トランプ氏の頭の中とウクライナ戦争の行方(続編)

2025.01.17


1月20日、トランプ氏が米国の次期大統領に返り咲きます。
その日が待てないのか、はたまた舞い上がっているのか、本人の暴言が止まりません。
「カナダは米国の51番目の州になれ」だの、デンマークには「グリーンランドを寄こせ」だの、「パナマ運河を米国のものにする」だのと、呆れる発言のオンパレードです。

こんなトランプ氏に怯えたのか、石破首相はソフトバンクグループの孫正義会長に「対処方法を教えて・・」と、料亭に招く有様。
この首相、早々に降ろさないと、日本はトランプ氏の“良いカモ”にされてしまいそうです。
 
ですが、トランプ氏のこうした勢いが続くかは疑問です。
彼は関税を“打ち出の小槌”と本気で思っているので、乱発する可能性があります。
しかし、高関税を広範囲に掛け続ければ、沈静化しつつある米国のインフレを再加速させることになります。
それでも、こうした強硬策を続ければ、庶民の暮らしは苦しくなり、2年後の中間選挙で共和党は敗北を喫し、彼の立場は弱まるでしょう。
 
もう一つ、ウクライナ戦争の終結という重要な課題があります。
私は、2025年内にウクライナ戦争は終わらないと見ています(残念な予測ですが・・)。
トランプ氏の最近の発言も一気に後退しています。
「24時間で終わらせる」と豪語していたのが、「半年で・・」と、完全に自信を失ったような発言に変わっています。
(ウクライナ戦争の予測は、後段で述べます)。
 
もっとも、トランプ氏自身は、こうした自身の発言の後退を「どこが悪い!」と言うでしょうね。
トランプ氏は自著でこんなことを言っています。
「私は自分が頑固で、扱いにくく、タフであることを誇りにしている。成功する者にはこうした資質が重要である。しかし、ときに、全体目標を見失わずに、少々リラックスすることも必要だ。焦点を絞っていることと、硬直的で柔軟性のないことを混同してはいけない。タフな戦いに勝利したいなら、絶えず変化する状況に適応しなければならない」
 
この言葉がトランプ氏の本質を示しています。
「前言を翻すことの、どこが悪い!」なのです。
冷静に見れば、柔軟な考え方ができる人物ともいえます。
彼が今の姿勢を変えるとしたら、それは大きな壁にぶつかったときです。
その壁とは議会です。
先に言及した2年後の中間選挙が大きなカギとなります。
たしかに、上下院とも共和党が過半数を制していますが、民主党との差は僅かです。
トランプ氏の過激な考え(特に経済政策)に同調しない共和党議員もかなりの数います。
トランプ氏が打ち出す政策に対し造反議員が数人出て民主党と同調するだけで、議会で否決されます。
大統領令で議会の反対を強引に破るという手はありますが、内容は限定されるし、そう乱発も出来ません。
下手すれば、大統領弾劾という恐れもあるからです。
それを防止するためか、トランプ氏は副大統領候補にJ・D・ヴァンス上院議員という、過激な発言で知られる人物を指名しました。
「オレを弾劾すると、もっと過激なヤツが大統領になるぞ」という脅しともとれる人選です。
 
ただ、正式に大統領に就任した後も同じかと言えば、そうではないと思います。
「今のうちに好き勝手なことを言っておこう」という牽制球と受け止めるべきかもしれません。
 
次にウクライナ戦争の行方ですが、早期に終わる見込みはほぼなくなったといえます。
もちろん、私が戦争継続を望んでいるわけではないのですが、以下の理由で一時停戦すら難しいと思うのです。
一つは、ウクライナ軍の意外なほどの巧みさとロシア軍の息切れ傾向です。
ここにきて、ウクライナのドローン技術とミサイル技術の高さが際立ってきました。
ウクライナの技術吸収力と応用力の高さが欧米の想像以上だと言ったほうが良いかもしれません。
その能力が早期にドローンを高性能化し、自前の増産力も想定以上の早さで実現しています。
それに対して、ロシア軍の技術力の低さ、戦略・戦術面の拙さが表れ出しています。
もちろん戦局全体としては、ドンパス地方での占領地拡大などにみられるように、まだロシア軍の数が圧倒していますが、ウクライナ軍が犠牲を伴う抗戦をせず、ロシア軍の戦線が伸びきるように後退していると、私は考えます。
前線のロシア軍に勝利感はなく、犠牲者の増加が徐々に兵員の士気を下げ出しています。
しかし、プーチンは増大する犠牲を補うための総動員令を掛けることは出来ず、北朝鮮兵を投入していますが、彼らは悲惨な状態にあります。
近代戦を戦う経験も能力もない北朝鮮兵は、戦場での捨て駒に過ぎず、犠牲が増え続けています。
やがて全滅するか逃亡するかでしょう。
 
しかし、プーチンは野望を諦めていないし、ウクライナにも勝ち切る力はありません。
ゆえに、早期に戦局が大きく動く事態は考えづらいところです。
となると、トランプ氏が正式に大統領となってから、どんな手を打つかに注目が集まりますが、先に述べたように、知らん顔になる可能性も濃厚です。
しかし「一寸先は闇だな」がこの戦争の本質です。
次回までに政局、戦局が動けば、それについての解説を行っていきます。