長期金利の上昇(後半)
2026.08.03
日本は30年に及ぶ長いデフレの後も、その残滓を引きずりゼロ金利の世界が続きました。
2024年3月にようやく17年ぶりの利上げとなり、それから2年経って、現在の1%になりました。
ここから、バブル期の昔話をさせていただきます。
若い方は経験していない「昔話」ですが、35~40年前に実際にあった世界です。
政策金利が6.0%まで上がったバブル期、建設会社の管理職だった私は、傘下の工事の調達資金の金利が8%ぐらいに上がった経験をしました。
もちろん、資金調達の実務は経理部や資金部の仕事ですが、現場を預かる一部門の責任者として借入の利息分を含めた利益確保が至上命題でしたから、傘下の現場の利益管理には必死でした。
粗利が20%でも金利を考えると12%ぐらいに落ち、部門経費や本社経費などで赤字工事と断定され、部門長の責任とされました。
私は、粗利35%を目指し、傘下の工事を管理するだけでなく、自らを営業の最前線に置き、とにかく入り口での利益確保に努めました。
また、私は20代の頃から、会社の仕事とは別に、個人で株や債券投資を行っていました。
「45歳までには起業しよう」の目標で資金を貯めていたのですが、経済成長の恩恵もあって、年収の数倍の資金を貯めることが出来ました。
そうした時代を経験している私からすると、政策金利1%は「安いな」と思ってしまいます。
もっとも、自社の新しい借入の金利が2%を超えてくる現状を考えると、今以上の資金管理の徹底が大事と気持ちを引き締めています。
ただ日本全体を考えると、現在の長期金利の上昇は財政危機を意識する状況にはないと思います。
政府の債務残高の多さを理由に「金利上昇が財政破綻を招く」と主張する評論家はいます。
しかし政府は、予算案の作成段階で国債の利払いにかかる費用をかなり慎重に見積もっています。
さらに、2026年度予算では、利払い費のベースとなる想定金利(10年物国債利回り)を3%と、やや高めの設定をしています。
また、現在抱えている国債の多くは、過去の低金利時代に発行した分が多いため、実際の利払い費は政府の想定よりもかなり少なくなるはずです。
つまり、現在は財政危機を意識する状況にはないのです。
食料品の消費税減税に関する高市首相の強気な発言は、このあたりのことを意識していると思います。
しかし、金利上昇の局面に入った現在、今後の日本の経済・財政がどう推移するかの予測分析は必須です。
スイスの金融グループUBSが提供する経済・投資分析レポートによると、個人資産10万$(1$=163円で、1630万円)以上を有する人数の中央値で、日本は世界3位で、日米の差は2倍に過ぎません。
(平均値だと日米の差は3倍に広がりますから、米国は超高額所得者の割合が日本よりかなり高いことが分かります)
現在の株価上昇は海外投資家が主役と言われており、国内投資家に大きな動きは見られません。
短期の利益確保を重視する海外の投資家が、「日本の財政不安」や「インフレに対する日銀の金融政策が緩い」として、日本国債を売っていることが長期金利上昇の一因と言われています。
ただ、トランプ大統領に起因するイラン情勢の不安定化による原油高が続けば、当然インフレに拍車がかかり、長期金利が一段と上昇し、日本の経済・財政に悪影響を与える可能性はあります。
そうなると、この先もモノの値段が上がり続け「安いうちに買おう」という消費者心理が働いてインフレが加速する可能性はあります。
しかし、消費者マインドが上がらない現在の日本では、値段が上がり続ければ、消費者が「もう買えない。我慢しよう」と財布のひもを締め、インフレ圧力が低下する可能性のほうが大きいと思いますし、総務省の家計調査報告には、その兆候が見て取れます。
今後の焦点は、日銀のさらなる利上げですが、そのことは次号で。


