2018年7月15日号(国際、政治)
2018.07.19
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年7月15日号
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発行日:2018年7月17日(火)
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2018年7月15日号の目次
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★結局、北朝鮮は中国の属国になって生き延びる道を採る
★米国の本当の敵は中国
★中国は世界帝国への夢(野望)を隠さなくなった
★あるキャリア官僚の話
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
6月12日の米朝首脳会談から一ヶ月が過ぎました。
この間、電撃的に金正恩が中国を訪問し、ポンペオ米国国務長官が北朝鮮を訪問しました。
果たして、米国の目論見どおりに非核化は進むのでしょうか。
今号は、この問題を北朝鮮、米国、中国、それぞれの立場から論じてみます。
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┃★結局、北朝鮮は中国の属国になって生き延びる道を採る ┃
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首脳会談後の共同声明には「米国は北朝鮮の体制を保証する」と「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化を約束する」の2項目の合意があるだけで、期待された「CVID・完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」という言葉は入っていなかった。
あの会談後、金正恩は電撃的に3度目の訪中を行い、習近平主席と会談した。
彼の意図は明確である。
彼が米朝首脳会談で何を得たがっていたのかを考えれば、わかることである。
彼が欲しかったのは、「米国の武力攻撃排除」、「制裁解除」、「経済支援」の3点である。
金正恩は「非核化の言葉」だけでこの3点を得ようと考えていたはずだが、しかし、会談では一つも確約を得られなかった。
たしかに、トランプ大統領は「体制保証」を約束し、米韓合同演習も中止したが、それは「非核化」とセットである。
米国は、会談後すぐに、非核化につながる「核計画の全容」を出せと北朝鮮に迫った。
だが、核を手放す気などまったくない北朝鮮が、そんなもの出すはずが無い。
しかし、出さないと「金正恩はトランプにウソをついた」ということになってしまう。
そうなると、米国からの攻撃があるかもしれない。
居ても立ってもいられなくなった金正恩は、すぐに北京に飛んだのである。
もう習近平主席に“すがる”しかなかった。
こうした焦りを百も承知の習近平主席は、金正恩の期待に応えた。
2日間もかけて中国経済の現場を視察させるなどの歓待振りを内外に誇示した。
中朝会談の詳細は明らかになっていないが、中国は北朝鮮への「独自支援」を約束したとされている。
だが、実態は「独自支援の約束」などというレベルではなさそうである。
情報では、米朝会談の後、中朝国境での人・物の行き来が活発になっているという。
中国は、国境沿いの業者の「制裁破り」を黙認する形で、すでに北朝鮮を助けているのである。
金正恩には、そのうち公然とした形で北朝鮮への経済支援を開始することも約束したはずである。
これで気持ちが大きくなった北朝鮮は、ポンペオ国務長官が要求した「核計画の全容の開示」をのらくらとかわして、悪態までついた。
たしかに、トランプ大統領が「約束やぶりだ」と激高し、軍事演習を再開することは恐い。
だが、中国は金正恩に「体制保証」を約束してくれた。
中国が後ろ盾になってくれれば、米国は中国と戦争になる危険を冒してまで北朝鮮を武力攻撃することはないだろうと踏んだのである。
金正恩は、こうして核を手放すことなしに、中国の属国になる道を選んだのである。
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┃★米国の本当の敵は中国 ┃
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トランプ大統領は、内外に事前に約束していた「CVID・完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」という言葉が声明に入らなかった理由を、記者会見で「時間がなかった」と言い訳して失笑を買った。
この例のように、トランプ大統領は、性格的には問題があるし、自分を過信し周囲の意見に耳を傾けない人間である。
しかし、物事の本質を見抜く目は持っているようである。
米国の本当の敵は北朝鮮ではなく中国だという本質は見抜いている。
7月9日、トランプ大統領は、以下のツイートで、中国への不満を口にした。
「金正恩と交わした非核化の契約が守られることを確信しているが、中国がこの合意を損なおうとしている」
そして同日、中国に対する全面的な貿易戦争を仕掛けたのである。
米国が、唐突にこの貿易戦争を仕掛けたように見えるが、伏線は前々からくすぶっており、最終的には、6月24日、人民日報で発表された習近平主席の新構想宣言が発動の引き金となった。
6月22日から23日にかけて、北京で外交政策に関する重要会議「中央外事工作会議」が開かれたが、この席で、習近平主席は次のような宣言を発表した。
「中国は、グローバルな統治体制を主導して、中国中心の新たな国際秩序を構築していく」
そして、翌24日、この構想が、中国共産党機関紙の人民日報で公表されたのである。
この宣言は、トランプ政権が掲げる「中国の野望阻止」の政策と正面衝突することを意味する。
もともと、米中両国の理念は真っ向から対立しているが、それが世界を巻き込むグローバルな規模にまで発展し、明確な衝突の形をとってきたといえる。
新たな冷戦の始まりである。
この会議には、共産党政治局常務委員7人全員のほか、王岐山国家副主席や人民解放軍、党中央宣伝部、商務省の最高幹部ら、さらに米国駐在大使までもが出席した。
外交・軍事戦略の最高会議と言ってもよく、「対米戦略会議」の意味合いの濃い会議であった。
この会議で、習主席は「中国は今後グローバルな統治の刷新を主導する」と宣言し、「国際的な影響力をさらに増していく」とも明言した。
つまり、中国独自の価値観やシステムに基づいた「新たな国際秩序を築き」、その頂点に中国が君臨するという宣言である。
トランプ大統領は2017年12月18日に「国家安全保障戦略」を発表したが、この中で、中国を米国主導の国際秩序への最大の挑戦者として明確に位置づけていた。
内容を要約すると、「中国はインド・太平洋地域で米国に取って代わることを意図して、自国の国家主導型経済モデルを国際的に拡大し、地域全体の秩序を中国の好む形に変革しようとしている。中国は自国の野望は他の諸国にも利益をもたらすと宣伝しているが、現実には、その動きはインド・太平洋地域の多くの国の主権を圧迫し、中国の覇権を広めることになる」
これに対し、習近平政権は何も答えなかったが、今回、初めて回答を、それもあからさまな野望を米国にぶつけてきたのである。
米国の立場に立ってみれば、この貿易戦争の仕掛けは当然なのが分かる。
ゆえに、米国議会は、与野党とも賛成多数で一致している。
トランプ大統領は、この戦争は武力戦争と同義だと強く思っている。
だから、そう簡単に矛を収める気はないであろう。
中国が根をあげるまで、同盟国の迷惑などお構いなしに続ける腹であろう。
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┃★中国は世界帝国への夢(野望)を隠さなくなった ┃
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前述した中国の「中央外事工作会議」での習近平主席の演説の骨子を、以下の4項目にまとめてみた。
1.中国はグローバルな統治を刷新するための道を指導していかねばならない。同時に、中国は全世界における影響力を増大する。
2.中国は自国の主権、安全保障、発展利益を守り、現在よりもグローバルなパートナーシップ関係の良い輪を作っていく。
3.中国は多くの開発途上国を同盟勢力とみなし、新時代の中国の特色ある社会主義外交思想を作り上げてきた。新たな国際秩序の構築のために、中国主導の巨大な経済圏構想「一帯一路」や「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」をさらに発展させる。
4.中国主導の新しいスタイルの国際関係は、誰にとっても「ウィン・ウィン」であり、互恵でなければならない。
習近平主席のこの演説は、今後、中国の指導の下で新しい国際秩序を築いていくという方針表明であり、世界帝国へのあからさまな野望の表明といえる。
具体的には「社会主義」を前面に打ち出し、これまで欧米が主導し構築してきた現在の「民主主義」による国際秩序とは異なる中国式の「グローバルな統治」を目指すということである。
しかし、中国が構築しようとしている新たな国際秩序には、従来の欧米主導の国際秩序にみられるような人権、自由、法の統治という、民主主義の普遍的な価値は存在しない。
個人よりも国家に重きを置く「全体主義」で国際秩序を変えようとしているのである。
中国は、すでに世界第2位の経済・軍事大国となっている。
米国が没落すれば「世界一の超大国」も夢ではない。
世界が中国の足元にひれ伏す日が来る。
永久政権が可能になった習近平主席は、そんな自らの野望を隠さなくなってきた。
その中国にとって、天敵は一国だけ。もちろん、米国である。
この視点で北朝鮮問題を見ると、中国の意図は明らかである。
北朝鮮は「米国の中国侵略」を阻止する、大事な「緩衝国家」なのである。
北朝鮮が崩壊し、米国の手に落ちれば、中朝国境が米軍との最前線となってしまう。
この事態を回避するためには、金正恩に頑張ってもらわなければならないのである。
ただ、北朝鮮の「核兵器保有」については、少々頭が痛い。
米国に対する牽制としては、北朝鮮の核保有は便利である。
しかし、北朝鮮の核保有を認めてしまうと、日本や韓国の核保有がダメという根拠がなくなってしまう。
それゆえの身勝手な反対なのである。
いずれにしても、わがままボンボンの金正恩が従順になり、北朝鮮が中国の属国になるのは、中国にとってめでたいことなのである。
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┃★あるキャリア官僚の話 ┃
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昨今の行政機構の問題を見ると、その頂点に立つ霞ヶ関官僚の劣化が止まらない感があります。
日本の官僚機構は制度疲労を起こしているのでしょうか。
私が社会に出た頃は「国家公務員上級甲種試験」と呼ばれ、その後、「国家公務員I種試験」になり、現在は「国家公務員総合職試験」と名称が変わった公務員採用試験があります。
この試験に合格して国家公務員になった者を「キャリア」と通称しますが、公務員組織の頂点を構成しているのは、みなキャリア官僚です。
刑事ドラマでは、この「キャリア」なる言葉が氾濫しているので、それを演じてきたいろいろな俳優の顔が思い浮かぶでしょう。
つまり、こうした言葉がドラマで氾濫するほど、日本人は階層構造が好きで、その頂点に立つ人間を羨望のまなざしで見ているのです。
私にも、こうしたキャリアや元キャリアの友人や知人がいますので悪口を言いたいのではありません。
ひとつの側面を解説したいと思っているだけです。
たしかに、みな学校時代の成績は優秀で、順当に出世しています。
その中に元警察官僚の友人がいますが、彼が某県警の本部長だったとき、その県警を訪ね、警察組織の話を聞いたことがあります。
その時の彼の話だと、その当事、47都道府県でノンキャリアの県警本部長は一人だけということでした。
私が、「でも、ノンキャリアでも本部長になれるんだ」と言うと、彼は「うん。実は、僕はその方を尊敬しているんだ。短い期間だったけれど、一緒の署に勤務していたことがあってね。そのとき、いろいろ教えられたんだよ」と言う。
「たとえば?」と私が聞くと、「たとえば、交通取締りで悪名高い『ネズミ捕り』があるだろう」と話し出した。
私が苦い顔をしたので、彼は笑いながら「君も引っ掛かったことがあるようだが、違反を反省したかい?」と聞く。
私が「違反だから仕方ないとは思ったが、反省は・・しないな。運が悪かったと思うだけだな」と答えると、「そうだろう。つまり、『ネズミ捕り』の違反抑止効果は限定的なんだよ。その先輩からはそう教わったよ。そして、こう言われた。『違反を捕まえることに重点を置くより、違反をしないように誘導することのほうが大事なんじゃないかな』ってね」
私が「ほーっ」という顔をすると、
彼は続けて、「この県警ではね、毎日、『ネズミ捕り』を行う場所をラジオなどで公表してるんだ。当然、違反の検挙率は下がったよ。だけど、事故率も下がったんだ。先輩から言われたことを僕なりに考えたんだけどね」と言う。
彼は、東北六県を束ねる「東北総監」の地位まで上がったキャリア中のキャリアでした。
でも、その姿勢はまったく変わらない人でした。
一方、私の叔父の一人は、一生を交番勤務の平の警察官で終わった人でした。
でも、地域の安全のため昼夜を問わず“ぼくとつ”とした努力を重ねた実直な人でした。
キャリアの友人と叔父、組織の両極端に位置していても、同じ思いを持って警察官人生を全うしたように思えてなりません。
二人を対比していて、人生の何が大切かを考えさせられています。
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<編集後記>
「台風でもないのに」と多くの人が思ったのではないでしょうか。
たかが雨で200人を超す犠牲者が出るとは、「想定外」と済ますわけにはいきません。
戦後の日本では、戦争で命を落とした人は出ていません。
しかし、自然災害での犠牲者は、東北大震災をはじめとして膨大な数に上ります。
そうした犠牲者を出さないことも公共工事の役割です。
しかし、民主党政権下での「仕分け」ですっかり悪者にされて以来、公共工事に対する国民の目線は変わらないようです。
もちろん、政治家や建設会社に食い物にされてきた負の側面もあります。
だからこそ、今回の尊い犠牲に報いる意味からも、「国土防衛」としての公共工事を国会で真剣に討議して欲しいものです。
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