円安で金利は上昇局面
2024.07.01
ドル円が一時161円と、円安が一段と進みました。
日銀の対応が注目されますが、政策金利を上げるか否かの一点に関心が集まっています。
3月にマイナス金利が解除になったとはいえ、政策金利はわずか0.1%です。
実際、中小企業への貸出金利の多くは1~2%台で、高いとはいえません。
大企業への金利は「チンパンジー金利」と称される0%台ですので、痛くもかゆくもないでしょう。
そもそも、ほとんどの国民は「マイナス金利」とは何かが分かっていません。
読者のみなさまには釈迦に説法ですが、以下に簡単に説明します。
民間金融機関は「日銀当座預金」と称する口座を日銀に持っています。
この口座に対する金利をマイナスにするという政策が「マイナス金利」です。
これは、お金を預かる側の日銀が利息を払うのではなく、逆に「利息をもらう」ということです。
金融機関にしたら「預金したら利息を取られる」のですから、当座預金からお金を引き出すだろうと思われますね。
たしかに、それが政府の狙いで、そうして引き出された資金が民間企業に貸し出され、景気回復になるとの思惑がありました。
しかし、現実は真逆で、どの金融機関も当座預金を引き出したりはしませんでした。
「どうして?」でしょうか。
政府・日銀の政策が“へっぴり腰”だったからです。
日銀が金融機関から預かっている当座預金のうち「一定額を超えた部分に対する金利が-0.1%」と、対象となる預金が“ほんの少し”なのです。
しかも、この「一定額」も、預かっている預金の全額が分母ではなく、新規に預ける預金のその一部ですから、実質ゼロといえる額です。
これでは、お金が動くはずはありませんね。
こんな状態のまま、日銀は政策金利を0.1%に引き上げました。
その結果、金融機関が日銀に預けている「当座預金」に金利が付くことになりました。
ところが、民間企業が金融機関に預けている「当座預金」には利息がつきません。
「利息ゼロで集めたカネを日銀に預ければ0.1%の利子が付く」わけです。
金利は低くても、「日銀当座預金」の総額は560兆円です。
実に、毎年5600億円もの利息が労せずして金融機関のふところに入るのです。
こんなに安全で美味しい話はありませんね。
その一方、民間企業に対する貸出しや住宅ローンの金利は上がります。
しかし、多くの中小企業の経営状態は決して良いとはいえません。
円安による原材料費の値上がり、さらに人件費の上昇を吸収することに苦しんでいます。
この状態で金利が「1%上昇」すると赤字企業の割合が7%増えると言われます。
現在、70%の企業が赤字という状態なので、これが80%に近付くというわけです。
岸田首相は「賃金上昇と物価上昇の好循環を」と言い続けていますが、その好循環が出来ているとはいえない状況です。
この背景には、デフレ経済が30年も続いたことで、物価が上がることを“善”と理解し切れない国民意識が醸成され、その上に「政府は信用できない」という意識が上積みされているのです。
経営者の多くは「賃上げしたい、投資を増やしたい」と思っていますが、それが経営破綻を招く恐れがあり、腰が定まらないのです。
一方の庶民は、首相の言葉など信じられず、賃上げ分が消費ではなく貯蓄に回るという悪循環になっています。
岸田政権の小出しの景気刺激策では、効果が出ないばかりか、一方で増税ですから、ダメなことは当然です。
政府はそれを取り繕ろうと、SDGsだのカーボンニュートラルなどの浮ついた言葉ばかりを流します。
腰を据えて自らの政策を立案し実行できる、新しい首相が必要なのです。