2021年1月15日号(国際、政治)
2021.01.31
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年1月15日号
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発行日:2021年1月16日(土)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年1月15日号の目次
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◇抑止力という名の軍事力(9)
◇中国の思考法を学び、対処する(7)
☆日本の役割
◇リベラルってなんだろう?
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
韓国の慰安婦問題の蒸し返し判決は、予想されたこととはいえ呆れた判決です。
この裁判は、48歳の裁判長が結論を先に作り、後は屁理屈を付け足すという、驚くべき内幕が暴露されています。
韓国という国の法治レベルの低さを物語っています。
左派系のハンギョレ新聞がこう書いています。
「慰安婦判決、韓日関係より『個人の市民権回復』に意味」
言い訳のような妙な記事で、日本の動向が気になるようです。
懸案の徴用工判決と合わせて韓国政府が動かなければ日韓関係は事実上の断交状態になります。
「国際司法裁判所への提訴」の姿勢を見せることは必要ですが、日本としては、「解決の責任は文在寅大統領にある」との姿勢を貫くことです。
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┃◇抑止力という名の軍事力(9) ┃
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前月号で、中国の「尖閣を奪取するぞ」という本気度が見えないと書きましたが、「今は・・」という枕詞(まくらことば)が付きます。
中長期的には、尖閣どころか沖縄も中国の侵攻目標になっています。
中国から見たら、第一列島線の基点である沖縄は、どうしても抑えておきたい戦略拠点なのです。
よく知られていることですが、中国の国防予算は日本のほぼ4倍です。
しかも、その差は広がる一方で、日本だけでは対処不可能なレベルになっています。
ゆえに米国頼みになっている日本の防衛ですが、その米国はコロナ禍の影響で国防費の増額は難しく、2027年に米中の軍事力は拮抗するという見方すら出ています。
日本も似たような状況ですから、防衛費を急激に引き上げることはできません。
そうなると、残る手段は軍事力の質的な充実です。
日本は2隻のヘリコプター空母を軽空母に改装することに着手しました。
しかし、これ以上の増強は意味がないです。
空母艦隊の増強は莫大な経費がかかる割には軍事的な意味合いは薄れてきています。
折しも、中国が無人とはいえ航行中の船に対艦ミサイルを命中させる訓練に成功したとの報が入ってきました。
まだまだ米国の空母艦隊には通用しないでしょうが、日本の軽空母には脅威となります。
空母は、政治的デモンストレーションの効果はありますが、日本の場合は、補完的な戦力にしかなりません。
防衛費で劣る日本が力を入れるべき兵器はミサイルと潜水艦です。
小惑星探査の“はやぶさ”の成功に見られるように、日本のロケット制御技術は超一流です。
建前としては「平和利用に限定」を貫きながら、非公式に軍事応用を進めるべきで、その噂(うわさ)を流すだけでも効果はあります。
もうひとつは、究極のステルス兵器である潜水艦隊の充実です。
潜水艦の数は日本22隻、中国60隻と言われていますが、日本は退役潜水艦を解体せず整備を続けているので、稼働可能な潜水艦は30隻と言われています。
さらに、日本の潜水艦の大半は騒音の少ない最新式です。
中国の潜水艦の性能はよく分からないことが多いですが、例えば、激しい水圧から艦体を守る鋼鉄の性能や溶接技術において日本に肩を並べているとは言えないレベルです。
推測ですが、最大潜航深度においては、1.5倍以上の差があると考えられます。
また、私の昔の体験から言えば、乗員の質と練度においても差があるように思われます。
日本は、中国に勝つことではなく、ミサイル防衛網の整備と潜水艦隊の増強で、中国にとって「攻めにくい」防衛力(つまり、抑止力)を備えた国になるべきです。
ただ、抑止力では済まない危険要素もあります。
中国が台湾侵攻に踏み切る時は、同時に、邪魔になる日本攻撃に踏み切ると考えられます。
それに対する抑止力は、日米同盟を軸とする多国間安全保障協議体「クアッド」です。
それは、また後の機会で述べるとします。
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┃◇中国の思考法を学び、対処する(7) ┃
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米国のラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ」は、「ワシントンには、ソウルが徐々に中国側へ傾きつつあるという疑念が存在する」と語りました。
また、キース・クラック国務次官は「中国は弱ったガゼルを狙う」として、韓国に警告のメッセージを送りました。
つまり、中国は韓国に狙いを定め、それを米国が警告したということです。
こうした米国の姿勢は、次のバイデン政権にも継がれていくと思われます。
かつて、オバマ政権は、北朝鮮問題の解決のために中国の役割を期待し、中国に甘い姿勢を取りました。
しかし、米国に取って代わって世界の覇権を狙う中国の姿勢が明らかになったいま、共和党・民主党を問わず反中国の流れが形成されています。
トランプ政権の反中経済ブロック「EPN(経済繁栄ネットワーク)」や中国けん制のため推進している多国間安全保障協議体「クアッド」、さらに華為技術(ファーウェイ)などの中国IT企業を排除する「クリーン・ネットワーク」などの政策は、そのままバイデン政権に受け継がれていくでしょう。
しかし、左派政権である韓国は、「クアッド」には背を向けていますし、「クリーン・ネットワーク」からも逃げ回っています。
文在寅大統領の真意は北朝鮮との一体化であり、その後ろ盾としての中国の力を頼りにしています。
中国は、自らの野望達成のため、韓国に中国寄りの現政権が存在し、さらには親中派の二階幹事長に牛耳られている日本の政権が続いている間に、東アジアの地歩を固める動きを加速させていくでしょう。
ナポレオンは「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」という名言を述べましたが、いまの東アジア情勢は、まさにその方向に向かっています。
こうした中国の思惑を砕くのは、韓国の国民であり日本国民の意思表示なのですが、危ない情勢です。
4月のソウルと釜山の市長選挙が韓国民の意志の確認であり、今年中に行われる日本の総選挙が日本国民の意志を問う選挙となります。
ただ・・、韓国はともかく、日本の野党に政権担当能力が無く、国民に選択肢のないことが最大の危機です。
私の兵法の師である故武岡先生の口癖、「バカな指揮官、敵より怖い」を実感として感じるこの頃です。
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┃☆日本の役割 ┃
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読者のみなさまは「ウエストファリア条約」なる言葉を聞いたことはありますか。
「そういえば、世界史の授業で聞いたような・・」と思い出される方もいらっしゃると思いますが、最初に、ちょっとした歴史の復習を。
西暦1600年代の前半、ドイツ連邦内で起きたカソリックとプロテスタントの宗教対立は、やがて欧州全域を巻き込む宗教戦争、いわゆる「三十年戦争」に発展しました。
この戦争を終結させた条約が1648年に締結された「ウエストファリア条約」です。
この多国間条約で、フランスとスウェーデンは領土を拡大し国際的な立場を強めました。
オランダとスイスは、この条約で独立が認められたので、比較的新しい国といえます。
さて、なぜ400年近くも前の条約の話を持ち出したかというと、この条約が、強国がそれぞれの勢力圏を切り分けるという、現代に至る国際条約の最初だからです。
日本周辺では、中国とロシアが手を組んだ軍事行動が目立ってきています。
日本や韓国の防空識別圏を、中露の爆撃機が編隊を組んで飛行するといったことです。
もちろん、日本や韓国への事前通告などは皆無です。
日韓の紛争の種の一つである竹島(韓国は独島と呼称)上空の領空侵犯も起きています。
こうした中露両国の枢軸的な行動が何を意図しているかですが、東アジアに「強者が勢力圏を切り分ける」
というウエストファリア条約的な秩序を作ろうとしているように思えます。
中国の習近平主席がオバマ前大統領との会談で、「太平洋を二つに分けて、それぞれを両国が支配しよう」と持ちかけたのも同じ線上にあります。
ただし、中国とロシアの関係は微妙です。
ロシアは、中国経済の成長に必要な石油とガスを安定供給してくれる相手です。
さらに、西欧式自由主義への批判に同調してくれる戦友でもあります。
しかし、ロシアとしては、中国の「一帯一路」が中央アジアにおけるロシアの覇権を侵食することは阻止したいし、中国の北極海航路を開く計画も、北極圏におけるロシアの利益を損なうことから阻止したいという思いがあります。
そうはいっても、経済力の低下が著しいロシアにとって、米国への対抗上、中国と手を結ぶしかないというジレンマの中にあります。
よく知られているように、プーチン大統領は、KGB(ソビエト連邦国家保安委員会)の出身です。
次の一手は考えているでしょう。
日本は、傍観を装いながら、プーチン戦略の研究と水面下での工作を活発化させるべきです。
ただし、軍事的対立が顕在化したときには「日本は間違いなく米国の側につく」とのメッセージ
発信は必須です。
「安保は米国、経済は中国で・・」などとのあいまいな姿勢は取ってはならないのです。
そして、米国とともに戦うための共同軍事訓練を活発化させることは、軍事同盟を結んでいる以上、当然のことなのです。
韓国のように、共同軍事訓練を拒否する姿勢は国を危うくする行為となります。
中国に対しては、こうした行動で日本の立場を明確に示した上で、米中間の危機回避の働きかけを行っていくことが日本に与えられた外交的役割です。
「外交は、戦争の一形態である」とのことを、政府は再確認して欲しいものです。
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┃◇リベラルってなんだろう? ┃
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一般的に、左翼的な思想を“リベラル”と呼びますが、「進歩的」とか「平和的」と捉える傾向が強いように思われます。
たしかに、リベラル派の人たちは平和を唱え、「憲法9条を守れ」、「集団的自衛権反対」を叫びます。
その点では、平和主義者といえるでしょう。
時折、街宣車に乗った右翼の人々が戦闘服に身を固め、大音量の軍歌を流していく光景を目にすることがあります。
そうした行動のせいで「右翼は暴力的」というイメージが一般には広まっています。
しかし、歴史を俯瞰してみれば分かりますが、右であれ左であれ、極端に走れば他の思想を認めなくなり、己になびかない者に対し攻撃的になり、やがて多くの血が流れます。
リベラル派が多く使う言葉に、民主、社会、国民、労働者などがあります。
日本の左派政党も、こんな名前が多いですね。
ところで、「国民社会主義ドイツ労働者党」という政党をご存知ですか。
歴史通な方でなくても、ピンと来た方は多いと思います。
そうです。あのナチスの正式な党名です。
この名前のとおり、社会主義を掲げる左翼政党として、ナチスは発足したのです。
その後のことは、説明するまでもありません。
こうした言葉は、言葉遊びのうちは害もありませんが、やがて人々を狂気の渦に巻き込む力があります。
多くの人は、平和を愛し、民主的な政治を欲し、市民の味方となる政治家を支持します。
しかし、そうした思いが「絶対化」してしまうと、そこから“外れている”とみなした人々を攻撃する意識が強くなります。
市民団体のデモに遭遇すると、「憲法を守れ」とか「働く者の権利を・・」といったシュプレヒコールが聞こえてきます。
デモを否定しませんが、怖さを感じることが本音です。
学校のPTAで、校長や教頭を激しくなじる保護者に遭遇したことがあります。
その方は、別の学校ですが、教員でした。
たとえ校長や教頭に落ち度があっても、人に対する礼儀は必要ですし、相手の事情にも配慮すべきと考えます。
教育者ならば、なおさらです。
マスコミが、リベラルを「進歩的、民主的」と表現することに違和感を覚えたので、少し論評してみようと考えました。
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<編集後記>
「自由」の英語には、LibertyとFreedomがありますが、その違いを考えたことはありますか。
日本語だと区別はありませんが、Libertyは「勝ち取った自由」、Freedomは「元来からある自由」という意味です。
有名な米国の「自由の鐘」はLiberty Bellと言いますし、1ドル銀貨にはLibertyの文字が刻印されています。
そうです。
米国では、幸福は誰かに与えられるものではなく、自分の力で勝ち取るものであり、「その自由があるということが幸福なのだ」ということで、Libertyが尊重されているのです。
「アメリカは、誰にも邪魔されず、自由な環境を提供する国として独立しなければならない」
これが、米国独立宣言の骨子です。
ところで、日本に建国宣言って、あるのでしょうか?
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