2023年1月31日号(経済、経営)

2023.02.01


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2023年1月31日号
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発行日:2023年1月31日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2023年1月31日号の目次
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◇中小企業は儲かっていない(2)
◇曲がり角の先の経済を考えてみよう(6):事業承継
★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その7)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
政府統計によると、昨年12月の消費者物価指数は、総合指標で4.0%の上昇でした。
一方、給与総額の上昇は1.8%ですから、実質賃金は2.2%減となります。
しかも給与が上がれば、税金や社会保険料も上がり、手取り額は減ります。
消費者心理が上がるわけはない・・ということですね。
政府は企業に「賃上げを」と言いますが、その果実を目減りさせる政治に、企業経営者の徒労感は深まる一方です。
 
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┃◇中小企業は儲かっていない(2)                 ┃
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帝国データバンクの2020年度の統計によれば、日本にはゾンビ企業が16.5万社あるということです。
ただ、2020年度は新型コロナが広がった1年目です。
大規模なコロナ補助金やゼロゼロ融資のおかげで、これ以降の企業倒産数は減っています。
しかし、減った分だけゾンビ企業の実数が増えていると考えることもできます。
そうだとすると、経済復興の足かせになることが懸念されます。
 
「ゾンビ企業」という言葉は、1990年代前半のバブル崩壊後の「失われた10年」の経済を分析する過程で使われ出した言葉とされています。
具体的には、数年にわたって債務の利子すら払えないという経営状態の中で、金融機関や政府などの支援によって存続し続けているような企業を指します。
国際決済銀行(BIS)では、3年以上にわたって「インタレスト・カバレッジ・レシオ(負担に対する利益の比率)」が1.0未満にある企業をゾンビ企業と定義しています。
※インタレスト・カバレッジ・レシオ=(利益+受取利息+配当金等)/(支払利息+社債利息等)
 
もっとも、新型コロナ対策のゼロゼロ融資が効いている最近のデータだと、支払利息が著しく低くなっているので、あてにはならない指標ですが・・
2023年度から徐々に正常な利払いが復活してきますが、同時に、新規融資に対する金利上昇が起きる気配が濃厚です。
こうなると、多くのゾンビ企業が事業継続を諦め、一気に倒産件数が増えるのではないでしょうか。
今後、取引に対する与信管理が重要になってくるといえます。
 
ところで、前号で「中小企業の多くは大企業の下請けや仲介的な仕事が稼ぎの中心になっています」と書きましたが、反論される方もいらっしゃるでしょう。
ある方が、「中小企業全体では大企業の下請け比率はわずか5%程度に過ぎない」と書かれ、「『大企業が札束で頬を叩き、町工場の優れた技術を盗む』というTVなどで定番のストーリーの「製造業」で限ってみても17.4%しかない」と発言されています。
 
こうした意見は、中小企業庁のデータを基にされていますので、間違いではありません。
ちなみに、「情報通信機械器具製造業」では35.9%と、かなり高い割合になっていますので、情報産業は下請比率の高い産業といえます。
また、下請ではありませんが、仲介的な事業を営んでいる企業も多く存在しています。
こうした業態も取引先の意向に対する抵抗力が弱いので、下請け企業と同様の立場に立たされている企業も多いと思われます。
 
こうした統計データを別の角度から見ていくと、また別の面が見えてきます。
会社組織ではない個人事業者の下請比率が17.4%なのに対し、従業員数301人以上の比較的大きな会社だと79.2%という高い率になります。
これも当然といえる数字です。
これだけの社員の雇用を守るためには、大口かつ安定的な顧客が必要です。
必然的に大企業を顧客に持つ構造になるわけです。
 
こうした取引関係で下請側が優位に立つためには、大企業から見て「代替が効かない大事な会社」になるしかありません。
しかし、多くの会社からは「そんなこと言ったって・・」と言われるでしょうね。
次回は、この問題を考えてみたいと思います。
 
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┃◇曲がり角の先の経済を考えてみよう(6):事業承継        ┃
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稲森氏や松下幸之助氏は、大成功した経営者ですが、決して善人ではありませんでした。
と言っても悪口ではなく、むしろ称賛の言葉です。
並の経営者が見習うとしたら、そうしたシビアな側面です。
あえて言えば、経営の芯に「孫子」や「韓非子」あるいは「マキャベリ」的な冷徹な戦略思考を持ち、それを「論語」や仏教の経典などでオブラートに包むというような経営でしょうか。
 
私は33年の経営の中で多くの経営者の方と話してきました。
その中には、名の知られた方もいますし、業界の“風雲児”と称される方もいます。
しかし、今も強く印象に残っているのは、ジリ貧に追い込まれた末に無念な結果に終わった方や、傷心の中で亡くなられた方々です。
「孫子」で師事した故武岡先生は、「経営の戦場は戦闘の戦場より過酷だ」と、口癖のように仰っていましたが、そのとおりだと実感しています。
それは経営者の宿命といえるもので、嫌なら経営者になるべきではないのでしょう。
 
日本経済が低迷を続ける中、中小企業庁の2022年度のデータによると、会社の継続を諦めている中小企業の割合は37%で、継続の意思を持つ企業の38%とほぼ同じ割合です。
残りの25%は「思案中」という答えなので、ほぼ半々といえる状況です。
この背景には、経営トップの高齢化が進み、後継者がいないという世相があります。
経営トップの60代以上の割合は67.6%と高い比率となり、70代以上も35.2%となっています。
これまで中小企業は代々一族が経営を引き継いできた例が多かったですが、そのことに躊躇する経営者が増えてきています。
躊躇する間にも時間は過ぎ、経営者の高齢化が進むという現実が数字に現れています。
 
そもそも親の経営を引き継ぐ意思がない子供の割合が増えているとの統計もあります。
放映中のNHKの朝ドラでは、娘が自分の夢を諦め、倒産寸前の親の会社を支えるというストーリーですが、現実感の無さに視聴者離れが起きていると言われています。
一般の方にも現実の経営の厳しさが感じられるのでしょうか。
 
本メルマガで再三述べているように、現在の世界は2025年を頂点とする100年に及ぶ大きな曲がり角を回っている最中です。
目に映る景色が目まぐるしく変わっていくことで、自社もこのカーブの中を回っているなという実感があります。
 
トヨタの豊田章男社長が、突然に社長交代を発表しました。
豊田社長には、このカーブを回りきった先の世界が見えているのでしょうか。
そして、その先は鋭い感性を持った若い経営者でないと乗り切れないと判断したのでしょうか。
会見では、ご自分ではこの先の世界は乗り切れないとの発言までされていました。
 
私は、35年前に、それまで20年以上乗り続けた日産からトヨタに車を変えました。
以来、トヨタ車を乗り継いできました。
その最大の要素はエンジンにあり、その技術は今も高く評価しています。
しかし、次の車あるいはその次となると、迷い出しています。
今乗っている車は、好きな山岳路や雪道での運転には最適ですが、「運転を楽しむには年を取りすぎてきたな」という実感と共に、車に対する意識が変化してきました。
おそらく、豊田社長は、そうした市場意識の変化を感じてきたのではないでしょうか。
事業承継を意識している経営者は、「世襲か否か」ではなく、「自社の未来に対する責任」で後継を考えるべきではと思うのです。
自分を含めてです。
 
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┃★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その7)        ┃
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以下は、中国の2022年11月の経済データです。
前年比で、輸出-8.7%、輸入-10.6%、消費-5.9%と軒並みマイナスです。
若者の失業率17.9%だけがプラスという皮肉さです。
しかし、公式発表での7~9月の経済成長率は+3.9%で、10~12月は+2.9%となっています。
伸び率は鈍っていますが、“成長の持続”は続いているということです。
読者のみなさんは、この結果に「?」と思うでしょうね。
貿易と消費がマイナスで失業率が増えているのに経済成長率がプラスって、「あり得る?」と思うのが普通です。
 
そこで、別のデータを見てみます。
投資比率がGDP比で43%(日本27.3%、米国21.2%)と、かなりの高さになっています。
つまり、統計数値をごまかしているのではなく、投資の拡大が貿易と消費のマイナスをカバーしているということなのです。
 
しかし、この投資の多くは不動産投資です。
前々回まで述べてきたように、すでに30億人分の住宅を建設してしまったといわれる不動産市場が崩壊するのは時間の問題と見られています。
 
そうした中、中国統計局は、2021年度のGDPを+8.1%から+8.4%へと修正しました。
なんと、過去のデータを上方修正したのです。
同時に、2022年度の予想を3.0%と、目標の5.5%からかなり下回った数字を出してきました。
習近平政権の中枢は、3月5日から開かれる全人代(全国人民代表大会)での発表内容に対して相当に混乱しているようです。
乱暴に言えば、どのように“辻褄”を合わせた数字を発表するかで混乱しているということです。
 
アングラ情報では、江南地区の中堅の自動車会社が、実際は20.5億元(390億円)の売上なのに、行政区から67億元(1,275億円)の売上にしろと命令されたとHPで告白したことが話題になっています。
当然、この会社の実質は赤字なので、銀行に運転資金の融資を申し込んだところ、「儲かっているだろう」とダメ出しを食らったそうです。
一方、国有企業は国家信用を担保に低利の融資を受けられています。
それでどうするかというと、その融資金を銀行融資が受けられない民営企業に“また貸し”して、中間利益(ピンハネ)を取っているというのです。
 
そもそも国有企業は、上流の市場を寡占し、価格を上昇させ高い利益をむさぼっています。
こうした国営企業は安泰で、その利益の一部は、地方から中央の幹部へと流れています。
その反対に、民営企業は独禁法違反や融資基準で厳しく取り締まられ、倒産や夜逃げが増えています。
今や、民営企業の経営者には、「トウ平(なにもしない、諦めた)」という意識が広がっていると言われています。
※トウ平=「身」と「尚「を組み合わせた漢字に平を付けた単語=中国語で「タンピン」と言う
 
比較的経営がうまくいっている民営企業も、あえて銀行から資金を借りずに、事業を縮小して身を守る「借り惜しみ」や借入金を期日前に返還する現象が増えています。
このように、民営企業は衰退する一方ですが、習近平政権は、なんの予防措置も取らずに、いきなり「ゼロコロナ政策」を放棄しました。
飲食業は「お客が戻ってきた」と喜ぶ向きもありますが、当然、感染爆発が起きたことで先行きは不安がいっぱいです。
まして、製造業などの民営企業の現場は大混乱です。
 
さすがに慌てた習近平主席は、2022年12月の中央経済工作会議で「民営企業の振興」を打ち出し、これまでの計画経済回帰路線を転換させるかのようなシグナルを出しました。
さらに、政治局会議で内需拡大戦略計画綱要を発表し、弾圧してきた先進企業などに、一転して有利な政策を出すような姿勢を示し出しています。
 
しかし、「自らの政策の失敗」を認めることのない習近平主席を、中国の人々や国内外の投資者たちが信じるかどうかが大きなカギです。
習近平主席は、国内外の投資者たちのみならず、国際政治社会からの「中国に対する信用」を完全に失墜させてしまった張本人です。
今や、右に左にとハンドルをデタラメに切る暴走車の運転手と見られてしまっているのです。
 
こうした見方が当たっているか外れるか、それは読者のみなさんにお任せするとして、本連載はここでいったん終わりにします。
 
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<編集後記>
本メルマガから建設関係の連載を外した際に、建設専用のホームページを立ち上げることを予告しました。
現在、新年度(4月)の立ち上げを目標に設計を進めています。
しかし、言い訳になりますが、本業の傍らということで作業時間は夜間と休日の一部しか割けません。
結果、“そば屋の出前”状態となっていますが、もうしばらくお待ちください。
 
建設と情報システムをつなぐ事業は、私にとってのライフワークです。
一般の方にとっても、建設や情報システムは生活や仕事のインフラ基盤です。
興味が湧き、ためになる発信を心がけていきます。
 
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