2022年12月27日号(経済、経営)

2023.01.11


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年12月27日号
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発行日:2022年12月27日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2022年12月27日号の目次
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◇日銀の政策変更は経済の活性化につながるか?
◇中小企業は儲かっていない(1)
◇曲がり角の先の経済を考えてみよう(5):企業トップの責務
★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その6)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
今年も残りわずかですが、年が回ると2025年まであと2年となります。
何度も言及してきましたが、今は100年に及ぶ大転換期のカーブの中にあります。
目まぐるしく変わる世界の姿がその証拠といえます。
そして、このカーブの頂点の年、2025年はまもなくです。
政治や経済はもちろん、人々の価値観すら大きく転換していく新たな世界に入っていきます。
カーブの先をしっかりと見据えながら、舵を切り続けていきましょう。
 
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┃◇日銀の政策変更は経済の活性化につながるか?           ┃
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日銀・黒田総裁の突然の声明、市場関係者は完全に意表を突かれました。
長期金利の許容変動幅を従来の「プラスマイナス0.25%」から「プラスマイナス0.5%」に拡大するという政策変更は、一般の人にはピンと来ないかもしれません。
プラスマイナスと言っていますが、当然、プラス側に振ることが真意です。
つまり、「これから、金利が上がるぞ」という声明なのです。
そうした動揺を抑えるため、黒田総裁は、この修正は「緩和の持続性を高めるためだ」と述べ、金融政策の「出口戦略」ではないとの考えを強調しました。
ことさら「利上げ宣言ではない」と強調したわけですが、信じる人はいないでしょう。
 
今回のゲリラ的な声明は日銀の作戦勝ちといえます。
金利が低い時は国債の売却価格は高くなり、反対に金利が上がると国債の売却価格は下がります。
ゆえに、「日銀が金利を上げそうだ」の噂が出ただけで、国債を保有している投資家は、「金利が低い今のうちに売ろう」と考え、一気に国債売却の局面になるのです。
投資家は、日銀が利上げに追い込まれるのは時間の問題と考え、国債の売り崩しを狙っていました。
その動向を察知した日銀が、機先を制する目的で今回の発表を行ったのです。
結果として、投資家は完全に裏をかかれました。
「えっ」となり、慌てて売ろうとしても、もう遅いのです。
ゆえに「日銀の勝ち」というわけです。
投資家は「金利が上がるのは黒田総裁の退任後だろう」と考えていたので、虚を突かれたわけです。
 
企業は、「これから金利は上がる」と考え、経営計画に盛り込む必要があります。
「ウチは無借金経営だよ」と仰る方もいらっしゃるでしょう。
そうした経営姿勢を否定しませんが、企業経営に融資を組み込むことは必要と考えます。
借入れしていないと、どうしても市場金利の変動に鈍感になるというマイナス面と、金融機関との関係が希薄になるというマイナス面があるからです。
金融機関との関係も、自社の経営の歯車の一つと考えるべきではないでしょうか。
 
日本一の黒字企業であるトヨタは、借入金の多い企業でもあります。
27兆円の売上に対し、25兆円以上の有利子負債があります。
粗利の高い企業なら、売上額と同額の負債までは大丈夫という事例です。
インタレスト・カバレッジ・レシオなどの金融指標をしっかりと抑えた上で借り入れを行うことは健全な企業の証といえるのではないでしょうか。
 
このような理屈、読者の方には「釈迦に説法」でしょうが、だからこそ、考えて欲しいのです。
方向転換ともいえる今回の日銀の決定が、市場を動かす“きっかけ”になるかどうかをです。
そこに、自社にとってのチャンスがあり、またピンチの火種もあります。
ゼロ金利のままで経済が発展するわけはありません。
長く続いた経済停滞の中、金利負担が少ないことで、「利益はこのくらいでもいいや」という停滞マインドが経営層に定着してしまったキライがあります。
今回の黒田総裁の発表が、そうした経営者マインドを変えるきっかけになることを期待します。
ゆえに、「これから面白くなるぞ」と思ってこそ、真の経営者といえます。
 
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┃◇中小企業は儲かっていない(1)                 ┃
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中小企業の6~7割は赤字で、一番の要因は、中小企業の生産性の低さにあると言われています。
たしかに、製造業の労働生産性を「従業員1人当たりの付加価値」で表している中小企業白書の2022年度版を読むと、大企業は1180万円、中小企業は520万円となっていて、半分以下の数字です。
 
ただし、こうした統計データを鵜呑みにはできません。
経営者や財務関係者の方なら、ご存知でしょうが、繰越欠損金による税制上のメリットを享受するため、会計上赤字にしている企業が相当数あります。
赤字にすることで、法人税負担が減り、場合によっては還付金を受け取れますが、法的に認められていることなので、違法な経営というわけではありません。
また、弊社もそうですが、商品・商材を自力開発している企業は、開発の投資額が大きくなります。
(弊社の場合、毎年の投資額は売上の2~3割に及びます)
当然、新商品の販売初期は償却額が大きくなり赤字となります。
 
ただ、弊社のような企業は少数派であり、多くの中小企業は、大企業の下請けや仲介的な仕事が稼ぎの中心になっています。
(公共工事がかなりの比率を占める建設業界は、その点では恵まれていて、元請け比率が高いです)
 
ゆえに、こうした構図の中にある中小企業の労働生産性が大企業の半分という現実は当たり前といえます。
つまり、労働生産性の低さの一因は、元下関係での中小企業の立場の弱さにあるといえるのです。
これを“しかたない”と諦めずに、なんとか克服する経営を目指すべきではないでしょうか。
新年から、数回に分けてこの問題を掘り下げてみたいと考えています。
以下に、そのプロローグとして、私のサラリーマン時代を思い起こしてみました。
 
<プロローグ>
日本では、親も学校も、大企業に就職することを「勝ち組」のように自慢します。
この価値観は、昔も今も変わっていないと思います。
私が大学を卒業して勤めた会社は、大手コンピュータメーカーでした。
当然、親戚や近所の人からは「勝ち組」の一人として扱われました。
ところが、米国で研修を受けた時期に、大きなショックに見舞われました。
米国で最優秀な若者は、在学中に会社を起こしてしまうのです。
ハーバードを中退してマイクロソフトを起業したビル・ゲイツなどが、その典型的な例です。
次に優秀な者は、創業間もないベンチャー企業を選びます。
大学院に進む者も、日本に比べれば桁違いに多く、一般企業に入る者も、夜学で別の大学や大学院で学ぶことが普通です。
 
一緒に研修を受けた米国人の若者の中にはIBMなどの大企業の社員もいましたが、ほぼ全員が「いずれ起業する」あるいは、ベンチャー企業へ転職して、そこの幹部を目指すというのです。
そして「君はいつ起業するつもりか」と真顔で聞くのです。
 
私は激しいカルチャーショックを受け、「大企業に就職した」という小さなプライドなどは粉々に壊れてしまいました。
しかし、その後、帰国した日本は、米国から見ると化石時代のようでした。
残念なことですが、日本人の価値観は、この時代からほとんど進歩していないように感じます。
若者には「ケチな価値観に囚われず、自分の未来を磨き抜け」と言いたいです。
 
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┃◇曲がり角の先の経済を考えてみよう(5):企業トップの責務    ┃
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不動産投資を「やってはいけない」投資と考えていた稲盛氏にとっては、「自ら働いて得る利益」を尊ぶという原理原則が商売の鉄則なのです。
知っておられる方もいらっしゃると思いますが、バブル絶頂期の頃、都市銀行の支店長が稲盛氏に「不動産が値上がりしています」「皆さん土地を買って転売してもうけておられます」などと不動産投資を持ちかけましたが、稲盛氏は無視したといいます。
 
バブルがはじけて、不動産投資に手を出した多くの経営者が手痛い目に遭ったわけですが、あるメディアが稲森氏にその先見性の理由を聞きに来たそうです。
その問いに対し、稲盛氏は「(自分に)先見性があったのではない」「ただ、私は浮利を追うのが好きではありません。それだけのことです」と答えたそうです。
浮利を否定することは稲森氏の信念であり、同意する人もいれば、「それは違う」という人もいて当然です。
良い悪いではなく、選択の問題です。
 
経済発展には根本的な問題がついて回ります。
発展の結果、過剰貯蓄が起き、それを原資とする過剰投資が起き、その後に非生産的な債務の拡大が続きます。
しかも、この3つは、たいした時間差なしに同時発生的に起こるため、3つ全部を同時に解決する必要が出てきます。
ここまで来ると、一企業の経営の範疇を超え、国家としての問題解決が必要なレベルになります。
稲森氏もそうですが、日本には名経営者として伝説的な名声を得た経営者が何人もいます。
しかし、その能力を国家経営にまで広げた方はほとんどいません。
松下幸之助氏は、松下政経塾を起こし、若い政治家の育成に私財を投じました。
その一期生には、民主党時代に首相になった野田氏や外相になった前原氏等がいますので、一定の政治的足跡を残した経営者と言えます。
しかし幸之助氏は「松下党の結成を」という塾生の願いに応じることはありませんでした。
関係者から聞いた話ですが、幸之助氏は、当時の塾生たちの力量では到底無理と思っていたようです。
民主党政権の無惨な顛末は、幸之助氏の見立てが間違いではなかったということになります。
 
民主主義国における政治と経営の決定的な違いは、政治は民主主義でも企業経営は独裁主義だということです。
口で「ウチは民主主義的な経営をしているよ」と仰る方はいますが、そんなわけはありません。
経営トップあるいは筆頭株主の権限は、社員一人とは比べようもありません。
京セラだって、稲森氏の独裁経営で発展したのです。
こうした稲森氏の経営の裏側の話は無数にあります。
幸之助氏だって同様です。
カリスマ経営者の経営は、言い方は悪いですが、一種の宗教経営です。
経営者も社員も生身の人間であるがゆえ、そこにしか真に折り合う点が作れないということなのです。
特に、創業は地獄の縁を回るに等しい危険な挑戦で壮絶な戦いを強いられます。
絶体絶命状態に追い込まれた時、心の中で「神よ!」と念じた創業者は多いと思います。
無神論者である私にも、そのような局面がありました。
創業者が、どこか宗教的になっていくのは必然といえます。
では、二代目、三代目、あるいは四代目はどのような経営を目指すべきなのでしょうか。
簡単ではありませんが、来年の連載で書いていこうと思います。
 
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┃★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その6)        ┃
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突然、ゼロコロナ政策を転換した中国ですが、混乱が収まるかどうかは怪しい状況です。
中国政府は「死者ゼロ」という発表を続けていましたが、この発表を信じる国民はほとんどいないようで、ついに発表そのものを止めてしまいました。
こうした“いいかげんさ”の代償として、欧米のマスコミからは「1日3700万人の感染者」というような情報まで出てきて、こちらのほうが信用されかねない状況になっています。
中国政府は、こうした西側の情報に国民が触れないように、やっきとなってネット情報の消し込みを行っていますが、北朝鮮のようにネットを全面遮断するわけにはいかず、水面下では、どんどん“ヤバい”情報が広がっています。
 
そうした情報の一つに、若者の就職難の情報があります。
中国の2022年の大学新卒者は1076万人(この情報は確実)です。
日本は57万人ですから信じがたい数字です。
人口は、14億人vs1.2億人と11.7倍ですが、大卒者数はなんと18.9倍となります。
当然、「大学は出ても・・」という状況になり、就職率は2割にも届かないと言われています。
日本の大卒者の就職率95.8%という数字は、中国の若者から見たら羨望というしかないでしょう。
 
職に付けない若者も、生きていくための当座の収入は必要です。
そのため、個人タクシーの運転手やデリバリー配達員などで食いつなぐことが当たり前になっています。
そうした臨時的な職を含めても、若年層全体の失業率は20%近い数字が続いています。
若者の不満が爆発するのも当然です。
 
こうした状況に目を向けることもなく、中国政府はGDPの成長率5%を維持すると言っていますが、若者が希望を持てない状況で経済が活性化するはずはありません。
中国政府の公式発表は、もはや信用力を失っています。
古い成長モデルからの脱却が困難な一方で、新しい成長の原動力が見つかっていないというのが中国経済の現状です。
 
しかし、この経済苦境が習近平政権の瓦解につながることはなさそうです。
かつての天安門事件を思い起こしてみれば分かります。
当時のトウ小平主席は、欧米からの非難に対し、こう言い切りました。
「中国では100万人が死んでも“たいした”ことではないのです」
この言葉は真実を突いています。
現代は、国家の軍事力が強大になり過ぎ、国民の9割が政権打倒を叫んでも、軍部が反旗を翻さない限り独裁政権が倒れることはないのです。
北朝鮮やミャンマーなどを見れば、それは明白です。
 
独裁国家でも、経済力が衰えれば軍事力も弱くなります。
まずは、先端技術の盗用を徹底的に封じ込めるため、自由主義陣営のセキュリティの強化が必要です。
民間企業も、この強化を他人事と考えずに、経営戦略の上位に置くべきなのです。
 
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<編集後記>
政府はマイナンバーカードを交通系ICカードにまで広げることを閣議決定しました。
はっきり言って、反対です。
あらゆる情報を1枚のカードに集約することはとても危険ですが、その対処法が見えないからです。
また、IT化が日本より遥かに進んでいる韓国では、家計の債務がGDPを超える事態になっています。
まもなく来る経済減速の中で個人破産が増えるのは確実です。
日本政府は、この後を追うべきだと言うのでしょうか。
 
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