2016年8月15日号(国際、政治)
2016.09.02
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2016年8月15日号
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発行日:2016年8月15日(月)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2016年8月15日の目次
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★北戴河会議
☆戦争を起こさせない二つの仕組み(1)
☆小池都知事と自民党
☆経済と政治(5)グローバリゼーションと反グローバリゼーション
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
15日は終戦の日ですが、人類の歴史は戦争の歴史で埋め尽くされています。
戦争は人類の宿命のようなもので、この先の歴史からも消えることはないのでしょうか。
その戦争をなくそうという願いで創ったはずの国連の存在価値がどんどん低下しています。
南シナ海における国際裁定を無視する中国が国連安保理の常任理事国という皮肉に、今の国連の限界を感じます。
それでは、その中国問題から始めます。
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┃★北戴河会議 ┃
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今年も7月末から、北京に近いリゾート地の北戴河(河北省)で中国共産党指導部の非公式会議(通称、北戴河会議)が開かれています。
中国政治の最高会議と言われながら、公式会議ではなく、情報も一切外に出ないという秘密会議です。
共産党一党独裁という非民主主義国家の中国を象徴する会議ともいえます。
ただ、北戴河には党・政府機関の事務所もあり、指導者と外国要人との会談なども行われるため、少しずつ情報は漏れてきます。
その断片情報から各国は中国政治の今後を推理するわけです。
以下に、そうした分析結果のひとつを紹介します。
読者のみなさまもよくご存知のように、中国共産党には3つの派閥があり、激しい権力闘争を繰り広げています。
古くからの大物の子弟たちで構成される「太子党派」、14~28歳を対象にした青年組織(共青団)出身者たちから成る「団派(共青団派とも言われる)」、江沢民・元国家主席を中心とした華南沿岸部を地盤とする「上海閥」の3派閥です。
習近平主席は、太子党派の頭目であり、他の派閥を弱体化させ、独裁覇権を握ろうとしています。
そのため、まず上海閥をターゲットにした徹底した反腐敗運動を起こし、上海閥の幹部を次々と有罪に追い込みました。
これにより、上海閥は大きく弱体化したと言われています。
習近平主席の次の狙いは、当然、共青団派です。
しかし、共青団は団員数約8600万人という大きな勢力であり、政権No.2の李克強首相のほか胡錦濤・前国家主席や李源潮・国家副主席らがまだ健在です。
最高指導部である政治局常務委員(7人)の中で、現在のメンバーは李首相だけですが、次の候補となる若手の政治局委員(18人)には多数の団派がいて、下手すれば、習近平主席の政権が揺らぎかねません。
そこで習近平主席は、まず言葉による攻撃を開始しました。
習氏は、最近の党会議で団派を「大衆から遊離した存在」と批判し出しました。
さらに、胡錦濤氏の元側近の令計画・前党中央統一戦線工作部長を収賄などの罪で無期懲役としました。
また、李克強首相の権限をかなり露骨に剥奪する手にも出ています。
当然、習・李両氏の関係が一触即発状態なことは外からもはっきりと見て取れます。
中国の最高権力メンバーである政治局常務委員(7人)は5年毎の党大会で選出されますが、実際にはこの北戴河会議で大筋が決まると言われています。
この委員ですが、慣例として、67歳以下ならば政治局に残留あるいは昇進できますが、68歳以上だと昇進は出来ないし、現委員も引退しなければなりません。
この慣例が踏襲されるとすると、習、李両氏を除く5人の常務委員全員が来秋(2017年)の党大会で退任することになるのです。
このような世代交代が一気に進むとすると、共青団派のホープ胡春華氏と上海閥の切り札の孫政才氏の2人が常務委員に昇格すると言われています。
そうなると、次の2022年の党大会で引退する習近平主席に代わって、2人のどちらかが次の主席になる公算が強くなります。
しかし、独裁者としての地位を絶対化したい習近平主席は、この慣例を崩す腹だと思われます。
彼の描く権力絶対化のシナリオとは以下の様な筋書きです。
まず、68歳定年を70歳定年に変更する。
そうすると、盟友の王岐山氏を常務委員に残すことが出来るようになる。
その上で、李克強首相を「経済失速」の責任を取らせて更迭し、王岐山氏を首相に据える。
こうして、政治局常務委員を完全に自分の傘下に抑え込み、中国トップの総書記兼国家主席の任期を現在の「2期10年」から「3期15年」に変えさせる。
これで、習近平氏の独裁体制が固まるという筋書きです。
もちろん、上記の話は推論であり確証はありません。
ただ、もし上記のような目論見を習近平主席が持って会議に臨めば、今年あるいは来年の北戴河会議は大荒れとなるでしょう。
習近平主席のこうした目論見の最大の障害は、南シナ海における国際司法裁定の敗北です。
この裁定を「紙くず」と汚い言葉で罵るだけでは弱いと見て、北戴河会議に合わせて東シナ海で攻勢に出ているのです。
米国相手は怖いが、日本ならばたとえ軍事衝突に及んでも「勝てる」と踏んでいるフシもあります。
そうして、国内に向けて強い中国を演出することで自らの野望を実現しようとしているのではないでしょうか。
北戴河会議の行方に注目すると同時に、尖閣諸島の防衛体制を強固にして、習近平主席の野望を打ち砕くことがアジアの平和にとって不可欠と認識すべきです。
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┃☆戦争を起こさせない二つの仕組み(1) ┃
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前節で述べた通り、中国の外交姿勢が強硬一辺倒になり、外交上の言葉が、まるで北朝鮮かと思うくらいに、非常に汚くなっている。
尖閣諸島沖の挑発行動も限度を越えていて、戦争の前兆のように感じられるほど危険な水準になっている。
日本は、偶発を装った軍事衝突もあり得ると覚悟して、効果的な対処方法を練っておく必要がある。
しかし、日本から「戦争だ!」と騒ぐことは得策ではない。
日常や経営の問題でも同じだが、頭に血が上っているときほど、一歩引いて大きな視点で問題を見ることが重要である。
まして国家間の問題である。
実際の戦争を引き起こさずに、いかにして中国の野望を封じ込めていくか、日本には忍耐としたたかな戦略構築力が問われているということである。
国際政治学の世界では、戦争を回避する方策は以下の2つの戦略に集約されている。
ひとつは「軍事力の均衡」を重視するリアリズム戦略である。
そして、もうひとつは「経済的要素や、国際的組織および各国の政治体制」を重視するリベラリズム戦略である。
もちろん、どちらか一方の戦略を採る選択問題ではなく、2つの戦略をどう組み合わせるかのミックス問題である。
そのための採るべき戦術として、国際政治学では以下の5つを挙げている。
1.有効な同盟関係を結ぶ
2.相対的な軍事力を保持する
3.民主主義の程度を増す
4.経済的依存関係を強める
5.国際的組織への加入
1と2がリアリズム戦略、3~5がリベラリズム戦略と言えるであろう。
ところで、某分析機関が、この5つを数値分析している。
その計算根拠は不明だが、感覚的には「なるほど」と思う数字である。
戦争のリスクを減少させる効果の割合は、
1.有効な同盟関係を結ぶことで40%
2.相対的な軍事力が一定割合(標準偏差分、以下同じ)増すことで36%
3.民主主義の程度が一定割合増すことで33%
4.経済的依存関係が一定割合増すことで24%
5.国際的組織への加入が一定割合増すことで24%
次号で、この5つの戦術において、日本が採るべき具体策を論じたいと思う。
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┃☆小池都知事と自民党 ┃
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小池百合子新都知事は、なかなかにしたたかな政治家である。
選挙期間中は、あれだけ激しく攻撃し合った相手とにこやかに握手して回る姿を見て、多くの人は「たいした神経だな」と感心しているのではないか。
もちろん「見え見え」のパフォーマンスなのだが、それでも、常ににこやかな表情を崩さない小池知事には感心させられる。
雲隠れしたり、握手や記念撮影を拒否した都議会自民党の幹部たちが、まるで駄々っ子に見えてしまい、都民の非難を浴びている。
第1ラウンドは、まずは新都知事の圧勝と言ってもよいであろう。
問題は、都議会が開催される第2ラウンド、特に副知事の任命である。
都議会を牛耳っている自民党都連は、虎視眈々と反撃策を練っていることであろう。
ここは、小池氏はもとより、小池氏のブレーンの力量が問われることになる。
この結果は、都議会自民党の態度にかかっているといえるが、自民党本部が陰でどう動くかも大きな要素といえる。
都議会の最大会派である自民党は、新知事の施策を全て否決することが可能である。
そうなると、小池都政はすぐに行き詰まることも考えられる。
しかし、小池氏は、むしろそれを狙っているように思う。
都議会の様子を徹底的に公開し、都民に都議会自民党の姿を赤裸々に洗い出してみせる戦術を考えていると思う。
その上で、小池新党を起ち上げ、来年の都議選で一気に第一党を奪取するという戦略を描いているように思える。
このシナリオ通りに進んだ場合、小池新党は圧勝すると思う。
こうした事態を一番避けたいのが自民党本部、とりわけ安倍首相であろう。
都知事選挙の期間中、一度も増田候補の応援演説に立たなかったのも、こうした事態を予想したからである。
哀れなのは増田候補である。
さて、首相官邸がどのような手を打ってくるか、小池都知事の動向とともに興味を引くところである。
願わくは、日本経済にとって追い風となるような結果を出して欲しいものである。
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┃☆経済と政治(5)グローバリゼーションと反グローバリゼーション ┃
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先の選挙で、野党は「アベノミクスは失敗」と安倍内閣の経済政策をターゲットに政権批判を繰り広げたが、空振りに終わった。
与党は「アベノミクスは国民に支持された」と胸を張っているが、しかし、国民はそれほどバカではない。
野党4党が束になっても「政権担当能力がない」ことを見抜き、とりあえず現政権に時間を与えたに過ぎない。
また、安倍内閣もバカではない。
マクロ安定化政策に頼る限界は十分に感じている。
ならば、そろそろマクロ安定化策の追求はやめて、本気で成長戦略に全力を注力するという政策に転換しても良さそうなものである。
しかし、自民党の大勢にはヘリコプター・マネー待望論が広がるなど、相変わらずの金融政策頼みで、成長戦略に対する機運がむしろ萎えているように感じるのはなぜか。
安倍首相の「成長戦略を力強く進める」という言葉だけが虚しく響く。
だが、この停滞の原因は安倍首相の責任というより、世界的に政治の潮流が大きく変わってきたことにあることを認識すべきである。
その潮流の変化とは、ここにきて、反グローバリゼーションのうねりが世界中で強まっていることである。
世界各国で、経済構造改革を進めることは自国を危険に陥れることだと思われ出しているのである。
英国民投票における欧州連合(EU)離脱選択はそのような国民意識の象徴なのである。
要するに、先進各国の経済成長率が低迷を続ける現在、潜在成長率の回復を狙って自由貿易や規制緩和を推進すると、その恩恵を享受できない人々が増え、全国的に不満が高まり、その不満を吸い上げる形で極右・極左勢力が台頭、政治的な不安定性が高まるとの懸念が増大しているのである。
米国と英国はグローバリゼーションの進展を国民が受け入れてきた国であるが、その米英ですら、反自由貿易、反移民の政治的なうねりが大きくなり、それが英国ではEU離脱選択になり、米国では、大統領選におけるトランプやサンダースのような反グローバリゼーションを掲げる候補者の躍進に繋がっているのである。
先進各国は、潜在成長率の低下が労働分配率の低下を招き、結果として実質賃金が上がらず、相対的に資産価格ばかりが上昇するという事態に陥り、特に低所得者層の怒りが募っているのである。
各国中央銀行は、インフレ率を高め経済成長率を回復させようとしているが、原油高や通貨の乱高下により失敗ばかりが続き、実質賃金のさらなる低下を招くという悪循環しか生んでいない。
庶民の目から見ると、中央銀行は経済格差の拡大を助長しているようにしか見えない事態である。
その中にあって、しかし、日本という国は不思議な国である。
日本も、各国と同様かそれ以上に経済成長率は低迷し、実質賃金の低迷も続いている。
マイナス金利導入も失敗した日銀に対しては厳しい目が向けられているが、政治の世界では、極右や極左勢力の台頭は全く見られず、安倍政権は先進国中で最も安定した政権基盤を確保している。
先の参院選の大勝などは、他国では考えられない現象なのである。
これは、ひとえに日本国民の大人しさ、忍耐強さに起因しているのであるが、かなりの与党政治家は以下のように誤解している。
「日本では自由貿易や規制緩和などグローバリゼーションが十分広がらなかったから、また移民政策を棚上げにしてきたから、極右・極左勢力も台頭していないのである」
「また、政府による補正予算などの追加財政処置によって財政資金が多様な階層に行きわたり、社会の不満は和らげられている。今後も追加財政を強化し、ヘリコプター・マネーなどの政策を強化すべきで、自由貿易や規制緩和、移民政策などの成長戦略は棚上げすべきだ」
これは、完全に間違えた認識である。
このような政策が続けばどうなるかは次号で解説するが、安倍首相がこのような考えに毒され、道を誤らないことを切に望む。
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<編集後記>
15日に合わせて、韓国の国会議員10人が竹島に上陸しました。
いかに国内向けのパフォーマンスといえども、なんとも浅はかな行為です。
純粋に韓国の国益を考えればマイナスにしかなりません。
中国との蜜月関係は崩れ、さまざまな脅しすら掛けられているのです。
このような事態で日本を敵に回せば、北朝鮮を含めて四面楚歌になり、外交が行き詰まることは明白です。
このような自分のことしか考えない国会議員の行動を止められなかった韓国政府の弱体化のほうが心配です。
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