2021年6月15日号(国際、政治)

2021.06.17


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年6月15日号
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発行日:2021年6月15日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年6月15日号の目次
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★サイバー戦争(前半)
◇抑止力という名の軍事力(14)
◇近代史を闇の中から引き出すことで、中国の戦略が見えてくる(3)
◇原発の再稼働
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
国会で2年ぶりに行われた党首討論、予想通り、まったく噛み合わない内容でした。
ですが、最後に立憲民主党の枝野代表が言い放った“捨て台詞”には「ほーっ」と思いました。
枝野氏は「この危機を乗り切るビジョンも準備も私にはある。政権を変えるしかないと確信した」と言い放ちました。
ぜひ、そのビジョンを国民に示し、政権奪取の行動をすぐに始めて欲しいものです。
しかし、その言葉が口から出た単なる強がりであるなら、もうこんなことは言わないで気楽な野党のままでいたほうが良いでしょう。
さあ、どうするか、注目していきます。
 
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┃★サイバー戦争(前半)                       ┃
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現代は「冷戦」と呼ばれた米ソ対立に代わり米中対立の時代となりました。
かつての冷戦時代と違うのはサイバー空間の存在です。
人の目には見えませんが、この空間は既に激しい戦争状態になっています。
1999年、中国人民解放軍は、世界中のあらゆる境界や法、人権などの限界をすべて超えるという意味の「超限戦」なる軍事戦略を策定し、ただちに実行に入りました。
これは、一言で言えば「目的のためには手段を選ばず」ということで、他国の制度や思想などは一切無視し、中国の国益のみに集中するという戦略思想です。
この戦略思想が人民解放軍の核となってから、南シナ海の囲い込みや尖閣への領海侵入、台湾への軍事挑発などが激化してきています。
中国になびかない各国と摩擦を起こしている「戦狼外交(せんろうがいこう)」なる強硬な外交姿勢も、中国外務省が人民解放軍に呼応して起こしている行動なのです。
頻繁に記者会見に登場する中国外務省の趙立堅副報道局長の恫喝口調は、毎度おなじみとなっていますが、口だけでは済まない危険が増しています。
 
この「超限戦」で中国が最も力を入れているのがサイバー空間での攻撃です。
15万から20万人という信じられない規模の要員を、北米地区、欧州地区、日本及び韓国担当などの各部隊に分け、節操なきハッカー攻撃を世界中に仕掛け続けています。
盗み出す情報は軍事や兵器だけにとどまらず、民間企業の産業技術など広範に渡り、まさに無差別攻撃状態です。
近年の中国軍事力の急速な発展がこうしたサイバー攻撃によって盗み出した技術に拠るところが大きいのは事実です。
日本の自衛隊からも機密情報が盗み出されていますが、攻撃の手口は巧妙です。
当然、セキュリティの弱いネットワークを狙うのですが、その対象が民間の場合もあります。
例えば、全国の一般大学が接続している「SINET」という学術文献などを閲覧できるネットワークがありますが、当然、防衛庁などのネットワークに比べればセキュリティは脆弱です。
ここが狙われました。
このネットワークに防衛医科大と防衛大学が入っていたことから、ここを起点として両大学への攻撃が仕掛けられ、陸上自衛隊の機密情報の一部が漏洩したと言われています。
(もちろん、政府も自衛隊も公表していません)
 
実は、サイバー空間の戦争においても日本は憲法の縛りから攻撃が出来ずに専守防衛一辺倒なのです。
日本が攻撃できないことを知っている中国はやりたい放題で、日本は防戦一方という苦境に立たされているのが現実です。
「相手が攻撃できない」となれば攻める方は攻撃に全力を注げますから、日本は圧倒的に不利な戦いを強いられているのです。
 
今の中国政府には諸外国との協調や平和共存という考えはまったくなく、「力関係がすべて」という思想に凝り固まっています。
サイバー戦争での敗北は、表の戦争においても敗北する道に繋がります。
台湾や尖閣への軍事侵攻が現実味を帯びてきているのは、こうした現実があるからです。
 
また、中国のサイバー攻撃とは別にロシアや北朝鮮のハッキング攻撃も激化しています。
この話は、次回の後半で。
 
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┃◇抑止力という名の軍事力(14)                  ┃
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誰もがご存知のことですが、戦前の日本は戦闘機開発の先進国でした。
終戦間際、ドイツから得た設計図を基に世界で二番目のジェット戦闘機「橘花」を開発しましたが、試作機の段階で終戦となりました。
この敗戦で日本は飛行機の開発が禁じられましたが、エンジンがプロペラからジェットに代わるという大きな技術転換期であったことが日本の不幸でした。
敗戦から実に42年が経った1987年12月、ようやく戦後初の国産戦闘機の開発計画が立ち上がり、F-2と名付けられました。
しかし、長期の空白の影響は大きく、完全国産による開発は無理として米国のF-16戦闘機をベースにした開発となりました。
たしかに、このことで開発期間は短縮され2000年9月の初号機納入にこぎつけましたが、米側の思惑に振り回され、技術やノウハウの蓄積は思うように出来ませんでした。
 
この轍を踏まないようにと、次期戦闘機の開発は日本が主導を採るとしていましたが、技術蓄積の乏しさはいかんともし難く、結局米国との共同開発にならざるを得ませんでした。
その結果、またしても米国が大きな壁となり、開発の主導権が制約を受ける懸念が浮上してきました。
主幹企業の三菱重工とエンジンを請け負うIHIの頑張りに期待するしかないのでしょうか。
 
前号で書いたように、近代の戦闘機は、単独の性能よりネットワーク網を介した連繋機能がカギになってきています。
こうした大きな技術変革期に、日本は「現在、世界には存在しない」戦闘機を開発しようとしているのです。
つまり、今回は単に兵器を開発するという次元を超えて、世界をリードする最先端の技術やノウハウを開発する大きな機会と捉えるべきなのです。
当然、米国も同様の考えを持っていて、開発の主導権を取ろうとしています。
同盟関係とはいえ、両国は静かな戦争に突入しているのです。
 
技術の世界に軍用と民用とを隔てる垣根は存在しません。
採算を度外視できる軍用がリードし、その成果が民用に転用されていくのです。
その中でも戦闘機の開発は、宇宙開発と並ぶ最先端の技術開発です。
戦闘機の開発の歴史をたどるだけで、近未来の技術開発の進む道が見えてくるのです。
それは次号で。
 
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┃◇近代史を闇の中から引き出すことで、中国の戦略が見えてくる(3)  ┃
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日本は、先の大戦を「太平洋戦争」と呼んでいたように、1941年12月の真珠湾攻撃から始まった米国との戦争に焦点を当てて論じる傾向が強いです。
その反面、中国との泥沼の戦争が対米戦争の引き金になったことをそれほど深く考えてこなかったのではないでしょうか。
 
以下に書くことは歴史の授業で習ったと思いますが、時系列に確認する必要があるので、載せます。
「分かってるよ」と言われる方は、読み飛ばしてください。
 
日中戦争は、日本が日清、日露の戦争に勝利したことが伏線になっています。
それまで劣等国だった日本が、中国(清国)、ロシアという大国に勝ったのです。
世界は驚きましたが、それ以上に、この勝利で日本は舞い上がってしまいました。
ここから日本の歯車が狂い出していきました。
 
この両戦争の結果、日本は朝鮮半島や中国の関東州(大連の付近)を支配するという大陸への足がかりを得ました。
この関東州を管轄していたことで「関東軍」と呼ばれていた陸軍部隊の幹部は、本国から離れていることを良いことに中国大陸進出を密かに計画しました。
 
ここで、さらに歴史をさかのぼります。
中国の歴代王朝の首都は、長安や洛陽といった中西部に集中していて、大連がある東北部までは支配が及んでいませんでした。
そこは北方民族である匈奴や契丹などが勢力を持つ中国の“外”でした。
こうした北方民族の侵入を防ぐ目的で造られた万里の長城が北京のすぐ郊外にあることから分かるように、北京のすぐ外は「中国」ではなかったのです。
 
ところが、明朝の滅亡で、中国は北方民族の清により支配されてしまいます。
清は、首都を盛京(瀋陽)から北京に移し、今の中国全土に近い地域を支配下に治めました。
しかし、日清戦争に破れたことを契機に清は急速に衰退し、孫文の辛亥革命を経て、蒋介石率いる国民党政府が政権を樹立しました。
こうした不安定な中国の政情に乗じた関東軍は、日本が敷いた南満州鉄道の線路を爆破(柳条湖事件)、これを国民党の仕業と一方的に決めつけ、一気に東北部一体を占領したのです(満州事変)。
そして、清の皇帝の末裔である「愛新覚羅溥儀」を担ぎ出し、満州国という日本の傀儡政権を建国しました。
関東軍の言い分としては、満州は、もともと清の支配下にあり、正当な皇帝(溥儀)が支配すべきというものでした。(かなり無理筋ですが・・)
 
当然、国民党政府は怒りましたが、毛沢東率いる中国共産党(八路軍)との激しい内戦を戦っていて、満州に関わる余裕はありませんでした。
むしろ、共産党軍との戦闘を有利に進めるため、蒋介石は日本との関係維持を優先し、満州国の存在は黙認していました。
 
一方、関東軍も一枚岩とは言い難い状況にあり、幹部たちの思惑も異なっていました。
完全な日本領土にしようとする者、己の利権にと考える者など、いろいろでした。
その中に関東軍の作戦参謀であった石原莞爾という人物がいました。
石原は満州国建国の首謀者とされていますが、彼は満州国を日本からも離し、真の独立国とする野望を抱いていました。
いわゆる「五族協和(漢、満州、朝鮮、モンゴル、日本)」による「王道楽土」の建設という思想です。
まあ、夢想とも言える思想ですが、当時は、大真面目に語られていたのです。
 
実は、毛沢東も内戦を有利に進めるため、関東軍の一派と密かに手を結んでいました。
この続きは次号で。
 
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┃◇原発の再稼働                           ┃
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先日、鹿児島の川内原発がある川内市に行ってきました。
川内原発は1号機、2号機とも昨年暮れに再稼働しています。
原発の再稼働には反対も多いのですが、政府は廃炉を決めた原発以外の原発はすべて再稼働させる腹を固めたようです。
2050年までの脱炭素化目標には原発の再稼働が欠かせない要素だからです。
 
天候が安定しない日本では、EVシフトなどで膨れ上がる電力を再生可能エネルギーで賄うことは不可能で、ベースロード電源として安定した電源がどうしても必要なのです。
陸続きの欧州は互いの電力を融通し合えますが、その中核になるのはフランスの原発です。
脱原発を決めたドイツなども頼りはフランスの原発というのが実情です。
しかし、こうした策がない日本は、自前の原発を再稼働させる以外の道がありません。
 
ただし、再稼働に対する国民の合意形成が出来ているかというと微妙です。
合意形成のためには、原発事故の処理だけでなく、以下に示すような過去の事例を徹底的に洗い出し、根本の解決策を積み重ねていく必要があります。
 
福島の事故の数年前、2005年8月に宮城県沖で地震が発生しました。
震源に一番近かった東北電力の女川原発では、揺れが「基準地震動」といわれる「想定される地震の揺れ」を、一部ですが超えました。
当然、「基準地震動」の数値そのものを見直す必要があったのですが、電力会社は黙殺しました。
ならば、原子力安全・保安院が動いたかというと、それもありませんでした。
保安院が「知らん顔をした」というわけではありません。
基準を超える安全強化の検討を求める根拠となる法律がなく、何もできなかったのです。
 
原発を建設する時には、法律に基づき実施する審査で建設許可が出されます。
この審査では、想定される最大の地震や津波に耐えることが求められます。
この点に関し、いままで違反して許可が出された原発はありません。
 
ところが、許可を出した後で許可時に想定した基準を超える事態が発生した場合に、それまでの審査の基準を変えたり、電力会社に追加の対策を求めたりする法的根拠がなかったのです。
電力会社の自主的判断に委ねるという“あいまいさ”が放置され続けてきたのです。
結局、宮城県沖地震で発生した「基準値を上回る揺れ」も黙殺されてしまい、法律改定の検討すら行われませんでした。
それから5年7ヶ月後、あの地震と津波が発生したのです。
 
福島事故で無力さを露呈した原子力安全・保安院は解体され、原子力規制委員会として、規制に重きを置いた組織に変わりました。
規制委員会は、原発再稼働に対し非常に厳しい条件を課し、クリアできない原発も増えています。
また、反対の声が大きい地元自治体は再稼働の同意には慎重で、未だ稼働していない原発のほうが多いのが実状です。
日本も変わったと言いたいのですが、現実に即して現行の法律を見直すという本質での変化ではなく、行政が国民や市民感情に忖度するという“いびつ”な姿です。
まずは国会が立法府としての本来の姿を取り戻し、法のあり方の議論を重ねていくべきです。
しかし、今の国会議員を見ていると絶望しか感じられません。
 
私としては、批判のための批判ではなく、また推進ありきでもなく、原発の設計や運営に関わったひとりとして、知る限りの情報を伝えていかなければと思う次第です。
次回は、私が原発内で経験した少々“やばい”話をしたいと思います。
 
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<編集後記>
テニスの大坂なおみ選手が全仏オープンを途中棄権した理由を「うつ」と発言したことで、大きな話題になりました。
肉体的なケガや病気は他人にも分かりますが、内面のメンタル不調を理解するのは難しいです。
当の本人すらも「自分の自覚の問題」と流してしまう傾向があります。
しかも、メンタル医療は歴史も浅く、研究が進んでいるとは言い難い状況にあります。
大きな問題になっているLGBTも体とメンタルの不調和が原因です。
LGBT法案が国会に上程されたのは時代の流れですが、その流れに国会はついていけず、成立は見送られました。
反対する国会議員たちを「時代遅れ」と非難するのは簡単ですが、日本社会にLGBTを受け入れる土壌が醸成されているかというと、はなはだ疑問です。
かくいう当社も「対応は?」と問われると、答えに窮してしまいます。
「受け入れるべき」という建前から一歩も進んでいないのが現実です。
 
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