2020年4月30日号(経済、経営)

2020.05.07


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年4月30日号
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発行日:2020年5月1日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2020年4月30日号の目次
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★テレワーク・ストレス
◇中国の思惑通りにはいかない
☆企業における社長の力(10)
◇これまでの経済、これからの経済(9)
 
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
コロナウィルス騒ぎに便乗して、いい加減な情報がネットに氾濫しています。
4月14日には、熊本県の田嶋徹副知事が、LINEで「不確かな情報を流した」と謝罪する騒ぎも起きています。
見えない恐怖に怯える社会は、悪意や愉快犯の餌食になりやすいのですが、ネット社会の広がりが、それを助長しています。
ネット情報は「99%いいかげん」と思って斜め読みしたほうが良さそうです。
 
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┃★テレワーク・ストレス                      ┃
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コロナウィルスの影響で大企業を中心にテレワークが進んでいる・・と報道では言われています。
しかし、本当に、それで仕事が回っているのでしょうか。
弊社は、ネットワークを介した業務の比率が高い企業ですが、それでも自宅でのテレワークでメインの仕事を回すことは、ほぼ不可能です。
 
理由としては、まず、会社のインフラに比べると自宅のインフラが貧弱というネックがあります。
能力の低い自宅のパソコン環境では仕事にならないのが実態です。
 
さらに、ストックしてある紙情報や書籍の類を自宅に置くスペースがありません。
自分だけの仕事スペースも自宅には無く、落ち着いて仕事が出来ないという制約も大きいです。
結局、仕事は深夜となり、疲労が貯まるという悪循環。
こうした問題は、弊社だけでなく、多くの企業が直面している問題ではないかと思います。
 
さらに深刻なのは、ネットワークの混雑です。
テレワークの広がりからか、インターネットが以前と比較にならないくらい遅くなっています。
我が国のネットインフラの貧弱さが浮き彫りになってきているといえます。
こんな調子で、本格的にテレワークが進んだら、確実に通信網はパンクするでしょう。
「5G時代になれば解消するさ」と思っておられる方もいると思いますが、そうはいきません。
 
通信速度は100倍といわれる5Gですが、それは理想的な環境での数字です。
実際には、一箇所でも古い機器やケーブルが混じっているだけで、4Gの世界に戻されてしまいます。
たとえ、NTTや通信事業者の設備が一新されたとしても、各企業が、莫大なインフラの入替え費用に耐えられるでしょうか。
それには10年から20年という年月がかかるでしょう。
我々企業側は、政治家や評論家の無責任な言動に惑わされてはいけないのです。
 
本メルマガで何度も書いていますが、システムの世界は、1947年にフォン・ノイマンが発表したシステム・アーキテクチュアから、この73年間、一歩も進歩していないのです。
この根本課題を置き去りにした5Gは幻想だと、私は確信しています。
 
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┃◇中国の思惑通りにはいかない                   ┃
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感染発生源でありながら、いち早くコロナウィルス禍から抜け出した感のある中国が、この事態を利用すべく様々な動きを見せています。
政治および軍事の問題は、次の5月15日号に譲り、今号は経済的な側面のみを解説します。
 
たしかに、近年の中国経済の発達は驚異的なレベルであり、あっという間に日本は抜かれ、今やGDPの差は2倍以上となっています。
しかし、そこには一つのからくりがあることを、我々は見落としてはならないのです。
 
中国は、経済発展の初期段階では、安い労働力を武器に軽工業で地歩を固めてきました。
その後、先進国からの技術移転(技術盗用?)で、鉄鋼などの重工業でも生産能力を高めてきました。
たしかに、鉄鋼生産量は世界一となりました。
ちなみに、2位はインドで、3位が日本です。
しかし、高張力鋼やカーボンファイバーなどの高品質分野の質は、まだ日本に及びません。
自動車でも、生産台数こそ、うなぎのぼりですが、質においては欧州や日本に遠く及びません。
つまり、数量頼みの工業で、質の面ではまだまだの段階なのです。
 
こうしたことは共産主義の弊害ともいえます。
万民平等を建前とする共産主義では、量が重視され、質は二の次となります。
製造業での質の停滞は、そのことを物語っています。
それが分かった中国政府は、経済成長の方向を変えました。
新たなターゲットとしたのは、IT分野です。
 
成熟した世界である製造業で質を上げるには、長年の技術の蓄積と気の遠くなるような期間の基礎研究が必要です。
こうした努力は、近代化の歴史の浅い中国がもっとも苦手とすることです。
近代中国の技術は、ほぼ全てが欧米や日本から学んだ、あるいは盗んだものです。
それに対して、先進国の目は格段に厳しくなっていて、この先は行き止まりです。
 
しかし、ITの世界は新興の世界であり、中国得意の人海戦術が幅を効かせる分野でもあります。
また、技術の盗用が簡単な世界であり、国民の情報統制にも効果が絶大と、一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にもなると踏んで、中国政府は戦略を立てました。
大量の若者を米国の大学などに留学させ、IT技術を学ばせ、技術移転を図ったのです。
その効果で、中国の経済規模は天文学的な数字に跳ね上がってきました。
 
今回のコロナショックも、独裁政治の強みを生かした中国は、いち早く抜け出したようにみえます。
しかし、欧米の中国に対する見方は一変してきています。
それが、これからの経済にどう影響してくるか。
次回は、そのことを推察してみたいと思います。
 
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┃☆企業における社長の力(10)                     ┃
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1年も中断していた本シリーズを再開する契機になったのは、今回のコロナウィルス禍です。
トップの役割の重要性を改めて考えさせられたからです。
日本最大の法人であるトヨタ自動車が副社長職を廃止し、豊田社長以外の役員21名全員を同格の執行役員とする人事を発表しました。
豊田社長の存在感の高さは周知のとおりですが、ここまで大胆な改革を推進する実行力はトップの資質として最も大事なことだといえます。
豊田社長とは比べ物になりませんが、ある意味、中小企業のトップは、もっと厳しい局面に立たされ、もっと困難な決断を迫られているといえます。
そんな理由で、本シリーズを再開することとしました。
 
さて、中断前の第9回は、弊社が倒産必至の状態に追い込まれた時の話でした。
(2019年3月31日号(配信4月1日)を読み返してください)
取引の一番多かった販社の常務に会い、商品の版権をすべて引き渡す代わりに、使えると思った社員の雇用をお願いしたところで話は止まっていました。
そこからの再開です。
今回のコロナショックで苦しんでおられる社長さんがおられたら、少しでも参考になれば幸いです。
 
では、その時のやり取りを続けます。
常務さんは、こう言われました。
「なるほど、話の内容はあらかた理解できました。しかし、私の一存で返答はできません。ご面倒をお掛けするが、明日もう一度お越し願えないか。経理責任者の常務と一緒に、再度お話を伺いたい」
もちろん、倒産を覚悟していた私に異論はありませんでした。
 
翌日、二人の常務さんに対して、前日と同じ資料で同じ説明をしました。
話し終えたとき、最初の常務さんがこう質問しました。
「これで・・すべてですか?」
質問の意図を図りかねましたが、私は答えました。
「これがすべてです。資料も話も昨日と同じで、すべてです」
 
ところが、私の返答を聞いた常務さんは、ニヤッと笑ったのです。
いえ、もしかしたら「ニコッ」だったかもしれないのですが、今でも「ニヤッ」という記憶が鮮明に残っています。
そして、静かに次のような話を始めました。
 
「私は銀行から当社に来た人間です。銀行時代は、多くの支店長を歴任してきました。
そうした時代に、今回のようなお話を山のように経験してきました。
すべての資料に目を通し、すべての話を聞いた後、私は必ず、今回のように『これだけですか?』と聞くのです。
すると、ほぼ全ての方が「いや、実は・・」と、それまで話さなかったことを話し出すのです。
とことん相手の話を聞き、資料を精査すれば、隠していることがあるくらい、我々には分かります。
ですから、『やっぱり・・』となるのですよ」
 
私は、何も言葉を発することが出来ず、ただ呆然と聞くだけでした。
常務さんは続けました。
「しかし、あなたは『これだけ』と言い切り、昨日とまったく同じ話をなさった。分かりました。あなたを信用しましょう」
 
私は常務さんの言葉の意味を推し量れず、心の中でこう思っていました。
「信用します・・ということは、ソフトの版権と引き換えに従業員の一部だけでも雇用してくれるということかな」
しかし、常務さんの次の言葉は予想外でした。
「ところで、いくら、必要ですか?」
 
私は、その言葉の意味が分からず、しばらく沈黙しましたが、突然、頭の中に次のことが浮かびました。
「それって、うちの会社を金銭支援してくれるということなのか・・」
まったく想像すらしていなかった展開です。
現在も弊社は存在していますから、その後の展開は想像できると思います。
 
この話は自慢話のように聞こえるかもしれませんが、私が言いたいことは、次のことだけです。
絶体絶命の危機に陥った時には、有効な手段などあるはずは無いのです。
ただ、最悪の手段と最善と思える手段ぐらいは考えられるはずです。
そうして考えた最善の策を、迷いなく実行するのみなのです。
誰かに救ってもらおうとか、宝くじに当たらないかな、などと考えないことです。
「すべてを失っても、命さえあれば、またやり直せるさ」と開き直り、最善と思える策を愚直に実行するだけなのです。
 
今回のコロナ危機は、弊社にとって何度目かの危機ですが、これまでの経験から即座に考えられる手を打ち、さらに深刻化した場合に備える策も考えてあります。
読者のみなさま、ともに乗り越えていきましょう。
 
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┃◇これまでの経済、これからの経済(9)              ┃
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前回、孫子の骨子は「人間性、合理性、中庸性」の3本にあると書きました。
さらに、この3本の柱の根底には「二律背反」と「万物流転」という宇宙の大原則があります。
二律背反とは「あちら立てればこちら立たず」という、相反する二面性がすべての物事、事象にあるという原則論です。
万物流転とは「この世に止まっているものはなく、すべては流れの中にある」という流動論です。
この2つを土台にして3本の柱を考えると、以下のようになります。
超簡単に説明します。
「人間性」とは、人間心理の“アヤ”です。
人の成功を羨み、見栄を張り、金銭欲や低俗な欲望に囚われる反面、困っている人を助けたり、小さな子どもをかわいいと思ったりする、矛盾する心がある。それが人間というものだ・・というようなことです。
芥川龍之介の「羅生門」や「蜘蛛の糸」、ドストエフスキーの「罪と罰」などは、こうした人間心理を見事に表現した名作です。
また、中国の韓非子やイタリアのマキャベリなどの思想家は、人間心理を、その底の底までえぐり出しています。
そうした人間心理の洞察は、ビジネス上の大きな要諦といえます。
 
次の「合理性」は、自然の摂理に従うことを意味し、「現実性」とも言います。
現実に起きたことは、どんな嫌なことでも否定せず受け入れること。
それは「水は高いところから低いところに流れていくもの」といった物理法則を受け入れることだと、私は教わりました。
この教えは「倒産必至」に追い込まれたときに大きな支えになりました。
 
最後の「中庸性」は、柔道の「自然体」あるいは剣道の「青眼の構え」と教わりました。
「攻撃も出来るし、防御も出来る」位置に立つことだと言われました。
つまり、結論を出して事に臨むのではなく、どんな事態にも対処できる位置に自分を置くということです。
孫子は、ものごとの解析に「易の二元論」を使っています。
二元論によって対象物の陰と陽を明確にし、その両面を均等に見よということです。
しかし、「易の占いによって結論を出す」ことを戒めています。
そうした結論の出し方に合理性を見い出せないからです。
 
私は無神論者ですが、神や仏に祈ることはあります。
その時は、何かを願うのではなく、「我に平常心を与え給え」と祈るのです。
つまり、常に中庸に自分を置くための自己暗示です。
 
さて、孫子は、この2つの大原則と3本の柱を基に、8つの律で実際の行動を規範しています。
この8つとは、盛衰律、変化律、因果律、効果律、勝敗律、順序律、均衡律、全体律です。
この解説は、また後日。
 
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<編集後記>
「今後の建設需要」を再開する予定でしたが、コロナウィルスの話題が先行したため、また次とさせていただきます。
今後、コロナウィルスの影響を最も受けるのが住宅市場だと言われています。
その予想は当たっていると思いますが、市場が消えることはありません。
ただ、市場の変質が加速されていくでしょう。
こうした変化は、既存の勝ち組にはマイナスでも、新興勢力やこれから参入する企業にとってはチャンス到来となります。
また、このことは住宅市場のみならず、全産業に及ぶことです。
すべてはコインの裏表です。
 
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