トランプ氏の頭の中とウクライナ戦争の行方

2024.12.18


ロシアのプーチンは、裏組織を牛耳る大富豪(オリガルヒ)を傘下に収め、かつてのソビエト連邦、いや、さらに昔の大ロシア帝国の復活を夢に描いています。
そして、反対者を根絶することで自分の独裁政治を安定させようと考えています。
その夢の実現にウクライナは欠かせないピースです。
そのことが3年近くになる、この戦争の発端です。
 
しかし、電撃作戦でゼレンスキー政権を倒して親ロシア派の政権に変えロシアに取り込むという目論見は欧米の情報機関に察知されて、送り込んだ精鋭の特殊部隊が全滅という結果に終わりました。
プーチンは、これで諦めれば良いのに、失敗を認めない性格ゆえ、泥沼へ入っていき3年が過ぎようとしています。
この間、双方の死傷者は計100万人に達し、死亡者だけでもウクライナが5~7万人、ロシアは20万人以上と言われています。
たった一人の男の野望の犠牲と考えると、「なんと愚かな・・」という言葉しか見つかりません。
 
こうした状況に「トランプ氏の米国大統領への返り咲き」という大きな要素が2025年1月20日に加わることになりました。
トランプ氏は、この戦争を終わらせ、あわよくばノーベル平和賞を・・などという巷の声が聞こえますが、それは雑音と考えたほうがよいでしょう。
トランプ氏は「ウクライナ戦争を終わらせたのは私だ」と言いたいのです。
それゆえ、かなり強引な策を仕掛けていくと思われます。
 
このような情勢の中、シリアのアサド政権がわずか1週間で崩壊し、アサド大統領がモスクワに逃げ込むという驚くべき事態が起きました。
シリアにはロシアの海軍基地や空軍基地があり、一定数のロシア軍が派遣されていましたが、その軍の大半は、ウクライナに移動してしまっています。
プーチンは、子分のアサド大統領を助けるためにはウクライナからロシア軍をシリアに送らなければなりませんが、それは不可能。
しかし、ロシアはシリアを完全に失うと、生命線である石油ルートを失い経済が破綻する危機に陥るのは確実です。
反対に、シリアを助ければ、ウクライナを諦めなければならない。
プーチンは、ウクライナを取るかシリアを取るかの二律背反に追い込まれたのです。
 
こうしたシナリオは、シリアの反政府組織の後ろ盾であるトルコを動かしてトランプ氏が画策したとの説が浮上しています。
これが、トランプ氏が言っていた「ウクライナ戦争を早期に終わらせる策がある」の実態なのでしょうか。
この策はトランプ氏本人ではなく、かなりの戦略家が描いたものであると言われています。
そうした戦略家の一人が、バイデン時代から国家安保に関する役職を歴任してきた現職の陸軍中将との情報もあります。
 
トランプ政権の考えているシナリオを推測してみます。
既に話が進んでいるのは以下です。
(1)現状の占領地での休戦協定を両国に強制、
(2)ウクライナのNATO加盟は10年間凍結、
(3)その後、和平協定の締結を段階的に進め、それに応じてロシアに対する制裁の段階的解除を行う。
(4)ウクライナへの軍事援助は続けるが、軍事的な領土奪還は諦めるよう説得。
(5)この案を飲まなかった場合はウクライナへの援助は打ち切る。
 
そして、両国が上記の案を飲み、停戦がなった場合
(6)EUが軍(英仏+独)を派遣し、停戦を監視する。
(7)ウクライナで大統領選挙を行い、新たな大統領を選出する。
(8)ウクライナが新政権の下で外交的に領土を奪還する交渉は認める。
(9)いずれ、国連監視の下で住民投票を行い、ロシア占領地の帰趨を決定する。
 
こうしたトランプ陣営の戦略能力は、かなりのレベルであり、石破首相ではとても太刀打ちできないのは明らかです。
日本は、戦略立案能力に長けた人材をチームとして結集できるようなトップに変えないと、弱い立場に追い込まれていくでしょう。
世界は、日清・日露戦争の時代に戻り、弱肉強食の世界になる一歩手前なのです。