今度こそ中国経済は崩壊するのか?

2024.08.02


長い間「崩壊する」と言われながら、2021年にはGDPが米国の76%に迫った中国経済ですが、不動産バブル崩壊を契機に、対米GDP比率は64%に落ちています。
しかし、これらの数字を信じる人は少なく、実際は50%以下だろうとの声が多いようです。
 
経済評論家の中には、「中国は日本のバブル崩壊を研究しているので、同じような崩壊は起こらないだろう」と主張する方がいます。
しかし、経済の専門家を自任するならば、単なる「だろう」推測ではなく、事実を基に合理的な基準による可能性の高い未来を提示すべきです。
ということで、本メルマガは、中国経済に関する事実を以下にいくつか列挙します。
 
(1)不良債権処理
中国政府は、日本の住専にあたる「処理銀行」を作って不良債権の処理に当たらせました。
しかし、その処理銀行自体が破綻寸前になり他の組織へ移管を計画中ということです。
(なんのこっちゃ・・)
日本の場合は、住専が有機的に機能し負の不動産処理を成し遂げました。
当時は、ずいぶん批判されましたが、「よくやった!」と言うべきでしょう。
何かと批判の的になる官僚ですが、彼らの計算能力が高いことが重要です。
不良債権処理のような「負の仕事」は、冷徹な計算の基に冷徹に実行する以外に成功は無いのです。
実に辛い仕事ですが、計算能力が高く冷徹さに徹する資質を持つ官僚たちを集め、チームを組ませたことが成功要因でした。
 
弊社はコンサル事業で苦境に陥った企業を何社も立て直してきましたが、上記と同じ手法です。
ただし、経営トップが、「この改革を貫徹し、必ずわが社を立て直す」という強い意志を持ち続けることが必須要素です。
 
今の中国は、日本のこうした事例を学び研究しているとはお世辞にも言える状況にはなく、処理銀行自体が破綻状態という惨憺たる事態を招いています
なにより信用に足る数字がないのですから、重症です。
以下からは、その数字の一端を示しますが、すべてドル円155円で換算しています。
 
(2)若者の失業率
2023年6月に21.3%と発表した後、発表を止めるという「意味不明?」なことを中国は行いましたが、2024年2月に「2023年12月のデータ」として「15%に改善」と発表を再開しました。
そして、2024年6月に「13.2%」の数字を発表しました。
狐につままれたような思いですが、こうした数字の“ごまかし”は、この国の常套手段です。
例えば、失業していても親元にいる若者は失業にカウントしないとか、幼稚な小細工ばかりの数字で、こんな政府発表を信じる国民はいるのかなと思ってしまいます。
だから、「実態は50%に近い」という声が上がるのでしょうが、実態は不明です。
 
上記は30歳未満の若者の失業率ということですが、失業率全体は、この2年の間5.1%に張り付いたままです。
もう何も言えません。
 
(3)保有する米国債は190兆円
近年、大幅な売却を進めたことで急激に減少し、ピーク時の60%という水準まで下がっています。
(4)外貨準備高は501兆円
ピーク時(2014年)の84.7%に減っていますが、急減した2016年からは少し持ち直しています。
ですが、それは(2)の米国債売却の結果といえますから、今後、この水準を保てるかどうかは不明です。
 
(5)公債残高は840兆6671億円
日本の国債発行残高は、国と地方債務を合わせて1200兆円ですから、「中国のほうがマシ」と思われるかもしれませんね。
しかし、中国の公債残高は隠れ債務を含めると1770兆円と日本をはるかに凌駕しています。
しかも、非公式にはこのステルス債務は2000~3000兆円とする声があります。
つまり、実態数字は「誰も分からない」ようです。
 
(6)海外からの投資 マイナス82%
国内を含めた全体の投資額は、日本円に換算して5兆円にまで落ち込んでいます。
欧米資本の逃避が目立つのに対し、経団連や与野党議員の中国詣でが続く日本の投資は横ばいです。
大丈夫なのでしょうか。
 
読者のみなさまには、もうこれ以上の解説は不要でしょう。