2018年8月15日号(国際、政治)

2018.08.31


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年8月15日号
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発行日:2018年8月20日(月)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2018年8月15日号の目次
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★中国の落日の始まり(前半)
◇今の米国を支えている軍人たち
★韓国社会の異様さ
◇日本の民主主義
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
いつものように8月15日が来ました。
そして、いつものように「戦争はいけない」というフレーズが溢れ、そして、いつものように日常に戻ります。
こうして、8月15日という「終戦セレモニーデイ」は過ぎていきます。
一昨年の伯父の他界で、軍人だった親族はいなくなりました。
やがて、父や伯父たちから直接話を聞いた私の年代もいなくなる日が来ます。
あの戦争も歴史の中に埋もれていき、8月15日のセレモニーだけが残る。
そして、また同じ惨禍が・・、とならなければよいのですが。
さて、きな臭さを増す国際情勢から始めるとします。
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┃★中国の落日の始まり(前半)                  ┃
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現在、中国の避暑地「北戴河」で中国の最高幹部たちと長老たちが一同に会する北戴河会議が開催されている。
昨年の全人代で習近平主席が憲法を改正し、独裁体制を確立したように報道は伝えているが、雲行きが不透明になってきたようである。
習主席に対する批判の声が党内に挙がっていることが事実であれば、北戴河会議は紛糾しているかもしれない。
そもそも、建国者であった毛沢東や現在の中国経済を作り上げたトウ小平と違って、習近平にはそうした功績が何もない。
主席に就任当事、彼は3つの派閥の均衡に乗ることしか出来ないと言われたが、違った。
腐敗撲滅に名を借りて政敵を倒し、腹心の王滬寧(おう こねい、ワン フーニン)が書いたシナリオどおりに「一帯一路」を推し進め、憲法を改正し、独裁権力を確立した・・かに見えた。
しかし、トラの尾ならぬ「米国の尾」を踏んでしまったようである。
前号で書いたように、今年6月に習近平主席は「中国が米国に代わって世界No.1になる」との宣言をしたが、これが、いたく米国を刺激した。
米国は、大方の予想をはるかに超える全面的な貿易戦争を仕掛けてきたのである。
トランプ政権が誕生して以来、習主席はかなり注意して米国との対立を避けてきた。
北朝鮮への制裁に本気で加わり、米朝会談へ向かう金正恩を運ぶ特別機まで用意したこともその現れである。
このように、習主席は、中国はまだ米国に及ばないとして米国との対立回避に腐心してきた。
だが、足元の経済に陰りが見え、内政面で不満の声がくすぶってきた。
そこで、腹心の王滬寧が「中国が世界一の強国になる夢が2049年には実現する」というシナリオを書き、習主席が新構想宣言として発表したのである。
これは、あくまでも国内向けの宣言だったが、米国はそうは取らなかった。
それはそうであろう。
この宣言で、習主席は、西側の政治制度(つまり民主主義)は劣った制度であり、中国の賢人型政治制度(つまり少数の優れた者による独裁型政治)のほうが優れていると明言したのである。
米国から見たら、欧米が信奉する民主主義は「中国より劣っている」と見下され、「中国が米国にとってかわる」と喧嘩を売られたようなものである。
「負けず嫌い」な米国の闘志にスイッチが入るのは当然である。
ここで重要なのは、この貿易戦争は短気なトランプ大統領の独断ではなく、米国の超党派の政治家たちの闘志に火が着いた結果だということである。
中国に対するトランプ政権の強硬姿勢に民主党からも強い支持があるのが何よりの証拠である。
中国は、米国の反発をある程度は予想していたと思うが、予想をはるかに超える事態となったことで、狼狽している。
これは、太平洋戦争を引き起こした当時の日本の構図とよく似ている。
あの時の日本と同様、この貿易戦争が中国の落日の引き金となるかどうか、次号(9/15号)で論じてみたい。
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┃◇今の米国を支えている軍人たち                 ┃
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米国のマティス国防長官、ケリー大統領首席補佐官、マクマスター大統領補佐官の3人は
トランプ政権を支える重要幹部だが、共通項は「軍人」である。
マティス国防長官が退役海兵隊大将であることはよく知られているが、ケリー首席補佐官も退役海兵隊大将である。
マクマスター補佐官はまだ現役の陸軍中将で50代と若く、国家安全保障問題担当となっている。
3人ともアフガンでの実戦経験を持つ生粋の軍人である。
米国は建国以来、戦争に明け暮れた国である。
「戦う」という意識は、多くの米国人のDNAとなっている。
未だに「退役軍人会」なる組織が一定の政治的発言力を持っていることもその現れである。
日本では、首相がうっかり自衛隊を「軍隊」と言っただけでバッシングされたが、米国では逆である。
トランプ大統領が、うっかり黒人の戦死者を冒涜するような発言をして猛反発を浴び、あわてて撤回したことがあるが、これが米国国民の共通意識なのである。
たしかに実戦経験を持つ軍人は、一種異様なオーラを持っている。
ビジネスの現場で、そうした元軍人の人と相対したことがあるが、彼の持つ圧倒的な空気に気後れを覚えたことがある。
彼は物静かな紳士であったが、背筋の伸ばし方、握手の仕方、全てが軍人であった。
どうしても畏敬の念を抱いてしまったことを覚えている。
軍隊経験を持たないトランプ大統領が、上記の3人を特別に尊重していることは明白である。
ゆえに、北朝鮮への軍事攻撃に彼らが反対している以上、米軍の攻撃は無いといえる。
軍隊の指揮官が最も心を痛めるのは部下の死である。
太平洋戦争の最前線で戦った私の父は、終戦時は陸軍大尉という指揮官であったが、終生、失った部下のことが心に残っていたようであった。
実戦を経験した米国の3人も同様の気持ちを持っているものと思う。
「出来れば戦いは避けたい」と。
しかし、そうであっても軍人は戦うことを恐れているわけではない。
国家を守るためと判断すれば、一転して軍事攻撃に踏み切るであろう。
今の膠着状態が続き、北朝鮮が核兵器を捨てずに、再び米国を騙すことがはっきりする日が「その日」になる確率は高い。
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┃★韓国社会の異様さ                       ┃
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1987年11月28日の大韓航空機爆破事件は風化が進んでも、決して忘れることの出来ない事件である。
いくら敵対していたとはいえ、北朝鮮は民間機をテロ爆破し、115名の乗員・乗客が犠牲となったのである。
この事件を「事実ではない」と思っている日本人はほとんどいないと思うが、当の被害国、韓国では「あれは、時の全斗煥大統領と国家安全企画部(現:国家情報院)が仕組んだ謀略」という見方が一定の割合でいるといわれている。
特に、犠牲者の遺族が結成した遺族会がそう信じ込んでいる。
日本ではほとんど報道されていないが、事件の遺族会と支援する真相究明対策本部は7月23日、事件の実行犯である金賢姫(キム ヒョンヒ)元死刑囚を情報通信網法上の名誉毀損と業務妨害の疑いでソウル中央検察に告訴したという。
彼女の「北朝鮮によるテロ」というウソの証言が名誉毀損と会の業務を妨害したとの主張である。
日本からすると信じがたいことだが、韓国の左派勢力は「北朝鮮は信じられるが、韓国の保守政権は信じられない」と頑なまでに思っている。
そうした左派勢力である文政権の誕生が、今回の告訴に力を与えたことは確実である。
客観的に見て、金賢姫の証言は当事者でなければ知り得ないことが多く、北朝鮮の指令で爆破を実行したことは相当な確率で事実と思える。
しかし、韓国社会は異様な社会性を帯びている。
これまでも、金賢姫は韓国社会から執拗なバッシングを受け続け、居場所を変えてきたという。
しかも、そのバッシングは、北朝鮮の手先として残忍なテロを行った者としてではなく、「韓国政府による自作自演劇の実行犯」としてというから、びっくりである。
実は、韓国は、左派政権が誕生するたびに、この事件の再捜査を行ってきたのである。
しかし、いつも「事件は真実」との結論になった。
当然である。
しかし、驚くべきことに、それでも遺族会は「韓国政府による自作自演」との主張を曲げない。
そして、そうした遺族会を支援する市民活動家や宗教家からなる「真相究明対策本部」がさらに強硬にそうした主張を繰り広げているのである。
彼らの考えの根底にあるのは「北朝鮮は善、南の保守派は米国や日本と組んだ悪」という凝り固まった信念なのである。
そうした果ての金賢姫の告訴なのである。
確かに彼女は、多くの人の命を奪った犯罪人である。
しかし、同時に北朝鮮によって洗脳された犠牲者でもある。
しかも、彼女の証言によって、日本人拉致が真実であったことが証明されたのである。
彼女の日本語教育の先生であった李恩恵(リ・ウネ)が、拉致被害者の田口八重子さんである可能性が高いと判明した時の衝撃は忘れることが出来ない。
彼女を告訴した団体は、こうしたことも「自作自演」だというのであろうか。
そうした空気を後押しする韓国社会は、やはり異様というしかない。
韓国司法が、この告訴をどのように扱うかを注視していきたい。
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┃◇日本の民主主義                        ┃
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少し古いデータになりますが、英国の「エコノミスト誌」のシンクタンクが民主主義のランキングなるものを発表しています。
2016年のランキングで、日本は23位となっていました。
勿論、先進国では下位になります。
日本人としては、「どうして?」と言いたくなる順位ですが、その気持ちを抑えて理由を知ることが大事です。
その第一は、選挙での投票率の低さです。
最上位に並ぶ北欧各国は80%程度ですから、これには反論できません。
「投票率が低い国は民主主義が成熟していない」と言われれば、「そのとおり」と納得するしかありません。
日本では国政選挙でも50%に達するかどうかであり、地方選挙ともなれば30%台が大半です。
恥ずかしい話です。
次の理由は、女性の国会議員の少なさです。
2018年の統計では、欧州各国は35~40%と高く、13.7%の日本は、なんと140位という低さです。
101位の米国も低いのですが、それでも19.7%という割合ですし、政府高官には多くの女性が活躍しています。
これについては、日本の事情があるのですが、欧米諸国には理解できない事情です。
女性が参政権を得てから73年近く経ちますが、当の女性の意識が低いままだったのです。
そのように女性の意識を押し込めてきた男性社会に一番の問題があるのですが、その天井を打ち破るだけの自覚を女性自身が持たなかったのです。
社会で活躍する女性の割合が低いままでは、国会議員の比率は上がらず、女性首相の誕生などは程遠いものです。
9月の自民党総裁選へ出ると公言していた野田聖子総務相も、夫がらみのスキャンダルで一気に凋落してしまいました。
野田氏は、本気で首相を目指すなら、このような問題を持つ夫を選んではならなかったのです。
万が一、そのような夫を選んだとしても、夫の顔など平気で踏みつぶせる「鉄の心理」を持っていない人間を、我々国民はトップに抱くことは出来ません。
首相に限らず、組織のトップたる者は、自分の家族より組織の使命を優先させなければなりません。
(経営者も、たとえ建前でも、公言すべきは「商売のためなら家族は捨てる」なのです)
こんなことを言うと女性差別と言われそうですが、女性には自覚を持って欲しいのです。
今の時代、能力において女性は男性を上回っています。
昨今の私大医学部における女性受験者に対する点数操作なども、その現れです。
だから、生き残ることが至上命題である中小企業においては、女性経営者の比率が増えています。
欧米では、とっくの昔に大企業でも女性のトップがたくさん生まれています。
女性の意識が変わってくれば、日本でもそうなると思っています。
そうした土壌の上に、やがて女性首相が誕生すると信じています。
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<編集後記>
経済の先行きが不透明になっても、中国の軍拡は止まりそうにありません。
軍隊経験がないことは習近平主席もトランプ大統領と同様です。
ただし、米国と違って中国の軍幹部には実戦経験を持つ者がいません。
部下を失う心の痛手を持たない幹部が好戦的な判断を下す確率は高いのです。
彼らは戦争をしたがっています。
台湾への軍事侵攻、その前哨戦としての尖閣奪取の危険は着実に上がっています。
日本が、独力で、この緒戦を撃退することがアジアの平和にとって欠かせないピースです。
それも、その能力を見せることで中国軍の意図を挫き、戦争を回避することが最も大事です。
「戦争はダメ」では侵略を防ぐことはできないのです。
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