2023年4月30日号(経済、経営)

2023.05.01

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2023年4月30日号
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発行日:2023年5月1日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2023年4月30日号の目次
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◇日銀と財務省の綱引き
★建設会社は、これから降りかかる課題に対応できるのか?
◇責任あるAIってなんぞや?
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
弊社の地元・浅草には多くの観光客が戻ってきていますが、コロナ前に多かった中国に代わって欧米系が多いのが特徴です。
しかも、聞こえる言葉に英語以外が多いことから、様々な国から来日していることが分かります。
それら多国籍からの来日客にしっかり(?)対応している商店のおばちゃんの“たくましさ”に脱帽です。
 
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┃◇日銀と財務省の綱引き                  ┃
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新任の日銀・植田和男総裁の記者会見をネットで視聴しました。
正直、抽象的な言葉ばかりで、肩透かしというか“煙に巻かれた”感じでした。
しかし、その後、鈴木蔵相の記者会見を視聴して、植田総裁の発言の背景が推測できました。
 
鈴木蔵相は以下のように発言しました。
「日銀が国債買い入れを前提とするような財政政策は取らない」
この発言は、明らかに日銀トップに就任した植田総裁に対する牽制球です。
 
今回の記者会見を前に、植田総裁は鈴木蔵相と何度も意見交換しているはずです。
その結果を受けての記者会見なので、慎重というより意味が理解しにくい発言になったのだと思います。
その中で、次の発言に注目しました。
「2%のインフレ目標の達成は“なかなか大変”なんです」
この2%のインフレ目標は、前任の黒田総裁が執念のように掲げていた目標です。
黒田前総裁は、この目標達成のため、安倍元首相とタッグを組む形で「財政政策をプッシュする」として、政府が発行した国債の多くを日銀が買う政策を続けてきました。
この政策は、アベノミクスの第一の矢である「マネタリーサプライの拡大」つまり、市中に出回る“おカネ”を増やすという政策です。
 
植田総裁も同じ2%目標を掲げましたが、「・・大変なんです」と、ややトーンダウンした言い方をしました。
財務省の「プライマリーバランスの達成=国債発行の抑制」の圧力の強さを、そのように表現したものと思われます。
このことは、鈴木蔵相の上司である岸田首相が緊縮財政および増税路線派であることを物語っています。
防衛費増額や少子化対策など、岸田政権の抱える課題は、どれも多くの財政出動が必要です。
この財源を、国債発行ではなく、増税や社会保険料の増額で賄う考えであることは明らかです。
 
さて、企業は、こうした政府の方針をどう受け止めるべきでしょうか。
岸田政権の方針は、経済回復に赤信号とは言いませんが、黄色信号の点滅ぐらいには受け止めるべきかなと考えます。
今年から始まるインボイス制度も増税に繋がる政策ですし、社会保険料の負担率も上げ続けていく方針です。
営利企業としては、緊縮財政派ではなく、積極財政派の首相を期待したいところですが、与党内に有力な候補が見当たりません。
頼みの綱は植田日銀総裁しかいませんが、日銀の打てる手は限られています。
発行される国債を引き受けることは出来ても、自らが発行することはできません。
出来るのは金利政策ぐらいです。
記者会見での「マイナス金利は続ける」と言う言葉から、植田総裁は利上げにはかなり慎重です。
日銀は金融緩和策を続け、マネタリーサプライは維持する方針だと受け止めました。
 
これまで、景気回復で歩調をそろえて来た日銀と財務省ですが、綱引き状態に入ったようです。
企業としては日銀を応援したいところですが、岸田首相を取り込んでいる財務省の優勢は明らかです。
さて、どうすべきは、次号以降で解説したいと思います。
 
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┃★建設会社は、これから降りかかる課題に対応できるのか?  ┃
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建設会社は2023年度から様々な課題に対処していかなければなりません。
それを順に解説していきます。
 
(1)インボイス対応
10月から適用される消費税のインボイス対応で、免税業者への支払に苦慮する企業は多いようです。
一人親方や零細な下請けに支払っている消費税を「仕入にかかる消費税」として控除することが出来なくなるからです。
当然、消費税分を値引いての発注や一人親方の切捨てなどの事態が起きると思われますが、政府は、「そのようなことはするな」という警告を発しています。
そうなると、発注側の企業は、その分の消費税を自分が負担することになります。
企業にとっては税金の二重払いとなり、とても飲めないことです。
そこで、財務省はインボイスがない仕入消費税に対して「80%までの控除を認める」としました。
しかし、3年の期限付きで、その後の3年は50%、その後はゼロということです。
姑息な泥縄政策そのものですが、6年後には零細商店を含めた全部の商取引から消費税を吸い上げるという目論見です。
 
(2)残業時間規制
2018年からの残業規制を猶予されてきた建設業、運輸業、医療業なども、2024年4月からは遵守が義務付けられます。
守らない企業には罰則が適用されますので、多くの企業は、その対策に苦慮しています。
建設業の場合でいえば、その分だけ工期が延びますが、民間顧客がそれを簡単に認めるとは思えません。
 
そうなると、投入する人員を増やして工期を守るとなりますが、ただでさえ人手不足の上、人件費の上昇に直面します。
顧客が、その分の増額を認めることは、より難しいでしょう。
みなさんが家を建てることを考えてみれば、実感が湧くと思います。
「契約金額から10%の増額をお願いします」と言われて、簡単に「ハイ、いいですよ」と言えますか、ということです。
この問題は、次号以降で論評していきたいと思っています。
 
(3)BIM/CIMへの取り組み
国交省は、直轄工事にBIM/CIMを義務付けるとともに公共工事への原則適用を推進するとしています。
私は、35年も昔の建設会社時代、3次元設計の部門を傘下に置いていました。
当時としては、業界最先端の取り組みでした。
そのときの経験値では、2次元設計に比べて入力時間は5倍となり、原発の設計以外は全く割に合わない結果でした。
当時に比べて設計システムは格段に進歩していますが、入力の手間が劇的に改善されたとは言い難い状況です。
現在でも、3次元に取り組んでいる企業では、「省力化のためというが、逆に時間が増えた」という声が多いようです。
そのうえ、設計図どおりには施工できないという課題は、ほとんど改善出来ていないようです。
システムの性能の問題もありますが、それ以前に、設計・施工の実務には未解決の問題が山積みのままだからです。
なにより、契約行為自体があいまいな日本の現状では無理だと断言できます。
3次元設計を「実施している」と答える企業でも、「そう言っておこう」が本音でしょう。
この問題は、近く公開する予定の建設ホームページで論じていく予定です。
 
まだまだ問題は山積みです。
一品生産で屋外での作業が多い建設業は、抜本的な効率化が難しい産業です。
システム利用の推進には期待していますが、システム開発以前に、普及の阻害要素の排除のほうが問題ですね。
 
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┃◇責任あるAIってなんぞや?                ┃
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群馬県高崎市で開かれたG7(先進7か国)デジタル・技術相会合では、近年の個人情報の流出問題などを踏まえて「責任あるAI」の実現を目指す行動計画を掲げました。
 
ところで、「AIに“責任”を求めるって、どういうこと?」と混乱された方もいるのでは・・
相手はプログラム・コードであり、責任を問われる生身の人間ではありません。
でも「そのプログラムを作った人間の責任だよ」と言われるかもしれませんね。
それも一理ありますが、AI型のプログラムは、設計した人間本人の思惑を超えた結果をもたらしていきます。
私は、50年前に携わった軍事システムのプログラム開発で、そのことを痛感しました。
自分で設計したシステムが出す答えが自分の認識範囲をどんどん超えていくことに背筋が寒くなっていったのです。
いったんシステム開発から身を引き、建設会社に転職した理由のひとつでもあります。
そうした責任の重さに押しつぶされる自分を想像したからです。
しかし、結局、システム開発の世界に戻ってきているのですから、逃れることは出来ない運命(?)だったようです。
 
余計な話をしましたので、本題に戻ります。
G7各国のデジタル・技術政策のトップたちの頭の中も、同様の混乱状態にあるようです。
結局、「人権尊重、民主主義の価値観を守るなどの共通ルールを作ること」そして「G7が連携し安心して利用できる環境を整える方針を確認する」との玉虫色の宣言になりました。
しかし、法律でAIを規制する方針のEUに対し、規制を少なくして関連産業を育成する方針の日本が対立した構図になっています。
松本総務相は「人類の可能性を広げる新しい技術に道を閉ざすべきではないとの認識は共有できた」などと、言葉は悪いですが、かなり“能天気”な記者会見を行なっていました。
 
今回の“極めて浅い”レベルと思える共同宣言の背景にあったのは、突如出現した感のある「チャットGPT」に代表される対話型生成AIなどの登場です。
こうした生成AIに対しては、制御はおろか機能の理解すらも進んでいないのが現状です。
G7では、こうしたAIに対し「社会に与える影響が重大であることを指摘し、民主主義に基づく人間中心の信頼できるAIを目指す」と浅いレベルの言及に留まっています。
現在は法制度や事業者とのやり取りを通じて各国がそれぞれ個別に規制していますが、G7間で整合的な技術や評価の基準を共有し、一貫性あるガバナンスを目指し、その上で急速に進展するAIの可能性とリスクへの懸念を表明するということです。
さらに、「潜在的な影響力に対する分析と研究」を加速していくことを確認し、「事業者を含む関係団体とも連携し、今後見込まれるAIの課題に対処していく方針」を盛り込みました。
 
もう一つの大きな議題は、フェイクニュースなど偽情報に対する対策です。
こうした偽情報対策などを強化する「信頼あるインターネットの促進」を盛り込みました。
G7は、こうした声明に基づき、AIのガバナンス(統治)のほか、ネット空間における信頼性のある自由なデータ流通や、次世代の高速通信6Gの未来像などについて複数の別文書を策定する方向を打ち出しました。
この流れの中で、「国をまたぐデータ移転が信頼性ある自由な形で行われるように、実現に向けた新たな枠組みを作る方針」が盛り込まれましたが、いま日本で騒いでいるDXというデータ交換の仕組みは、こうした世界の方針に沿って発展させていかないと、この世界でも日本の仕組みは「ガラパゴス」と化します。
大丈夫でしょうか、現内閣の顔ぶれを見ていると心配になります。
今回のG7冒頭に「河野大臣のアバター」が登場しましたが、私の心配は倍増されました。
 
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<編集後記>
4月27日、政府は東商プライム企業の女性役員を、2030年に30%にするという目標を掲げました。
岸田首相は「社会全体での女性登用促進にはずみをつける」としています。
正直な感想を言えば「どうかなあ~」です。
複雑化する一方の経営環境を考えれば、女性の感性・能力が必要なことは明らかで、政府に言われるまでもないことです。
しかし、大企業が率先すれば中小企業が従うという古い発想から脱することができない政治が最も遅れています。
岸田首相が掲げるべきは、「大臣の半分を女性にします」という目標ではないでしょうか。
もっとも与党内の男性議員たちから猛反発をくらうでしょうが・・
 
 
 
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