2020年9月15日号(国際、政治)

2020.09.16


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年9月15日号
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発行日:2020年9月15日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2020年9月15日号の目次
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◇安倍首相の辞任から垣間見えたこと
◇菅政権の政策は
◇中国の思考法を学び、対処する(3)
◇抑止力という名の軍事力(5)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
与野党の代表選挙が重なりましたが、当然ながら世間の関心は圧倒的に自民党のほうにあり、立憲民主党への関心は“ほとんどゼロ”でした。
そして、ほんのわずかなサプライズもなく、今までと同じ党首、同じ党名です。
つまり、新鮮味のまったく無い新(?)立憲民主党が誕生しただけです。
枝野代表は「政権を取る」と言っていますが、ご本人ですら信じていないでしょう。
かつて日本国民が期待した政権交代可能な「二大政党制」を無残に打ち壊してしまった反省は皆無なようです。
 
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┃◇安倍首相の辞任から垣間見えたこと                ┃
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安倍首相の突然の辞任劇、普段は闇の中にある政界の姿を束の間、見せた効果はあったようです。
新総裁の選出を差配したのは二階幹事長ですが、裏に青木元自民党参院会長がいて、両者のすり合わせの結果であることが推察されます。
 
数年前なら本命は岸田氏だったでしょう。
しかし、目の上のたんこぶを切れない弱点を抱えたままでは無理です。
支援を依頼した麻生氏にズバリ言われてしまいました。
「古賀を切れ」とです。
岸田派のかつてのボスで、今でも派内で厳然たる力を持つ古賀氏を切れない力の無さを露呈しては党内の支持は集まりません。
与党議員が欲している総裁は、とにかく自分を当選させてくれる人です。
同時に、敵に回せばどんな仕返しをされるか分からない怖さを持つ人です。
その両方の力を示せない岸田氏は首相になれるわけはないのです。
 
報道による世論調査では、常に「国民の人気が高い石破氏・・」と言われてきましたが、この世論調査にはいつも疑問を持っていました。
個人的な感想ですが、私の周りで、そのような声を聞かないからです。
回りくどい言い方、気取ったような喋り声、尊大な見た目などが、女性や若者の受けが悪い要因のようです。
党内では「後ろから銃を撃つヤツ」と言われていますが、それでは支持は集まりません。
 
ところで、ネットの調査では、河野防衛大臣がダントツの人気です。
つまり、若者の人気は圧倒的に彼に集まっているということです。
今回は辞退しましたが、まだ50代です。狙いは次でしょう。
新内閣の人事でどう扱われるかで、今後の彼の芽があるか否かが分かるかもしれません。
 
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┃◇菅政権の政策は                         ┃
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新首相になる菅新総裁の能力の多くは未知数です。
次の首相への“つなぎ役”という意見もありますが、それは早計でしょう。
対抗馬だった石破氏や岸田氏なら予想し易かった政策も、「安倍路線の踏襲?」と言われる以外はわかりません。
おそらく、ご本人も明確な政策はこれから考えるというところだと思います。
 
それでも、長年積み重ねた官房長官という職の経験や知見、人脈は菅氏の大きな財産です。
そうした情報の一端を知る機会がありましたが、「なるほど」と思わせるものがあります。
ここで書けないのが残念ですが、官僚にも深い人脈を持っているようです。
菅氏が、こうしたブレーンを巧みに活用していけば、一味違う政権運営ができるのではと思います。
もちろん、ブレーンの意見に振り回される危険も大いにありますが・・
ただ、現時点では断定的なことは何も言えません。
まずは、首班指名が行われた後の新首相としての所信表明、そして組閣内容を見てから論評したいと思います。
 
と書いたところで「将来は消費税を上げざるを得ない」との発言がニュースに載りました。
早速、野党から批判が相次いでいますが、私は「案外、正直な人かもしれないな」と思いました。
しかし、それは単純な評価というわけではありません。
“正直さ”は人間としては評価すべき資質ですが、政治家としてはマイナス要素です。
もっとも、「正直さを装っている」としたら、プラス要素ですが・・
 
まったく未知数なのは外交能力です。
これまで安倍首相の影に隠れて外交の舞台ではまったく姿が見えなかった菅氏です。
だからといって、外交能力が無いとは言えません。
また、英語が不得意とも言われますが、絶対的な条件ではないでしょう。
英語が得意だった鳩山元首相の大失敗は、決して昔話ではありません。
当時のオバマ大統領に直接言った「Trust me」が、沖縄の基地問題を泥沼に引き込んでしまいました。
直接英語で言ったのでは「通訳がミスった」との言い訳もできません。
「英語が得意」が仇になったわけです。
日本国の首相です。日本語で通したほうが安全なのです。
 
外交は、軍事力と同様、国外に対する力の行使です。
外交は見える部分より見えない部分のほうが大きい力の行使なので、深い戦略眼が必要です。
軍事も同様ですが、外交よりは見える部分が大きく、分かりやすい力の行使です。
中国による尖閣や台湾への武力行使の危険が高まる中、新政権がどのような防衛策を打ち出してくるかに注目しています。
 
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┃◇中国の思考法を学び、対処する(3)               ┃
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今回のコロナ禍を契機に、ITによる監視社会化が世界的な動きとして進んでいます。
しかし、その動きや国民の受け入れ方は、各国の政治体制や民族感情、歴史的経緯、地政学的な位置などの事情が複雑に絡み合い、一律とはいえません。
今回は、海外と比較しながら、日本におけるITと監視社会について論評します。
 
コロナ禍の中で、ITを通じて国民の行動を強制的に吸い上げ監視する中国が一定の成果を上げたことは否定できません。
一方、一人ひとりの自由を束縛されることを嫌う米国では、コロナ拡大が容易に収まる気配がありません。
 
中国の歴史を俯瞰すれば分かりますが、この国は典型的な皇帝政治の国です。
近代に入り、孫文の辛亥革命において民主主義が提唱されましたが、ごく短命に終りました。
現代の習近平政権は、皇帝政治へ先祖返りした力で感染を強引に抑え込みました。
 
韓国や台湾は、内戦や戒厳令を経験した影響から、社会が一定の緊張状態を容認する傾向が強く、それが感染症対策に効果があったといわれています。
 
それに対し、英国から自由を求めて独立した米国は、自由こそ最も大事な概念との思想が社会に染み込んでおり、個人情報を国家に把握されることや個人行動を規制されることに激しい抵抗があります。
それが、行政機構による一律の感染対策を困難にさせ、大量の感染者を出してしまった要因です。
IT先進国である米国には、遥かに進んだ情報統制システムがあります。
しかし、中国のように国家がそれを駆使して国民情報を統制することは国民が許容しないというジレンマの中で苦戦を強いられているのです。
 
さて日本ですが、国民の意見はまとまっているとは言い難い状態です。
IT関係を中心に工学系の人たちの間では、新しいテクノロジーの「社会実装」を無条件で受け入れている中国社会を羨む傾向が生まれてきています。
さらに、テクノロジー面で中国に遅れを取っているという焦りも生まれ、「早急にIT化を進展させるべき」との意見が大きくなり、一気に監視社会化が進んでしまう可能性も出てきています。
 
その一方で、政府に批判的なマスコミや知識人、左翼とかリベラルと呼ばれている勢力の人たちの間では、戦前の「治安維持法」などを持ち出し、「国家による情報統制」を警戒する批判を展開しています。
そうした危険も考える必要はありますが、今回のコロナ禍で露呈したのは、日本の行政システムの前近代的な非効率さです。
コロナ対策の「一律10万円」の配布や企業に対する補助金の支給にしても、とにかく時間がかかっています。
この非効率さを見れば、国が国民の情報を把握していないことが分かります。
 
日本では、個人や世帯の情報を地方自治体が分散する形で管理しています。
そのため、「10万円支給」のような個人対象の一律支給においては、「国→自治体→世帯→個人」というステップを踏む必要があるのです。
「マイナンバー制度が行き渡れば・・」という声もありますが、情報管理が自治体任せになっている現状を変えない限り、たいした改善にはならないでしょう。
 
しかし、個人情報を国家が直接管理する監視社会化を国民が良しとするかどうかの問題があります。
私は、工学系出身で、50年以上システムに関わってきましたが、自分の情報をすべて国家に握られる社会には抵抗があります。
中国のような監視社会になることには、明確に「No」と言いたいです。
それにしても、テクノロジーの発達と個人のプライバシーは、永遠に対立する宿命なのでしょうか。
 
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┃◇抑止力という名の軍事力(5)                  ┃
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「無敵の盾」を意味するイージスシステムは、その名前のとおり防衛兵器です。
そのイージスシステムを搭載するイージス艦が、太平洋戦争の時代にタイムスリップして、ミッドウェイ海戦の只中に出現するという「ジパング」という名のコミックがあります。
作者は、一連の軍事コミックで人気の“かわぐちえいじ”氏です。
私は、本メルマガで何度か言及していますが、20代の頃、軍事システムの開発に携わったことがあります。
また、父や親族の元軍人から戦場体験を聞かされたこともあって、大戦中の文献を読み漁りました。
そうした経験や知識からみても“かわぐちえいじ”氏の作品の描写はリアルで「すごいな」と感心しました。
同時に、登場人物たちの迷いや苦悩も克明に描き、バランス感のある作品になっていると思います。
 
「ジパング」の話に戻りますが、登場するイージス艦の防御兵器は、75年前の世界ではまさに無敵です。
戦艦大和の主砲砲弾すら撃ち落とす能力は、架空の話とはいえ、科学的に立証できる話です。
また、たった一発の巡航ミサイルで航空母艦を撃沈するシーンも出てきます。
そうなのです。
無敵の防御システムは、また無敵の攻撃兵器です。
武器を防御用、攻撃用と分けることはナンセンスです。
もとより、兵器に意思はありません。
それを使う人間の意思によって、防御兵器になったり攻撃兵器になったりするだけです。
 
「だから、兵器なんて無くせば良い」と、絶対平和主義の人々は言います。
そうですね。
たしかに一切の武器を捨てれば攻撃はできなくなります。
一方、他から攻撃されたら、座して死を待つだけになります。
「どちらが良いか」などは、無意味な論争です。
 
「抑止力としての軍事力」は、もちろん武器を捨てることではありません。
敵対国が攻撃をためらうだけの武器を持つことを意味します。
絶対平和主義者は、それは限りない軍拡競争になると批判します。
たしかにその通りですが、無限の軍拡競争は続けられません。
必ず、一定の線で均衡します。
しかし、これは“危うい均衡”で、核兵器競争がエスカレートした冷戦時代、「人類はダモクレスの剣の下にいる」と言われていました。
髪の毛1本で吊るされた鋭い剣が頭上にあるという古代ギリシャの話から取った警告ですね。
 
さすがに恐怖を感じた米ソ両国は、条約を結び、核兵器の数を互いに減らしました。
しかし、世界を破滅させるのに十分な量までしか削減はできませんでした。
その後、核兵器保有国が増え、条約に入っていない中国が核大国に成長するに伴い、この条約は無意味となってしまいました。
抑止力としての核兵器の魅力は大きく、韓国民には北朝鮮を羨む機運がかなりあります。
日本でも、公然と核兵器保有を唱える人たちがいます。
また、日本政府が核兵器禁止条約を批准しないことを非難する声もかなりあります。
政府は、米国の核兵器を抑止力として使っている日本は批准できないという見解です。
双方の見解が離れすぎて議論ができない状態になっています。
議論ができないこと、それが一番の問題だと思います。
 
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<編集後記>
テニスの大阪なおみ選手の全米オープン2度目の優勝は、人種差別問題などを提起した側面もありますが、アスリートとして、一気に成長した姿を見せました。
短期間でこれだけの進化を遂げたことに驚きです。
表彰式で、彼女の後ろに大きな日の丸がひるがえっているのが映し出されました。
「日本の選手が優勝したんだな」との思いを改めて感じました。
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