2023年6月30日号(経済、経営)
2023.07.03
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2023年6月30日号
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発行日:2023年6月30日(金)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2023年6月30日号の目次
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇日銀の方針と植田総裁(1)
◇企業にとっての借入金(2)
◇女性役員の割合を30%以上に
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
ロシアで起きた、突然の「プリゴジンの乱」。
ベラルーシまで参入してきて、先が読めない展開になっています。
今のところ、世界経済への影響は無いようですので、7月15日の「政治・国際」の号で今後の見通しを解説したいと思います。
今号は、日銀の話題からお送りします。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇日銀の方針と植田総裁(1) ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
6月16日、日銀は15、16日に行われた金融政策決定会合の結果を発表しました。
植田和男総裁に代わって2回目の会合だったので注目されましたが、結論は「現在の金融緩和策を維持する」で、前回4月の発表と概ね同じでした。
具体的には、長期金利の変動幅をプラスマイナス0.5%程度に維持、短期金利は「YCC(Yield Curve Control=イールドカーブ・コントロール)」でマイナスあるいはゼロ状態に維持するという政策です。
つまり、現在の大規模な金融緩和策を維持するということです。
<注釈:YCC(Yield Curve Control=イールドカーブ・コントロール)>
中央銀行が特定の国債の利回りをチェックし、適宜、買い入れを行い利回りをコントロールする手法。日本以外の中央銀行でも行っている金融政策手法です。
景気については「エネルギーや資源高の影響などを受けつつも、持ち直している」として、景況判断は据え置きました。
また、3%台に上昇している消費者物価については、「年末に向けてプラス幅を縮小していく可能性が高い」とし、その後は「企業の価格や賃金設定行動の変化を伴う形で、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる」と、あいまいな表現を示すに留めました。
ただ、今回、植田総裁は、かなり細かなレベルまでの説明を行いました。
この背景には、5月15日の「経済財政諮問会議」に出席したプリンストン大学の清滝信宏教授とのやり取りがあるのではないかと思います。
清滝教授は、英国の経済学者ジョン・ムーアと組んだ「清滝・ムーアモデル」で、バブル崩壊のメカニズムを解明し、リーマンショックを予言したことで知られる数学・経済学者です。
こうした功績から日本人初のノーベル経済学賞の有力候補として知られています。
一方の植田総裁も、2022年ノーベル経済学賞受賞者のベン・バーナンキ(米国の前FRB 理事会議長)と共に経済学の巨人と目されるスタンレー・フィッシャーの元で学んだ世界的な経済学者です。
この二人の意見が真っ向から対立したのです。
清滝教授は、世界経済の現状を「2%を超えるインフレが数年は続くと予想される」とし、「日本は現状の量的・質的緩和策を解除すべきである」と指摘しました。
「低金利が続く日本では、安易な投資しか行われず、その結果として経済成長が停滞している。金融緩和策を止め、金利を引き上げ、高収益の投資を促すべき」という提言です。
たぶん、植田総裁の考えも基本は同じだと思われます。
しかし、自由に意見が言える立場の清滝教授と違い、発言の一言が日本のみならず世界経済に影響を与える立場の植田総裁は、発言に慎重にならざるを得ません。
賃金上昇と物価安定の好循環という目標の実現を優先し、現在の金融緩和策を粘り強く続ける必要があると判断したのだと思います。
その一方で、植田総裁は、「ある程度のサプライズはやむを得ない」として、YCCの修正には含みを持たせました。
どこかで植田色の強い政策を打ち出すかもしれません。
企業は、今後の日銀政策を注視しながら、利上げに備えた投資および金融対策を練っていく必要があります。
この問題、次号で続きを解説していきます。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇企業にとっての借入金(2) ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
注意:本テーマは数回に分けますので、前回の(前半)を(1)として、今回を(2)とします。
無借金経営を標榜されている企業には無縁の話かもしれませんが、多くの企業にとって借金は経営の必須事項といえます。
一般の方は、借金は“怖い”ものとして住宅ローンや車ローン以外は極力避けていると思います。
もっとも、今の若い方にはそうした意識は低く、クレジット払いは当然、さらに、いろいろな借金も利用している方が多いようですが・・
私は、臆病な性格でしたから、サラリーマン時代は、車の購入も現金払い、クレジットは極力使わない生活スタイルでした。
自宅の購入も15年ローンという短期の借り入れでした。
起業も、そのローンが完済してからという臆病ぶりでした。
起業後も、建築設計の請負とシステムの受託開発という確実に代金回収ができる仕事に限定し、借金を負わない経営に徹していました。
しかし、創業1年で「こうした考えでは企業は発展しない。自社開発した商品を持たなくてはダメだ」との考えに至りました。
建築分野はハウスメーカーなどに対抗する商品開発はとても無理なので、ソフト分野の商品開発に的を絞りました。
しかし、市場に認めてもらう商品という壁は厚く、失敗の連続でした。
何度か失敗した末に、建設業向けの原価管理・財務管理のパッケージソフトの開発に踏み切りました。
当然、先行するソフト会社はあり、大手ベンダーも存在しています。
自社だけのオリジナル機能が必要と思い、当時の他社ソフトにはなかった「通信回線を経由してデータを一元管理する」というソフトを開発しました。
NEC時代のSE経験で通信回線のコントロールに強いという特色を打ち出すことにしたのです。
そうはいっても、こうした本格的な商品の開発には多額の資金が必要です。
その当時の現預金は3000万円ぐらいありましたが、1億円と見込んだ開発資金には不足です。
そこで初めて、銀行から8000万円の借り入れを行いました。
もちろん、自宅を担保に入れたうえ、個人保証付きという融資ですので、恐怖はありました。
創業1年目の年商は4000万円でしたが、2年目の年商は1億円になるという事業計画書と、創業まで勤めていた会社の信用が銀行の判断を後押ししてくれました。
だが、1年の歳月と1億円の資金をつぎ込んでも商品は完成せず、窮地に追い込まれました。
開発を諦めるか、なお時間と資金を投入して進むかを考えた末、続行を決意しました。
結局、2年の歳月と2億円をつぎ込み、ようやく商品は完成しました。
私が読んだ本の中に「失敗する可能性のあるものは、失敗する」という言葉などで有名な「マーフィーの法則」という本があります。
米空軍大尉で航空工学者だった「エドワード・A・マーフィー・ジュニア」の著書です。
マーフィーの原本は工学的な経験則をまとめた“真面目な”内容でしたが、後にユーモアのある「法則」としてアレンジした本がたくさん出版されました。
こうしたアレンジ本は、人間心理の“あや”をユーモアのある表現で言い当てていますが、そうした中に以下の法則があります。
「ものごとはすべて、最初に計画した2倍の時間と2倍の資金が掛かるものだ。だからといって、2倍を見越した計画をつくると、結果として、さらにその2倍かかってしまうものだ」
私の開発は、まさに、この指摘どおりの結果でした。
事前にこの本を読んでいたことで、さらに2倍の資金調達に踏み切れたのだと思います。
このように読書は大事ですが、いろんなジャンルの乱読が良いと思っています。
しかし、そうはいっても、計画の2倍の資金調達は地獄の苦しみでした。
その話は次号で・・
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇女性役員の割合を30%以上に ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
本メルマガ4月30日号の<編集後記>に、以下の内容の文を書きました。
『4月27日、政府は東商プライム企業の女性役員を、2030年に30%にするという目標を掲げました。
岸田首相は「社会全体での女性登用促進にはずみをつける」としています。
正直な感想を言えば「どうかなあ~」です。
複雑化する一方の経営環境を考えれば、女性の感性・能力が必要なことは明らかで、政府に言われるまでもないことです。
しかし、大企業が率先すれば中小企業が従うという古い発想から脱することができない政治が最も遅れています。
岸田首相が掲げるべきは、「大臣の半分を女性にします」という目標ではないでしょうか。
もっとも与党内の男性議員たちから猛反発をくらうでしょうが・・』
6月21日に世界経済フォーラムが公表した「ジェンダーギャップ(男女格差)リポート」で、日本は146カ国中125位という順位でした。
このリポートに政府は慌てたのか、上場企業に対して「女性役員比率を30%以上にせよ」とした要請を出しました。
4月27日の目標発表と同じ内容ですが、今度は各企業宛の直接要請です。
しかし、いきなり多くの女性社員を役員に引き上げたら社内は大混乱となるでしょう。
そこで、社外役員枠を増やし、そこに外部の女性を据えるという“姑息”な手段を採る企業が多いようです。
まあ、「とりあえず形だけ整える」という、いつもの日本文化(?)で、しのごうというわけです。
それも仕方ない側面がありますが、問題はその人選です。
外部から本当に有能な女性役員が来て、あれこれ経営を批判されても困るのが多くの企業の本音です。
現在、公表されている女性の社外役員の顔ぶれを見ると、その本音が透けて見えます。
言い方は悪いですが、「知名度があり、でも企業の実務経験のない女性」の名前が散見されます。
具体的には、元アナウンサー、芸能関係者、元アスリートの方の就任が目立ちます。
もちろん、中には経営能力があると思われる方もいますが、本当に経営に参画できるかには疑問があります。
どうなるでしょうか。
私の管理職時代は35歳から創業前の44歳までの9年間です。
随分昔の話になってしまいましたが、大手企業の内実は、あの頃からそんなに変わっていないように思えます。
当時在籍していた会社で、ある時、社長直々に「女性社員の活性化」が全管理職に通達されました。
私は、ある女性を主任に昇格させようと考え、本人に面接しました。
てっきり「頑張ります」と言うと思ったのですが、女性の返答は「困ります!」でした。
私は面食らい、聞き直したのですが「困ります」を繰り返すのみ。
理由を聞いたのですが、理由は言いません。
では、まず女性たちの仕事内容を変えようと考えました。
社外との折衝や出張のある仕事に女性たちを積極的に活用することから始めました。
しかし、すぐに壁にぶつかりました。
当時は「女性は補助職」との考えが強かったせいで女性には名刺がありませんでした。
そこで、総務部に名刺を申請したところ、総務部長から「なんで、“オンナ”に名刺が要る?」との一言。
言い争うのも面倒なので、「私の部門の費用で作成します。会社のロゴを使用する許可だけください」と押し切りました。
次に、出張させようとしたら、また「なんで“オンナ”に出張させる」と言いがかりです。
無視して強行すると、とても内容を書けないような低次元の噂を社内に飛ばされました。
そんな頭の硬い連中の妨害よりこたえたのは、他部署の女性社員からの、私の部署の女性に対するイヤミやイジメです。
前述の女性社員を昇格させようとした時の「困ります」の意味は、こうした攻撃を受けることが分かっていたからなのだと分かりました。
やや脱線するので、その後の話は別に書くとします。
上記は、かなり昔の話ですが、現代でもそれほど状況は改善されていないのではと思うのです。
政府は、「・・30%以上に」という意味の薄い目標を企業に要請する前に、政治の世界から改革を進めるべきでしょう。
なにしろ、前述の世界経済フォーラムのリポートでは、政治分野が138位と全体の足を引っ張っているのですから。
岸田首相は、次の内閣改造で大臣の30%を女性にして、範を示したらいかがでしょうか。
それも民間からの登用を軸にして・・です。
----------------------------------------------------------------------
<編集後記>
楽天が、新規参入したモバイル事業の赤字により苦境に陥っています。
私は、楽天カードを使っていますが、他のカードも使っていますから、困ることはありません。
しかし、政府は困ります。
楽天には日本郵政が出資していますが、日本政府は日本郵政の大株主です。
楽天の株価は高値の1145円から、本日時点で497円と43.4%に落ちています。
50%以下に落ちると、日本郵政は減損申告が必要となり751億円の損失を計上することとなります。
つまり、政府の損失と同義になります。
さあ、どうする・・
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いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2023年6月30日号の目次
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◇日銀の方針と植田総裁(1)
◇企業にとっての借入金(2)
◇女性役員の割合を30%以上に
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
ロシアで起きた、突然の「プリゴジンの乱」。
ベラルーシまで参入してきて、先が読めない展開になっています。
今のところ、世界経済への影響は無いようですので、7月15日の「政治・国際」の号で今後の見通しを解説したいと思います。
今号は、日銀の話題からお送りします。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇日銀の方針と植田総裁(1) ┃
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6月16日、日銀は15、16日に行われた金融政策決定会合の結果を発表しました。
植田和男総裁に代わって2回目の会合だったので注目されましたが、結論は「現在の金融緩和策を維持する」で、前回4月の発表と概ね同じでした。
具体的には、長期金利の変動幅をプラスマイナス0.5%程度に維持、短期金利は「YCC(Yield Curve Control=イールドカーブ・コントロール)」でマイナスあるいはゼロ状態に維持するという政策です。
つまり、現在の大規模な金融緩和策を維持するということです。
<注釈:YCC(Yield Curve Control=イールドカーブ・コントロール)>
中央銀行が特定の国債の利回りをチェックし、適宜、買い入れを行い利回りをコントロールする手法。日本以外の中央銀行でも行っている金融政策手法です。
景気については「エネルギーや資源高の影響などを受けつつも、持ち直している」として、景況判断は据え置きました。
また、3%台に上昇している消費者物価については、「年末に向けてプラス幅を縮小していく可能性が高い」とし、その後は「企業の価格や賃金設定行動の変化を伴う形で、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる」と、あいまいな表現を示すに留めました。
ただ、今回、植田総裁は、かなり細かなレベルまでの説明を行いました。
この背景には、5月15日の「経済財政諮問会議」に出席したプリンストン大学の清滝信宏教授とのやり取りがあるのではないかと思います。
清滝教授は、英国の経済学者ジョン・ムーアと組んだ「清滝・ムーアモデル」で、バブル崩壊のメカニズムを解明し、リーマンショックを予言したことで知られる数学・経済学者です。
こうした功績から日本人初のノーベル経済学賞の有力候補として知られています。
一方の植田総裁も、2022年ノーベル経済学賞受賞者のベン・バーナンキ(米国の前FRB 理事会議長)と共に経済学の巨人と目されるスタンレー・フィッシャーの元で学んだ世界的な経済学者です。
この二人の意見が真っ向から対立したのです。
清滝教授は、世界経済の現状を「2%を超えるインフレが数年は続くと予想される」とし、「日本は現状の量的・質的緩和策を解除すべきである」と指摘しました。
「低金利が続く日本では、安易な投資しか行われず、その結果として経済成長が停滞している。金融緩和策を止め、金利を引き上げ、高収益の投資を促すべき」という提言です。
たぶん、植田総裁の考えも基本は同じだと思われます。
しかし、自由に意見が言える立場の清滝教授と違い、発言の一言が日本のみならず世界経済に影響を与える立場の植田総裁は、発言に慎重にならざるを得ません。
賃金上昇と物価安定の好循環という目標の実現を優先し、現在の金融緩和策を粘り強く続ける必要があると判断したのだと思います。
その一方で、植田総裁は、「ある程度のサプライズはやむを得ない」として、YCCの修正には含みを持たせました。
どこかで植田色の強い政策を打ち出すかもしれません。
企業は、今後の日銀政策を注視しながら、利上げに備えた投資および金融対策を練っていく必要があります。
この問題、次号で続きを解説していきます。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇企業にとっての借入金(2) ┃
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注意:本テーマは数回に分けますので、前回の(前半)を(1)として、今回を(2)とします。
無借金経営を標榜されている企業には無縁の話かもしれませんが、多くの企業にとって借金は経営の必須事項といえます。
一般の方は、借金は“怖い”ものとして住宅ローンや車ローン以外は極力避けていると思います。
もっとも、今の若い方にはそうした意識は低く、クレジット払いは当然、さらに、いろいろな借金も利用している方が多いようですが・・
私は、臆病な性格でしたから、サラリーマン時代は、車の購入も現金払い、クレジットは極力使わない生活スタイルでした。
自宅の購入も15年ローンという短期の借り入れでした。
起業も、そのローンが完済してからという臆病ぶりでした。
起業後も、建築設計の請負とシステムの受託開発という確実に代金回収ができる仕事に限定し、借金を負わない経営に徹していました。
しかし、創業1年で「こうした考えでは企業は発展しない。自社開発した商品を持たなくてはダメだ」との考えに至りました。
建築分野はハウスメーカーなどに対抗する商品開発はとても無理なので、ソフト分野の商品開発に的を絞りました。
しかし、市場に認めてもらう商品という壁は厚く、失敗の連続でした。
何度か失敗した末に、建設業向けの原価管理・財務管理のパッケージソフトの開発に踏み切りました。
当然、先行するソフト会社はあり、大手ベンダーも存在しています。
自社だけのオリジナル機能が必要と思い、当時の他社ソフトにはなかった「通信回線を経由してデータを一元管理する」というソフトを開発しました。
NEC時代のSE経験で通信回線のコントロールに強いという特色を打ち出すことにしたのです。
そうはいっても、こうした本格的な商品の開発には多額の資金が必要です。
その当時の現預金は3000万円ぐらいありましたが、1億円と見込んだ開発資金には不足です。
そこで初めて、銀行から8000万円の借り入れを行いました。
もちろん、自宅を担保に入れたうえ、個人保証付きという融資ですので、恐怖はありました。
創業1年目の年商は4000万円でしたが、2年目の年商は1億円になるという事業計画書と、創業まで勤めていた会社の信用が銀行の判断を後押ししてくれました。
だが、1年の歳月と1億円の資金をつぎ込んでも商品は完成せず、窮地に追い込まれました。
開発を諦めるか、なお時間と資金を投入して進むかを考えた末、続行を決意しました。
結局、2年の歳月と2億円をつぎ込み、ようやく商品は完成しました。
私が読んだ本の中に「失敗する可能性のあるものは、失敗する」という言葉などで有名な「マーフィーの法則」という本があります。
米空軍大尉で航空工学者だった「エドワード・A・マーフィー・ジュニア」の著書です。
マーフィーの原本は工学的な経験則をまとめた“真面目な”内容でしたが、後にユーモアのある「法則」としてアレンジした本がたくさん出版されました。
こうしたアレンジ本は、人間心理の“あや”をユーモアのある表現で言い当てていますが、そうした中に以下の法則があります。
「ものごとはすべて、最初に計画した2倍の時間と2倍の資金が掛かるものだ。だからといって、2倍を見越した計画をつくると、結果として、さらにその2倍かかってしまうものだ」
私の開発は、まさに、この指摘どおりの結果でした。
事前にこの本を読んでいたことで、さらに2倍の資金調達に踏み切れたのだと思います。
このように読書は大事ですが、いろんなジャンルの乱読が良いと思っています。
しかし、そうはいっても、計画の2倍の資金調達は地獄の苦しみでした。
その話は次号で・・
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇女性役員の割合を30%以上に ┃
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本メルマガ4月30日号の<編集後記>に、以下の内容の文を書きました。
『4月27日、政府は東商プライム企業の女性役員を、2030年に30%にするという目標を掲げました。
岸田首相は「社会全体での女性登用促進にはずみをつける」としています。
正直な感想を言えば「どうかなあ~」です。
複雑化する一方の経営環境を考えれば、女性の感性・能力が必要なことは明らかで、政府に言われるまでもないことです。
しかし、大企業が率先すれば中小企業が従うという古い発想から脱することができない政治が最も遅れています。
岸田首相が掲げるべきは、「大臣の半分を女性にします」という目標ではないでしょうか。
もっとも与党内の男性議員たちから猛反発をくらうでしょうが・・』
6月21日に世界経済フォーラムが公表した「ジェンダーギャップ(男女格差)リポート」で、日本は146カ国中125位という順位でした。
このリポートに政府は慌てたのか、上場企業に対して「女性役員比率を30%以上にせよ」とした要請を出しました。
4月27日の目標発表と同じ内容ですが、今度は各企業宛の直接要請です。
しかし、いきなり多くの女性社員を役員に引き上げたら社内は大混乱となるでしょう。
そこで、社外役員枠を増やし、そこに外部の女性を据えるという“姑息”な手段を採る企業が多いようです。
まあ、「とりあえず形だけ整える」という、いつもの日本文化(?)で、しのごうというわけです。
それも仕方ない側面がありますが、問題はその人選です。
外部から本当に有能な女性役員が来て、あれこれ経営を批判されても困るのが多くの企業の本音です。
現在、公表されている女性の社外役員の顔ぶれを見ると、その本音が透けて見えます。
言い方は悪いですが、「知名度があり、でも企業の実務経験のない女性」の名前が散見されます。
具体的には、元アナウンサー、芸能関係者、元アスリートの方の就任が目立ちます。
もちろん、中には経営能力があると思われる方もいますが、本当に経営に参画できるかには疑問があります。
どうなるでしょうか。
私の管理職時代は35歳から創業前の44歳までの9年間です。
随分昔の話になってしまいましたが、大手企業の内実は、あの頃からそんなに変わっていないように思えます。
当時在籍していた会社で、ある時、社長直々に「女性社員の活性化」が全管理職に通達されました。
私は、ある女性を主任に昇格させようと考え、本人に面接しました。
てっきり「頑張ります」と言うと思ったのですが、女性の返答は「困ります!」でした。
私は面食らい、聞き直したのですが「困ります」を繰り返すのみ。
理由を聞いたのですが、理由は言いません。
では、まず女性たちの仕事内容を変えようと考えました。
社外との折衝や出張のある仕事に女性たちを積極的に活用することから始めました。
しかし、すぐに壁にぶつかりました。
当時は「女性は補助職」との考えが強かったせいで女性には名刺がありませんでした。
そこで、総務部に名刺を申請したところ、総務部長から「なんで、“オンナ”に名刺が要る?」との一言。
言い争うのも面倒なので、「私の部門の費用で作成します。会社のロゴを使用する許可だけください」と押し切りました。
次に、出張させようとしたら、また「なんで“オンナ”に出張させる」と言いがかりです。
無視して強行すると、とても内容を書けないような低次元の噂を社内に飛ばされました。
そんな頭の硬い連中の妨害よりこたえたのは、他部署の女性社員からの、私の部署の女性に対するイヤミやイジメです。
前述の女性社員を昇格させようとした時の「困ります」の意味は、こうした攻撃を受けることが分かっていたからなのだと分かりました。
やや脱線するので、その後の話は別に書くとします。
上記は、かなり昔の話ですが、現代でもそれほど状況は改善されていないのではと思うのです。
政府は、「・・30%以上に」という意味の薄い目標を企業に要請する前に、政治の世界から改革を進めるべきでしょう。
なにしろ、前述の世界経済フォーラムのリポートでは、政治分野が138位と全体の足を引っ張っているのですから。
岸田首相は、次の内閣改造で大臣の30%を女性にして、範を示したらいかがでしょうか。
それも民間からの登用を軸にして・・です。
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<編集後記>
楽天が、新規参入したモバイル事業の赤字により苦境に陥っています。
私は、楽天カードを使っていますが、他のカードも使っていますから、困ることはありません。
しかし、政府は困ります。
楽天には日本郵政が出資していますが、日本政府は日本郵政の大株主です。
楽天の株価は高値の1145円から、本日時点で497円と43.4%に落ちています。
50%以下に落ちると、日本郵政は減損申告が必要となり751億円の損失を計上することとなります。
つまり、政府の損失と同義になります。
さあ、どうする・・
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