核の傘は、もはや「破れ傘」か?
2025.05.19
2021年1月22日に発効した核兵器禁止条約は、2024年9月で94カ国が参加・署名・批准しています。
ですが、唯一の被爆国である日本は不参加のままで、オブザーバー参加も見送っています。
2024年に日本被団協がノーベル平和賞を受賞した際に、被爆者を中心に広島市長や長崎市長などが政府に「参加すべき」と要請しました。
しかし、政府は参加に踏み切りませんでした。
「参加すべき派」の人たちは、同じ敗戦国のドイツがオブザーバー参加していることから「日本も参加すべき・・」と主張しています。
しかし、同じ第二次大戦の敗戦国ですが、日本とドイツは戦後の事情が異なります。
ドイツはNATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟の一員としての「核の傘」の下にあります。
それ故、NATOの核保有国である米英仏の3カ国が一致して不快感を示さない限り、条約参加を非難されることは無いでしょう。
しかし、日本はアメリカ1国の「核の傘」の下にあります。
禁止条約に加わることで、米国から見放されるということを政府は恐れています。
さらに、ドイツに対する核脅威はロシア一国だけですが、日本に対する核脅威は、中露、そして北朝鮮の3カ国です。
それも、海を隔てていますが、直に国境を接している脅威です。
危険度が格段に違うという状態にあります。
米国の「核の傘」という核抑止力が無ければ、この脅威に立ち向かえないという政府の認識は揺るがないわけで、国民の多くも同じ認識にあるでしょう。
しかし、その米国にトランプという「何を考えているか分からない」大統領が返り咲いたことで、この「核の傘」が破れ傘になったのではないかという危惧が生じました。
こうした事態に「日本も核武装すべき」とする意見が増えてきていますが、同時に、そうした風潮を危ぶむ意見も強くなっています。
また、中国による台湾進攻が現実になった場合、日本はその事態を座視できず、何らかの対抗処置を取ることになるでしょう。
ということは、中国から核攻撃される可能性があるということになります。
私は、そうした事態になった場合でも、日本は通常兵器で中国に対抗すべきと考えています。
かつ、その事態が起きることを前提にして、技術力、先端軍事力を磨き続け、友好国への武器輸出も行うべきと考えます。
これは、武器開発費の削減だけでなく、潜在的な同盟国を増やすことにつながります。
その延長線上に、国際社会に対し「いつか核兵器を持つかも」と思わせておくことが日本の核抑止力ではないかと考えるのです。
こうした状態を作った上で、核兵器禁止条約にオブザーバー参加するのです。
かつ、破れ傘になったとしても、米国との軍事同盟は必須というアピールも必要です。
こうした「いったい、日本は何を考えているんだ」と思わせる“したたかな”外交的防衛力こそが日本の採るべき防衛戦略だと思いますが、読者のみなさまは、どう思われますか。