2024年7月31日号(経済、経営)
2024.08.02
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2024年7月31日号
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発行日:2024年7月31日(水)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2024年7月31日号の目次
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★今度こそ中国経済は崩壊するのか?
◇2024年からの展望(3):責任あるAIってなんぞや?
◇これからの中小企業の経営(8)
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
日本の銀行・信金の貸出残高が600兆円を超え、名目GDPの591兆円を上回りました。
家計に置き換えると、年収591万円で600万円の借金がある状態。
企業に置き換えると、売上5.9億円で6億円の借入がある状態。
さて、この比較、読者のみなさまはどう考えますか。
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┃★今度こそ中国経済は崩壊するのか? ┃
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長い間「崩壊する」と言われながら、2021年にはGDPが米国の76%に迫った中国経済ですが、不動産バブル崩壊を契機に、対米GDP比率は64%に落ちています。
しかし、これらの数字を信じる人は少なく、実際は50%以下だろうとの声が多いようです。
経済評論家の中には、「中国は日本のバブル崩壊を研究しているので、同じような崩壊は起こらないだろう」と主張する方がいます。
しかし、経済の専門家を自任するならば、単なる「だろう」推測ではなく、事実を基に合理的な基準による可能性の高い未来を提示すべきです。
ということで、本メルマガは、中国経済に関する事実を以下にいくつか列挙します。
(1)不良債権処理
中国政府は、日本の住専にあたる「処理銀行」を作って不良債権の処理に当たらせました。
しかし、その処理銀行自体が破綻寸前になり他の組織へ移管を計画中ということです。
(なんのこっちゃ・・)
日本の場合は、住専が有機的に機能し負の不動産処理を成し遂げました。
当時は、ずいぶん批判されましたが、「よくやった!」と言うべきでしょう。
何かと批判の的になる官僚ですが、彼らの計算能力が高いことが重要です。
不良債権処理のような「負の仕事」は、冷徹な計算の基に冷徹に実行する以外に成功は無いのです。
実に辛い仕事ですが、計算能力が高く冷徹さに徹する資質を持つ官僚たちを集め、チームを組ませたことが成功要因でした。
弊社はコンサル事業で苦境に陥った企業を何社も立て直してきましたが、上記と同じ手法です。
ただし、経営トップが、「この改革を貫徹し、必ずわが社を立て直す」という強い意志を持ち続けることが必須要素です。
今の中国は、日本のこうした事例を学び研究しているとはお世辞にも言える状況にはなく、処理銀行自体が破綻状態という惨憺たる事態を招いています
なにより信用に足る数字がないのですから、重症です。
以下からは、その数字の一端を示しますが、すべてドル円155円で換算しています。
(2)若者の失業率
2023年6月に21.3%と発表した後、発表を止めるという「意味不明?」なことを中国は行いましたが、2024年2月に「2023年12月のデータ」として「15%に改善」と発表を再開しました。
そして、2024年6月に「13.2%」の数字を発表しました。
狐につままれたような思いですが、こうした数字の“ごまかし”は、この国の常套手段です。
例えば、失業していても親元にいる若者は失業にカウントしないとか、幼稚な小細工ばかりの数字で、こんな政府発表を信じる国民はいるのかなと思ってしまいます。
だから、「実態は50%に近い」という声が上がるのでしょうが、実態は不明です。
上記は30歳未満の若者の失業率ということですが、失業率全体は、この2年の間5.1%に張り付いたままです。
もう何も言えません。
(3)保有する米国債は190兆円
近年、大幅な売却を進めたことで急激に減少し、ピーク時の60%という水準まで下がっています。
(4)外貨準備高は501兆円
ピーク時(2014年)の84.7%に減っていますが、急減した2016年からは少し持ち直しています。
ですが、それは(2)の米国債売却の結果といえますから、今後、この水準を保てるかどうかは不明です。
(5)公債残高は840兆6671億円
日本の国債発行残高は、国と地方債務を合わせて1200兆円ですから、「中国のほうがマシ」と思われるかもしれませんね。
しかし、中国の公債残高は隠れ債務を含めると1770兆円と日本をはるかに凌駕しています。
しかも、非公式にはこのステルス債務は2000~3000兆円とする声があります。
つまり、実態数字は「誰も分からない」ようです。
(6)海外からの投資 マイナス82%
国内を含めた全体の投資額は、日本円に換算して5兆円にまで落ち込んでいます。
欧米資本の逃避が目立つのに対し、経団連や与野党議員の中国詣でが続く日本の投資は横ばいです。
大丈夫なのでしょうか。
読者のみなさまには、もうこれ以上の解説は不要でしょう。
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┃◇2024年からの展望(3):責任あるAIってなんぞや? ┃
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AIという言葉は「人間の言葉の理解や認識、推論などの知的行動をコンピュータに行わせる技術」と、文科省のホームページには書いてあります。
分かったような、分からないような説明ですが、要するに「コンピュータが人間に代わって考える」ということなのでしょう。
この説明のような世界がどんどん進化すると、最終的に人間の存在価値はもちろん、存在する意味さえ無くなるような気がします。
やがて、世界をリード(支配?)するマザーコンピュータが生まれ、そのコンピュータが「人間は害虫であり、駆除すべき」とする「ターミネータの世界」になるでしょうね。
話が先へ行きすぎましたが、すでに、脳に電極を埋め込み、思考するだけで手や足を動かす技術は既に実用化されていますし、その思考すらも補助する技術は、まだ原始的とはいえ実用化されているのです。
そうした技術に、今の幼稚なメタバースではなく、現実と変わらないメタバースが融合したら、その時には映画「マトリックスの世界」が実現するわけです。
もはや、ターミネータもマトリックスも、SF映画ではなく近未来の現実として認識しなければいけない時代になったようです。
ハードとしてのAI半導体が生まれ、それに高度学習するソフトが埋め込まれ自らを自動アップデートしていく真のAIが誕生する日が確実に来るということです。
私がここまでAIを危険視(嫌悪ではありません)するのは、20代のコンピュータメーカーにおけるSE時代の経験があるからです。
当時はまだパソコンはなく大型の汎用コンピュータの時代で、一般人が目にすることはありませんでした。
それでも軍事用の小型コンピュータは開発されていて、米国の艦艇には装備されていました。
日本は、米国の支援を受けて同様のコンピュータを開発し、潜水艦への搭載を開始していました。
私はそのチームにソフトウェア要員として加わり、ソフトの開発に従事しました。
チームの使命は、まさにAIとしての能力を備えたシステムの実現です。
海中探査のソナーから入る信号で敵艦(当時はソ連原潜)の情報を解析し、確実に撃破するシナリオをソフトが組みます。
そのソフトからの指令で攻撃態勢が整えられますが、魚雷の装填以外、人間は一切関与しません。
艦の各所から入る信号で攻撃準備が整ったことを確認したソフトは、艦橋の端末(艦長の前にある)に「スタンバイOK」の信号が入ってきます。
最後の「撃て!」は人間である艦長が行いますが、この最後の命令と魚雷の装填だけが人間の役割で、後はすべてコンピュータ(というよりソフトウェア)が行うのです。
この話は50年も昔の話ですが、すでにAIと呼ぶべき世界はその時には出来ていたのです。
私が、反対ではないがAIを無条件に「素晴らしい」と言わないのは、こうした世界を経験し、今も情報システムを商売としているからです。
今や、製造現場でのロボット化はどんどん進み、完全無人工場は無数に稼働しています。
消防や警察、軍隊などがロボットで構成される世界も、未来世界ではなく“すぐそこ”の世界との認識が必要な時代に入ってきています。
次回は、もう少し実践的な話をします。
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┃◇これからの中小企業の経営(8) ┃
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SNSや経済誌には「日本の中小企業はダメだ」を声高に主張する解説が結構載ります。
かなり著名な方が、ユーチューブで以下の発言をしていました。
「日本の企業数は360万社。ということは360万人の社長がいるということ。労働人口が8000万人とすると、22人に1人が社長という“異常値”だ」
続けて「360万社の大半は中小企業で平均社員数は3人と少々。うち一人が社長という・・」と言い、中小企業の多さが日本経済のアキレス腱だという持論を展開していました。
似たような論を展開する経済評論家もいて、一定の支持もあるようです。
こうした評論家の論調は「日本の中小企業はダメだ」という主旨で、その根拠に上げるのは、中小企業の生産性の低さです。
たしかに、財務省の「2020年 法人統計調査」の製造業の生産性を見ると、大企業が1267万円、中小企業が520万円と、中小企業は大企業の41%という低さです。
ちなみに、EU各国の中小企業の生産性は、大企業の67~80%です。
大企業の優勢は変わりませんが、日本に比べると、まだ“まし”といえる数字です。
では、こうした数字が意味することとはなんでしょうか。
生産性は、以下のように非常に単純な数式で算出される数字です。
「労働生産性=付加価値/労働者数」
「付加価値=売上高-(材料費+外注費+その他外部への支払い額)」
要するに、売上から社外に出ていく費用を引いて社内に残る利益を従業員数で割った指標です。
全企業が、この数式の各要素を同じ基準で正しく算出していれば、大中小関係なく公平な指標と言えるでしょう。
しかし、現実はそう簡単な話ではありません。
例えば労働者数ですが、大企業は正社員を減らし、派遣社員を増やし、さらには「業務委託」という外注費に変えたりしています。
当然、従業員数は減りますが、売上が同じであれば労働生産性は上がります。
では、そうした大企業は「好調な優良企業」といえるのでしょうか。
中小企業で、上記のような形で従業員数をコントロールしている会社はあまり無いでしょう。
つまり、単純に労働生産性で大企業と中小企業とを比較して「中小企業を淘汰しろ」と言うのは乱暴すぎると言いたいのです。
上場企業は経営成績が公表されるので、ごまかしにくいのですが、公表する義務がない中小企業の場合は、「分からない」が正解です。
ところで現在、企業の大小に関係なく、賃上げしないと従業員の確保が難しくなっています。
ゆえに、頑張って賃上げを続けたことで中小企業の労働分配率は80%に近付いています。
つまり、事業で上げた利益(付加価値)の8割を従業員に還元しているわけです。
ということは、賃上げを続ける余地がなくなってきているといえます。
中小企業の多くは、賃上げ競争で大企業と競うことが無理になってきているのです。
SNSの「日本の中小企業はダメだ」の主張は、こうしたことも下敷きにしているといえます。
今回は“生煮え”のような分析でしたが、次回からは中小企業強化の方策について論じていきます。
引き続きお読みください。
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<編集後記>
筆者がハルシステム設計を創業してから33年半となります。
企業が30年生きる確率は1000社に1~3社ぐらいと言われますので、ほぼ奇跡ということになります。
2度ほど「絶体絶命」の危機をくぐり抜けた経験から言えるのは「奇跡は起きるのではなく、起こすものだ」ということです。
長期に渡り「鹿児島建設新聞」に連載小説として掲載中の「山田君のコストダウン挑戦日記」は、第3シリーズに入っていますが、弊社の創業期の様子が下敷きになっています。
今年(2024年)から新しいブログの「儲かる建設会社になろう」を公開しています。
非定期のアップなので、進みが遅いですが、今月も続きをアップしています。
https://realbiz.halsystem.co.jp/
「鹿児島建設新聞」にご許可をいただいたので、この「山田君・・」の第1および第2シリーズを、本「儲かる建設会社になろう」のHPに連載する予定です。
本HPへのアクセスもよろしくお願いします。
https://www.kc-news.co.jp/
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