2018年1月31日号(経済、経営)

2018.02.16

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年1月31日号
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                発行日:2018年1月31日(水)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2018年1月31日号の目次
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★円安ドル高は一時的な現象か
★自由主義国vs中国の経済戦争
★ボッタクリ商売の行末
◇日本経済は新次元の入り口にある(その7)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
草津白根山が噴火しました。亡くなられた方が出て沈痛な思いです。
このスキー場は、若い頃、毎年一人合宿をしていた思い出の場所です。
草津温泉の宿泊キャンセルが2万人も出たとのこと。
不安な気持ちは分かりますが、温泉は安全です。
久しぶりに行きたいと思いました。
 
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★円安ドル高は一時的な現象か
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2017年は112~113円台で推移していた円ドル相場が、1月に入り108円台に急騰している。
これが一過性の現象なのか、さらに深化していくのか、エコノミストの意見は分かれている。
 
日本経済が米国経済の動向に影響される図式は今も昔も変わらない。
ただ、現在は、両国の金利政策に単純に影響されていた時代とは違ってきている。
昨年から、日本の日銀にあたるFRB(米国連邦準備制度理事会)は、政策金利を段階的に引き上げてきた。
一方、日銀やECB(欧州中央銀行)は、マイナス金利と量的緩和政策を続けている。
従来的な分析では、とっくにドル高になっていなければならないが、現実は逆である。
 
エコノミストの中には、為替相場は金利差よりもマネタリーベースに影響されると主張される人もいるが、少数派である。
(マネタリーベースは、市中に流通している現金量ではなく、中央銀行が発行している通貨量です。つまり、日本では日銀に大量に積まれている金融機関の預金量も含まれます)
たしかに、近年のデータを分析すると、米国のマネタリーベースが増加するとドル安になり、逆はドル高になっている。
少数派の意見にも耳を傾ける必要はありそうである。
 
どうやら、トランプ大統領の誕生は、マスコミ報道とは逆に米国経済にはプラスに働いたようである。
製造業の業績は改善され、生産量が上昇し、輸出が拡大している。
昨年後半は、ともに前年比8~10%の増加となり、伸び率が加速してきている。
 
この経済上昇を支えているのは、2%に近づきつつあるインフレ率である。
(昨年末時点では、まだ前年比1.5%だが、少しずつ増加している)
そう考えると、日銀が必死になっているインフレ率2%達成は、重要な目標と言える。
しかし、日銀の手段の一つである金利政策は、マイナス金利となったことで限界が来ている。
もう一つのマネタリーベースの増加も、過剰なくらいに実行しているが、実態経済に回らず日銀の預金に戻っているのが現状である。
 
つまり、日銀にはもう打つ手がない。
一方、政府もなりふり構わず景気刺激の手を打っている。
安倍首相自ら経団連に3%の賃上げを要請するなど、政府が労働組合化しているくらいである。
予算規模も毎年「史上最高」を続けている。
 
しかし、円安ドル高が続けば、日本の輸出産業は打撃を受け、経済の足を引っ張る。
カギは、FRBのマネタリーベースといえそうである。
各国のマネタリーベースは、中央銀行の持つ総資産と深い関係があると言われている。
今後、償還を迎える米国債権を、FRBが再投資に回すか資産圧縮に回すかを見ていく必要がありそうである。
 
残念ながら、日本が短期に打てる手は、あまり無い。
中長期的には、規制緩和により商売の門戸が広がり、実質的なマネタリーベースが増加することを期待したいが、マスコミや国会の「忖度騒ぎ」で、逆に規制が強化される傾向にある。
経済に弱い議員ばかりが増えて、「国会が幼稚園化している」と言うのは、言いすぎであろうか。
 
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★自由主義国vs中国の経済戦争
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日本ではあまり報道されなかったが、WTO(世界貿易機関)の閣僚会議が開かれたアルゼンチンのブエノスアイレスで、1月12日、日・米・EUは下記の共同声明を発表した。
その内容は、「国有企業の優遇や鉄鋼などの過剰生産、外国企業への技術移転の強要といった自由貿易を脅かす行為に対し、連携して対応していく」という、明らかに中国を念頭に置いた声明である。
しかも、実際に中国が行っている行為に対して、共同でWTOへ提訴することも視野に入れているという。
 
たしかに、中国の国有企業は、事実上国家予算で運営されている超巨大企業である。
しかも、市場から外国企業を締め出し、残る企業に対しては技術移転を強制するなど、やりたい放題である。
かつて、日本が国家ぐるみで国内企業を優遇し、自由市場を歪めていると欧米から批判を受けたが、その大型版が今の中国である。
 
中国のこうした政策が、国有企業の過剰生産を招き、補助金に支えられたダンピングが、自由貿易市場を歪めているのは事実である。
ゆえに、こうした一党独裁国家による市場介入が自由貿易市場を疲弊させているという批判が起きるのは当然で、それが今回の共同声明発表に結びついたのである。
 
これに対し、当の中国の習近平主席は、あらゆる機会を捉えて「自由貿易の推進」と「WTO支持」を表明し、こうした批判を否定している。
さらに、アジアや中南米、アフリカ諸国といった発展途上国と徒党を組んで、自らの発言力を増そうとする政策に突き進んでいる。
一帯一路などは、その典型である。
 
しかし、欧米のエコノミストたちは、一様に「中国の美辞麗句を信じるな。中国が自由貿易の擁護者となるわけがない」と断じている。
米通商代表部のライトハイザー代表は、11日のWTO会議の演説で、「世界で最も豊かな国々が『途上国』を自称し、例外措置の恩恵を受けている」と、中国を念頭に批判した。
トランプ大統領がTPPへの復帰に言及したことも、こうした動きと無関係ではない。
自由主義国vs中国の経済戦争は、本格化する兆しが濃厚となってきた。
 
ただし、現時点での米国のTPP復帰は、11カ国での合意をすべて受け入れるのでなければ、認めるべきではない。
この合意は10カ国の日本に対する期待が結実したもので、安倍政権の一番の成果と言っても良い。
安倍首相は、そこを十分に考えて欲しい。
 
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★ボッタクリ商売の行末
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晴れ着のレンタル・販売会社の「はれのひ」が大騒ぎを起こした挙句、倒産となった。
同社の篠崎洋一郎社長の言い訳にもならない言葉は論外として、「晴れ着については素人だ」との発言には呆れた。
商売への思いではなく、ただ単に「この商売はボッタクリが出来る」と踏んで参入したということになる。
 
呉服商を営んでいる知人に聞いたが、昨今の業界は荒れていて「ボッタクリ」商法が横行していると嘆いていた。
そこで、「東京都中小企業種別経営動向調査報告書」に載っている呉服業界の売上原価率を見てみた。
それによると、1981年度64.2%だった原価率が2013年度には49.5%と大きく改善している。
小売業の平均が、だいたい60%台だから、驚くほどの利益を上げていることになる。
「はれのひ」の参入は、これが狙いであったということである。
 
その「ぼったくり」のからくりが海外への丸投げであることは、読者のみなさまにはお分かりかと思う。
実際、原糸の生糸は95%以上が中国産で、仕立ては東南アジアが大半なのである。
それなのに、晴れ着の末端販売価格は驚くほど高い。
 
たしかに、高付加価値経営は、多くの経営者の目指すところではある。
しかし、その経営方針が「価格を上げ、原価を下げる」ことだけに収斂してしまう危険がある。
こうした“品質の伴わない”高付加価値経営は「ぼったくり」経営となるのである。
 
知人の呉服商によると、この業界は、ご多分にもれず販売や流通での「中抜き」が多く、西陣などの高級着物を仕立てている職人でも、それほど給料が高いわけではないと言う。
100万円の着物も30万円の着物も、原価はそう変わらないという話であった。
しかも、売れ行きは100万円のほうが良いというのであるから、消費者にも責任がありそうである。
 
ただ、市場がどんどん細っているため、こうした「ぼったくり」はどんどんひどくなっていて、やがて業界は壊滅状態になるのではと心配していた。
 
弊社がある浅草では、多くの外国人観光客がレンタルの着物を着て闊歩しているが、その着物たるや、ひと目で安物とわかるひどさである。
それが、一日3500~3800円でレンタルされている。
クリーニング料や破損を考えても、あの品質ではボロ儲けだろうと思う。
 
日本の文化や伝統技能の高さを誇るTV番組が多いが、足元の現状は、とても誇れるような状態とは言えない。
文化財の世界の人たちの間には、以下のような自虐的ジョークがあるという。
「伝統と書いてボッタクリと読む」
 
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◇日本経済は新次元の入り口にある(その7)
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前述した「トランプ大統領の誕生は、マスコミ報道とは逆に米国経済にはプラスに働いたようである」という現実を考えてみた。
前任者のオバマ氏は、その人間性と格調の高さで人気があったが、外交、経済政策となると、及第点はつけ難いのではないか。
これに対し、トランプ大統領はオバマ氏とは真逆な大統領で、人間性は最悪ともいえるイメージである。
しかし、経済の結果で判定を下せば、今のところはトランプ氏の勝ちとなる。
今年の中間選挙の結果が見ものである。
 
経済市場とはカネが支配する世界である。
そして、外交とは軍事力と経済力が支配する世界である。
つまり、国家とは「カネと軍事力」を土台とする機構であると言い切れるのではないか。
もちろん、普遍的価値としての人間性や人権を否定しているわけではないが、世界の現状を見ると、それとて、カネと軍事力によって支えられている側面がある。
その意味では、「カネの無い」北朝鮮が、乏しいカネで一番有効な軍事力を持つに至ったのも必然といえる。
トランプ大統領と米国経済の好調さの関係も無視できない現実である以上、日本の新次元の経済の参考になるのではないかと考えるのである。
 
新次元経済というと、すぐに、グーグルやアマゾンが思い浮かび、AIの時代が来ると短絡して考えがちになるが、そうは思えない。
AIがどれほど進化しようが、AIだけでは、情報以外の何も作れない。
AIは、現実に存在するモノ作りや実態のあるサービスなどを支援する役割に過ぎないのである。
 
映画のマトリックスのような世界を目指すのでなければ、大事なのは「実態として存在するもの」のほうである。
ゆえに、新次元といえども、1次産業や製造業、サービス業のリアル産業が主役になるべきである。
バーチャル世界のAIは脇役でなければならない。
 
私は、こうしたリアルな世界とバーチャルな世界が融合するビジネスこそ、新次元のビジネスと位置付けている。
アマゾンが既存のスーパーやコンビニの買収工作を始めているが、同じことに気付いたからではないか。
これから既存の商売との激しい競争(というより戦争)が始まるであろう。
 
我々中小企業は、こうした巨大資本の戦いには参入できない。
参入したとしても、尖兵として使われ、討ち死にするのが関の山である。
彼らが入って来られない山間の谷間のような市場を主戦場としていくべきである。
そこで力を蓄えた者同志が連合を組み、やがて盆地ぐらいは制圧できるようになれるであろう。
その上で、今までにはない新しい市場を築き、いつの日にか、平原を陣取る覇者に戦いを挑むことも出来る日が来ることを信じたい。
 
次回は、EV化と自動化が進む自動車産業の行末を論じてみます。
 

<編集後記>
仮想通貨が話題になり、犯罪も横行し出してきています。
過去を振り返ってみれば、ハイウェイカードなどのプリペイドカードも仮想通貨の一種でしたし、PASMOなどの交通カードもそうです。
それらのカードに比べて、ビットコインなどははるかに高額な取引になっています。
狙われるのは当たり前なのに、セキュリティの甘さが目立ちます。
「情報は必ず盗まれるもの」を肝に銘じていきたいものです。