トランプ大統領の頭の中は?

2026.03.16


「唐突」と表現するしかない米国によるイラン攻撃。
それも最高指導者を含む政権および軍事指導者40名を殺害したとされる報道には、さすがに言葉を失いました。
トランプ大統領はベネズエラへの電撃攻撃の成功(?)体験に味を占めたのか、イラン相手に、より過激な手段に出ました。
この突然のイラン攻撃は、敗北が濃厚と見られている米国の中間選挙の情勢を一気に覆そうとしたのではないかと言われています。
実際、今年秋の中間選挙において、下院での民主党勝利の確率は高いと思われます。
仮に、民主党が下院で過半数を制すれば、大統領弾劾決議を出す可能性があります。
上院は共和党がなんとか過半数を維持するのではと言われていますが、共和党の中から弾劾に賛成する議員が出る可能性があり、トランプ大統領の心理は穏やかではないでしょう。
こうした危機的状況を覆す手段が戦争であることは、古今東西の歴史が物語っています。
もちろん、大統領自身あるいは側近がそのような発言をしない限り、「そうだ」との断定はできませんが、その疑いは濃厚と言えるでしょう。
 
しかし、トランプ大統領の、この戦争判断には疑問符が付きまといます。
第一に、ベネズエラと違いイランは人口9000万人を抱える大国であり、古い歴史を持つ中東での存在感の高い国です。
最高指導者のハメネイ師の死亡はたしかに痛手ですが、これで政権が瓦解することはありません。
多数が殺害されたとはいえ、幹部が全滅し、指揮命令系統がなくなったわけではありません。
実際、ハメネイ師の次男のモジタバ師が後継者となりました。
彼の人物像は不明ですが、あの革命防衛隊の指導者だとする情報が流れています。
そうだとすると、前任者以上の強硬派と言えそうです。
しかし、暗殺攻撃を恐れて、未だに消息は不明で、肉声もありません。
イスラエルの情報機関モサドの諜報能力は世界一と言われていますから、その探索を恐れ、当分は深く潜伏したままだと思われます。
それでも、政権の指揮命令系統が瓦解していないことは確かなようです。
 
トランプ大統領は、イランの反体制派に蜂起を呼びかけましたが、現代をフランス革命が起きた中世の時代だと錯覚しているのではないでしょうか。
その昔と違い、国家が保有する軍事力が圧倒的に高くなった現代では、民衆が蜂起で政権を倒すことは、まったく不可能と言ってよいでしょう。
トランプ大統領が本気でこんな能天気なことを言っているとすると、彼の頭の中が心配になります。
 
この大統領の性格を考えれば当然なのでしょうが、「まもなくイランは降伏する」などと根拠のない強気一辺倒の発言を繰り返しています。
しかし、その時期はというと、発言は二転三転し、何の具体策も持ち合わせていないことを露呈しています。
イランの一般国民や周辺国での死者も増えてきて、少ないとはいえ、米兵の死亡も出ています。
それでも大統領の性格を考えると、「作戦は失敗だった」とは口が裂けても言えず、このままの状態がズルズルと続くことが予想されます。
 
19日からの訪米で開催される日米首脳会談で、高市首相はイラン攻撃に対する支持を求められ、自衛隊の派遣まで要求される可能性がありますが、曖昧にはぐらかす手腕を期待します。
日本とイランとの関係は良好で、エネルギー確保の面からもイランを敵に回すことは何としても避けるべきでしょう。
「猛獣使いのごとく・・」とは言いませんが、うまく切り抜けてくることを期待します。
 
米国のThe Economist誌が「戦略なき戦争」という記事を掲載しました。
その記事には、ブッシュ・ジュニア政権で国務長官を務めたコリン・パウエル氏が提唱した軍事ドクトリンのことが詳細に述べられていました。
ベトナム戦争では少佐として実戦を経験するなど、戦後の米国の戦争の多くに参戦した経験を持つパウエル氏の定義は明確です。
その代表的な例と挙げられるのが、以下の4カ条です。
(1)Clear Objectives (明確な目的)
(2)National Consensus (国民的同意)
(3)Massive Forces (圧倒的な兵力)
(4)Exit Policy (出口戦略)
パウエル氏は、この4カ条を満たしていれば、兵士たちは後顧の憂いなく戦えると言っています。
 
1991年、彼は「統合参謀本部議長」という軍トップとして湾岸戦争を指揮しましたが、この戦争は彼のドクトリンに沿って遂行されました。
それに基づき、当時のブッシュ大統領は国連決議を取りつけて多国籍軍を編成し、国際世論を味方に付けてからイラクに攻め込みました。
そしてサダム・フセインを倒す直前で兵を引きました。
結果として、戦争は短期で終わり、兵力の犠牲も民間人の犠牲も少なかったのです。
まさに、この4か条のお手本のような戦い方でした。
 
「それに比べて・・」と言いたいわけですが、この話、次回に続けます。
次回は、関税政策が米連邦最高裁判所に違憲と断定されてから、トランプ大統領の頭の中は、完全に“イカレ”てしまったかも・・という話を送ります。