中古車市場の闇
2023.07.31
【経済・経営】2023
中古車販売大手のビッグモーター社の不正問題は、中古車販売という商売の難しさというか不透明性を浮き彫りにしました。
我々にとって身近な存在である自動車ですが、多数の死傷者を生み出し続けている凶器でもあります。
反面、その利便性と一種のステータスを感じさせる魅力から、所有欲を刺激し続けてきた商品です。
しかし、価格の高さゆえ、所有を諦めてきた潜在ユーザーは膨れ上がってきました。
そこに中古車販売というビジネスが生まれました。
さらに、「粗利益=販売価格-仕入れ価格」という単純でリスクの少ない商売のため、参入が相次ぎました。
車の性能および耐久性が上がるにつれ、商売のリスクは下がり市場は膨れ上がり、ついに新車販売市場を超えるまでに成長しました。
しかし、自動車は非常に高度で複雑な技術製品の塊です。
中古車販売においても、そうした技術の習得は必要不可欠なはずです。
私は、10代で免許を取得して以来、半世紀以上の年月を車のオーナーとして過ごしてきました。
大学の専攻は機械工学で、仲間と一緒に部品を買い集めて自動車を組立てたこともあります。
レーシングチームのメカニックの手伝いをしたこともあります。
そうした経験から車のメカには自信を持っていました。
しかし、中古車の査定はもちろん、メカ的に問題はないかなどの判定はできません。
私は、今まで19台の車を購入しましたが、一度だけ中古車販売店から買ったことがあります。
主に担当していた工事現場への通勤用に使っていました。
そんな、ある日のことでした。
出発が少し遅れたので、見通しの良い道でアクセルを軽く踏み込んだ瞬間、車が急停止して激しくつんのめり、危うくひっくり返りそうになりました。
停車して調べたところ、前輪のディスクブレーキのブレーキパッドが外れて、金属のディスクが車輪に食い込んでいました。
それで前輪の回転が急停止し、ひっくり返りそうになったわけです。
幸い、他の車も歩行者もいなかったので事故は免れましたが、危ないところでした。
その車を買った時に、メカは入念に調べましたが、ブレーキの劣化は見抜けませんでした。
つまり、誰もが販売店を信用するしかないのです。
ビッグモーター社は、仕入と販売だけでなく修理業務を取り込んだことが大成功への道でした。
車の修理は専門技術を持つ修理工場でないと無理で、勇気ある挑戦といえます。
同社のような独立系の他に、メーカーディーラー系の販売店があります。
そこは、当然修理業務を行っています。
扱う取替え部品の大半は、メーカーから認定された純正部品の新品です。
信頼性は高いですが、費用も高いです。
ビッグモーター社は、廃車や事故車などから流用した部品を使うことで修理費用を抑え、ユーザーを拡大してきました。
誰だって“信用できれば”安いほうが良いですから、当然といえます。
しかし、取替の工賃は変わりませんし、時には新品以上に手間がかかります。
そうした工賃の増加を、今回発覚した禁断の手口でカバーすることに手を染めてしまったわけです。
同社の行為は、中古車市場の闇を浮き彫りにさせた側面があり、中古車業界全体のイメージダウンは大きいと思われます。
今後、同社が企業として存続できるかどうかは分かりませんが、業績の落ち込みはかなりになるでしょう。