2つの経済理論の激突(後半)
2023.03.31
【経済・経営】2023
国家経済を考える時の重要な指標に「失業率」と「インフレ率」があります。
2022年度の日本は、失業率2.5%、インフレ率2.3%となっていて、安定状態だといえます。
たしかに物価は上がっていますが、物価上昇は経済発展に欠かせない要素です。
それを、マスコミは「悪いこと」として、庶民の不安を煽ります。
しかし、4%程度の物価上昇は騒ぐことではなく、“穏やかな上昇”であり、「良いこと」と認識すべきと考えます。
問題は、デフレ状態がかくも長く続いたことで、国民の購買意欲が衰え、企業が安売りに走ったことにあります。
こうしたデフレ・スパイラルを断ち切るため、企業はようやく商品、サービスの価格を上げ出しました。
それができてこそ賃上げができるという当たり前の経営に、ようやく踏み出してきたわけです。
でも、この循環だけでは弱く、次の収益を作るための戦略投資を本格化させる必要があります。
それこそが自分の一番の役割であるとの認識が経営者には求められます。
そのために政府がやるべきことは、第一に企業の技術開発への資金投入、第二に市場の購買力を上げるための資金投入、そして、プライマリーバランス目標の棚上げです。
結果として、国債のさらなる増加は必至となりますが、こうした政策で緩慢なインフレを継続させることができれば、GDPの持続的発展に繋がります。
日本の「国債/GDP比」が240%に上り、このままでは国が潰れるというのが緊縮財政派の主張です。
しかし、国債という分子を減らすことばかりに気を取られるのは“おかしな”考えです。
それより、GDPという分母を増やすほうをどうして考えないのでしょうか。
国家の経済発展の指標はGDPなのに、それが30年間まったく増えなかったことを考えるべきです。
上記に掲げた政策を実行すれば、たしかに国債の発行残高はさらに増えるでしょう。
しかし、それ以上にGDPは増えます。
たとえ増えなくても、この程度で日本は潰れません。
最悪の状態となったならば、首相が変わればよいだけの話です。
ならば、岸田首相、積極財政に賭けてみるのも悪くないと思うのです。
中小企業の社長のほうが、よっぽど厳しい決断を常に迫られているのですから。
と、ここまで書くと、私は積極財政派と受け取られるでしょう。
ですが、単純に積極策が良いと考えているわけではありません。
国家経済を企業経営として考えると、緊縮政策は倒産が必至の状態の時に採るべき策であり、現在は積極政策を採るべき時なのです。
国と企業は違いますが、軍事を除けば、国の経営は企業経営より楽です。
なにより、通貨発行権を持っていることの強みは大きいです。
もっとも、その通貨が国際的に通用しない場合は別ですが、日本円は通用します。
もちろん、無尽蔵の発行ができないのは当然です。
その意味で積極財政にも限度はありますので、その見極めができる人が国のリーダーとなるべきです。
2つの経済理論は衝突しているのではなく、どちらも正解なのです。
しかし、同時には成り立たず、その時々でどちらを採るかの判断が政治なのです。