2024年12月31日号(経済、経営)
2025.01.06
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2024年12月31日号
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発行日:2024年12月30日(月)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2024年12月31日号の目次
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◇ホンダと日産の経営統合:2人の桜井さん(前半)
☆水商売からビジネスを学ぶ(その5)
◇2024年からの展望(6):責任あるAIってなんぞや?
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
ホンダと日産の経営統合が発表されましたが、実態は、ホンダによる日産の吸収です。
三菱自動車を含めた三社トップの共同記者会見を視聴しましたが、ホンダの三部敏宏社長の独演会で、日産の内田誠社長、三菱自動車の加藤隆雄社長の覇気のない表情が印象的でした。
ネットでは、日産の広告文句をもじって「やっちゃった日産」などと揶揄されていますが、日産の経営の拙さが招いた惨状としか言えません。
今号は、この話題から。
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┃◇ホンダと日産の経営統合:2人の桜井さん(前半) ┃
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その昔、車が若者には高値の花だった時代から、車は私にとって「相棒」のような存在でした。
といっても、金持ちのボンボンだったわけではありません。
むしろ家庭が貧しかったゆえの所有でした。
私は、子供の頃から模型作りに熱中していましたから、「動く模型」の代表のような自動車に興味を持つのは自然の成り行きでした。
そして、アルバイトでおカネを貯め、知り合いから廃車寸前の中古車を買いました。
車があるとアルバイトの幅が広がり、かつバイト代も高くなるので、それが購入の目的でした。
ここで、時代を少し遡ります。
1963年、鈴鹿サーキットで「第1回日本グランプリ」という初の自動車レースが開催されました。
このとき、プリンス自動車工業は初代スカイラインで参戦しましたが、8位に終わっています。
このスカイラインの開発主幹が桜井眞一郎でした。
当時、日本にはまともな自動車会社はなく、彼は最初、ゼネコンの清水建設に入社しました。
機械部に所属した彼は才能を発揮して重機の整備や改良に成果を発揮したと言われています。
会社からは高く評価されていましたが、「たま自動車(のちのプリンス自動車工業)」が創業すると、躊躇なく転職しました。
そして、開発したスカイラインでレースに参戦したのですが、一般向けでレース用の改造もされていない車でしたから惨敗も当然でした。
初戦のレースで惨敗したスカイラインでしたが、翌年の1964年のレースでは日本中がびっくりすることが起きました。
主催者は、レースを盛り上げるためドイツからポルシェを呼びました。
現代でもスーパーカーの代名詞であるポルシェです。
プリンス自動車は、レース用にパワーアップしたスカイラインGT(通称スカG)で参戦しましたが、誰もがポルシェの圧勝を疑っていませんでした。
ところがレースが始まると、観客もTVを観ていた誰もが自分の目を疑いました。
なんと、スカGがポルシェとデッドヒートを繰り広げたのです。
最終的にはポルシェが優勝しましたが、途中、スカGが先行する場面もあり、惜しくも2位でフィニッシュしました。
桜井眞一郎がスカイラインをGTというスポーツモデルに大変身させた成果でした。
夢でも見ることのなかった結果に、当時の車好きの若者は「いつかはスカG」という熱病にかかったのでした。
それから2年後の1966年にプリンスは日産自動車に吸収されました。
以降、桜井眞一郎とスカイラインGTは、「技術の日産」としての看板になったのです。
私は、社会人となった翌年、念願のスカGのオーナーとなり、以降7代目まで全モデルの買い替えを続けました。
しかし、桜井眞一郎は、7代目の設計を最後に、日産を離れました。
私も、そこで日産車から離れました。
桜井眞一郎を失ったスカGはファミリーカーになってしまったからです。
そのとき「技術の日産」は終わったのです。
そのことに気付けなかった日産の歴代の経営陣が今日の衰退を招いたのです。
どんなに高い山でも山頂に達すれば、次は下りしかありません。
だから登山家は、別の山のさらなる高みや、より困難なルートに挑み続けるのです。
企業も同じです。
日産がそのことを怠ったわけではないでしょうが、既存ユーザーを置き去りに、EVや自動運転車という“怪しい”山に挑んだことが間違いでした。
ハイブリット技術は日産が生み出さなければならなかった技術ですが、道を誤りました。
このように、技術面においてもトヨタの後塵を拝し続ける日産に未来はないのです。
次回の後半は、ホンダの「もうひとり」の桜井さんのことを述べます。
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┃☆水商売からビジネスを学ぶ(その5) ┃
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近所のショットバーのドアをおそるおそる開けた私の耳に、奥から「お~、よく来たな」と“例の”バーテンの声が聞こえた。
そして現れた彼は「お互い、店を開ける準備があるから、きょうはポイントだけな」と言った。
ホッとした私は、「よろしくお願いします」と頭を下げ、カウンターの前に座った。
バーテンは、さっそく何種類かの酒とシェーカー(ミックスする数種の酒を入れて振るための銀色の容器)、カクテルグラス、氷などを取り出し、私に聞いた。
「マティニー、作れるかな?」
「はい」とマティニーを作り出した私だったが、バーテンの鋭い視線に緊張して、氷を割るアイスピックを持つ手が震えた。
すかさず、彼の鋭い声が飛んだ。
「それじゃ、ダメだ。そんな割り方じゃ、自分の手を刺すぞ」
「ハイ」と緊張のあまり声が裏返った私に、今度は少し笑いながら「手を刺したらアカンのは、君がケガをするからじゃない」と言う。
怪訝な顔をした私に「手を刺して血が出たら、それが氷に付く。『水で洗えばいいだろう』と思うかね」
緊張で返事ができない私に向かって、彼は続けた。
「君は分かっているようだな。そうだよ、一度血が付いた氷で作ったカクテルをお客様に飲ませるわけにはいかんだろう。それはバーテンの常識であり、誇りなんだ」
そして、カクテルを水っぽくしない氷の割り方やシェーカーの振り方などを丁寧に指導してくれた。
さらに、使うお酒の性質、カクテル毎の酒の調合の仕方などを指導してくれた後、こう言った。
「この先も時間があったら、いつでも来いよ。もっと教えてあげるよ」
私は、他のアルバイトの時間を削り、翌日以降、何日もこのショットバーに通い、教えを受けた。
自分の店が潰れたら大学へ通えなくなるだけでなく、一家離散が現実になる。
私だけでなく、高校生、中学生の弟や妹たちの進学資金も稼がなくてはと必死だった。
いつしか「この商売、失敗したら・・」というマイナスの考えは消え、「成功させるしかない」という強い意思だけが私を支配していた。
私は、四六時中シェーカーを持ち歩き、授業中も机の下で振り続けた。
そんなある夜、この“先生バーテン”が、私の店に来てカクテルを注文した。
さすがに緊張してシェーカーを振り、カクテルグラスに注ぎ、先生バーテンの前に持っていった。
彼は「ここまでは合格だな。さて味は」とカクテルを口にした。
緊張で心臓がバクバクした私だったが、カクテルを口に含んだ先生バーテンは、こう言った。
「まあまあだが、カネを払う価値はある味だ。よく頑張った」
涙が出そうで下を向いた私の肩を軽く叩き、彼は、カウンターに代金を置いて店を出ていった。
ホステス兼バーテン助手として頑張っている彼女は、そんな私に「良かったね、チーフ。頑張った甲斐があったね」と言ってくれた。
こうした努力を続けたことで、店の収支は1ヶ月でトントンとなり、次の月からは利益を出し始めた。
つまり、このときの売上が「損益分岐点」であり、そこを超えると急激に利益が増えるという経営原則を実感したのであった。
私は、それまでも様々なアルバイトでお金を稼いできたが、それは“稼ぐ”というより“賃金の支払いを受ける”という受動的な稼ぎに過ぎず、商売とは言えなかった。
それに対し、商売は「自らの才覚と努力で稼ぐ」という能動的な稼ぎである。
私は、賃金を「もらう」ことと「稼ぐ」ことの違いを、このときに理解したのであった。
しかし、ホステスを使う接待商売は、高単価の収益をもたらす一方、人件費の高さと離職率の高さ、さらには様々なトラブルの発生という不安定さが付きまとう。
こうして、この商売は、ようやく収益軌道に乗り、私の一家を支えるだけの稼ぎをもたらしたが、他のお店と同様の問題が起きてきた。
次号は、そのことをお話ししましょう。
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┃◇2024年からの展望(6):責任あるAIってなんぞや? ┃
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AIが一種のブームとなり、あらゆるシステムが「AIになるかAIに駆逐される」というような報道や発言が増えています。
そのこと自体は確かだと思いますが、“すぐに”ではありません。
早い段階でAI化される仕事もあれば、遥か先になる仕事もあります。
どうも古い体質の企業ほどAIという言葉に弱いようで、「AIを導入しないと置いていかれる」との脅迫観念に囚われているように感じます。
日本企業(というより、日本人)は目に見える“モノ”があると動くが、見えないと動かないと言われます。
しかし、システムは目に見えない部分のほうが多く、画面とか出力帳票のような「目に見える」部分は、全体のほんの一部にしかすぎません。
その結果、日本企業のシステム化の関心は、目に見える浅いレベルに留まり、本質的な問題を解決する手段になっていないケースが多いのです。
「目に見えない」部分のシステム化を考えるには、かなりの能力が要求されます。
ここが、企業のシステム化にとって大きなネックとなっています。
つまり、相応の実務および経営経験を持ち、戦略理論を理解し、その上でシステムに対する洞察力も深いという人材を抱えている企業が少ないというネックです。
そのような存在がいなくても、社外を含めてトップを支援する仕組みがあれば良いのですが、そこが欠けている企業が多いことも現実です。
それが誇大広告に付け込まれる要因になっています。
大手システム会社のTV広告に有名な芸能人が使われているのを見るにつけ、「この人の高いギャラもシステム価格の一部なんだよな」と、ため息が出ます。
AIは、通常のシステム以上にその実態が目に見えません。
しかも、あたかも生身の人間が判断しているかのような錯覚を生む答えを出してくれます。
そこを利用して、既に様々の分野に使われ出しています。
今や、銀行の融資判断の多くはAIが出していますし、国税の税務調査の判断すら8割以上がAI判断になっています。
「そんなアホな・・」と言いたくても、こうした現実の広がりを止めることはできません。
それゆえ、本音は別でも時代の流れに置いていかれる恐怖に縛られ“いやいやながら” AIに関心があるふりをする人が多いのです。
そうした不安心理が、実体が怪しい“自称AIベンチャー”に利用されています。
そのような怪しい企業の餌食にならないためにも、今後も本メルマガの連載をお読みください。
それでは、ここからAIを構成する基本技術のことを順次、解説していきます。
でも、ChatGPTに代表される生成AIを日常的に使ったおられる方には意味がないかもしれませんので読み飛ばしてください。
最初は「自然言語処理」、つまりコンピュータが人間の言葉をそのまま理解し、人間の使う言葉で答えを返す技術のことを解説します。
前号で取り上げた「第5世代コンピュータ開発」では、自然言語処理は主要なテーマの一つでした。
しかし、目標達成は中途半端に終わり、大きな成果は生まれませんでした。
プロジェクトそのものは国家プロジェクトでしたからカネの問題ではなく、技術上の問題でした。
人間の言葉は、単語数が多いだけでなく、単語の連結や表現の多様さ、多義語の多さ、文脈の矛盾など、組み合わせは天文学的な多さになります。
当時の半導体の性能では実用段階に達することが無理だったわけです。
結果として、このプロジェクトに参加した私も目標達成はできませんでしたが、その後、元の会社に戻って裁判記録の言語処理プロジェクトを担当したときに、その経験は活きました。
このように使用目的を限定すれば、自然言語処理の技術は50年も前にできていたわけです。
現代でも、AIを使う上で大事なポイントと言えます。
その頃からすれば、半導体の進化は驚異的なレベル(というより、物理的な限界に近づいているとさえ、言われています)に達しています。
40年前、私はスーパーコンピュータを使って、複雑な構造計算や気流解析を行っていましたが、現代のパソコンは、当時のスーパーコンピュータのレベルに達していると感じています。
それなのに、なぜ、自然言語処理がAIの中核技術として発展するのに、これほどの時間がかかっているのでしょうか。
それは、「知識データベース」という、もう一つの重要な技術の未成熟さにあります。
次号に続きます。
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<編集後記>
世界は、いよいよ大転換の頂点になる2025年に入ります。
それは、2026年から始まる新しい世界の一端が見え出すことを意味します。
こうした変化をチャンスと捉える企業が増えていけば、経済は伸びていきます。
その流れに乗っていきたいものです。
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