2018年6月15日号(国際、政治)

2018.07.03

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年6月15日号
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発行日:2018年6月16日(土)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2018年6月15日号の目次
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◇米朝会談はTVショー
◇トランプ大統領の本音
◇欧米の基準では測れない中国という国(その1)
★野党の存在意義
 
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
世界が注目した12日の米朝会談、成果ゼロの内容でした。
トランプ大統領自身、帰国後すぐのTVインタビューでこう発言しています。
「私は金委員長を信用しているが、1年後のインタビューで『私は間違いを犯した』と言っている可能性はある」
なんともはや、呆れるばかりですが、今号はこの話題から入ります。
 
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┃◇米朝会談はTVショー                 ┃
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シンガポールには世界から3000人もの報道関係者が集まるなど、マスコミは異様に盛り上がっていました。
しかし、具体的な成果など期待できるはずもなく、白けた気分でニュースを見ていました。
トランプ大統領が頻繁に流すツイッターの影響(効果?)で、会議はすでに「予定調和」のセレモニーと化していたから当然です。
トランプ氏は、この会談を開いたこと自体が自分の功績だと宣伝することが目的でした。
ゆえに、本番の会議は単なるTVショーとなることは分かりきったことでした。
比較するのは失礼ですが、先月の英国王子の結婚式の映像となんら変わらないなと思いました。
もっとも、主役の2人は王子夫妻とは対照的な画像でしたが・・
 
対する北朝鮮は、こうしたトランプ大統領の戦術を読み取り、早くから非核化の具体論に触れなくても大丈夫と踏んでいたようです。
一度は図に乗ってペンス副大統領を口汚くののしりましたが、予想以上にトランプ大統領の怒りを買い、大慌てで“もみ手”外交に転じました。
このあたりに北朝鮮の必死さがうかがえ、会談は予定通りに実施されることが確信できました。
 
しかし、セレモニーとはいえ、実に実のない会談でした。
両首脳が署名した合意文書は、両国のこれまでの主張を簡単に要約したものに過ぎず、具体策は何も明記されていません。
マスコミがしつこく言及してきた「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)という表現は結局、明記されませんでした。
それなのに、トランプ大統領は、会議で、北朝鮮との協議が継続する間は米韓軍事演習を行わないと発言したとされます。
非核化への具体的行動が開始される前にこうした発言をするのは予想外でしたが、トランプ大統領のことですから、こうした発言を覆すのは平気だと思ってのことでしょう。
 
いずれにしても、気まぐれ指導者2名の合意です。
そのことを我々は肝に銘じて置く必要があるでしょう。
 
それより、会談直後に流れた北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)の次の発表に注目しました。
「金委員長は、米国が北朝鮮との『信頼関係の構築に向けた真摯な措置』を取る場合、北朝鮮も引き続き友好的に行動する」
国内を意識しての発表ですが、相変わらず米国の軍事攻撃を恐れている様子が見て取れます。
 
今後の焦点は、非核化の具体的な進展と経済制裁の緩和との駆け引きになります。
これについては、トランプ大統領は明快な意思は示さなかったようです。
うがった見方をすれば、今回の会談は、軍事行動に踏み切る地ならしの意味があるのかもしれません。
第二幕がどう展開するか、そこに注目していきます。
 
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┃◇トランプ大統領の本音                 ┃
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通常、一国のトップの発言は重いものと受け止められている。
それゆえ、日本では、野党が首相の言質を取ろうとやっきになっているのである。
しかし、トランプ大統領という人は、そんなこと全く意に介していないように見受けられる。
いまや、世界で一強となった米国のトップ発言は「世界で最も重い発言」と思っている諸外国(特にG7)のトップから見たら「とんでもない大統領」である。
 
しかしながら、感情的にトランプ大統領を非難しても意味がないので、客観的に彼の発言や実行を追ってみた。
すると、大統領は、以外と言行一致しているのである。
 
まず、トランプ大統領は共和党から出た大統領である。
ゆえに、民主党のオバマ前政権のアンチテーゼから出発するのは自然である。
すると、オバマ前大統領の施策をことごとく覆そうとするのは理にかなっていると言える。
また、ツイッターやTVで汚い言葉や過激な言葉が多いため反感を招くが、伝統的な共和党の政策に沿うことが増えてきているのは事実である。
 
さらに、批判は多くても、法人税の大型減税、巨額なインフラ投資、これまでの貿易協定の見直し、エルサレムをイスラエルの首都と認定などの政策は、大統領選挙の時の公約である。
忠実に公約を実行に移していると言えば、「そのとおり」と認めざるを得ない。
単に、多くの人が大統領選での過激な公約は選挙用であり、選挙が終わればトーンダウンすると思い込んでいただけである。
つまり、トランプ大統領は、「我々より正直なのだ」と認めざるを得ないのである。
 
トランプ大統領は、昨年の12月、国家安全保障戦略(NSS2017)として「4つの柱」という政策の根幹を発表している。
その第一に、「米国第一主義」そして「リアリズム(国際政治の舞台においては、力が第一という意味)」を置いているが、近年、これほど明確なメッセージを打ち出した大統領はいない。
繰り返すが、その良し悪しは別の問題である。
今回の米朝会談も、米国の軍事力と経済制裁の効果と主張しているが、それは疑いのないことである。
 
安全保障戦略の中で「地域のパワーバランスの変化はグローバルな影響をもたらし、米国の国益を脅し得る」として、「米国の国益に挑戦しているのは中国、ロシア」と名指ししている。
北朝鮮への対応も、この一環で考えれば分かりやすいのではないか。
安全保障上の真の敵は、中国とロシアだと考えているのである。
 
さて、日本はどう振舞うべきか。
政権与党は、安倍外交が失敗した場合の備えも考えておくべきである。
このことは、秋の自民党総裁選において、首相の続投の可否以上に重要な注目点となるべきである。
 
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┃◇欧米の基準では測れない中国という国(その1)     ┃
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欧米人にとって、アジアは異質な世界である。
中世に王政を倒して民主主義を確立していった西欧各国、そして英国の植民地支配から脱して独立した米国は、その成功体験がアジアでも成立すると信じていた。
そして、その最大の要素は経済発展にあると考えた。
たしかに、そうして民主主義国になった国は多いが、必ずしも欧米の考えた民主主義と同じではない側面を見せることも多い。
たとえば韓国。政権交代の度に以前の大統領が不幸な結末を迎える姿は、民主主義とは違う前時代的な情念政治そのものである。
また、大国への道を歩んでいるインドは、英国流の政治スタイルを踏襲しているように見えるが、未だに残るカースト制度を払拭できないでいる。
 
そして、中国である。
欧米は、ソ連崩壊後、共産主義の中国を世界の秩序に迎え入れるため、世界貿易機関(WTO)などの国際機関に加盟させ、市場経済への移行を促した。
経済が豊かになれば、中国国民が民主的な自由や権利、厳密な法の支配などを求め、民主主義へ移行すると思ったからである。
 
たしかに、この効果もあって、1980年に3050億ドルに過ぎなかったGDPは、2017年には12兆0150億ドルと40倍にもなった。
米国が主導してきたグローバル経済に統合された恩恵を中国が積極的に利用した結果であり、それがなければ、10倍にも達しなかったと思われる。
 
しかし、習主席による独裁が強まり、民主主義国家への道はまったく見えなくなった。
欧米の読みは完全に外れたのである。
というより、欧米は中国という国の力を甘く見すぎたのである。
経済が豊かになれば市場経済に移行するはずという欧米の常識は通用せず、中国は真逆の政策を取った。
国家の力を最大限に強化し、自国の企業を優遇し、外国企業に厳しい条件を課し進出を制限し、かつ技術を徹底的に吸い上げたのである。
私は1980年代の中国で仕事をしたことがあるが、現場でそのことを痛感し、日本の将来を危惧したものである。
そのくらい、現場に対する中国政府の干渉は露骨であった。
おそらく、当時の日本および欧米企業の現場では同じ危惧を抱いたものと思うが、その声は各国の政治には届いていなかったのである。
いや、私の経験では、自社の経営陣にすら届いていなかった。
 
この問題は、次回も続けて論評します。
 
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┃★野党の存在意義                    ┃
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日本維新の会の片山虎之助共同代表は「国会は、今日もモリ・カケ問題がにぎやかだが、同じような質問、答弁で国民の多くはうんざりしている」と述べた。
実に正直な感想だと思う。
しかし、野党とはいえ右寄りと見られている日本維新の会の代表の発言のせいか、マスコミはほとんど、この発言を無視した。
TVのコメンテーターや評論家の多くは、相変わらず「首相の説明が足らない」と言い、マスコミの世論調査でも同様に「首相の責任を問う声が大きい」という結果が出る。
 
しかし、世論調査は、質問の仕方ひとつで回答をどうとでも誘導できる。
たとえば、「質問:首相の説明は十分と思うか?」と問われたら、私でも「十分に思う」に○は付けない。
質問を変えて、「質問:これ以上の説明を首相に求めるのは意味がないか?」と問われたら、○を付けるであろう。
つまり、多くの世論調査は、最初からある結論への「誘導」に過ぎないのである。
 
野党の追及も、これに似ていて印象操作ばかりである。
決め手となる物証が出てこない限り、これ以上の追求は無意味である。
「民主主義の危機だ」と言った議員もいるが、何をもって危機とするのか意味不明である。
少なくとも安倍首相は国会で民主主義的に選出された首相である。
ならば、国会を解散し、選挙で次の首相を選出することを求めることが民主主義の正当な道ではないのか。
しかし、野党はその選挙を嫌がっていると聞く。
「選挙を嫌がる野党」とは、政権奪取を望まない野党となってしまうので、存在意義を自ら否定していることになってしまうと思うのだが。
 
共産党の志位和夫委員長は、党首討論で安部首相に退陣を迫っていたが、志位委員長は2000年から委員長を続けているから、もう18年もトップの座に君臨している。
その間、共産党において「委員長選挙があったのだろうか」と考えたのだが、とんと記憶に無い。
どなたか知っていたら、教えていただきたいと思う。
 
民主主義が機能するためには、政権を不安定にさせることが必須である。
だが、その不安定とは、スキャンダルによる不安定さではなく、政権が選挙で変わり得る不安定さでなくてはならない。
そのためには、政治運営に強い野党が必要なのである。
今の野党には、その見識も、政権を担う野望も戦略もない。
 
野党に言いたい。
首相や財務大臣の態度や答弁がけしからんと言うのであれば、その姿は「自分たちの姿が鏡に映っている」と認識してもらいたい。
その姿を「己が姿」と認識して、王道での政権奪取を目指してもらいたいものである。
 
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<編集後記>
「大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹」の有名な句が頭に浮かびました。
二人が会ったことだけが意義となった米朝会談、「今後に期待しましょう」と言うしかありません。
内外のマスコミも書くことがないのか、ぼけたような論調ばかりで、読むに値しない記事ばかり。
ほくそ笑んでいるのは、もしかしてシンガポールだけ?
16億円と言われている開催費用も、マスコミから徴収した高額の取材料金でペイできたとか・・
さすが「仲介商売で成り立っている国家」ですな。