骨太の方針2026

2026.08.03


7月21日、高市政権による初めての「骨太の方針」が、経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。
目を引いたのは「財政運営目標」の中心がPB(プライマリーバランス)という「歳出を歳入の範囲内に抑える」という“家計”のような考え方から、「政府債務残高対GDP比」という、「経済の発展で政府財務のバランスを取ろう」に代わったことです。
 
PB(プライマリーバランス)を「家計のような」と書きましたが、もう少し専門的に解説すると、以下の等価式になります。
「税金などの歳入総額-国債の発行によって得られた歳入(つまり借金)」=「社会保障や公共工事などの歳出総額-国債の利払いや償還費」
つまり、歳入と歳出をバランスさせるという、家計のような考え方です。
しかし、歳出を削るのは簡単ではありません。
かつての民主党政権は「コンクリートから人へ」というキャッチコピーで公共工事を削減し、「事業仕分」なる予算削減政策を行いましたが、大失敗に終わりました。
結果として、「PBは増税で達成することが本筋」とする財務省が力を得て、増税路線が既定路線となってしまい、今日の重い税負担の国になってしまいました。
民主党政権の後、歳出増加で経済発展を促すというアベノミクスの時代になりましたが、民主党政権最後の野田内閣が残した消費税10%への増税を安倍内閣は変えることが出来ず、経済の復活はできませんでした。
たとえ政権が交代しても「政策の継続」という重しは重たく、安倍首相も増税時期を延ばすことしかできなかったのです。
日本国首相は、大統領のように国民投票で選ばれるわけではなく、国会議員の投票で指名される制度ですから、トランプのようなことは不可能なわけです。
 
さて、民主党政権の行った歳出削減策ですが、歴史的に見ても、この手の歳出削減策はほとんど失敗しています。
徳川8代将軍吉宗の「享保の改革」などが有名ですが、惨憺たる結果に終わっています。
その後、老中となった田沼意次が積極財政に転換し、江戸の経済は発展しました。
彼は「賄賂政治家」として歴史に名を残しています(?)が、彼が言ったという有名な言葉には納得です。
「賄賂を持ってくる奴の金は受け取ればよい。だが、そいつの思惑とは全く別の“世のためになる”使い方をすれば良いのだ」
賄賂の良し悪しは別にすれば、「なるほど!」な考えだと思いませんか。
最終的に彼は失脚しましたが、日本の経済は発展しました。
それでも幕府財政は火の車でしたが、それは武家政権ゆえの限界でした。
武家政権の財政基盤は、農業(それもコメ)に依存していました。
しかし、元禄以降、商業が盛んになり、商い経済が農業経済を圧倒してきましたが、コメに基盤を置く武家政権は、コメの収穫には重い税をかける(コメの収穫を取り上げる)一方、商人の儲けは無税でした。
つまり、法人税が無かったのですから、商売人は笑いが止まりません。
 
正確にいうと、江戸時代の商売には運上(うんじょう)や冥加(みょうが)という営業税や営業免許税が課されていましたが、売り上げに掛かる税金ではなく一定額を納めれば良かったので、大商人ほど負担は軽かったのです。
 
話が脱線しましたが、高市政権の「骨太の方針2026」は、それまでのPB(プライマリーバランス)重視の「増税+歳出削減」政策から「投資の促進でGDP(国内総生産)を拡大し、結果として政府債務残高のGDP比率を下げていく」という「発展型の経済」への転換を意味しています。
それゆえ、徳川吉宗の緊縮財政から田沼意次の積極財政への転換に近いものを感じたのです。
(もっとも、賄賂は厳しく取り締まるべきですが)
 
ただし、懸念もあります。
そのことも含めて、次号で、この方針の中身を見ていきます。