2021年10月15日号(国際、政治)

2021.10.18


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年10月15日号
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発行日:2021年10月14日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年10月15日号の目次
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◇総裁選より燃えない総選挙
★開戦直前の日本政治(1)
◇抑止力という名の軍事力(18)
◇原発の再稼働(その4)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
総選挙が予想より早く今月31日となりました。
野党は急いで候補者調整を行いましたが、準備不足は否めません。
与党も万全とはいえない体制ですから、負と負の対決のような味気無さです。
 
岸田首相の唱える「成長と分配の好循環」は、具体論が見えず、現段階では論評不能です。
一方、立憲民主党は「以前の『1億総中流社会』を復活させる」と意味不明な発言をしています。
時間は未来に向かってしか流れません。
1億総中流社会などは30年以上も昔の過去の話です。
コロナ禍で一歩進んだデジタル化は、国民の階層化を促進させていき、日本は1億総中流社会とは真逆な方向に進むでしょう。
 
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┃◇総裁選より燃えない総選挙                    ┃
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本来、国民の最大の関心事になるべき総選挙ですが、先月の総裁選ほどには盛り上がりません。
「与党は最大64議席を減らす」とするマスコミ報道がありますが、「野党が完全に一つになったら」という前提での単なる数字合わせです。
国民の意識は、そんな単純な算数で計算できるものではありません。
報道を名乗るのであれば、もっと論理的な予測をして欲しいものです。
 
マスコミは、新政権の支持率が50%少々ということで、「ご祝儀相場もない」と揶揄します。
でも、「ご祝儀相場」って何でしょう。
いいかげん、こうした旧態依然の報道姿勢を改める気はないのでしょうか。
始まったばかりの政権批判より、マスコミ自らの改革が必要なのではないでしょうか。
 
立憲民主党は「国民の懐を温かくする政策が必要」と言っています。
まちがいとは言えませんが、その前提となる日本経済の再生策もない単なるバラマキ政策では、事態は好転しません。
「1年間に限って年収1000万円以下の人の所得税を免除する」などは最悪です。
デジタル時代に入っているという認識のなさに、ただただ呆れます。
今の時代、ほとんどの企業の給与計算はコンピュータシステムで行われています。
「1年だけ所得税免除」によって必要となるシステムの改変費用のことを考えたでしょうか。
「変えて、1年後に元に戻す」費用が日本全体でどのくらいになるか考える力もないのでしょうか。
さらに、消費税を「当分の間、5%に下げる」も同様の費用発生が生じます。
こうした企業側の負担は、給与引き上げに対するマイナス要因となります。
 
また、「医療や介護、福祉、子育てや教育といったベーシックサービスの分野に予算を重点配分していく」ことを強調しましたが、同じことは与党も言っていますから、これでは差別化になりません。
 
この程度の野党だから、政権交代など「夢のまた夢」と言われてしまうのです。
地味と言われながら、自民党はトップが変わりました。
しかし、野党各党のトップの顔ぶれは旧態依然のままです。
国会やネットで吠えまくっている幹部の顔ぶれも、まったく変わりません。
また、近々交代する兆しすらありません。
「消えてもらうしかないな」と、ため息しか出ない総選挙になりそうです。
 
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┃★開戦直前の日本政治(1)                    ┃
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軍拡と国外への挑発を深める中国が、戦前の日本のようだとする意見があります。
たしかにそうだとも言えるし、違うとも言えます。
そこで、戦前の日本を、近代史の事実だけを下敷きに分析してみようと思いました。
これまで本メルマガで述べてきたこととの重複も多いので、軽く読み飛ばす気持ちで数回のお付き合いをお願いします。
 
日本が戦争の泥沼に足を踏み入れたのは、昭和12年(1937年)の盧溝橋(ろこうきょう)事件からだと言われています。
この事件を、日本は当初「北支事変」と呼称しました。
満州と中国との国境付近での小競り合いという扱いでしたが、第一次近衛内閣で「支那事変」と呼称を変えています。
このことから、最初の小さな衝突が本格的な軍事衝突に拡大していったことがわかります。
 
しかし、「戦争」という言葉は太平洋戦争の勃発まで使っていませんでした。
戦争は、双方が宣戦布告を行うという国際慣例があり、日本の場合は、さらに天皇の裁可(聖断と称する)が必要でした。
ところが、昭和天皇は戦争には反対で「不拡大方針」を指示したくらいですし、日中両国とも戦争にはしたくなかった内部事情を抱えていました。
 
盧溝橋事件より前、昭和6年(1931年)に柳条湖(りゅうじょうこ)事件が起き、満州事変へと発展していきましたが、ここが大きな転換点でした。
その半年後に日本は強引に満州国を樹立したことから考えて、この事件は日本軍が仕掛けたものと断定できます。
世界恐慌の後遺症から脱せず、経済が停滞していた日本は、大陸にその活路を見出そうと考えました。
しかし、中国はすでに欧米列強により侵食され、日本が入り込む余地はありませんでした。
そこで、寒冷で不毛の地とされていた東北部(満州)に目を付けました。
そこは、環境があまりにも厳しく、欧米はもちろん、当時の清王朝すら見捨てたような土地でした。
ゆえに、清の支配は及ばず、いくつもの軍閥や馬賊たちが跋扈(ばっこ)する地でした。
清を倒した孫文の辛亥革命の後、蒋介石率いる国民党が中国の覇権を握り、満州国をめぐって日本と衝突しました。
しかし、満州国建国の翌年(昭和8年)、日中両国は塘沽(タンク)協定を結び、戦闘は停止されました。
この協定で、国民党政権は、満州国を黙認したことになりました。
しかし、国民党政権は満州を諦めたわけではなく、国内の共産党勢力を抑え込むことを優先し、その後に、再び日本と戦うという方針でした。
 
そこで、当時の日本外相・広田弘毅は、中国に対し「和協外交」を提唱し、その効果で日中両国は、それぞれの公使館を大使館に格上げしました。
このように、広田弘毅は戦争反対派でしたが、戦後、A級戦犯として文官でただ一人絞首刑となりました。
彼の生き様は、小説やTVドラマなどでも取り上げられましたが、戦犯というより戦争の犠牲者の一人というべきかもしれません。
彼は、他のA級戦犯とともに靖国神社に合祀されましたが、孫の広田弘太郎氏は「広田家は同意していない」と語っています。
戦死者を祀る同神社に、戦死者ではないA級戦犯を合祀した裏に何があったのかは別に論じたいと思いますが、この合祀は行うべきでなかったことは確かです。
 
広田に対しては、戦争反対と言いながら陸軍に妥協してきたという批判もあります。
しかし、当時の陸軍の力を思えば、妥協もやむを得なかったと思います。
東京裁判では、広田の死刑に反対する判事が何人も出て、主席判事のキーナンまでが「広田は終身刑が妥当」と言っていましたが、結果は死刑でした。
東京裁判の闇とも言うべき、この判決の裏もいつかは解明すべき問題だと思います。
 
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┃◇抑止力という名の軍事力(18)                 ┃
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中国による台湾威嚇が異様なエスカレートを見せています。
台湾の防空識別圏へ侵入する中国軍機の数は、戦争一歩手前の状態にまで膨れ上がっています。
台湾の国防部長は、軍事的行動をエスカレートさせている中国について「4年後にも台湾を侵攻する能力を備える」と警戒感を示しました。
 
今の中国には他国と対話する気はまったくないようです。
尖閣諸島への中国公船の領海侵犯も、海底ガス田の開発も、さらには南シナ海の埋め立てや軍事基地建設などもすべて、自分たちの当然の権利であり、他国にとやかく言われることは内政干渉だと、頑なに主張するだけです。
 
習近平主席は7月の中国共産党創立100周年記念式典の演説で、以下のように述べました。
「中華民族には5000年の歴史で形成した輝かしい文明がある。師匠のような偉そうな説教は絶対に受け入れない」
欧米が人権問題を盾に批判していることに対する強硬な反発でした。
 
ただし、中国のこうした強行姿勢は、国際社会の批判を気にしていないのではなく、逆に相当に気にしていることの裏返しでもあります。
外国から国内の問題点を指摘され、それを認めれば、共産党が誤りを犯したことを認めることになり、一党支配の正統性が揺らぐことを恐れているのです。
ゆえに、国際社会の批判は、わずかであっても決して認めることはできず、かたくなな態度を取らざるをえないのです。
 
しかし、「自分たちの主張は絶対に間違っていない、ゆえに話し合う必要はまったくない」という姿勢では、外交が成り立ちません。
「内政干渉だ」という言葉で他国の主張に耳をかさず、対話を拒否し、自分たちの正当性のみを主張するという、あまりにも頑な中国外交が変わらないことで、「中国とはまともな会話ができない」という空気が国際社会に広がってきています。
貿易利権により中国に融和的であった英国やEU各国も距離を置き始めています。
それでも、本格的な介入姿勢を見せる英国は例外として、EU各国は旧式な小型艦艇を送るだけで腰が引けています。
そのことを見透かしている中国は、強硬姿勢を決して緩めようとはしません。
 
台湾に対し執拗な驚異を与えることを繰り返し、台湾国民を不安にさせることが、中国の今のところの狙いです。
台湾の蔡英文政権は、その点をよく国民に説明して理解を求め、不安を極力抑えることが大事です。
そのような外交と内政の一体化を進め、まずは国民の不安を抑えていって欲しいと思います。
 
そんな中国が一番気にしているのが、新政権に変わった日本の防衛戦略です。
しかし、問題は日本政府の弱腰ぶりです。
松野博一官房長官は、「動きの一つ一つへのコメントは差し控える」とか「台湾海峡の平和と安定が重要で、情勢を注視している」と、へっぴり腰丸出しの姿勢です。
この姿勢が、岸田首相の外交姿勢の代弁なのかは、まだ分かりません。
今後、岸田首相が、中国の行動に対し、はっきりとクギを刺させるかどうかを見ていきます。
朝日新聞ですら、「台湾海峡 危うい挑発を憂慮する」との社説で「何も言わず台湾の人々に脅威を与える。進入の既成事実を重ねて『常態化』していく。(中略)そんな手法はただちにやめるべきだ」と主張しているのですから。
 
日本は、中国がもっとも嫌がる抑止力の強化で、台湾を側面支援すべきです。
その最も有効な手段は、世界最優秀とされる潜水艦隊の強化です。
過酷な水圧に耐えて深海に潜航するには、艦体を覆う強靭な鉄鋼が必要ですが、最高度の高張力鋼を造る技術は、日本にしかありません。
双方の潜水艦の限界潜航能力は、推測に過ぎませんが、中国400m、日本800mぐらいの差があります。
さらに静粛性や相手艦を探知する能力などにおいても、日本は世界で群を抜いています。
 
日本は、現在の22隻体制を倍増するくらいの配備計画を立てるべきです。
問題は乗員の確保ですが、最新鋭の「たいげい」は、IT化が進み、従来型の半数程度の人数で運行できるということですから、乗員不足は補っていけるでしょう。
こうした計画を発表するだけで、中国の行動に対する大きな抑止力となるのです。
 
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┃◇原発の再稼働(その4)                     ┃
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原発には毎年、原子炉を停止して定期点検を行うことが義務付けられています。
その間、原子炉は停止しているとはいえ、核燃料は装填されたままであり、膨大なエネルギーと放射線を出し続けます。
ゆえに、原発内は真夏以上の暑さです。
我々は、そうした暑さと放射線の環境下で、密封した防護服と全面を覆うマスク姿で作業するのですから、放射線調査作業は、過酷な仕事でした。
 
当時、リーダー2人を除くチーム全員が20代だったのは、体力勝負の仕事だったからです。
しかも、特別チームだった我々は法律の外の存在だったため、本来違法な昼夜兼行の作業を強いられました。
あくまでも「個人の自主判断」という建前の下で。
今もって世間には全く知らされていない、こうした作業がどのくらいあったのか、我々でも全容は伺いしれない世界でした。
 
20代とはいえ、メンバーはそれぞれの分野の専門家であり、原子力施設での経験も知識も豊富でした。
それゆえ、レベル4エリア外でのストロンチウム90の検出が何を意味するかは分かっていました。
間違いではないかと分析を繰り返し、その結果を詳細に検証しましたが、結果は変わりません。
 
しかも、以前にも言及しましたが、リーダー2人が対立したあげくに両名とも離脱するという最悪な状況の中でした。
リーダー不在の中で、我々は、この結果を東電側の責任者に報告することにしました。
責任者は、何度も「間違いではないか」と我々に問いただしましたが、詳細な検証結果を見せた後は黙ってしまいました。
その後の東電側の動きは、我々には、まったく分かりませんでした。
数日後、呼び出した私に向かって、その責任者はこう問いただしました。
「この調査および検証結果は、私に報告したものが全てですか?」
「コピーも取っていないですね?」
その問いかけに疑問を持ちましたが、私は「はい」とだけ答えました。
すると、彼は「このことは一切忘れてください。『何も問題はなかった』が結論です」
 
これが、東電というより大企業の体質なのだということは理解していました。
当時の私の所属会社も大企業で、似たような体質でしたから。
私は「分かりました」というしかありませんでした。
 
しかし、私はウソをついていました。
一部だけコピーを取っていたのです。
気心が知れたメンバー数人に、ことの顛末を話し、口外すれば、それぞれの所属会社だけでなく、我々にも害が及ぶことを話しました。
一人が冗談めかして言いました。
「このコピーを共産党に渡したら、どうなるかな」
私は、こう答えました。
「日本中の原発が止まるさ。内閣が倒れるかもしれないぞ」
みな、黙りこくってしまいました。
 
結局、我々は、このことは会社にも報告せず封印しました。
告発する気持ちがなかったわけではありません。
しかし、未来のため、原子力の研究・開発を止めてはいけないという思いが強かったのです。
あれから30数年後に、我々が働いていた福島第一原発の事故が起きました。
あの時、告発して原発を止めていたらと思うことはありますが、後悔はありません。
原子力行政には疑問だが、原子力開発そのものを止めてはいけないと思うからです。
私は、過去より未来を見つめていきたいのです。
 
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<編集後記>
報道では常に「各種調査で断トツの人気を誇る」と言われていた河野太郎氏。
そして、同様に国民に人気があると報道されていた石破茂氏と小泉進次郎氏。
彼らが組んだ総裁選は、惨敗といえる結果でした。
この「人気がある」と報道されていた「各種調査」とは何なのでしょうか。
私は、世論調査そのものが、「報道機関の無責任な垂れ流しではないか」と疑問を持っています。
上記の3人を好きだという声が私の周りからは聞こえてこなかったからです。
かろうじて河野太郎氏を評価する人はいますが、他のお二人は皆無に近い状態です。
 
さて、今度の衆院選、報道各社はどう予測するでしょうか。
 
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