2022年11月30日号(経済、経営)
2022.12.01
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年11月30日号
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発行日:2022年11月30日(水)
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2022年11月30日号の目次
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◇週120時間働けますか?
◇曲がり角の先の経済を考えてみよう(4):稲盛氏の言葉
★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その5)
◇これからの近未来経済(21):新しい資本主義を知ろう(4)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
弊社の地元、浅草でも急激に観光客が増えています。
コロナ感染者が増えるのも道理だなと感じます。
ただ、ゼロコロナ政策の影響からか、中国人観光客の姿はほとんど見かけません。
商店の中には、かつての爆買いの復活を期待する声もあるようですが、「あの復活はゴメン」との声があるのも事実です。
穏やかな景気の回復を願うのみです。
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┃◇週120時間働けますか? ┃
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何かと「お騒がせ発言」が多いテスラCEOのイーロン・マスク氏ですが、今や世界一の富豪となった氏の発言ですから反響は大きくなります。
買収したツイッター社の社員に宛てた「長時間の激務を受け入れるか、賛同できないなら退職しろ」とのメッセージが物議を呼び、実際に大量の社員が辞めたようです。
それに対する賛否両論が起きていますが、民間企業のCEOの言葉ですから「ご自由に・・」と思うだけです。
元大阪府知事の橋本氏は、「“週120時間かなんか働かないとテクノロジーは進化しない。死に物狂いで働いている者が世界を変えるんだ”との意見はその通りだと思う」と、マスク氏の主張に理解を示しました。
日本は労働基準法で週40時間を超える労働を禁じていて、「残業は悪」との風潮も高まっています。
こうした日本の風潮に対し、橋本氏は「そんな環境からは優れた者は生まれないと思います」と発言しています。
こうした意見に、私は賛成でも反対でもなく、サラリーマン時代も今も「働く時間は個人の自由」が信条です。
ところで、本当に週120時間で、1ヶ月働けるかどうか簡単な計算をしてみましょう。
1ヶ月は約4.3週ですから、週120時間は月単位に換算すると、120×4.3=516時間になります。
日本は祝日が多く、夏休みや年末年始休暇もあります。
それを加味して「土日+休暇日」を除く平日を20日とすると、正規の月労働時間は160時間となります。
月10日の休日も休まずに働くと、その残業時間は10日×8時間=80時間となります。
さらに、平日も休日も17時から午前0時まで残業すると、7時間×30日=210時間になります。
合計は160+80+210=450時間(残業は290時間)となり、516時間には66時間不足です。
あとは徹夜しかありません。
一晩の徹夜時間を8時間とすると、66÷8=8.25日となります。
つまり、徹夜を月に8日、半徹夜を1日行って、ようやく達します。
こんな計算「バカバカしい」と思われるでしょうが、問題は、「こんな働き方は可能か?」です。
読者の方の中には「若い頃は、このくらい働いたよ」と言われる方もいらっしゃるでしょう。
私にも同様の経験はありますし、起業後10年ぐらいは似たような働き方でした。
ですから、可能だと言えます。
しかし、経験上、限界は6ヶ月で、それ以上は能率が落ち逆効果となり、健康に害が出ます。
もちろん、マスク氏も橋本氏も、こんなムチャをしろと言っているのではなく、「このくらいの意思を持ち、死にものぐるいで働かないと、テクノロジーは進化しないし、イノベーションは起こせない」と言いたいのでしょう。
そこは理解しますが、”国や世界に対する責任のない”個人が、これほどの発信力を持っていることに危険を感じます。
あらゆる面で急速に進む情報化とは裏腹に、人々の倫理観は脆弱なままです。
「情報化の裏に潜む悪意が力を持つ時代」が来ているのですね。
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┃◇曲がり角の先の経済を考えてみよう(4):稲盛氏の言葉 ┃
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日銀の黒田総裁の任期は来年の4月8日ですが、それまでは現状の方針を変える気はないようです。
つまり、利上げの判断は「後任者に任せた」ということです。
では、誰が後任者になるかですが、今は分かりません。
任命は、政府が国会の同意を得て行うとなっていますが、一番大きな力を持っているのは首相です。
だが、当の岸田首相は、閣僚人事の不手際に追われ、物価対策に追われ、日銀人事や金利政策は念頭に無いようです。
しかし、閣僚人事はともかく、国家リーダーとしての首相に求められているのは小手先の物価対策ではありません。
むしろ、痛みを伴う物価上昇を受け入れ、それを企業収益につなげ、給料アップへの好循環を現実にし、国内消費を中心とした“健全な”景気向上の実現を果たすことができてこその首相です。
自由主義であれ共産主義であれ、経済発展で国民が豊かになると、当然、消費と個人貯蓄が増えます。
世界共通の現象ですが、増え方にはその国の国民性が顕著に出ます。
米国は「貯蓄<消費」となり、日本は「貯蓄>消費」となります。
この「貯蓄-消費」の余りが預貯金や債権・株を介して、投資へ注ぎ込まれます。
ゆえに、米国の投資が早くさかんになるのは当然ですし、日本の外貨準備高が増え続けるのも当然です。
経済発展が進むと、やがて「貯蓄-消費」の余りでは収まらない資金需要が起きます。
この不足する資金は「借入」や「債券」という形で調達されますが、目的があいまいな“金もうけ”だけの投資にも資金が注ぎ込まれます。
経済循環に貢献する目的を持って行う投資は経済発展に欠かせない道具ですが、金もうけだけを目的とする投資は「投機」です。
悪いとは言いませんが、この投機が経済をバブルに向かわせ、やがて弾けます。
その瞬間、投機資金は「不良資産」となり、経済の重荷となるのです。
「投機は行わない。額に汗した利益が貴い」
これは、故稲盛氏の有名な言葉です。
稲盛氏は、投資ルールを書き残しています。
その前掲書第3章「筋肉質の経営に徹する【筋肉質経営の原則】」の4番目の項目に、「投機は行わない。額に汗した利益が貴い」とあります。
そして、以下のようにも言っています。
「私にとって投資とは、自らの額に汗して働いて利益を得るために、必要な資金を投下することであって、苦労せずに利益を手に収めようとすることではない。私の会計学には投機的利益をねらうという発想は微塵もない。だから余剰資金の運用については、元本保証の運用が大原則であり、その中に投機的な資金運用のための『リスク管理』などはまったく含まれていない」
なるほどと思う反面、元本保証の安全運用に限ってしまうと、投資先は預貯金や国債の購入などに限られてしまいます。
海のものとも山のものとも分からないスタートアップ企業への投資など、「とんでもない」ということになります。
不動産投資なども「やってはいけない」投資の割合が大きくなるでしょう。
この問題、次回に続けます。
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┃★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その5) ┃
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ゼロコロナ政策で狭い地域に押し込められ、時には家から出ることも禁止されるという状況に、さすがの中国国民にも怒りが生じ、その怒りをデモという形で地方政府にぶつけ出しています。
中国でのデモ行為は身の危険を伴いますが、そうした怒りが沸点に近づいているのでしょうか。
前回、不動産市場の様子を解説しましたが、「値下げ制限」と「在庫を減らせ」という矛盾した二つの政策を同時に達成せよという中央政府の無理難題に、地方政府はどんどん疲弊しています。
しかも、先の共産党大会で経済通と言われる李克強たちを党中央から追い出したことで、地方政府は絶望し、お先真っ暗状態になっています。
その結果、苦肉の策として、先進国では考えられない奇妙な政策が打ち出されています。
例えば、河南省済源市では「不動産を初めて購入する住民は、頭金を20%以下とする」という通達を出しました。
一見、何の問題もないように思えますが、附則が付いています。
「不動産販売企業は、その頭金を一年以内を限度に分割で受け取ること」
さらに「在庫事情によっては、最長一年、分割支払い期間を延ばしても良い」とあります。
そもそも「頭金って一括で払うもの」と思うので「頭金の分割払い?」に頭が混乱します。
さすがに、この通達は、すぐに削除されたということです。
ついには「お金がないなら、スイカや小麦、ニンニクで支払っても良い」という物々交換方式まで登場しました。
勿論、不動産企業が、こんなことを歓迎しているわけではありませんが、「値下げはまかりならんが、早く売れ」という中央からの指示に追い詰められた地方政府が苦肉の策として出しているのです。
さすがに、こんなことでは売れないと分かっている地方都市は「住宅チケット」なるものを発行し出しました。
これは、再開発で強制退去させられる住人に対し、立ち退き料や保障金を支払うかわりに、住宅購入に使える住宅チケットを発行する、というものです。
地方政府は、財政逼迫の中で、不動産の在庫を解消せよとの中央命令に従わなくてはなりません。
そこで、立ち退き料や保障金のかわりに不動産購入のみに使える「住宅チケット」を発行すれば、一石二鳥と考えたのでしょう。
しかし、強制的に立ち退きさせられる住民にしてみれば、引っ越し費用や当面住むための住居の賃貸費用など、とにかく現金が必要です。
新たな家を買うどころではないのです。
しかし「これは良いアイディア」とばかり、全国の多くの都市が模倣し出しているとのことです。
さらには、地方政府が勝手に住民の預金状況を調べ、住宅購入の圧力をかけるということまで行われています。
地域の協同組合である「合作社」ごとに「新築住宅を少なくとも2つ以上ネットで予約せよ」といったノルマを課している行政区もあります。
また、預金があるのに不動産を購入しない者を「悪意ある非不動産購入者」として抽出し、購入を促すよう、出先機関にハッパをかける通達まで出す行政区も現れています。
中国が自慢するITの普及率の高さは、こうして国家に利用されるわけです。
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┃◇これからの近未来経済(21):新しい資本主義を知ろう(4) ┃
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「新しい資本主義」の最後、4番目の「GX(グリーン・トランスフォーメーション)及びDX(デジタル・トランス フォーメーション)への投資ですが、当の岸田首相の本気度が見えません。
たしかに、「脱炭素社会の実現のために、今後10年間にわたって官民協調で150兆円の関連投資を行う」などが羅列されていますが、数多くある石油や石炭火力発電所をどうやって削減するのか、天候不順が続く日本で太陽光発電が補助金や電気料値上げなしで採算ベースに乗るのか、稼働数を増やすとしている原子力発電所の再稼働をどうやって軌道に乗せるのか、などなどの具体的な政策が必要です。
しかし、国会でそうした議論が活発に行われている気配はなく、閣僚の不祥事の追求とその言い訳問答に終始している有様です。
私は、そもそも欧米の基準でエネルギー問題を考えるべきではなく、日本の技術をもっと活かす独自の取組みこそが必要だと思っています。
マスコミは、化石燃料を扱う企業に対して「ダイベストメント(投資撤退)」を宣言する世界の投資家・金融機関が急増しているという記事を流しています。
本当のこともあるでしょうが、彼ら投資家は、脱炭素がブームだからそれに乗っているだけで、真剣に環境問題を考えている結果の行動ではありません。
例えば、日本が「石炭火力発電所から出る炭素の100%固定化に成功し、稼働を開始」となれば、一気に投資の流れは日本に向かうでしょう。
ダイベストメントなんかを恐れて、自然を破壊するだけで採算に乗るあてのない太陽光発電などを推進する愚策は避けて欲しいものです。
悪徳業者と中国だけが儲かるビジネスになってしまいます。
「新しい資本主義」を知ろうと大上段に振りかぶってこの連載を始めましたが、今回の4回を前に書く気力が急速に落ちてしまいました。
この政策提言は、すぐに消えてしまう「泡沫の夢」として最後を締めます。
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<編集後記>
一喜一憂のサッカーワールドカップ、試合結果よりスター選手の年収に驚きです。
ロナウドやメッシなどのトップ選手は、日本円で120~160億円の年収とあります。
大リーグの大谷くんの、噂される年俸ですら「安いな」と思えてしまいます。
こうした金額は、抱え込んでいるスタッフや外部の契約会社の多さを考えれば、個人収入ではなく企業の事業売上と考えるべきなのでしょうね。
しかも、選手が現役の、それも最高レベルでいられる間の僅かな年数での“あだ花”的事業です。
そう考えると、数十年から100年超と続く中小企業のほうが、価値が高い存在だなと思えてきました。
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