福島第一原発の廃炉は出来るのか?

2024.09.17


福島第一原発の廃炉に向けての第一歩である「燃料デブリの取り出し」ですが、第1回の取り組みは、炉心からデブリの一部を取り出す配管の不備という初歩的ミスで見送りとなりました。
当然、世論の非難が殺到しました。
たしかに、あまりにも初歩的なミスですが、中止したことは評価されるべきと考えます。
そもそも、事故で溶融した燃料デブリを取り出すという前代未聞の取り組みです。
臆病なほどの慎重さが何よりも大切です。
 
4月14日に公開された1号機の原子炉土台の映像を詳しく何度も見ました。
水中ロボットによる撮影映像は想像したより鮮明で、現在の様子がよくわかりました。
格納容器の土台のほぼ全周でコンクリートが損傷し、鉄筋が露出していました。
私は、かつて、防護服に全面マスクの格好でこの場所に立ち残留放射性物質の調査を行っていました。
もちろん、燃料棒を取り出した後ですが、数分でアラームがけたたましく鳴り出しました。
いま現在、この同じ場所に同じ格好で立ったとしたら、1秒で致死量の放射線を浴び、その後数時間で死に至ることでしょう。
そのことを考えただけで息苦しくなるほどの緊張を映像から感じました。
格納容器の外からの遠隔操縦とはいえ、すぐ近くで作業する方々の緊張はその数倍でしょう。
マスコミも世論も、作業ミスを責めるのではなく、成功を願い、作業チームの安全をサポートすべきと考えます。
 
このデブリの取り出しが成功しても、その後の作業は数十年と続きます。
無事廃炉にこぎつけるのは、来世紀になってしまうかもしれません。
それでも、この成功は、人類に計り知れない恩恵をもたらすことは確実です。
 
2021年度末のデータですが、世界で稼働中の原発は436基、停止が10基、新たな稼働が6基、建設中が10基ということです。
最近、小型原発が開発されたこともあって、今後は増えていくと思われます。
ということは、停止する原発がどんどん増えていくわけですが、これまで廃炉まで至った例は僅かしかありません。
福島第一と同じように事故を起こしたチェルノブイリ原発は、「石棺」と呼ばれるようにコンクリートで固めてお墓のようになっていますが、残留放射線の影響で、コンクリートが脆くなっているとの報道があります。
 
日本は、どれほどの年月がかかっても、福島第一の廃炉を完了させるべきです。
そして、その技術と経験を、これから世界各地で起きる廃炉や事故の終息に生かすべきです。
唯一の原爆被害国である日本の使命ともいえることです。
福島第一原発で放射線を浴びながら仕事をしてきた一員として、そのことを強く願います。
残念ながら、生きてその日を迎えることはないでしょうが・・