2015年10月15日号(国際、政治)

2015.10.16

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2015年10月15日号
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                発行日:2015年10月15日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2015年10月15日号の目次
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★予想どおりの結果に終わった米中首脳会談
★ロシアが中東に本格介入?
★戦争と平和(その12):戦争は平和より強し?
★新三本の矢
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題の号です。

この度、ご要望の多かったHAL通信のアーカイブスを用意しました。
昨日できあがったばかりのサイトで、まだ内容が不十分ですが、これから更新していきます。
以下のアドレスにアクセスしてみてください。
http://magazine.halsystem.co.jp

安倍政権は、安保法案とTPPという2つの大きな山を相次いで越えました。
これで、国内政局は来年の参院選(衆参同時選挙?)まで無風状態となります。
賛否はともかく、この2つがこれからの日本の政治・経済運営のベースになっていくわけです。
今後も、冷静な目で論理的な分析を心がけていきます。

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┃★予想どおりの結果に終わった米中首脳会談            ┃
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先月の米中首脳会談は、予想どおり何の成果もないまま終わり、既に忘れ去られた感がある。
つまり、ニュース価値ゼロだったわけである。
習近平国家主席にとっては、今回の訪米は米国に対し中国の存在感を認めさせることが目的だったわけだが、米国は、ローマ法王の訪米を同じ日程にぶつけるという意表をつく手段に出た。
この狙いは当たり、米国のマスコミの紙面はローマ法王の話題で埋まり、習近平主席は完全にかすんでしまっていた。
しかし、米国にしても、打てる手はここまで。
サイバーテロの問題もうまく逃げられ、何の成果もなかったことは中国と同じである。

歴史的に見て、国家間の対立が頂点に達すると、相手に制裁を加えたくなる。
最も単純で、かつ即効性の高い制裁手段が軍事発動であるが、大国どうしの場合、全面戦争に陥る危険があるため、そうそう使える手段ではない。
現代では、もっぱら大国が小国をいじめる手段として使われる程度である。
中国やロシアが軍事的圧力を掛けている相手は、いずれも小国であり、かつ大国と軍事同盟を結んでいない国である。

中国は、日本に対しても、尖閣で嫌がらせのような領海侵犯を繰り返しているが、海軍の軍艦による侵犯はない。
日本の軍事力が侮れないレベルにあり、かつ日米安保同盟がある故である。
これが日本を取り巻く冷徹な事実である。

実は、軍事よりももっと効果の高い制裁手段がある。
そう、経済制裁である。
イランやキューバが米国の軍門に降る形で国交回復に向かっているのも経済制裁の効果である。
70年前、敗戦続きだったとはいえ、まだ1万機の戦闘機と600万人以上の軍隊を有していた日本が降伏したのも、経済制裁により経済が崩壊し、国民生活が成り立たなくなったためである。

いま、世界で経済制裁をリードできる国は米国だけである。
米国が世界経済および金融の世界の中心に位置しているからである。
米ドル以外の国際通貨(ユーロ、英ポンド、円)を持つ国は、すべて米国の同盟国である。
この力で、米国は軍事大国ロシアに対しても経済制裁を加え続けていて、ロシアは真綿で首を絞められるように窒息しかかっている。

しかし、米国が経済制裁をかけるには、中国は経済的に大きすぎ、その影響が米国にも跳ね返ってきてしまう。
もちろん、中国に米国に対し経済制裁をかける力はない。
こうして、米中両国は、戦争も出来ない、経済制裁も出来ない、だけどイデオロギーが違い過ぎて双方の帰着点を見出すことは出来ないという膠着状態にある。
先月の無意味な米中首脳会談が、そのことを浮き彫りにしただけの結果に終わったのは当然である。

ただ、ここにきて、中国経済が失速するかもしれないという懸念が出てきている。
このことは、米国が比較優位に立てるチャンスといえるが、失速の火の粉は米国にも及ぶ。
歓迎するとは言えない難しさがある。

では、この二国に挟まれた日本には、どのような戦略の選択肢があるのか。
ここで選択を誤ると、両国間に埋没することになりかねない。

この続きは、別の号でお送りするとします。

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┃★ロシアが中東に本格介入?                 ┃
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ロシアは、米国の虚を突いて、突如シリアへ軍事介入した。
前章で言及した、米国のロシアに対する経済制裁に風穴を開けることを狙ったプーチン大統領の賭けとも言える。
はた目には、突然の軍事介入に見えるが、ロシアは用意周到な準備を重ねてきた。
その上で、過激派組織イスラム国(IS)の情報を共有する「統合情報センター」の設置という大義名分でイラン、イラク、シリアの3カ国と合意に達し、間髪をいれずにシリアへ軍事介入した。

オバマ政権は「統合情報センター」の設置までの情報は掴んでいたと思われるが、ロシアの軍事介入までは読めていなかった。
このことは、オバマ政権の情報リテラシー(情報を自己の目的に適合するように使用できる能力)の劣化が相当に進んでいる現れといえる。
この先、米国におけるオバマ政権のレイムダック(終末現象)化は進み、来年の大統領選挙にも影響が出ると思われる。

この4カ国による「反IS連合」が、米国主導の「有志連合」に対抗するものであることは明白であるが、米国にはイラクの参加が衝撃である。
イラクは、米国から13億ドルに及ぶ巨額の軍事支援を受けている。
米国にとっては「飼い犬に手を噛まれた」どころか、完全な裏切り行為であり、オバマ政権の外交的失態である。

最近、イスラム国(IS)が勢力を盛り返しているという情報もあり、反アサド勢力も一定の軍事力を有している。
この構図に、米国とロシアのつばぜり合いが加わり、中東情勢は四つ巴の混迷の度合いを深めていくと予想される。

ロシアのシリアへの軍事力展開は、陸上兵力を含む相当な規模に達するとの見方が有力である。
プーチン大統領は、欧米による経済制裁により疲弊するロシア経済の打開を狙って、大きな賭けに出た。
しかし、かつてのアフガニスタン侵攻の二の舞いになる可能性も大きい。
この先のロシアの出方に注目する必要がある。

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┃★戦争と平和(その12):戦争は平和より強し?         ┃
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多くの人は「平和を望んでいる」と言いながら、「戦う」という言葉を気楽に使っている。
マスコミも、煩雑に「受験戦争」とか「選挙に出陣」とかの言葉を好んで使う。
我々も、違和感なく戦争用語、軍隊用語を使っている。

それに比べて「平和」という言葉は、普段はあまり使わないのではないか。
いや、使うことに抵抗を覚えるのではないかとすら思う。
会社の会議で、「今度のプロジェクトは決戦であり・・」との発言を聞いても違和感はないが、
「今度のプロジェクトは平和的に推進したい・・」との発言を聞いたら、どう思うであろうか。
「何を軟弱なことを言ってるんだ!」と、激の一つも飛ばしたくなるのではないか。

誤解を恐れずに言わせてもらえば、私は「平和」という言葉が好きでない。
どこかうそ臭くて、偽善にしか聞こえないのである。
ビジネス社会の中で生き抜いてきたせいもあるが、自分ではまず発言しない単語である。

もし、部下が「私は平和的に仕事がしたいです」と言ったら、「バカを言うな」とまでは言わなくても、
心の中で「こいつはダメなヤツだ」と烙印を押してしまうだろうと思う。

しかし、だからと言って、自分自身を特殊な好戦的な人間だとは思わない。
また、そのような発言をする人を好戦的な危険な人間とも思わない。

もちろん「戦争」という言葉も好きではないが、「平和」よりは使っていると思う。
どうして、「平和」という言葉が好きになれないのであろうか。
反対の意見の人がいたら、ぜひ意見を伺いたいと思う。

高校生の時に、トルストイの「戦争と平和」を読んだ。
読後の感想は「戦争と戦争」であった。
米ソで映画になった2作品は、両方とも鑑賞した。
大人になっていたので「愛情が平和のことなのか」と思ったが、「戦争」のシーンのほうがより鮮明で、戦争は人生そのものであるかのような印象を持ってしまった。

イメージとして、「戦争は平和より強し」なのではないか。
しかし、その思いを強く持ち続けることが「戦争を回避する」ことに繋がり、平和を声高に叫ぶほど「戦争の危険が増す」のではないか。
孫子の言う「戦が戦を止む」も同義ではないかと思う。

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┃★新三本の矢                        ┃
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安保関連法案を9月の連休前に通した安倍首相は、余裕を持って「経済重視のアベ」を売り出してきました。
その第一弾が「新三本の矢」です。
枕詞(まくらことば)に、「一億総活躍社会」と銘打った三本の矢とは、
1.希望を生み出す強い経済 (GDP600兆円を目指す)
2.夢をつぐむ子育て支援  (希望出生率1.8)
3.安心につながる社会保障 (介護離職ゼロの実現)
です。

正直な感想を言えば、「・・・」です。
あまりの陳腐さに、声も出ません。
また、「GDP600兆円を目指す」と「介護離職ゼロの実現」といったような、アンバランスな目標の組み合わせに、首をかしげるばかりです。

安倍首相は、枕詞の「一億総活躍社会」がよほど気に入ったのか、担当大臣まで任命しました。
ますます「・・・」です。
しかも、この大臣は、一億総活躍の他に、拉致、女性活躍、再チャレンジ、国土強靭化、少子化対策、男女共同参画の担当大臣も兼務するという、実に盛りだくさんの内容です。
私は「千手観音大臣」と命名したくなりました。

当の加藤勝信大臣の就任演説を聞きましたが、「全力で取り組む」、「身を引き締める」、「チャレンジング」といった言葉が多く、ご本人も戸惑っている感じを受けました。

新三本の矢で、がっかりしたことがあります。
一番大事なことが、みごとに抜け落ちていることです。
それは、「規制撤廃」そして「官僚機構の構造改革」です。
この2つは密接にリンクしています。
だから、「規制撤廃」こそが「官僚機構の構造改革」につながる道なのです。

安倍首相は、第1次内閣で果敢に「公務員改革」に挑戦しましたが、官僚の強固な抵抗にあって頓挫し、体調を崩し、退陣を余儀なくされました。
そのトラウマは強烈だったようで、官僚機構の構造改革には未だに消極的です。
今回も期待を裏切られました。

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<編集後記>
フォルクスワーゲン問題で揺れているドイツに対し、日本人は同じような技術立国として親近感を持っている人が多いように思います。
しかし、ドイツ人は、そのような親近感を日本に対して持っていません。
ドイツ人の米国嫌いはよく知られていますが、日本のことも決して良くは思っていません。
フォルクスワーゲンの不正が発覚したとき、ドイツの公共放送ではこんな放送が流れたと言います。
「今回の事件で、他国のメーカーが『ワンダフル』と言いながら、この隙間に入り込んでくる。例えばトヨタだ」
自分の非を認めるどころか、トヨタを名指しで、何の根拠もない批判を繰り広げたのです。
過去に、ドイツ人と仕事をしたことがありますが、今回のような大きな問題が起きると、ドイツ人はヒステリックになる傾向があります。
ヒトラーが生み出された背景は消えてはいないのです。
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