ノーベル平和賞が日本被団協に

2024.10.17


「ノーベル平和賞をニホンヒダンキョウ(日本被団協)に授与する」。
この発表は日本では驚きをもって報道されましたが、世界のメディアの多くは、この受賞を予想していたようです。
その要因の第一は、ウクライナ戦争において核兵器使用を再三再四ほのめかすロシアのプーチン大統領にあります。
欧米は「本当に使うかもしれない」と危惧しているのです。
もちろん、現段階においてはウクライナ支援を続ける欧米に対する恫喝ですが、ロシアの敗北が濃厚になった段階で核兵器を使用すると欧米は考えているということです。
 
第二の要因は、中東情勢の悪化です。
ハマスやヒズボラを徹底的に打ちのめしたイスラエルの真の標的はイランです。
イスラエルは敵対勢力を後ろで操っているイランを叩くチャンスは「今しかない」と考えています。
しかし、戦えば敗北必至なイランは軍事衝突を回避したいのです。
子分たちの手前、イスラエルへのミサイル攻撃を行いましたが、完全な及び腰です。
この攻撃はイスラエルの思うつぼで、さらなる挑発を引き出す戦略を練っています。
イスラエルは、公表はしていませんが核兵器保有が確実視されている国ですし、イランが核兵器開発を諦めていないことも公然の秘密です。
 
つまり、核兵器が「使えない兵器」から「使える兵器」になりつつあるという危機感が、今回の受賞につながっているわけです。
ノーベル賞委員長のフリードネス氏が「(核兵器を使ってはならないという)タブーが圧力にさらされている」と授賞理由で述べたように、この脅威が現実に近付いていることは誰もが感じています。
 
この受賞を受け、日本の被団協を始めとする被爆者団体が「これを機に核兵器廃絶を」と訴えていますが、長期の目標としてはともかく、現実の目標としては「とても無理」と言うしかありません。
こんなことを書くと「お前は核兵器賛成論者か」とおしかりを受けそうですが、核兵器保有を減らすことはできても無くすことが不可能なことくらい、ほとんどの人は分かっているはずです。
今回の総選挙でも「核兵器廃絶」を声高に叫ぶ政党がありますが、現実を無視した無責任発言です。
 
フリードネス委員長は、世界各地で続く紛争について触れ「核兵器使用を禁じる基準を守らなくてはならない」と述べ、「被団協は重要な役割を果たしている」と強調しました。
この言葉の裏には、被団協が「核兵器廃絶」の看板を下ろすことは無理だろうが、まずは「使用禁止の国際条約の締結」を目指すという現実解の音頭を取って欲しいとの思いがあります。
 
私も、一気に理想に向かうことは無理なので、まずは「使用禁止」という一歩を目指すべきだと思います。
被爆者団体の強硬派は、核兵器のみならず、原発廃止、さらには核の研究すら禁止を主張しています。
そうした無理な過激発言に対しては、正直、「無責任」と言いたいです。
米国大統領選でも、トランプ陣営のフェイクといえる過激発言が伝えられますが、それを支持する国民が米国民の半分という現実に寒気がします。
被曝者団体の一部にある過激な主張がトランプ派の主張と同列とは言えませんが、主張の過激さは同じようなレベルといえます。
たしかに、やがて被爆者が一人もいなくなる現実が迫る中、焦りがあるのでしょうが、次世代に伝え、託す分別も必要です。
被団協が焦りから無理な方向に行かないことを願うばかりです。