2022年4月30日号(経済、経営)

2022.05.16

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年4月30日号
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発行日:2022年4月28日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2022年4月30日号の目次
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◇これからの近未来経済(17):岸田首相は勇気を持て
★急激な円安が示していること(その1)
◇論理思考は大切だが、もっと大切なことがある(1)
☆生産性の向上(その1)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
経済制裁でプーチンを止めることは難しいでしょうが、ロシアを止めることはできるかもしれません。
経済制裁は我慢比べです。
仕掛ける西側の国民とロシア国民と、どちらが先に音を上げるかです。
長引くほどロシア国民のほうが苦しくなるのは明白です。
ロシアがダウンするまで、ウクライナが粘り、西側の支援が続くかがカギです。
 
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┃◇これからの近未来経済(17):岸田首相は勇気を持て        ┃
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「悪貨は良貨を駆逐する」
有名な言葉ですが、岸田首相はこの意味をどう捉えているのでしょうか。
 
コロナ禍とウクライナ侵攻は日本経済にも大きな影響を及ぼしています。
バブル崩壊後の対応を誤り続けた末に今回の2つの災禍に襲われたことで、日本への影響はことさら強くなっています。
 
この間、3年半の民主党政権時代がありました。
それゆえ、自民党の責任だけを問うわけにはいきません。
日本の致命的な欠陥は、与野党を問わず政治家の能力があまりにもお粗末なことです。
特に、経済に対する能力の低さが深刻です。
 
先の戦争で壊滅した日本経済を立て直したのは、吉田茂を始めとする自民党政権です。
憲法9条を利用して軍事は傭兵(米軍)に任せ、すべての投資を経済立て直しに集中させたのです。
この政策は的確で、1980年代には「世界に敵なし」と言われるほどの経済的発展を遂げました。
 
しかし、時代は過ぎ、その先を先導する能力を持つ政治家はいなくなっていました。
米国は、そんな日本に対し、経済戦争を仕掛けてきました。
日本経済の主力であった半導体産業を締め上げ、技術を中国と韓国に強制移転させました。
(米国は、今では多少後悔しているようですが・・)
もう一つの主力の自動車産業は、トヨタやホンダの奮闘で、どうやら生き残りました。
もし、いま、自動車産業が半導体産業のように衰退していたらと考えると恐ろしくなりますね。
 
もはや、政治主導の経済ではダメな時代に入っています。
バブル崩壊から30年、未だ日本経済が底辺を這い回っているのは、政治が主導を取り続けているからです。
補助金漬けで、本来、存続する力のない企業を活かし続ける政策が続いています。
そうした企業の安値攻勢、製品の質の悪化、詐欺的商法の温存が、経済再生を阻んでいます。
その結果、自立している健全な企業が圧迫を受け、苦しめられています。
まさに「悪貨は良貨を駆逐する」現象です。
 
アベノミクスは間違いではありませんでしたが、当の安倍元首相が本質を理解せず、肝心の第三の矢「規制緩和」で腰砕けになってしまいました。
そのことで、規制に頼る企業が生き残り、新たな起業の芽が摘まれてしまっています。
安倍さんの責任は重大ですが、もはや終わった人です。
 
必要なのは「事業再構築補助金」ではなく、価値を生み出せない企業の淘汰なのです。
そこで、現首相の岸田さんに問いたいのです。
「悪者になる勇気があるか?」とです。
次回に続けます。
 
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┃★急激な円安が示していること(その1)               ┃
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ドル円相場で急激な円安が進んでいます。
この事態を招いた張本人(?)は、誰もが知るように、日銀・黒田総裁です。
0.25%の固定金利で10年物日本国債を無制限に買い入れる「連続指値オペ」には、正直驚きました。
米国の10年国債の年利回りが3%に近づく現状での、この買いオペ発表です。
当然、一気に資金が日本から米国に流れ込みました。
 
金融相場は一種の博打ですから、投資家は常に大きな変動を待っています。
その変化に備えて、円とドルの双方を保持して、相場を睨んでいます。
投資家にとっては、急激な円高も円安もチャンスなのです。
日銀は、そうした投資家に儲けるチャンスをどんどん与えていることになるわけです。
 
黒田総裁は、もちろん金融のプロ中のプロですから、こんなことは分かっているはずです。
ということは、この円安は黒田総裁が仕掛けた円安ということになります。
そこが肝心なことです。
 
安倍内閣から日銀総裁の座に座る黒田氏は、日本経済をデフレから脱却させるにはインフレ政策しかないとして、猛烈にお札を刷って市場に供給してきました。
アベノミクス開始前の2012年12月時点で132兆円だった「お金の総量」は、2022年3月時点で662兆円と5倍になっています。
しかし、我々の財布の中身は5倍にはなっていません。
それはそうです。
同じ時期、市中に回っているお金は、1135.8兆円から1532.4兆円に増えただけですから、僅か1.35倍にしかなっていません。
つまり、大半のお金は空回りをしていることになります。
 
日銀は企業や個人に直接融資することは出来ませんから、大量に刷った円は、銀行に供給されます。
しかし銀行には、これだけ大量のお金を貸し出す先がありません。
大半のお金は虚しく「日銀当座預金」という名の口座に塩漬けという状態になります。
つまり、日銀が発行したお金は、そのまま日銀の口座に眠っているということです。
しかも、その巨額の預金は、マイナス金利の中では利子が付くどころか、減り続ける構図です。
貸出先のない金融機関にとっては、体力を削るだけのお金になっているのです。
 
そんなことは百も承知の黒田総裁の狙いを要約すると、以下のことかなと思います。
急激な円安で原材料の高騰が起き、企業は製品の値上げに踏み切らざるを得なくなる。
かつ手元資金が目減りすることで、金融機関からの借入が増える。
金融機関は、ここぞとばかり融資を拡大させ、「日銀当座預金」が減る。
そうして、とにかくお金の流れを作ろうというのが、黒田総裁の考えかと推察します。
 
この思惑が当たるか外れるかは難しい賭けです。
黒田総裁も、そこは賭けに出たのでしょう。
気になるのは今後の政策との整合性です。
岸田首相と意見が一致しているのかどうかが、気になります。
 
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┃◇論理思考は大切だが、もっと大切なことがある(1)         ┃
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「論理的に考えれば分かるだろう」と言われた記憶のある方は多いと思います。
論理思考とは、「1+1=2」のように、矛盾なく誰もが認める公式のようなものといえます。
もっとわかりやすく言えば、「水は高いところから低いところへ流れる」とか「優れた者は劣っている者より強い」も論理です。
このように、論理思考はとても大事な考え方なのですが、それを絶対視すると論理矛盾を起こすというパラドックスが生じます。
 
ロシアのウクライナ侵攻は「絶対に許されない暴挙」といえます。
ウクライナがロシアを攻めたわけではないからです。
しかし、ロシアは「これは、ドンパス地方でロシア系住民がネオナチに殺されていることを救う正義の戦いだ」という論理を振りかざしています。
日本でも、少数ですが「ロシアにも言い分がある」と主張する評論家がいます。
私は、そうした意見に賛同することが出来ませんが、問答無用と切り捨てることもできません。
では、どう考えたら良いのでしょうか。
 
女優の綾瀬はるかが主演したNHKの大河ドラマ「八重の桜」を覚えていますか?
幕末の会津藩がドラマ前半の舞台でした。
その中で会津藩の藩校の“掟”が語られていました。
「虚言(うそ)を言ってはなりませぬ」「卑怯(ひきょう)な振る舞いをしてはなりませぬ」・・と続き、最後に「ならぬことはならぬのです」でした。
綾瀬はるかの口から、やや舌足らずにこの言葉が出た時は、“かわいい!”となりますが、かつて、旧社会党の土井たか子委員長が国会で「ダメなものはダメ」と言い放った時と同じ言葉なのです。
この言葉は、どうにも論理的に説明できなくなった時に「問答無用」と自分の価値観を論理無用で押し通す言葉です。
 
つまり、論理破綻なのですが、時にはそれで押し切るしか無いということもあるという言葉なのです。
例えば、小さな子供に論理的な説明をして「それはダメだよ」と説いたところで、子供は理解できないでしょう。
なので、その時は「ダメなものはダメ」と親の価値観を押し付けても良いのです。
しかし、子供が反発したら、その言い分を聞く、さらに成長して自分の価値観を身に着けたらそれを尊重するということが大切なのです。
最初に親が強制的に価値観を押し付けることで、その子の中に一定の基準が出来、そこから自己形成が始まるのです。
その自己形成の過程を育み、成長に合わせた新たな課題を与え、さらなる成長を促すことが大人の役目なのです。
 
「論理思考は大切だが、その論理に縛られてはいけない」という矛盾をどう乗り越えていくかについて、
次回以降、少しお付き合いください。
 
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┃☆生産性の向上(その1)                      ┃
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バブル崩壊から30年、日本経済はデフレから抜けることができず、GDPは横ばいを続けています。
その間、中国に抜かれ、今や、その背中も見えなくなっています。
やがてインドにも抜かれると言われるくらい日本経済の未来は暗くなる一方です。
 
この日本の未来に必要なことは「生産性の向上だ」と言われて久しいですが、それも足踏み状態です。
日本人は手先が器用で、創意工夫が得意と言われてきました。
その素質は現代にも受け継がれていると思いますが、どこが“おかしい”のでしょうか。
本シリーズでは、そこから考えてみたいと思います。
 
国家の生産性を表す計算式は、以下のように非常に単純です。
生産性=GDP(国民総生産)/労働の総投入量(=労働人口?一人当たりの労働時間)
つまり、生産性の向上は、GDPを上げるか労働の総投入量を減らすことで達成できるわけです。
こんなことは小学生の算数レベルの話です。
 
ということは、昨今の「働き方改革」で一人あたりの労働時間が減れば、生産性は向上するはずです。
これで一気に解決ではないですか。
となるはずですが、「労働時間の減少⇒GDPの減少」になれば、元も子もないわけです。
実際、その恐れは無視できない要素です。
しかも、生産年齢人口の減少および老齢化が進むことで、さらなる悪化が確実視されています。
 
この解決方法はとても簡単です。
労働人口と労働時間が共に減っても、GDPを維持することができれば良いのです。
この結果、生産性は上がるからです。
しかし、実際はそう簡単ではありません。
その理由を検証するには、算数レベルでは難しいですね。
中学で習う簡単な方程式でも、やはり歯が立ちません。
では、高校で習う確率・統計論ではどうでしょうか。
ある程度の答えは導けるでしょう。
しかし、統計理論は過去のデータ分析が主という限界があります。
現代でAIと称する機能の大半は、この確率・統計理論の派生系ばかりです。
要するに天気予報です。
 
では、理系の大学で学ぶ関数論などの高等数学ならどうでしょうか。
かなり的確な解答を得られる可能性がありますが、政治的要因や国際関係などをどのように関数化するかという難題があります。
ですが、ここを乗り越えれば、日本の未来も明るくなる希望が見えてくると思います。
 
国際関係は日本だけの努力ではどうにもなりませんが、政治的要因は国内問題です。
7月に予定されている参院選で第一の争点にすべきは、防衛問題ではなく、生産性向上にからむ政治的要因の改革です。
防衛問題は、政権の選択である次期衆院選で争点とすべき改革問題です。
 
次回、生産性向上に絡む政治的要因を解説したいと思います。
 
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<編集後記>
SNSへの書き込み代行業というのがあるそうです。
これで、本人が同時に複数箇所に存在するようにもできるし、架空の「多くの声」を作ることもできます。
当然、悪用している企業や団体、個人がいて、被害が拡大しています。
騙される被害者はリアルな存在ですが、多くの人は無防備で闇の攻撃にさらされています。
ネット社会の闇は、どこまで広がっていくのでしょうか。
 
 
 
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