2021年12月15日号(国際、政治)

2021.12.16


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年12月15日号
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発行日:2021年12月15日(水)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年12月15日号の目次
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◇民主主義サミット
★開戦直前の日本政治(3)
◇抑止力という名の軍事力(20)
★隣国の悪意の発端は日本人が作った(1)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
中国は「民主と専制は矛盾しない。専制の実行は民主を実現するため」という奇妙な白書を発表しました。
北京五輪への「外交的ボイコット」に、いらだっている様子が伺えます。
 
さて、岸田首相は、どうするのでしょうか。
尖閣への執拗な侵入、ロシアと組んでの軍事的挑発に対し、「中国の脅しには一歩も引かないぞ」という意志を伝えるため、腹をくくり、ボイコットの輪に入る
ことも外交戦略の一つでしょう。
もちろん、首相だけでなく、国民も中国の圧迫に負けない覚悟が必要ですが。
 
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┃◇民主主義サミット                        ┃
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12月9~10日、米バイデン大統領の呼びかけで「民主主義サミット」がオンラインで開かれました。
会議を開いただけで、共同声明もなかったせいか、あまり話題にはなりませんでした。
しかし、招待国に台湾が入っていたことから中国は激しく反発しました。
これは、米国が台湾を事実上の「民主主義国家」として承認したことに等しいからです。
このサミットには107の国と地域が参加しましたが、中国とロシアはそもそも招待されていません。
つまり、この両国は独裁国家であり、民主主義国家ではないと断定されたわけです。
 
反発した中国は、8日に新発足したドイツのショルツ次期政権が台湾に関する中国の主張を認めなければ両国関係に悪影響が及ぶ可能性があると露骨な脅しをかけました。
しかし、連立内閣の外相に就任した緑の党の党首は、中国嫌いで有名です。
また、ショルツ連立政権は、政権協議において、インド太平洋戦略の一環として、日本と韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドとの関係を構築する計画を提示しました。
同時に、新疆ウイグル自治区の人権問題や、香港の「一国二制度」の原則を維持するよう中国に求める方針を決めました。
メルケル政権の親中路線からの方向転換によって、協議中の「EU・中国投資協定」は凍結からご破算となる公算が高まっています。
 
さらに11月25~26日、アジアと欧州の約50の国・機関で構成するASEM(アジア欧州会議)の首脳会議がオンラインで開催されましたが、この会議においてEU首脳は、自由や人権など基本的な価値を共有する民主主義の国と協力を深める方針を表明しました。
EUは、独裁体制の覇権国家・中国は、民主主義世界にとっての共通の敵との認識を前面に打ち出してきたということです。
 
北京五輪を無事に開催したい中国としては、報道官による反発が精一杯の抵抗ですが、その後は分かりません。
親中派と見られている岸田政権に対する揺さぶりは、水面下を含めて激しくなることが予想されます。
さて、岸田首相の腹の中はどうなのでしょうか。
対応を誤ると、来年夏の参院選で痛い目に会いそうです。
 
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┃★開戦直前の日本政治(3)                    ┃
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真珠湾から80年の12月8日が来ましたが、8月15日に比べて国民の関心は薄いといえます。
「戦争の泥沼にハマった日」と「泥沼から抜けた日」という印象からでしょうか。
しかし、12月8日に至るまでの歴史を「悪い歴史」と一言で片付けてきたのが戦後日本です。
そこを中国や韓国に利用され、いや、欧米にも利用されてきました。
これらの国々が「敗戦」という日本の弱点を利用するのは外交戦略上当然ですから仕方ないとしても、日本国民が同調して自らの過去を否定する姿は悲しいものです。
私は、戦前の日本および世界情勢を、善悪ではなく確かな事実のみで考えたいと思い、本シリーズを書いています。
 
前号で述べたように、戦前の日本は全体主義国家でしたが、我々が今まで教えられてきたほど暗黒社会ではなかったようです。
たしかに、国家総動員法や治安維持法などが制定されましたが、その執行は極めて緩いものでした。
我々は、映画やドラマが描く極端な映像や物語に感化され、戦前の日本をナチス政権下のドイツのようだとするイメージを抱いてしまったといえます。
そして、戦前を暗黒社会として糾弾することが正義だと洗脳されてきたのではないでしょうか。
 
軍人だった私の父や伯父たちから「映画のように軍の将校が意味もなく兵隊を殴るなんて無かったな」と聞きました。
もちろん、そうした乱暴な将校もいたでしょうが、多くは士官学校で高等教育を受けた者です。
また、理由もなく兵隊を殴ったりした将校は罪に問われたと聞いています。
軍の秩序を守るためには、そちらのほうが当然のように思えます。
映画やドラマは架空の話ですから、それを歴史と思わないことですね。
 
日本の国家総動員法や治安維持法は、ナチスドイツの全権委任法などの強力な法に比べると、極めて緩いものでした。
現代では、これらの法を陸軍と結託した政府が強引に制定したように言われていますが、それもウソです。
これらの法は、野党の反対が厳しい中やっと議会を通過させたに過ぎず、その実態はまさにザル法で、あって無きがごとくの法でした。
むしろ、法を厳しく進めようとした官僚が逮捕されることまで起こったのが事実です。
 
このように、政府の強制力は弱かったのですが、戦争の匂いを嗅いだマスコミに扇動された過激な一部国民が「贅沢は敵だ」とか「パーマネントはやめろ」などの標語を作り、他者に強制するという自粛社会ができていったのです。
そうして、民間の巡察隊などが結成されて人々を検閲し、日本にふさわしい「新しき国民生活」なるものを強制していったのです。
なにやら、「自粛警察」などと言われるコロナ過の現代と変わりませんね。
 
戦前は「国家権力が憲兵や特高警察などを使って徹底的に国民を弾圧していた」と、今でもドラマなどで意識下に刷り込まれています。
もちろん、そうした面がなかったとは言えませんし、実際に被害に会われた人もいたでしょう。
ただ、そうした特殊面だけにスポットを当てると、歴史の大きな流れを見誤ります。
実態は、マスコミに煽られた国民が政府を突き動かす形で過剰な緊急事態を作り出し、その力が大きな強制力となって国を動かしたのです。
こうしたマスコミと一体になった国民からの強力な圧力に抗しきれないまま、時の政府は米国の戦略に誘導される形で日米開戦に至ったのです。
 
今回のコロナ過への対応を見ても、他国の強力な対策に比べて日本の緊急事態は非常に緩く、国家権力の持っている強制力が弱いことが分かります。
日本の感染者数が劇的に下がっていることを「検査数が少ないから」とか「感染者数をごまかしている」と中傷する国はありますが、いつもの誹謗中傷に過ぎません。
今の事態は、日本人特有の同調圧力が良い方向に働いた結果だと思います。
私自身、マスク無しで通りを歩く勇気(?)はありませんし、手洗いは完全に習慣になっています。
 
こうした同調圧力が、今は吉と出ていますが、戦前は凶となったのです。
良いも悪いもなく、これが日本(というより日本人)なのです。
次回、開戦直前の日本を俯瞰しながら、日本人の意識を冷静に分析してみたいと思います。
 
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┃◇抑止力という名の軍事力(20)                 ┃
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ロシアがウクライナとの国境に大軍を集結させ、年明けにも軍事侵攻するのではと報道されています。
ロシアが、こうした脅しを掛けるのは、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟を病的なまでに恐れているからです。
ロシアの歴史を考えれば、そうした心理は理解できます。
古くはナポレオンによる遠征、近代ではナチスドイツによる侵攻といった西側からの侵略で、国が無くなるかもしれないほどの被害を受けました。
このトラウマは、現代でも国民意識となっています。
1979年、当時のソ連は、突如アフガニスタンへの軍事侵攻を始めました。
結果としては大失敗に終り、現在まで続く中東の不安定要因を作っただけの愚行でした。
ですが、この侵攻も、国境線を遠ざけたいとするトラウマともいえる感情から出たことです。
 
またロシアは、ウクライナはソ連崩壊で失った「もともとのロシア領土」という意識を持っています。
歴史的には、そう単純な話ではありませんが、ウクライナ東部の住民も同じように考えウクライナからの独立運動が起こっています。
それに対しウクライナ政府は、12万の大軍で東部地区を包囲して圧力をかけています。
今回のロシア軍の国境集結は、それに対する対抗処置との見方もあります。
 
ロシアは、黒海とつながるアゾフ海を、事実上の内海にすることを狙っています。
それにより、ロシア黒海艦隊の行動の自由度が格段に増すからです。
その第一弾が2014年のクリミヤ半島併合で、第二弾が、親ロ派の住民が多いウクライナ東部地区(アゾフ海沿岸)を分離独立させることです。
この意図を考えると、ウクライナへの軍事侵攻はあり得ることとなります。
その場合、ウクライナの北に位置する親ロ派のベラルーシから侵攻する可能性があります。
アゾフ海沿岸の東部地区とは真反対になりますが、その包囲に動員されているウクライナ軍の背後を突く格好になります。
ウクライナ軍も12万の大軍ですが、国境に展開しているロシア軍10万の圧力で動けなくなります。
そうした膠着状態を作った上で、実質的にロシアの支配下にある東部地区の親ロ派に武装蜂起させ、ウクライナから分離・独立させるという戦略です。
陸海空合わせて25万のウクライナ軍は、こうしたロシアの侵攻に手も足も出ず、東部は事実上のロシア領土となるでしょう。
 
米国のバイデン大統領は、プーチン大統領とのオンライン会議で「米軍出動は無い」と明言してしまいました。
こうした米国の腰の引けた姿勢は、プーチン大統領の「経済制裁はしのげる」との判断を誘発し、軍事侵攻に踏み切らせる可能性があります。
とはいえ、ロシア経済の現状は厳しく、膠着状態が続き、どこかで和解がなされる可能性のほうが高いと思われます。
 
日本にとっての問題は中国のほうですが、こうした米国の弱腰姿勢を見て「バイデン大統領は口だけ」と判断した中国が、台湾への軍事侵攻を実行に移すかもしれません。
日本は、防衛の基本戦略を、米国との同盟中心から自国防衛力中心に見直す必要があります。
それが、最大の戦争抑止力になります。
残念なことですが、中国の戦略が根本から変わらない限り、日本の戦略を変えるしかないのです。
 
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┃★隣国の悪意の発端は日本人が作った(1)             ┃
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よく知られているように、韓国には1000年経っても消えない「恨」という思想意識があります。
「恨み」は、どこの国の人でも持っている感情ですが、さすがに1000年前の恨みを持っている人は、皆無でしょう。
私の先祖一族は、幕末の戊辰戦争で幕府側に付いたため、城下町に攻め入った薩長軍によって悲惨な目に会いました。
祖父母からは「薩長には恨みが・・」と聞かされましたが、父母からはそんな言葉を聞いたことはありません。
もちろん私もそのような意識は皆無で、鹿児島や山口の人とも親しく付き合っています。
つまり、平均的日本人の恨みは100年も保てないのです。
なにより日本人は、親の仇討ちを捨てた「青の洞門」の話に感動する民族です。
 
ところが、韓国はそうではなく、大統領までが「加害者と被害者は千年経っても変わらない」という過激な言葉で国民の憎悪を煽る国です。
しかし、問題の深い根は韓国よりも日本にあるといえます。
2011年4月に、日本製薬工業協会の長谷川閑史会長(当時の武田薬品社長)の音頭で「第1回アジア連帯会議」が開かれました。
この会議は、本来、革新的な医薬品をアジア各国の人々に届けることをミッションとしていました。
ところが、この会議に朝日新聞元記者の松井やより氏、弁護士の福島瑞穂氏、キリスト教婦人矯風会の高橋喜久恵氏が参加していて、韓国の元慰安婦と尹貞玉・挺対協代表などを招くことを実現させました。
福島氏は、その前から「自分は慰安婦だった」と主張する6人が日本政府を相手取って起こした裁判の代理人になっていました。
福島氏らの強引な主張で、この連帯会議が作り上げた「決議案」は、当初の目的(革新的な医薬品をアジア各国の人々に届ける)とは外れた「従軍慰安婦問題に対する真相究明、賠償、補償など、日本の責任ある戦後処理を要求する」、さらには「従軍慰安婦問題は天皇制ファシズム・日本軍国主義の組織的な強制連行、強姦、拷問、虐殺など前代未聞の残忍な犯罪行為である」などという驚くべき内容に変容したのです。
もちろん、韓国以外の人たちから反対の声が上がりましたが、「日本と日本軍の残虐行為は人類に対する罪だ」と声高に主張する福島氏らの声にかき消されてしまったのです。
このアジア連帯会議の内容を、次回お伝えしようと思います。
 
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<編集後記>
政治家の評価は難しい。
まして、国政のトップともなれば、単純な評価はできません。
清廉潔白であっても無能では困るし、狸と狐の化かし合いの外交で国の利益を守らねばなりません。
500年近く前、イタリア・フィレンツェ共和国の外交官であったニッコロ・マキャヴェッリが著書「君主論」で国のトップの資質を以下のように述べています。
「君主たるもの善人でなければならぬ。(中略)いや、実際に善人であることは有害なので、善人であると思わせておくことが有益なのである」
さて、岸田首相はどうでしょうか。
今後の彼の言動を注意深く観察することにします。
 
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