2023年9月30日号(経済、経営)
2023.10.02
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2023年9月30日号
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発行日:2023年9月30日(土)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2023年9月30日号の目次
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◇税金を考える(1)
◇国の経済の舵取り
◇企業にとっての借入金(5)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
賛否両論の中でインボイス制度が始まりますが、19日に経団連の十倉会長が「消費税率を2025年までに19%にまで引き上げることが必要」と発言しました。
経団連所属の企業は大企業であり、海外への輸出度の高い企業が多いです。
輸出品には消費税がかかりませんので、下請けなどへ払った消費税の還付を受けています。
この輸出還付金の総額は22年3月期で6兆6千億円と、消費税収入26兆円の25%にもなります。
これで、消費税が19%になれば、この還付金がいくらになるか、大企業は笑いが止まりませんね。
なるほど、十倉会長は「正直な方ですな~」と言いたいです。
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┃◇税金を考える(1) ┃
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消費税は「消費者が負担する税金」であることに間違いはありませんが、消費者が税務署に直接納めるわけではありません。
消費者から消費税を受け取るのは店舗や企業などですから、この段階では「預かり税」です。
ですが、この預かった税金をそのまま税務署に納めるわけではありません。
(読者のみなさまには、釈迦に説法の話ですが)
お店や企業は、仕入先や外注先、あるいは様々な相手に経費や交通費を支払っていますが、その際に消費税を一緒に払っています。
これは「預け税」ということです。
つまり、企業等が税務署に納めているのは「預かり税-預け税」の差額ということです。
お店や企業が税務署に納付するのは、このように「預かり税の余り」なので、納付するのが当たり前です。
しかし、消費税の導入には大変な反対が起き、時の竹下政権はびびっていました。
なにしろ、この税の導入を掲げたことで、大平内閣、中曽根内閣と2つの内閣が倒れ、大平首相は間接的ですが、心労から命まで落としたのです。
竹下内閣がビビったのも無理はありません。
その結果、「零細業者は、納付せずに懐にいれて良いですよ。つまり、消費税を導入するとあなた方は儲かるのですよ」と甘い言葉で丸め込んだわけです。
導入された平成元年(1989年)の4月1日から34年が経ち、財務省の官僚も代替わりしています。
導入時には在籍していなかった(いても責任のなかった)現在の財務省幹部は、「もういだろう」と考え、いよいよ、この特権を取り上げることにしたわけです。
消費者から預かった税金である以上、これを納めるのは当然のことです。
しかし、今や特権というより“当然”になっている「懐に入れて良い消費税」を「納めろ」と言うのですから抵抗は大きいわけです。
もう一つ、消費税が抱える根本の問題があります。
消費税は、法人税や所得税と違い、累進性のない税です。
つまり、零細な個人事業者であろうと1兆円を超える巨大企業であろうと、税率は同じということです。
もちろん、簡易課税制度や少額特例などの零細業者や小企業に対する救済処置を設けましたが、企業規模による累進性が無いという根本は変わりません。
消費税は、収益に対する税金ではなく、あくまでも「預かり税」なので、企業規模には無関係であり、原則としては公平な課税なのです。
しかし、日本のように「元請け優位の商慣習」がある国では、下位にいくほど「値下げしろ」とか「消費税を負担しろ」というような圧迫を受けます。
こうした悪質性はなくても、元請けとしては「インボイスを取らなければ、消費税を自分が立替えすることになる」というジレンマを負います。
つまり、誰もが満足する解決策はないのです。
ゆえに、デフレ脱却がまだ中途半端な状態の今の日本で実施するには無理があります。
好景気になるまで延期するか、消費税を下げてから実施すべきだといえます。
しかし、上記のどの策も時間切れの現在、経過を見ていくしかないということです。
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┃◇国の経済の舵取り ┃
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国家にとり望ましい経済成長とは、消費と収入の双方がバランス良く伸びていき、企業と個人の双方に投資余力が生まれて再投資が循環する経済成長です。
この原則、北朝鮮のような独裁国家には当てはまりませんが、自由主義国はもちろん、社会主義国にも当てはまります。
今のロシアの苦境は勿論、習近平主席の独裁体制が強まっている中国の行き詰まりは、この原則を無視していることにあります。
では、令和の日本はどうでしょうか。
デフレ経済から脱し切れていない「いびつな形」の日本経済に対し、岸田首相は「貯蓄より投資を」と呼びかけるだけで、根本の対策は打てていません。
失礼だが、首相は、少々経済の勉強が足りないのではないかと思います。
また、閣外に優秀なブレーンはいないのでしょうか。
金融機関は、集めた預金を金庫にしまっておくわけではありません。
企業への融資や債権の購入、さらに国債の買入などを行っています。
こうしたことは投資です。
つまり、タンス預金以外の貯蓄も投資なのです。
首相の言う「貯蓄より投資を」は、庶民が直接、株や債権を買えということなのでしょうが、知識も経験も乏しい庶民には無意味で、まったく虚しい呼びかけです。
ゆえに、金融機関への貯蓄が企業投資に使われることが正常な経済の姿ですが、その投資が国債に大きく偏っている現在の姿はあまり健全とはいえません。
もっとも、国債も死に金ではなく、公共投資や経済補強に使われているうちは健全の範疇にあるといえるでしょう。
しかし、金融機関が企業への融資より国債の購入を優先する姿は非常に不健全であり、金融機関の経営姿勢が問われる問題です。
実際、金利が実質ゼロの預金を集め、0.5%の金利が付く国債を大量に買っているわけなので、銀行は労せずして大儲けができているのです。
さらに、日銀が1.0%までの金利上昇を容認したことで、国債の金利は上昇傾向にあります。
銀行は、笑いが止まらないのでは・・
日銀が本格的な金利上昇に踏み切る場合は、この銀行が儲かるばかりの現在の姿を先に是正する必要があります。
企業への融資金利や住宅ローン金利を上げる前に、預貯金の金利を上げるように誘導する必要があるのです。
でも、こうした誘導には、財務相が強硬に反対するでしょう。
その抵抗を押さえ付けるには、岸田首相-鈴木財務相のコンビの能力では、あまりにも心もとない。
これからの日本は、防衛力の強化、災害対策、少子化対策など、大きな予算を掛ける必要のある課題が目白押しです。
財務省や財政健全派の政治家や経済評論家は、「増税ありき」の考えを変えようとはしません。
増税で市場の意識が萎縮したら、デフレ経済へ逆戻りです。
起爆剤として国債増額さえ必要なことを意識しなければ、日本は衰退へと落ちていくでしょう。
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┃◇企業にとっての借入金(5) ┃
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大手財閥グループの不動産会社からの「システムリプレースへの応札へ参加しませんか」の誘いは「1%の見込みもない」と思っていました。
なので、提案書提出後の再提出の依頼には驚きました。
それでも「よし、このチャンスを掴もう」とは思いませんでした。
(というより「思えなかった」が正解かな?)
結果としては、それが良かったと、今でも思っています。
再提出の提案書には、企業の基幹業務システムに必要な要点と自分の考えを簡潔にまとめました。
最後に、お客なら誰でも一番知りたい「開発期間」と「開発費」を一言で表現しました。
提出から1周間も経たないうちに、総務部長から連絡が入りました。
「ウチの社長が、あなたに会いたいと言うのだが、都合はつくかな?」
それでも、チャンスというより「へ~」と思っただけでした。
数日後、その会社の社長室に当の社長を訪ねました。
社長は、想像とはまったく異なる風貌でしたが、案内してくれた総務部長からは「ウチの社長を見た目で判断してはダメだよ」と念を押されていました。
でも、「何がダメなのか」なんて分かるはずはありません。
「自然体でいこう」しかありませんでした。
社長は、冒頭から核心の話をしてきました。
「あなたの提案は、他社提案の半分の期間、半分の費用だ。本当にできるのかね」
私は、こう答えました。
「期間も費用もダンピングではありません。しかし、大手の他社が過大に見積もっているとも思いません」
「?」という表情の社長に、さらに続けました。
「大手は、その大きな組織の維持費用が必要ですから、どの案件にもその分担費用を上乗せする必要があります」
「期間にしても、多くの人間が関与する体制のため、その時間を見込む必要があります。私はそうした大手の出身ですから、身をもって体験してきました」
「しかし、今の当社は数人の組織であり、システムの根幹は私自身が設計し、開発をリードするので、最高の効率で開発を進めることができます。費用や期間でダンピングしているわけではありませんので、この金額でも十分に利益が出ます」
さらに付け加えました。
「それが我が社の強みですが、設立間もない会社であり、吹けば飛ぶかもしれないです」
社長は、表情も変えずに、こう聞いてきました。
「万が一、御社が“吹かれて”飛んでしまった場合は、どうしますか」
即座にこう答えました。
「そうなった場合は、私を御社に雇ってください。一時期でよいです。システムを完成させ、運用を軌道に乗せ、システム管理者を養成したら、私は去ります。 期間は18ヶ月です」
社長は、そういう私をじっと眺めていましたが、「分かりました」と一言。
話はそれで終わりました。
ところが、自分の会社に帰社した後、すぐに総務部長から電話が入りました。
「君のところへの依頼に決定したよ。社長の一存だよ。いったい、どんな話をしたのかね」
私には「ありのままの話をしただけです」と答える以外の言葉はありませんでした。
この話は、今でも奇跡としか思えない思い出です。
この社長とは、システムを納めた後もお付き合いいただき、多くの教えと示唆を受けました。
すごいお店でのご馳走も含めてです。
その話はいずれまた。
次回は、借入金の話に戻します。
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<編集後記>
話題もだいぶ下火になってきましたが、ビッグモーターと聞くと、俳優の佐藤隆太の顔が浮かぶくらい、彼のCMは販売に寄与してきたと思われます。
早くも、ネットには彼のCM画像を使い、「車を売るな! ビッグモーター」なる替え歌を流す動画が流れています。
ネット時代の怖さですが、少なからず彼のダメージになっていると思われます。
ドラマ出演のオファーにも影響していると聞きます。
ビッグモーター社の売上は7000億円に上りますが、彼のギャラは2000万円と言われています。
こうなると、彼に対する損害賠償の訴訟が起きるかもしれません。
なんとも言えない怖い時代になったものです。
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