始めました。
そこで気付いたことは、「改革域」がある程度の成果を上げた時、その先にバラ色の未来があると考えずに、新たな経営戦略に切り替えることが必要ということでした。
つまり、この「第二成長域」は、それまでの経営を捨て、新たな経営を始めることを意味します。
 
実は、ここで経営トップが変わることが一番良い方法なのです。
それも20年以上年が離れた世代交代による交代です。
大企業の場合は、同世代あるいは10年未満の若い役員の昇格が一般的なパターンでしょうが、大企業はそれでも良いでしょう。
人材が豊富にいるからです。
しかし、中小企業は経営人材に乏しいのが普通なので、この年齢差が重要になります。
 
世襲かどうかは大事な要素ではありません。
ですが、世襲の場合の成功確率が高いのは事実です。
それは、実の親子であれば20年以上年が離れているのが普通で、確実な世代交代となるからです。
もちろん、後継者が「新たな経営戦略を持っている」ことが最重要の要素であり、先代がその戦略をどう支えるかが次に重要な要素です。
世襲でない場合は、この2つの要素は、さらに重要となります。
「引退後は楽隠居」も無ければ、先代が「院政を敷く」経営でもいけません。
そして、その後継者のブレーンとなる人材発掘が第3の要素ですが、その話は次回以降で・・
 
トップが交代しないで「第二成長期」に入る場合は、トップが自らを新しい経営者に作り変える必要があります。
しかし、「よし、きょうからオレは変わるぞ!」と言って変われるくらいなら誰も苦労はしません。
すぐに元の木阿弥になるのがオチです。
ゆえに、組織の構造改革が必須なのです。
新たな経営幹部の登用および次世代の若者の育成が根本の要素です。
その上で、新たな商品やサービス、市場開拓などに挑戦するのです。
 
この「第二成長域」に必須の戦略要素は「投資」です。
それも「改善のための投資」ではなく「経営を変えるための戦略投資」です。
「改革域」の成功で蓄えた利益を失う前に、積極的にこの投資を行うことです。
これは「言うに易し、行うに難し」の典型のような政策です。
順調に経営が回っている企業ほど、経営を変える投資には及び腰になります。
ゆえにトップ交代が必要であり、交代できない場合は、トップが一歩後ろに下がり、若い後継候補の支援と育成に自分の役割を変えていくことです。
 
しつこく言いますが、「山なり多重回帰曲線」理論では、「第二成長域」の経営方針を「新たな投資」に絞っています。
それまでの経営者は、この「新たな投資」の支援に回るのです。
資金調達の支援はもちろん、投資回収、市場開拓などの多方面に渡る支援策を、軍師的立場で考え、実行への後押しに徹することです。
読者のみなさまは、この理論の「山なり」という意味、そして「多重回帰」という意味が分かってきたと思いますが、最終回は、その解説を。
 
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<編集後記>
ロシアにとり今回の軍事侵攻は、経済的に割が合わないはずですが、プーチン大統領は「採算が合う」と考えているのでしょうか。
彼の頭の中の計算式を知りたいものです。
KGB時代の世界観が、今も彼の思考を支配しているとしたら、ロシア国民にとっても危険な大統領です。
前線のロシア兵士の士気が低いという報道も出てきています。
「祖国防衛」の戦いではありませんから、当然です。
 
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