イランの核武装の行方

2026.07.23


米国・イランの「60日間の停戦協議」とは何だったのでしょうか。
今や風前の灯どころか、そもそも「交渉を続けるつもりはないだろう」の状況です。
世界は、両国に対し「冷静に協議してくれ」と言いたいですが、外面のメンツにこだわる両国の耳にはまったく届かないようです。
イランでは革命防衛隊が、そして米国ではトランプ大統領が、この紛争を終結させるための最大の障害となっています。
革命防衛隊は組織であり、米国大統領は個人ですが、自分のことしか考えない身勝手さだけは双方に共通しています。
 
それでも米国は民主主義国家で、トップは国民の意思で変えることが可能であり、トランプ大統領の任期も後2年と少々です。
一方、宗教独裁国家であるイランには、そうした期待は、まったく持てません。
トランプ大統領は、「ならば、宗教上の最高指導者であるハメネイ師を武力で排除すれば、イランの態勢を変えられる」と信じ、ハメネイ師をはじめとする幹部の大量排除を行ったわけです。
この襲撃を可能にした米国とイスラエルの情報機関の能力には恐ろしさを感じます。
それに対し、政治的洞察力のお粗末さには、逆の恐ろしさを感じます。
トランプは、この作戦成功でイランの反体制派が決起し、政権転覆に進むと信じていたようですが、このトランプの思惑は完全に裏目となり、ホルムズ海峡の現況を見ればわかるように、むしろ混迷の度合いを増しただけでした。
「やれやれ・・」と、世界のため息が聞こえるようです。
 
イランは、革命防衛隊なる強硬な宗教勢力が国家の支配権を握っていますが、その支配の実態は外からはよく分かりません。
そもそも、古今東西の歴史から分かるように、武力を持った宗教勢力はやっかいな存在で、常に戦争の火種となってきました。
イランもそうした例から漏れない国家となっています。
そのイランで最も懸念されることが核武装です。
イスラエルとの関係の深いトランプ大統領は、イランの核兵器保有をなによりも恐れています。
実際、イランの核開発能力は向上していて、トランプによる空爆前には濃縮度85%を超えるウランまで手に入れたと言われていました。
核兵器は90%の濃縮ウランがあれば作れるので、もう一息という状況でした。
トランプ大統領は、一刻の猶予も出来ないと判断して強硬手段に踏み切ったわけです。
しかし、イランがウラン濃縮に戻ったのは、トランプ氏が二期目の大統領に就任した直後です。
オバマ政権がイランと結んでいた核合意をトランプが一方的に破棄したことが原因ですから、外野からすれば、トランプに対し「そもそも、あんたのせいだろう」と言いたいです。
 
現在の状況は、核合意を結んでいたオバマ政権時から大きく後退しています。
米国は強硬手段によって高濃縮ウランの備蓄は廃棄・撤去させると主張し、最終的にイランの核開発計画の解体につなげようとしています。
しかし、イランは、ウランを希釈した形で保持する意向をなおも示しています。
しかも、その作業はイラン国内で行うとし、国外への移送には同意していません。
さらに、核計画の中止は明言しないと主張しています。
つまり、イランの現政治体制が変わらない限り、核兵器開発は止めないと考えるしかないようです。
 
そうなると、米国だけでなくイスラエルがより過激な手段に訴える可能性が大きくなります。
世界は、トランプによる2重の失敗のツケを払わされている状況に陥っているのです。