2019年5月15日号(国際、政治)

2019.05.20

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年5月15日号
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発行日:2019年5月17日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2019年5月15日号の目次
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◇日本流の中国との付き合い方を(その6):米中貿易戦争の裏側
◇女系天皇が難しい理由
★北朝鮮情勢は何も変わらない
◇純粋な軍事の話(7)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
今号は配信が遅れましたこと、お詫びいたします。
米中貿易戦争が、妥結すると思われた土壇場で、悪化する方向に反転しました。
絶望的な日韓関係などどうでも良いと思えるほど、日本にとっての影響が心配です。
今号は、この問題を最初に取り上げます。
 
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┃◇日本流の中国との付き合い方を(その6):米中貿易戦争の裏側  ┃
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今回の“ちゃぶ台返し”は、いつものトランプ大統領ではなく、習近平主席のほうである。
もちろん、中国が米国の要求を飲まなければ「制裁強化するぞ」と脅しを掛けたのはトランプ大統領のほうである。
経済力をバックに急速に軍事力を高めてきた中国に対する警戒感は、共和党のみならず民主党でも高まってきている。
次期大統領選を念頭に、ここで中国への対応を強化することは民主党の一部からの支持も期待できると、トランプ大統領は考えたのである。
それに対し、中国は、民主党の有力候補として名前が上がっているバイデン元副大統領に目を付けた。
「中国は競争相手ではない」と公言するバイデン氏が大統領になることを中国は夢見て、この夢を実現するべく対米工作を活発化させたのである。
 
これに激怒したトランプ大統領は、一気に対中強硬策を打ち出した。
中国は、予想以上の強硬策に、妥協せざるを得ないと判断して、その寸前までいった。
上機嫌のトランプ大統領は、「近々、良い知らせがある」とまで発言していた。
それが一転して対立激化となったのは、習近平主席が妥協を拒否したからである。
それは、外交的な事情より国内的な事情を優先しなければならなかったことが理由である。
 
今の中国は習近平主席の下で一枚岩になっているとは言えない状況である。
今は沈黙している共青団派も上海派も、習主席の「終身主席」を阻止することでは一致している。
ここで米国の圧力に屈する形で貿易戦争の妥結を図れば、国内の敵から「弱腰」と批判される。
習近平主席は身を切る覚悟で“ちゃぶ台返し”を指示したのである。
 
それが突然の指示だったことは、全権大使として渡米した劉鶴副首相の発言からも明らかである。
劉副首相は、習近平主席の中学時代の同級生で、もともとは経済学者である。
経済オンチと言えるくらい経済に弱い習近平主席が全面的に頼りにしている存在である。
その副首相が「自分にはもう出来ることがない」と語り、「あとは首脳同士の会談で」と発言した。
米中首脳の強硬策の激突の中で、圧死したような状態なのである。
 
問題は、この後である。
日本で開催される6月のG20で、米中首脳会談が開かれることが予想されるが、妥結は難しいと見られている。
仮に、米国による関税25%が中国からの全輸入品に実施されると、米国政府には約1250億ドル(12.5兆円)もの税収増がもたらされることになる。
「おカネ大好き」トランプ大統領にとっては「Good」な結果なのである。
その後の予測を次号に続けます。
 
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┃◇女系天皇が難しい理由                     ┃
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はじめに断っておきますが、私は女系天皇に反対でも賛成でも無い立場です。
そのことをご理解の上、お読みください。
 
新天皇の即位に伴い、事実上の後継候補が2人となってしまったため、愛子内親王を次の天皇に認めよという世論が起きています。
それだけ国民の多くが天皇制の存続を心配していると言えますが、女性と女系は明確に違うため、議論を分ける必要があります。
ニュースでも度々取り上げられていますので、理解されている方には「釈迦に説法」ですが、簡単に説明します。
女性天皇は文字通り「女性」で、歴史上10人の女性天皇がいますが、同一人の再即位が2度あるので実質8人です。
それに対し、「女系」とは女性の系統から生まれた天皇のことで、男女は関係ありません。
そして、歴史上、女系天皇は皆無です。
例えとしては失礼になりますが、愛子内親王が天皇になると「女性天皇」となります。
この愛子天皇が皇室の系統ではない男性と結婚し、生まれたお子様が天皇となると、そのお子様が男子でもあっても「女系天皇」となってしまいます。
つまり、父方が天皇の皇統でないと天皇にはなれないのです。
 
よって、愛子天皇が可能となっても、次は女系となってしまうため、問題は続きます。
これを解決するには、皇室の系統の男子を結婚相手に選ぶことですが、3人の男子皇族はいずれも無理といえます。
もう一つの方法は、皇統の男子を養子として迎え、皇太子とすることです。
これは、秋篠宮家の悠仁親王が該当しますので、可能な案ではあります。
また、戦後、皇統を離れた旧宮家を復活せよという意見も、この考えに沿った意見です。
 
事実、過去の女性天皇は上記の2つの方法で皇統をつないできました。
例えば、大化の改新で知られる天智天皇は、女帝の皇極天皇(斉明天皇)の子供でしたが、夫が舒明天皇であったため、男系となります。
 
これを諸外国では「女性蔑視」として非難する報道がありますが、それは間違いです。
天皇家が乗っ取られることを防ぐための防衛処置だったのです。
 
天皇家が権力を持っていたのは桓武天皇まででした。
平安以降、権力者は、藤原氏、平氏、源氏(足利は源氏の嫡流です)、織田、豊臣、徳川と変遷しました。
彼らが天皇制に対し何もしなかったわけではありません。
天皇家の廃絶や乗っ取りを画策した権力者は多数いました。
一番オーソドックスな方法は、権力者が自分の娘を天皇の后にすることでした。
そうすれば、権力者は生まれた子(次の天皇)の義父になれ、その権威を利用できました。
(藤原氏や平清盛が使った手です)
その後、次の天皇に子供がなかった場合、養子を迎えることになります。
ここで「男系に限る」規則が生きてくるのです。
 
天皇に対し、権力者が自分の一族から養子を押し込んでも、男女に関係なく「女系」となるため天皇にはなれません。
男系である天皇側から養子を迎えなくてはならないのです。
つまり、権力者がどう画策しても、自分の一族の王朝を作ることは不可能だったのです。
これが「男系」を厳守する理由なのです。
女性蔑視というわけではなかったのです。
 
時代が流れた現代では、権力者が天皇家を乗っ取るという事態は考えられないでしょう。
しかし、女系を認めると、いつしか天皇家の血筋から遠く離れていく可能性が高いことはお分かりと思います。
「それでも良い」とするか、「それはダメ」とするかの結論は・・、難しいですね。
 
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┃★北朝鮮情勢は何も変わらない                  ┃
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八方塞がりの金正恩が、ついにミサイルをぶっ放した。
それでも、韓国の文政権は北朝鮮寄りの姿勢を変えようとしない。
いや、それどころか、以前にも増して前のめりになっている。
文大統領の心は「南北統一」一色になっていて、忠告や懸念の声は雑音としか聞こえないのであろう。
 
米国は、今のところ、驚くほど自制している。
これにはトランプ大統領の心理が大きく影響していて、まだ金正恩を手懐(てなず)けられると思っているのかもしれない。
いや、そうではなく、己の成果と自負している米朝会談の芽を潰したくないのであろう。
 
そうしたトランプ大統領の心理に期待を掛けている北朝鮮は、米国を罵っても、トランプ大統領への口撃は自粛している。
ただ、両者の心理を考えると、別の理由があるようにも感じる。
金正恩は35歳の若さである。
経験不足は顕著だが、時に青年らしい素顔を見せるときがある。
トランプ大統領とは親子ほど年は離れているが、妙に相通ずるところがあるのではないか。
それを双方が感じているので、トランプ大統領の「あいつはいいやつだ」というツイッターの発信も多少本音が混じっているように感じるのである。
要するに「馬が合う」のかもしれない。
しかし、トランプ大統領の周囲は、ペンス副大統領以下、ポンペオ国務長官、ボルトン補佐官等、強硬派がズラリと揃っている。
一方の金正恩の周囲も、朝鮮人民軍の幹部たちで占められている。
公開される写真には、必ずと言ってよいほど、ドデカイ軍帽を被り、勲章で飾った軍服に身を固めた幹部たちが揃って写っている。
金正恩が軍幹部たちを従えているように見えるが、実態は軍幹部たちが周りを固めている姿なのではないか。
そう考えると、ハノイ会談の惨憺たる結果によって、軍の発言力が高まり、ミサイル発射の事態になったと考えるほうが納得がいく。
 
そうなると、米朝関係は、停滞というより元の木阿弥に戻りつつあると考えるほうがまともである。
北朝鮮にとって唯一の綱は、トランプ大統領個人という危うさである。
経済の「自力更生」など、夢のまた夢となり、ジリ貧となる北朝鮮内部で何が起こるか分からないのが現状と考える。
 
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┃◇純粋な軍事の話(7)                     ┃
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「空母いぶき」という映画が話題になっています。
首相役を演じた俳優が「本当はやりたくなかった役」と発言したことで、賛否両論が飛び交う事態になったことが話題になっています。
読者のみなさんはご存知と思いますが、原作は漫画で、こうした一連の仮想軍事シリーズで人気を博している“かわぐちかいじ”氏が原作者です。
 
私も、何冊かを読みましたが、軍事技術の描写は驚くほど正確かつ精密で、どこから情報を得ているのかと不思議に思うくらいです。
 
氏の作品には、自衛隊のイージス艦が太平洋戦争の真っ只中にタイムスリップしてしまう話とか、日本の原子力潜水艦が単独で日本から独立宣言し、潜水艦自体を一つの国家にして、米国艦隊と交戦するとかの「あり得ない話」が多いのですが、読者に“奇妙な共感”を生み出すことが特徴です。
それは、極端な言い方をすれば、未だ敗戦国の汚名を着たままの悔しさとか“やるせなさ”が残る日本国民の意識の底を刺激するからだと思います。
 
先日、若い国会議員が「北方四島を戦争で取り返すしかない」と発言して、大炎上しました。
国会議員として論外な発言ですが、彼が35歳の若者であることに注目しました。
彼の世代は、戦争を実際に経験した人間から、直接、戦争の話を聞くことは無かったはずです。
例え聞いたとしても、幼い時であったろうから、理解することは難しかったと思われます。
 
私は彼の父親世代ですから、当然、戦争経験はありません。
しかし、父が職業軍人であった上、同様に軍人だった伯父たちから直接話を聞いて育ちました。
父は、戦場で2度被弾し、生死の境を彷徨(さまよ)った末の敗戦帰国でした。
自分の傷以上に、多くの部下を失った心の痛手を抱えたままの一生でした。
特攻隊の生き残りだった伯父は、上京する度に靖国神社で亡き戦友に手を合わせる一生でした。
その父や伯父から直接聞く戦場や戦争の話は、リアルに私の心の中に入ってきました。
しかし、私が自分の子供に同じ話をしても、彼らの心の中に同じような感情は生じていないと思います。
しょせん“また聞き”であり、リアル感が無いからです。
 
安易に戦争発言をする若い国会議員の出現は、これからの社会を暗示しています。
しかし、「だから反戦教育を」とか「平和憲法を守れ」というのは、現実逃避にしかなりません。
韓国が主張するような「反省が足らない」も的外れな意見です。
善悪を外した目で、リアルな現実を真正面から見て、未来に向かう道を探ることが大事です。
私は、この「純粋な軍事の話」をそうしたリアルな目で見るために書いています。
 
次回は「空母いぶき」の描く世界を「純粋な軍事の話」として解説する予定です。
 
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<編集後記>
衆参同時選挙の匂いが濃くなってきました。
G20で米中首脳会談が実現し、何らかの妥協が得られれば消える可能性が高いですが、
そうでない場合は、世界経済の減速が進み、同時選挙となる可能性が高まります。
なにより、解散権を握る安倍首相がやりたがっています。
公明党が頑なに反対していますが、政権与党の旨味を捨ててまで反対を貫くことは難しいでしょう。
いまのところは、4:6ぐらいで「やらない」と見ていますが、1ヶ月前が2:8ぐらいだったことを考えると、分かりません。
すべては首相の決断次第となってきています。
 
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