2020年5月31日号(経済、経営)
2020.06.01
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年5月31日号
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発行日:2020年5月31日(日)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2020年5月31日号の目次
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◇中国の思惑通りにはいかない(その2)
◇これまでの経済、これからの経済(10):ニューノーマル
◇韓国のコロナ対策の模倣は危険?
☆企業における社長の力(11)最終回
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
緊急事態宣言の解除に伴い、企業活動が徐々に戻ってきています。
ただ、テレワークでも業務が回ることを実感した企業は、これを機にテレワークを定着させ、オフィスの縮小などに踏み出すところも出てきそうです。
そして、次に来るのは、テレワークで仕事ができる人は、リアルな場面でも仕事ができるという当たり前のことが分かってくることです。
しかも、それが数値的に把握できるのです。
今後の雇用関係が大きく変わっていくきっかけになるのかもしれません。
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┃◇中国の思惑通りにはいかない(その2) ┃
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独裁国家である中国には、政府に歯止めを掛ける機構がありません。
ゆえに、政府は好き勝手に何でもできてしまいます。
その効果で、ここまでは中国のほうがうまく対処しているように見えています。
ただし、その好き勝手が通用するのは国内に対してだけです。
そのツケは、すでに対外資金力の面に出てきています。
コロナウイルス対策以前から、中国では大量の資金流出が続いていました。
それは、外貨準備高の減少を見れば明らかです。
ピークの2015年6月に約4兆ドルあった外貨準備高ですが、2020年3月時点では3.3兆ドルまで減少しています。
さらに、コロナウイルス対策が続く今年度末には3兆ドルを切る事態が予想されます。
外貨準備高の減少に対して、中国人民銀行は「米ドルの評価が下がったからだ」と苦しい言い訳をしていますが、「あんたら、素人かよ」と、少々汚い言葉をつぶやきたくなります。
円ドル相場にはほとんど変化がないことから、この嘘はすぐに見抜けます。
人民元は、米ドルに対して下がり続けているのです。
ここで、人民元という通貨の特殊性を見る必要があります。
人民元は、一応、国際通貨としての体面から変動相場となっていますが、当局がいつでも介入することで、一定のレンジに固定されています。
つまり、実質的には固定相場制なのです。
G7各国が、そうした特殊性を許容してきたのは、ひとえに中国経済からの恩恵が大きかったからです。
しかし、特殊な中国経済が世界の経済を歪ませている要因の一つであることは確かです。
中国当局が為替レートの維持を優先した結果、中国の外貨は実質的に大きく流出しています。
それまで模様眺めだったEU各国の中国離れが顕著になってきたのは、こうしたことが主要な要因です。
このような経済状態にも関わらず、中国は、全人代で防衛費の6%超の増加を発表しました。
しかし、軍事力も結局は経済力が源泉です。
中国政府は、米国と本格的な経済戦争を遂行するだけの資金力について明確な戦略を持っているのでしょうか。
中国の外貨準備高3.3兆ドルは、日本(1.3兆ドル)の2.5倍にもなります。
しかし、日本とは違い、その中身を公表していないため、怪しい数字です。
対外純資産残高を見ると、3兆ドル規模の日本に対し、1.4兆ドルと半分以下なのですから、実質的な資金力は日本以下と考えるほうが妥当です。
どうやら、中国発表の数字は、一帯一路などで開発途上国に貸し付けた投資額も入れての外貨準備高だという疑いが濃厚です。
そうした政治的な投資は返済されない可能性が高いため、「動かすことができない」資金です。
日本の基準に準拠して考えると、実質的な外貨準備高は1.2兆ドル程度と考えられます。
しかも、そのうちの1.1兆ドルは米国債(この金額はFRBが把握していますから確実)です。
つまり、中国の純粋な資金の90%は米国債ということになります。
ということは、ここを米国に抑えられたら、その瞬間、中国の息の根が止まります。
そうなったら、中国の打つ手は、軍事的な先制攻撃しかなくなります。
まさに、石油の禁輸で追い込まれた真珠湾攻撃前夜の日本と同じ構図になりつつあるのです。
中国の金融危機について、次号でもう少し解説したいと思います。
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┃◇これまでの経済、これからの経済(10):ニューノーマル ┃
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新型コロナウイルスによる非常事態宣言が解除となりましたが、自由に外出や旅行することに制限がかかる毎日が当分の間続くことに変わりありません。
巷では、こうした事態を指して「ニューノーマル」という言葉が生まれています。
会社に行かないテレワークや離れた場所からオンライン会議に参加するなどの働き方や、家にこもり、一人あるいは家族だけで楽しむ経験が、これまでの当たり前の働き方や楽しみ方を変えるかもしれないという意味を込めて、「これまでとは一変した新常識」という意味で使われています。
ここには、人間の持つ本質が現れてきていると感じます。
たしかに、同僚との無駄話や友人との飲み会は、楽しいと思う半面、どこか煩わしさがあります。
まして、満員の通勤電車は苦痛でしかありませんし、嫌な上司の顔が浮かべば、会社の玄関は地獄の門でしょう。
そうした苦痛から遠ざかることが出来て、さらに「仕方ない」と思っていた葬儀などからも開放されたと考えれば、「こうした生活もいいかな」となるのも無理からぬことです。
私には、それが良いとも悪いとも言うつもりは毛頭ありません。
世の中の常識が変わるならば、それに合わせて自社の経営を変えていくしかないと思うだけです。
当然、マイナス面とプラス面がありますが、変わらない部分もあります。
各企業は、今後の経営を考える上で、この3つの面を明確にすることから始めるべきです。
企業経営での「明確」とは“数字で理解する”ことですから、自ずと行うべきことは、まさに明確といえます。
良い機会ですから、自社の実態を徹底的に数字で分析・理解し、対応策を数字で作るべきです。
一番の課題はマイナス面への対処ですが、マイナスが一過性のものか永続的なのかの判断が重要になります。
それには、これからの消費傾向を細かく追跡していくことが肝心です。
弊社もそうですが、一般消費者ではなく企業相手の商売をしている企業でも、本当のエンドユーザーは一般消費者です。
その最終消費の動向分析から、自社のお客様企業の戦略を見極め、その戦略を強化する方向での協力や支援を提案していく営業が重要です。
もっとも、コロナウイルスの影響から抜けた先がどうなるかは霧の中です。
多くの消費動向が戻るかもしれないし、まったく様変わりした世界になるか、誰にも確実なことは言えません。
連日、マスコミやネットで発信している経済評論家の意見に参考になるものは、残念ながら見当たりません。
「ニューノーマル」な経済実態は、自分で判断していくしかないのでしょう。
次回からは、テーマを絞りながら、解説を続けていきます。
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┃◇韓国のコロナ対策の模倣は危険? ┃
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韓国ではMERSコロナウイルスの流行に伴い5年前に導入された法律により、裁判所の令状なしで幅広い個人情報を入手する権限が当局に認められています。
今回の新型コロナ対策でも、この法律に基づき個人情報が全面的に吸い上げられ、活用されています。
それに対しプライバシーの侵害を恐れる人々から懸念の声が上がっていることも事実です。
携帯電話の位置情報、プリペイカードやクレジットカードの利用履歴、さらに監視カメラ映像を使い、1時間以内に感染の疑いのある人を追跡してきました。
この迅速な対応について、「世界が称賛している」と、文大統領自身が自画自賛しています。
しかし、日本では「韓国を見習うべき」という声は、大きくはなりません。
日韓関係の悪化も影響していると思いますが、それ以上に、こうした独裁的な処置に日本国民が大きな危険を感じていることが主因と思われます。
コロナウイルス禍の以前から、日本のIT進展が遅れているとの報道は耳にタコのように聞かされてきました。
その原因として、役所を中心にしたハンコ文化や習慣を変えられない国民性などが声高に語られてきました。
しかし、一番の原因は、他人の領域に安易に踏み込まない、踏み込ませないという本能の強さにあるのではと思います。
50年以上、システムの世界と付き合ってきた私ですが、情報を握られる怖さが身に沁みています。
軍事システムを担当していた時代、このシステムの目的は単純明快でした。
こちらの情報は漏らさず、敵の情報は残らず取得するという目的です。
もっといえば、嘘の情報を積極的に、しかし本物のように見せかけて敵に渡すという戦術まで必須条項でした。
こうした経験が染み付いてしまった私は、未だにスマホは持ちません。
クレジットカードの利用は最小限にとどめ、プリペイはPASMOだけにしています。
でも、監視カメラからは逃れられないので、これとETCだけで自分の行動はほぼ補足されてしまいます。
電源を切っていても補足可能なスマホを持たないのは、せめてもの抵抗です。
話が横道に逸れてしまいました。
韓国民が、こうした監視社会を許容するのは、隣の大国に従うしかなかった長い歴史が影響しているのかもしれません。
そうした事大性(大きい存在は小さい存在より優れているとする)思想から、到底かなわない中国には卑屈になり、自分たちより中国から遠い日本を格下に見下すという意識が定着したのです。
その結果、政府が情報を監視するという強権国家になることで韓国の国際的地位が上がると考えている部分があるのだと思います。
文大統領が「世界は韓国を見習うべき」というような高揚感を隠そうともしない演説にも、その意識が溢れているように思えるのです。
真似したくはないですね。
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┃☆企業における社長の力(11)最終回 ┃
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以前に何度も述べましたが、私は、長年、故武岡先生に師事して孫子の兵法を学んできました。
先生は、古典として孫子を教えるのではなく、企業経営の戦略に置き換えながら教えてくれました。
先生は、何冊も本を出されていますが、教わる中でいただいた資料は、出版本以上の価値のあるものです。
私は、これらの資料を独自に編集したものを自分のバイブルとしています(もちろん、非出版物です)。
内容は、孫子にとどまらず、マキャベリや韓非子、三十六計と幅広いものですが、すべて、先生から教えを受けた内容です。
社長としては三流の自分が、何度か倒産の危機をくぐり抜けて創業30年にたどり着けたのは、こうした教えがあったからだと確信しています。
しかし、自社にとっての真の課題は、この先の30年、60年、100年にあります。
当然、私はこの世から消えますが、自分がいなくなった後まで責任を取るのが創業者だと教わりました。
そこで、社会に出たときからの自分を思い返してみました。
自分で言うのは、おこがましいのですが、私は常に30年先を見てきたように思います。
1975年にパソコンが生まれる前に、今のIT社会のことが見えていました。
実験段階のインターネットに触れたり、CGの生みの親ともいうべき人物との交流などの経験がそうさせたのだと思います。
しかし、常に早過ぎました。
最初に勤務した会社は、日本でも3本の指に入る大手コンピュータメーカーでした。
そこのSEだった私は、米国でもまだ卵状態であった先進のIT世界に入ることが出来、最先端の軍事システムの開発にも携わることが出来ました。
しかし、私の上司ですら「夢でも見たか」と私の見たことを信じようとはしませんでした。
でも、あれから30年経った今、あの時に見て考えたことが、どんどん現実になってきています
建設会社に転職してからも、原発や高エネルギー研究施設、P4など、なぜか特殊な案件ばかりを担当してきました。
こうした経験は、自分の大きな武器になりましたが、それは、あくまでも技術者としての武器です。
企業トップとしてはマイナス面のほうが大きかったと思います。
まず、社員が付いてこられないのです。
当然なのですが、当時は、その当たり前のことを理解できませんでした。
友人から言われたことがあります。
「お前の最大の欠点は、自分を普通だと思っていることだ。お前は普通じゃない」とです。
創業時のメンバーすら、10年もたたずにみな辞めていきました。
当時の私は、「どうしてなんだ」と思うだけでしたが、今にして思えば無理はなかったのです。
しかし、30年早い自分を変えることは不可能です。
そして、気が付きました。
自分が考える30年先の世界を若い社員たちに伝え、彼らに実現してもらうのです。
50年、100年と生き残ってきた企業は、そうした創業者の意識が伝承されてきたのではないかと思うのです。
「自分の代で実現を」と考えているうちは、半人前の経営者なんだという思いにようやく至った感がしています。
今は他界された経営者の方に言われたことがあります。
「死ぬ間際に自分の生きた意味を感じられたら、それだけで最高の人生だったと思えるのではないか」
この言葉で、本シリーズも終りといたします。
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<編集後記>
緊急事態宣言が解除になっても、人を集めるイベントはできません。
代わりに、オンライン・セミナーの案内が毎日入ってきます。
でも、まったく参加する気持ちが起きないのです。
私だけかもしれないので、普遍的とは言えませんが、なぜだろうと自問自答してみました。
オフラインでのセミナーや講演会は、直にその人を見て、直に話を聞くというリアル感が魅力です。
また、その後の懇親会で参加者と直に話す魅力もありました。
そのリアル感の喪失が大きいのです。
中国のような国では、当局がすべての言動を監視できるわけですから、そうしたニュースも、“いやな”感じを抱かせるのかもしれません。
読者のみなさまは、どのように感じておられるのでしょうか。
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