2022年12月15日号(国際、政治)

2023.01.10


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年12月15日号
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発行日:2022年12月15日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2022年12月15日号の目次
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◇「必要最小限」の反撃能力とは?
★日韓の地理的距離は近くとも、両国民の意識は遥かに遠く離れてしまった
◇野党が現状の閉塞状態から脱するには
◇「御成敗式目」
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
国会で、立憲民主党の岡田克也幹事長が「台湾の独立は支持できない」と発言しました。
その後、同党の末松義規衆院議員は、岸田首相に「台湾独立不支持を国会で明言しろ」と迫りました。
独立は台湾自身が決める問題であり、外交戦略上、日本は”何も言わない”が上策です。
まして、「台湾が独立宣言をしたら日本が“とばっちり“を受ける」に至っては、あまりにも低次元な発言で、国家としての恥といえます。
立憲民主党が政権を奪取する覚悟があるなら、同党の公式見解を聞きたいものです。
 
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┃◇「必要最小限」の反撃能力とは?                 ┃
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ロシアのウクライナ侵攻を契機として「日本も反撃能力を有する」とする政府方針が示されました。
評論家の意見は割れ、市民団体からは「平和主義に反する」として批判の声が上がっています。
しかし、日本の周辺国が平和主義に呼応せず、ミサイル発射や領海・領空侵犯を加速している現状を考えれば、反撃能力という抑止力を持つことはやむを得ない選択といえます。
 
この政府方針に対し、日本維新の会と国民民主党は容認、共産党は反対ですが、立憲民主党は党としての方針は示さず、沈黙しています。
国会審議では、立憲の議員は反撃能力の行使に対し「慎重」な対応を求める発言をしています。
これに対し、政府は、反撃能力行使は、(1)日本の存立が明白に危険、(2)国民を守るために他に手段がない、(3)必要最小限と3要件を挙げました。
この3番目の「必要最小限」が議論の的になっています。
維新の会の青柳仁士議員は「抑止力が重要となる中で必要最小限を強調する必要はない」と主張し、岸田首相は「必要最小限との見解を変更する考えはない」と答えました。
 
青柳議員の主張は至極まともな意見です。
どの国であれ、反撃能力を行使するという事態は明確に戦争状態です。
現在、日本を攻撃する可能性のある国は、みな核兵器保有国です。
こうした国々に「必要最小限」の手の内を明かせば、確実に敗北に繋がり、侵略を受ける可能性は高くなります。
極論ですが、核兵器を持つことすら選択肢と思わせておくことが抑止力になるのです。
戦争がどんなものかを考えようとしない批判の多さに、ため息です。
 
すでに情報戦は激化する一方であり、中国による日本の土地買収も危険な状態になりつつあります。
外国人による土地買収に対し法的に歯止めを掛けることも防衛戦略の一環です。
弊社が関係する事案でも、裏の持ち主に中国企業がいたケースがあり、難航した経験があります。
ダミーを表に立て、その裏に隠れることも中国の常套戦術で、本当にやっかいな相手です。
 
防衛費の対GDP対比は二次的な問題であり、金額よりも、その中身が大事です。
平時は装備の近代化を優先すべきであり、緊急時には継戦能力の向上、つまり兵站(へいたん)の強化が優先されます。
いくら近代化した装備を揃えても、弾薬や燃料、食料などが無くなれば戦闘はできません。
小学生でも分かる理屈ですが、そうした議論が深まっているようには思えません。
ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮によるミサイル発射の乱発、中国の尖閣諸島への領海侵犯と台湾への武力侵攻の可能性などを勘案すれば、今は「準緊急時」と考えるべきです。
ならば、どのような防衛装備が必要かは明白ですが、公言する必要はありません。
もし、政府が「これが必要最小限です」と言う必要が生じたならば、“嘘八百”を言えば良いのです。
 
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┃★日韓の地理的距離は近くとも、両国民の意識は遥かに遠く離れてしまった┃
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サッカー・ワールドカップで、韓国の選手が日本のグループリーグ突破に対し「少し気に食わない」と発言したり、ポルトガル戦では途中交代したロナウド選手に対し「早く出ろ」と言うなどして物議をかもしています。
スポーツ以外でも、韓国人のこうした侮辱発言は、あちこちで聞かれます。
特に日本に対してとなると、何を言っても正義となります。
150人以上の死者を出したソウルの雑踏事故について、「韓国は日本から間違ったハロウィン文化を取り入れてしまった」と、まるで、あの事故は「日本のせい」といった内容がネットに溢れる始末です。
 
ところが、こうした発言に対し、日本人の反応は拍子抜けするほど静かです。
韓国側の発言があまりにも幼稚で馬鹿げていることで、逆に日本人は冷静になり「怒るだけ、バカみたいだ」という気持ちになっているのでしょうか。
 
実は、日本人がこうした「無視する」という心境になっていることに一番危機感をつのらせているのが、韓国の尹錫悦政権なのです。
日本にとって韓国の存在は大きくありませんが、韓国にとっては逆です。
文政権時、「韓国は先進国になった」と威張っていましたが、日米両国の支えがなければ潰れてしまう国という現実を見ようとしない悲しい民族性です。
 
私は、20代の頃からビジネスで韓国と付き合ってきました。
その頃は「日本から学ぼう」という意識も高く、日本も積極的に支援していたので、韓国で仕事していても嫌な思いはあまりありませんでした。
ところが、それ以降、韓国に行くたびに、対日感情の悪化を感じるようになってきて、仕事の上でも、次第に辟易することが多くなってきました。
 
こうした対日感情の悪化の要因は、韓国民の激しやすい感情や反日教育にありますが、日本政府の誤った政策も、大きな要因となっています。
 
歴代日本政府は、日韓関係を、日本流の考え方で、結果として誤った対応を続けてきました。
その最たるものが、1993年8月の「河野談話」です。
河野氏は「強制連行を示す証拠は何も見つからなかった」と言いながら、「韓国民の心情を考えると・・」という筋の通らない理屈で謝ったのです。
まさに日本流の心情政治の極みです。
こうした日本流の考えは逆に利用されるだけで、韓国は「日本が認めた」と騒ぎたて、「親日狩り」が始まり、韓国世論は「左派一色」に染まっていったのです。
さらに、虚の慰安婦強制連行の連載を続けた朝日新聞、「韓国で強制連行の証言を得た」と、これも虚の発言を行った社民党の福島瑞穂氏などが、自己の利益誘導のため日本に多くの弊害をもたらしました。
 
数十年を経て、ようやく日本国民は韓国との論争の無意味さに気付き、反応しなくなったというわけです。
しかし、韓国の学校では相変わらず反日教育が続いています。
両国民の気持の乖離は容易には縮まらず、むしろ離れていく一方となるでしょう。
 
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┃◇野党が現状の閉塞状態から脱するには               ┃
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徳島文理大学の教授で評論家の八幡和郎氏が、以下の意見を述べています。
「今の野党は高齢者主体の反戦平和の盛り上がりに乗り、憲法改正を阻止することだけが目標になっている。自民党と本気で対峙できる野党が誕生するためには、憲法改正を済ませて選挙の争点から外すことが必要だ」
 
団塊の世代の人間として、「なるほど」と思える意見です。
この世代の多くは定年退職して社会の第一線から離れています。
退職後も嘱託などで働いている人も多いですが、多くは組織の主流から外れています。
しかし「オレはまだ現役だ」の意識に囚われ、主流から外れている“うっぷん”を晴らすかのように社会正義を糧とする人も多いようです。
この世代の投票率の高さは、そうした意識が支えている部分もあります。
もちろん、社会正義が悪いとは言いません。
だが、それが自分中心の意識から出ているのではと、胸に手を当てて考えてみることも必要です。
 
八幡和郎氏の意見を続けます。
「かつての民主党は2009年、政権獲得のために賢明に行動して、小泉ロスで低迷する自民党に美しいマニフェストを掲げて挑戦し、見事に政権を獲得した。しかし、マニフェストは将来像としては良かったが、財源とプロセスが不明だった。
また、政治主導だといって、官僚を使いこなすのでなく、政治家が官僚の仕事を始めたので実務が回らなくなった」
 
つまり、政権奪取への戦略は正しかったが、その後の戦術を考えていなかったことが、あの迷走につながり、政権運営に失敗したというわけです。
ならば、改めて戦術面を強化し、再度政権に挑む努力を行えばよかったのです。
しかし・・
さらに、八幡和郎氏の論評は続きます。
 
「ところが、2014年からの安保法制論議で、憲法論という旧社会党的な護憲路線に逆戻りしてしまった。安倍政権のやり方には議論はあろうが、国際情勢の変化からして、アメリカなどとの同盟強化は焦眉の急だったのだから、それを踏まえた対応をすべきだったのに、高齢者主体の反戦平和の盛り上がりに乗ってしまった。
また、安倍政権の経済政策は、雇用の流動化などを通じ、かなり若い人に有利に世代間格差を解消するものだったのだが、それに反対する高齢者の側についてしまった。
その結果は、若い世代ほど保守系の与党支持が多いという世界でも類例を見ない現象をもたらした。
『モリカケ桜』にしても、若い人に受けるテーマではない。若い人は自分たちの将来について議論したいのだ。
野党議員は、支援団体周りで365日忙しい自民党議員と違って、暇で好きなことを無責任に言っておればいいのだから気楽でいい商売なのだ。ベテラン議員なら重複立候補での比例復活も含めたらめったに落選することもない。」
 
解説が不要なほどの、ストレートで辛辣な論評です。
旧民主党は、憲法にしがみ付き、高齢者に受けようと「立憲民主党」なる党名に変えてしまったわけです。
同党の議員に知り合いがいましたが、彼には「もう支持しないよ」と言って袂を分かちました。
私は、同党に失望してしまったわけです。
 
八幡和郎氏の最後の言葉です。
「それでは、自民党と本当の意味での二大政党になれる野党は、どうしたら創れるのか。
私のお勧めは、憲法改正を済ませてしまうことだ。第九条に加筆する、緊急事態条項、合区解消だけという安倍路線ならどうしても反対しなくてはならない話ではない。それなら、大連立政権を組んで、憲法改正を通してしまえばいい。第九条を改正してもアメリカの言うとおりにしなくてはならない時代でもない。そして、憲法改正が与野党の争点でなくなれば、3分の1の議席の死守は無意味になり、過半数の攻防という本来の二大政党による与野党の対決構図が描ける。
現在の立憲民主党のような高齢者に支持される守旧派でなく、若年層に受ける改革派でないと政権獲得は難しいと思う。」
 
「老兵は消え去るのみ」というチャーチルの有名な言葉を思い出します。
政治を若者の手に委ねる時代が来ています。
自民党の老害議員たちは勿論、野党の中高年議員たちも排除する選挙が待ち遠しいです。
 
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┃◇「御成敗式目」                         ┃
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大河ドラマの「鎌倉殿の13人」は、予想以上におもしろい!
 
主人公、北条義時の息子で3代執権となった北条泰時は、歴史家からは名君と評価されています。
歴史通の方ならよくご存知の「御成敗式目」は、現代にも通じる“国産”の法律を初めて制定したものと評価されています。
なぜ「御成敗式目」が高く評価されているかというと、非常に現実主義的な法律だったからです。
それまでの法律は、中国から輸入されたものをアレンジした「律令」という仏教の教義を土台にした法律でした。
それゆえ、理想論的な文脈に貫かれていました。
「・・すべき」という記述の多さに、そのことが現れています。
それに対し「御成敗式目」は現実重視に貫かれています。
例えば、土地の所有は20年支配すれば、その者の所有となり、「もともとは私の土地だった」という者が証拠を持って現れても返還する必要はない、などが明文化されています。
こうした土地の所有権に対する考えは現代の法律にも引き継がれていますので、感心します。
 
このように、「御成敗式目」は宗教的な理想より現実が大事との認識に立って作られています。
昭和の日本国憲法は、理想論で作るべきか現実論で作るべきかの選択の中で、前者を採ったわけですが、憲法改正論議の中で考えるべき重要なテーマですね。
 
「御成敗式目」でさらに驚かされるのは、現実主義を通り越して“超”現実主義ともいえる内容があることです。
例えば、なんと「人身売買を認めている」のです。
こう書くと、「バカな、人権無視の法を評価するのか」と人権活動家の方々から罵声を浴びそうですが、そんな“薄っぺら”な道徳論が“宗教的”だと言いたいのです。
800年前当時の社会事情を考えてください。
定期的に飢饉が襲い、庶民は常に死の淵に立たされていた時代です。
大飢饉により生きる力を失った人々を救うため、一時的に家族を売る、自分自身を売ることを認めるとした法律だったのです。
しかも、売った後に買い戻すことも可能としたのですから、画期的な法律といえるでしょう。
世界を見れば、今でも人身売買が否定されていない国々が、それなりにあります。
また、風俗産業は一種の「超短期人身売買」ともいえる商売でしょう。
「御成敗式目」は、今でも参考にすべき点の多い法律といえます。
 
政治リーダーの姿勢を説いた書として、唐の「貞観政要」が有名ですが、徳川家康や北条政子が愛読していたと言われています。
大河ドラマの「鎌倉殿の・・」では、北条政子が「貞観政要」を和文に訳すように命じたという脚本になっていましたが、あり得る話で、さすが歴史通の三谷幸喜氏だなと感心しました。
とすると、政子は、若き北条泰時にも読むように勧めていたことが推測されます。
北条泰時を演じる坂口健太郎さんが、理想主義の若者から現実主義者になっていく「鎌倉殿の続編(?)」を、いつか見たいものだと思っています。
 
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<編集後記>
新潟の父の実家の大広間の鴨居に、父の弟(つまり叔父)の写真が掛けられています。
シベリアに抑留され、24歳で命を落としました。
戦後生まれの私は会うことが出来なかった叔父ですが、写真を見上げるたびに、「頑張れ」と笑いかけられているような気がします。
ウクライナでは、このような理不尽な悲劇が続いています。
今や、プーチンのメンツだけの戦争となっています。
愚かな指導者を変えることができない政治形態は、やはり間違っています。
 
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