2017年4月30日号(経済、経営)
2017.05.15
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2017年4月30日号
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発行日:2017年5月1日(月)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2017年4月30日号の目次
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★森友問題は「よくあること」
★過労死ラインって何だ?
☆公共工事の増加で日本経済は復活できるか?
☆短期的変動に備える経営へ(4)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。
米国と北朝鮮の「つばぜり合い(?)」は、ギリギリの膠着状態が続くものと思われますが、
両国のリーダーの性格から、その後の展開の予測がつきません。
ですが、ミサイル発射で電車を止めてしまう電鉄会社の対応には疑問符です。
「今後も続けるつもり?」って思ってしまいました。
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┃★森友問題は「よくあること」 ┃
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民進党が森友学園問題の再燃を狙って、学園の籠池泰典氏を同党のヒアリング調査に呼んだ。
しかし、この問題は、もう賞味期限切れである。
民進党の政治感覚のズレにはため息しか出ない。
このヒアリングで、籠池氏は、財務省幹部との面会時に録音したという音声テープを公開した。
そもそも面会した相手の了解を取らない録音は、犯罪捜査を除いて許されるものではないと思う。
この点だけ取り上げても、籠池氏はとても信用に足る人物ではない。
この音声テープで、面会相手の財務省の田村嘉啓・国有財産審理室長が、学園との土地取引について「特例」と発言したことを、籠池氏は「忖度の証拠」と鬼の首でも取ったように言っている。
しかし、田村室長は、しごく当たり前のことを述べたに過ぎない。
「該当の国有地の管理処分は出先の財務局(近畿財務局)の権限であり、特殊的なものは財務省にも相談が来る」と述べているが、何もおかしなことはない。
本件の場合、「特殊なこと」とは「地中から生ゴミが出た」ことであり、政治家の関与のことではない。
私にも同様の経験がある。
財務局から払い下げられた土地に分譲マンションを建設する仕事で、掘削を始めたところ、産業廃棄物が大量に埋まっていることがわかり、工事を中断した。
土地を購入したオーナーに相談したところ「そのまま埋めて工事を続行できないか」と言われた。
さすがに、「それは無理です。あとで発覚してマンション購入者から損害賠償を訴えられたら負けます」と言った。
おそらく、森友問題でも、学園は業者に同じようなこと言い、同様に拒否されたものと思われる。
我々の場合は、オーナーに対し「元の所有者である財務省に責任がある。我々が支援するから財務省に撤去費用を請求しましょう」と説得し、財務省との交渉に入った。
数回の交渉の結果、撤去費用は全額財務省の負担とすることで合意し、工事を再開した。
その間の経緯は、森友問題の場合とよく似ている。
違いは、8億円が過大な値引きと思われることである。
おそらくは、最初に出てきた1億3000万円が妥当な金額であろうと思われる。
たしかに常識外の値引き額と言えるが、財務局にとっては”たいした”金額ではなかったであろう。
値引きは土地の所有を巡っての近畿財務局と大阪空港会社との押し付け合いの結果で生じたものであり、売却を白紙に戻さないための処置であったと思われる。
首相夫人の要請などはなかったといえる。
こうした問題は、値引き金額が過大であることを除けば、「よくあること」である。
それなのに報道が加熱したのは、もちろん、首相夫人の存在があったからである。
ことの本質は、籠池氏が首相夫人を利用し、脇の甘い首相夫人が利用され、それを野党とマスコミが肥大化させたことにある。
特に、支持率の高い安倍政権への攻め手を欠く民進党が、この問題に飛びついたことが肥大化の最大の要因である。
少し調べれば、国政レベルの問題ではないことなどすぐに分かったはずである。
安倍首相の「関与がわかれば、議員すら辞める」というような軽率な発言も問題ではあるが・・
今回は、検察の強制捜査も間近と伝えられる中、焦った籠池氏が民進党にすがったようなヒアリングであったが、民進党は蹴るべきであった。
強制捜査となれば、籠池氏の証拠なき発言など相手にされないであろう。
その時に民進党は恥をかくことになる。
繰り返すが、この種の問題は「よくあること」であり、国政レベルでの議論はもう止めるべきである。
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┃★過労死ラインって何だ? ┃
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非難を受けるかもしれませんが、あえて言います。
厚生労働省が過労死の労災認定の目安としている「月80時間超の残業」って、何なのでしょうか?
マスコミは、こぞって、この残業時間を「過労死ライン」と報道しています。
毒物摂取の致死量のような扱いで、あたかも月80時間を超えたら「必ず死ぬ」とでも言わんばかりです。
では、その反対に79時間59分だったら“セーフ”となるのでしょうか。
まったくおかしな数字だと言わざるを得ません。
昨今、残業時間が煩雑に報道されるようになったのは、電通の女子社員の自殺が原因です。
しかし、私は、この社員さんの自殺の主因は残業時間ではないと考えています。
もちろん、本人は亡くなられているので、ご本人から聞くことはできません。
ゆえに推測に過ぎませんが、パワハラや、もしかしたらセクハラが主因の可能性も高いと思います。
おそらく、そう思っている方も多いと思うのですが、自殺という悲惨な事実を前に、誰もそれを言えない状況が醸成されてしまっています。
その結果、「主因は残業時間」と矮小化されているのです。
自殺した社員さんには、社内に味方はいなかったのでしょうか。
社内外に相談できる人はいなかったのでしょうか。
それが一番の疑問です。
私の管理職時代は、同様の問題への対処ばかりだったような気がします。
最後の職は、建設会社という男社会の中で、女性が過半数という特殊な部門を率いていました。
当然、パワハラ、セクハラ問題のオンパレードでした。
本業の管理も大変でしたが、女性社員の問題はもっと深刻でした。
時にはご家族と話し合ったり、病院を世話したり、社内の女子社員たちの姉御的存在(ようするに、お局(つぼね)さん)に助力を頼んだりと、ケースワーカーみたいでした。
そうした経験から考えると、自殺の原因を残業時間にしてしまうことに危惧を覚えるのです。
自殺した方のご家族が、記者会見で「新たな残業規制」に対する不満を述べられていたことで、その危惧が大きくなり、本稿を書きました。
読者のみなさまのご意見をお聞きしたいです。
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┃☆公共工事の増加で日本経済は復活できるか? ┃
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少し古い話題になりますが、4月12日、会計検査院の報告がありました。
「東日本大震災の復興予算として政府が2011~15年度に計上した計33兆4922億円のうち、15年度末時点で約15%に当たる5兆54億円が使われていなかった。
検査院は、防潮堤の整備や区画整理の遅れなどが要因と分析。国と被災自治体が緊密に連絡調整し、事業を迅速に実施するよう求めた。」という内容です。
復興予算の消化未了についてはたびたび報道されてきましたが、実は、会計検査院は参院の要請に応じ、11~15年度の復興事業の実施状況について、毎年、検査結果の報告を続けてきたのです。
5回目の今回が最後で、2015年までの全体を総括した数字を発表しました。
その結果が冒頭の数字です。
日本は「自由経済」を標榜する国家です。
ところが、公共事業は国家および自治体が管理する「計画経済」の仕組みです。
いわば、自由経済と真っ向から対立する経済概念なのです。
ゆえに、日本の公共事業の世界は、自由経済の海に浮かぶ「計画経済」の島のような存在なのです。
現実の計画経済の国(つまり共産主義国家)は、自立出来ずに自由主義国の支援で成り立っていました。
旧ソ連も米国からの多額な支援で成り立っていました(結果として借金は踏み倒しましたが・・)。
中国は、共産党一党独裁での計画経済がうまくいかず、日本などから多額の援助を受けて経済を運営していました。
そうして経済のベースを作った上で、欧米日からの資本を導入し、自由主義的な経済に発展させたのです。
つまり、今も共産中国を支えているのは、外の自由主義国家からのカネなのです。
このように共産主義は、自由主義からのカネで支えられてきたのです。
という原理で公共事業を考えてみると、2つの重要なポイントが見えてきます。
一つは、公共事業が、支援を受けている自由主義経済にどんな恩恵をもたらしたのかというポイント。
もう一つは、無駄のない効率的な公共事業計画を計画・実行してきたかというポイントです。
そう考えると、5兆円以上が使われていない東日本大震災の復興予算は失敗だったと言わざるを得ません。
東北の自由経済が復興したとは言い難い状況ですし、予算を大幅に余している事実は、計画のずさんさの証明です。
その一番の責任は、もちろん政府にあります。
33兆円超の巨額の税金を投ずる事業です。
強力なリーダーと卓越した計画を立案できるスタッフ体制が必要だったはずです。
しかし、今回の今村前大臣の辞任劇に見られるようなお粗末な人物が、入れ代わり立ち代わり就任しては辞任するという体たらくでした。
こうしたトップの下での計画立案がロクなものにならないことは当然です。
政府には、まずは人事政策の改善を望みます。
この話題は、次項の「短期的変動に備える経営へ(4)」に続きます。
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┃☆短期的変動に備える経営へ(4) ┃
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前回、「次回は9年後に至る市場動向を考えてみたいと思います」と予告しましたが、テーマが大きすぎて、考えあぐねていました。
そこで、いくつかのキーワードごとに論評を加えることにしました。
今回は、先進国で起きている「財政デフレ」が「9年後の市場」に及ぼす影響についてです。
先ごろ、OECDが「先進国で財政デフレが起こっている」と警告を出した。
どういうことかというと、リーマン・ショックを乗り切るため、先進国は金融機関に対して大幅な財政支援を実施してきた。
それが一段落したことで各国の財政赤字が減少する方向に向かい、むしろ総需要を抑制するという「財政デフレ」になっているという警告である。
国際的な低金利はそれが原因であり、ゆえに、各国は協調して財政支出を拡大すべきだという提言でもある。
と言うことは、9年後に向けて、世界的には公共インフラ投資がさかんになることが予測できる。
さて、日本でも同様であろうか。
日本が財政を拡大できる財政余地はGDP比で2.2%と言われている。
この計算の根拠は、マイナス金利にある。
日銀の採ったマイナス金利の影響で、日本の名目成長率>名目金利となっている。
ゆえに、財政支出を一定に保った場合、国債の金利払いより成長による税収増のほうが大きくなり、プライマリー赤字は減ってゆく計算である。
事実、そうなっている。
政府債務というものは、規模がいくら大きくなろうと、すべて返済する必要はなく、利払いで債務が拡大さえしなければ維持していくことはできる。
それが「プライマリーバランス」ということである。
そうした計算から、日本はGDP比で2.2%の財政拡大(あるいは減税)の余地があるということになる。
金額にして約12兆円だから、かなりの額である。
だから安倍首相は、アベノミクスで公共事業を拡大すれば、経済成長と財政再建の同時達成ができると考えているのであろうか。
ところが、OECDは「各国は協調して財政支出を拡大すべき」と言いながら、日本だけは例外だと言っている。
これはどう解釈すれば良いのであろうか。
OECDは、別の計量分析によって、日本の「財政乗数」がゼロに近いという理由を掲げている。
その原因として、かつての公共事業の拡大による公的資本ストックが過大になったことと、「ゾンビ企業」を救済することで投資効率が悪化したことをあげている。
一言で言えば、日本の公的投資のリターンが「マイナスになっている」ので、このままの公共投資を続ければ破綻する恐れが大きいという理由である。
この説には納得せざるを得ない。
たしかに指摘の通り、事業性を無視した公共事業がまかり通り、また実質破綻している企業を存命させてきたことで、公共投資リターンがマイナスになっていることは否定できない。
日本の政府債務の金利払いはマイナス金利のおかげで低く抑えられているが、国債発行高のGDP比230%は理論的限界値といえる。
もし世界的な金利上昇が起きたら経済が破綻する危険は、たしかに大きい。
怖いのは、日本以上に公共投資の効率が悪い中国経済の破綻である。
今後の9年間を考えた場合、その可能性を無視するわけにはいかない。
そうなった場合、日銀は必死に日本国債を買い支えるであろうが、日銀の購入限度額を超えたとたん、投資家は日本国債を買わなくなり、日本の破綻も現実となる。
だから、OECDは、各国に財政拡大を推奨しながら、日本にだけは社会保障などの構造改革を優先し、早く「財政中立」を実現せよと迫っているのである。
なんか9年後の日本の未来が暗くなるような話ですが、打つ手はあります。
それは、消費税増税と同時に大幅な法人税減税を実施し、さらに海外のインフラ受注を国家をあげて支援することです。
もちろん観光客の誘致を加速させ、8000万人の目標を掲げることも大事です。
こうした意見には反対も多いでしょう。
ですが、日本経済を9年後にバラ色に持っていくための戦略でもあります。
次号では、こうした未来が来るとした場合の、我々中小企業が採るべき戦略について述べたいと思います。
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<編集後記>
史上最年少棋士の藤井聡太四段(14)が、非公式対局とはいえ、羽生善治三冠(46)を破ったとのニュースには驚きました。
最近、こうした若い力の台頭が、スポーツ界などでも話題になっています。
願わくは、働く現場においても、各所でこうした現象が出て欲しいものです。
<建設ビジネスサロン>
OFFサイトでのサロンも始まりました。
直に顔を合わせての会話は、ネットでは味わえない現実感があります。
ぜひ、多くの方にサロン会員になっていただきたいと考えています。
申込みは、常時可能です。お気軽にお申し込みください。
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