2021年12月31日号(経済、経営)

2022.01.17


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年12月31日号
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発行日:2021年12月27日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年12月31日号の目次
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◇新しい日本型資本主義の中身(3)
★今後の建設需要(23):建設業の生産性
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
今年最後のメルマガになります。
COP26に参加した国や地域のうち33カ国が、「先進国では2035年までに、世界全体では2040年までに新車販売の100%をZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル=脱炭素車)とする共同宣言に署名しました。
日本、アメリカ、中国、ドイツ、フランスは参加しませんでした。
私は日本の姿勢に賛成です。
この共同宣言の裏側がきな臭いからです。
そのことは、来年のどこかで論じたいと思います。
 
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┃◇新しい日本型資本主義の中身(3)                 ┃
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お詫び:前回、表題を少し変えて(1)としましたが「新しい日本型資本主義とは何か」の続きなので、前号を(2)とし、今号を(3)とします。
 
安倍前首相が、岸田首相の掲げる「新しい資本主義」に注文を付けました。
一言で言って「アベノミクスを続けろ」という注文です。
TV画面から受ける安倍氏の表情からは、注文というより、ほとんど『脅し』です。
お腹の痛いのは、もうすっかり治ったのでしょうか。
最大派閥をバックに再々登板するつもりなのかなと思いました。
政治の話はこのくらいにして、底辺を這うがごとくの日本経済の話に戻します。
 
バブル崩壊後の30年間、日本はゼロ成長が続いているわけですが、経済理論からするとあり得ない話です。
かつての日本や今の中国などを見れば分かりますが、先進国に成長する原動力は輸出です。
その効果で国民が豊かになり、やがて輸出に代わる内需がさらなる成長力の原動力になります。
イギリスや米国が典型的な例です。
そうした国では、輸出エンジンである製造業はすっかり衰退していますが、旺盛な内需で高成長を続けています。
 
この内需の中身が、モノからサービスへと変わり、やがて福祉国家へと進化していくわけです。
EU先進国はその道に入っていますが、そこに至らないギリシャやかつての東側国家が足を引っ張る格好になっています。
いまや、ここがEUのアキレス腱です。
 
日本は、すでに欧米先進国と同等の内需主体型の経済になっています。
ところが、日本の内需は伸びないまま、経済成長が止まった状態が続いています。
どうしてでしょうか。
先の総選挙で、野党はさかんに「消費税を下げて経済活性化を」と主張していましたが、まるで経済を分かっていない素人発想です。
しかし、与党も似たりよったりで、岸田首相の「新しい資本主義」も、少しずつ中身が見えてくると、資本主義と社会主義の「良いとこ取り」を狙った「ツギハギ資本主義」のように見えてきました。
 
では、経済低迷の真の理由は何かを考えていたところ、大阪大学・社会経済研究所を核にした研究グループの実験結果を目にしました。
この実験の概要は以下のとおりです。
いろいろな国の被験者を集め、公共財を作るゲームをしてもらったところ、顕著な結果が出ました。
欧米人や中国人に比べて、日本人は「他人の足を引っ張る行動が多い」ということです。
日本人は「自分は自分、他人は他人」という割り切りができず、互いに相手の行動を邪魔するというわけです。
「なるほど」とか「そうだ」と思い当たる読者の方も多いのではないでしょうか。
政治の世界では、「野党は与党の批判だけ」という声はよく聞かれますし、まさにそれが国会の風景となっています。
また、何か新しいビジネスやサービスが生まれると、必ず批判が寄せられ、誹謗中傷で運営が頓挫するというケースも多いです。
弊社の経験でも、新しいビジネス構想を発表したところ、ネットで「また汚い金儲けが出てきた」とか「新しい騙しだ」とかの書き込みが入ってきてびっくりしたことがあります。
 
ビジネスで巨万の富を築いた前澤友作氏が100億円払って宇宙旅行をしましたが、氏のこれまでの突飛な言動への批判もあって、非難や中傷の声が多く聞かれました。
正直な気持ち、私も手放しでは称賛できませんでしたが、そこには前澤氏への嫉妬の気持ちもあったと思います。
でも、冷静に考えて見れば、自力で稼いだカネだし、タンスに溜め込むより使うほうがより経済には貢献するわけです。
それに、純粋な民間人でも宇宙に行けるんだよというメッセージを発信したことは素晴らしいと思えるようになりました。
 
欧米人は合理的な考えを主体にするし、中国人は善悪より計算で物事を考えます。
双方とも、日本人のように成功者を妬むより拍手を送る傾向のほうが強いといえます。
ゆえに、日本人の成功者は多くを語らず、その成功の根本要因が広く世に伝わらないのです。
大阪大学のこの研究結果には「なるほど」と頷ける面が多く、日本人のこうしたメンタルこそが、日本のさらなる成長を阻害している最大の要因ではと思うようになりました。
 
20代での強烈な思い出があります。
米国での勤務が終わり日本に帰国した直後、本社の会議でひとつの提案をした時、役員の一人から投げかけられた一言です。
「ここはアメリカじゃないんだ」
怒気を含んだ憎しみとも言える口調でした。
「アメリカでの経験を鼻にかけた生意気な小僧が・・」という声が聞こえたような錯覚すら覚えました。
この会社は、日本を代表するコンピュータ会社です。
それでも、こんな世界だったわけです。
私が建設会社に転職したのは、その2年後です。
この会議が動機だったわけではありませんが、心理の底にはあったと思います。
 
大阪大学の別の研究グループによると「新型コロナウイルスに感染するのは自業自得だ」と考える日本人の比率は11.5%と、突出する高さです。
米国ではわずか1%です(中国は4%台です)。
この意識の差が欧米に比べて感染者が少ない理由の一つとも言われています。
マスク着用や消毒の徹底を見ると、この自制意識が良い結果につながっているのですが、経済全体としてはマイナス要因となっているわけです。
複雑な思いがしますが、日本人のこうした心理からくる負の側面を改善することが、低成長から抜け出す道のような気がします。
大阪大学などのこうした研究がもっと進み、国民への啓蒙が進めば、内需主導型の成長軌道に乗れるのではないでしょうか。
 
岸田首相に言いたいです。
「新しい資本主義」のような意味不明なキャッチコピーより、「日本人のメンタル改善が新しい成長につながる」というようなコピーを打ち出してください。
 
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┃★今後の建設需要(23):建設業の生産性              ┃
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国土交通省の毎月統計「建設工事受注動態統計」で、データを二重に計上していたことが問題になっています。
衆院予算委員会で、立憲民主党は「水増しされたデータを基に経済指標を作っていたことにならないか」と質問しましたが、至極もっともな疑問といえます。
それに対し、山際大志郎経済再生担当相は「GDP(国内総生産)統計にも影響が及ぶ可能性はあるが、現時点では軽微と考えている」と答えました。
相変わらずの“はぐらかし”答弁ですが、野党はズバリ核心を付く質問でないと負けですね。
 
建設関係者ならば、重層下請け構造の建設産業の受注統計の重複計上は昔から分かっていたことです。
政府は、統計手法などを駆使して、そうした重複計上を是正する策を採っていましたが、そこにミスがあったということです。
山際大臣は「影響が軽微かどうか」ではなく、データの重複が発生してしまう根本要因を正直に答弁し、是正策は講じていたが、そこにミスがあったと言えば良いのですが、“はぐらかし”答弁に終始しました。
大臣の能力がなかったのか、うまく誤魔化そうとしたのかは分かりませんが、少々お粗末でした。
 
この少し前、建設業協会が大手・準大手26社の業績見通しを発表しました。
それによると、17社が粗利10%を下回っています。
土木は、国交省の地方自治体に対する指導強化の効果で、2社を除いて2桁の粗利が確保できていますが、民間主体の建築は、みな1桁に落ちています。
コロナ過の影響が、これから深刻化してくる予兆ともいえます。
 
乗り切る手段のカギは生産性向上なのですが、統計データでは、95,647円/8時間・1人と、横ばい状態です。
それに対し、公共工事での労務単価は、全職種平均で20,409円となっています。
さらに、社会保険等の企業側の負担を足した金額は、28,777円となっています。
建設工事が生み出す収益=生産金額(95,647円)と考えると、人件費率は約30%となります。
製造業や飲食業での人件費率は20%程度ですが、優良企業は15~10%です。
ちなみに、人件費率が高いIT産業や介護産業では、40~50%になっています。
建設産業の目指す生産性を製造業並みとするには、現在の1.5倍、143,885円/8時間・1人まで上げなければなりません。
かなり厳しい目標です。
 
江戸や明治初期までの建設業は人力主体でしたから生産性は低く、人件費率は50%以上だったと推定されます。
それが近代になり機械施工中心になったことで劇的に向上して現在に至っています。
これからの建設業で、そうした劇的なイノベーションに匹敵するのはICT施工ですが、まだ実用域に達したとは言い難く、その道は遠いです。
地方建設会社に対するアンケート結果によると、ICT施工に対する関心は7割ということですが、「BIMに取り組みますか」に対するYesの答えは2割程度しかありません。
情報化に対する真の理解は、実質的にはほぼゼロに近いことが分かります。
これでは、DX(データ交換)など夢のまた夢ですね。
もちろん、システムの完成度が低く、導入効果がほとんど見込めないというシステム自体およびITインフラの貧弱さという問題も大きいのですが、業界関係者の意識の低さが一番の障害であることは確かです。
私は、「普及は30年先かな」と思う2021年の年末です。
 
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┃◇これからの近未来経済:山なり多重回帰曲線型経営          ┃
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┃☆商品開発のおもしろさ:コンピュータの話(その )         ┃
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私の私的な事情で、上記シリーズの原稿を書く時間が取れませんでした。
新年の1月号から、続きを掲載する予定です。
ご期待ください。
 
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<編集後記>
コロナウィルス・オミクロン株の広がりがどうなるかが見えないまま、年越しを迎えます。
年末年始の人の移動による結果が出るのは、1月中旬以降と言われています。
弊社の本社がある浅草界隈の人出はたしかに増えていますが、それでも、かつての6~7割り程度かなという感じです。
昔に戻ることを願うのではなく、新しい経済を創る方向へ舵を切ることが必要です。
その方針で、弊社も舵を切っていきます。
今後とも、本メルマガをご愛読いただくことをお願い申し上げます。
良いお年を。
 
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