独裁者の心理

2023.12.15

【国際・政治】2023

中国の習近平主席は「中国の夢」という言葉を語りますが、その意識の底には歴史上の3人の皇帝がいると言われています。
その3人とは、初めて中国の統一皇帝となった「秦の始皇帝」、中国の版図を東南アジアにまで広げた「唐の太宗皇帝」、そしてモンゴルやベトナムにまで領土を拡大した「明の永楽帝」です。
 
歴史上、最大の帝国となった元の創始者「チンギス・ハーン」や清の「乾隆帝」は、そこには含まれません。
なぜなら、彼らは漢民族ではなく異民族だからです。
つまり、習近平主席は、“漢民族”の中国に強くこだわっているのです。
 
一方、ロシアのプーチン大統領には、3人の歴史上の助言者がいると言われています。
その3人とは、イヴァン雷帝とピョートル大帝、そしてエカテリナ2世です。
歴史に詳しい方でなくても、この3人がロシアの絶頂期の皇帝であることはお分かりと思います。
つまり、中露のお二人は、帝国の領土を拡大した歴史上の「皇帝」と並び立ちたいという共通の気持ちがあるということです。
近代の感覚では、驚くほどの時代錯誤感覚と言わざるを得ません。
 
しかし冷静に考えてみると、現代でも政治指導者の多くは「偉大な指導者」と言われたいという願望は強いのではないでしょうか。
独裁者はもちろん、民主国家でも大国の指導者ほどその意識が高いように感じます。
また、企業経営者にも、似たような意識があるのではないかと考えるのです。
頻繁に報道に登場する“くせの強い”経営者に、そんな匂いを感じるのは私だけでしょうか。
 
ちょっと脱線しましたので、独裁者の話に戻します。
 
歴史好きな方は、多くの本や文献で、過去の独裁者のことをよくご存知だと思います。
でも、彼らの人生が幸せだったとはとても思えないのです。
その心理を一言で言えば「孤独」そのものではないでしょうか。
例えば、ローマ帝国の第5代皇帝ネロは、とんでもない「暴君」として有名です。
私もそのように思っていましたが、近年の文献を読むうち、そうした話の大半は後世の捏造だったことが分かりました。
ローマ市内に火を放ち、宮殿のテラスでその大火を見物しながらワインを飲んだという話も、今では「嘘」と断定されています。
分かってきたのは、恐ろしいほどの孤独感に苛まれていた若き皇帝だったということです。
 
今のプーチン大統領の心理も非常に不安定な状態にあると思われます。
正しい情報は入らず、誰も信用できず、怯えに近い心理ではないでしょうか。
危惧されるのは、そうした不安定な心理状態から核兵器の使用に踏み切るのではないかということですが、私は、その危険はほとんど無いと思っています。
彼が、先制使用に対する自分への跳ね返りを考え怖くなる程度の小物の独裁者だからです。
 
仮定の話ですが、歴史上の独裁者が現代にいたら核兵器を使うかもしれません。
でも、現代の独裁者は、肝っ玉の小さい小物ばかりです。
彼らがそんな恐ろしい独裁者でないことは、少しだけ安心材料です。