2021年10月31日号(経済、経営)
2021.11.02
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年10月31日号
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発行日:2021年11月1日(月)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年10月31日号の目次
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◇新しい日本型資本主義の中身(1)
★今後の建設需要(21):ダンピング
◇これからの近未来経済(12):山なり多重回帰曲線型経営(その3)
☆商品開発のおもしろさ(17):コンピュータの話(その2)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
選挙結果を確認するため、今号は1日遅れで配信します。
自民は踏ん張ったと言える反面、野党共闘は惨敗という結果です。
政権への不満は維新の会が吸収し、立憲民主党には政権運営の力量なしとの国民の判断でした。
与野党ともベテラン議員の落選や苦戦は、世代交代の波が政界にも来たということです。
政界に限らず、経済界も企業経営も20年以上若返る必要があります。
一気にそうした時代に突入してきたと受け止めています。
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┃◇新しい日本型資本主義の中身(1) ┃
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今回の選挙では「分配」がひとつのテーマになりました。
選挙前、現役の財務事務次官の「今度の総選挙はバラマキ合戦」という内容の寄稿が物議を醸しました。
事務次官という官僚トップの発言ですから、これが財務省の見解だと受け取られるのは当然です。
財務省は、新型コロナ対策で急増した国債発行に危機感をつのらせ、バラマキには反対なのです。
民間企業でも、財務部門は借入を増やすことに抵抗しますから、国家も同じといえます。
それゆえ、トップの“責任を伴う意志の表示”が何よりも重要になるのです。
そもそも「分配」とは自由主義(資本主義)の行き過ぎを是正する手段として出てきた社会主義の経済手法です。
経済的自由が極端に進むと、社会の富(資本)が一部の富裕層に集約してしまいます。
このこと自体は、個人の能力の差、環境の違いなどが主因なので、どうしようもないことです。
しかし、この状態を放置すると、経済活動は低下し、やがて死んでしまいます。
これが自由主義の限界で、避けることが不可能です。
ところで、麻雀(マージャン)というゲームをご存知の方は多いと思います。
参加者が東南西北(トン・ナン・シャー・ペイ)の4つの場に分かれ、点棒という資産を奪い合うゲームです。
ところが、4つの場がありながら、東南という2局でゲームは終り、そこで勝ち負けの清算となり、そして、また東(トン)から始まるので、北西(シャ・ペイ)という局面はありません。
これが不思議でした。
東西南北と4つの場があるのに、なぜ2局面で清算になるのかということがです。
この理由が分かったのは経営者になってからなので、20年以上の歳月を必要としたわけです。
自分の理解力の浅さに自分で笑ってしまう話です。
読者のみなさまは、とっくにご存知と思いますが、理由は簡単でした。
ゲームが進むと勝者と敗者がはっきりしてきて、勝者に点棒(財産)が集まっていきます。
4つの場の最後までゲームを進行させると、その途中で、一人の勝者に点棒が集中し、他の3名は、その勝者に借金(点棒を借りる)しなければゲームを続けられなくなります。
これではゲームになりません。
ゆえに、東南(トン・ナン)という2局面で精算し、点棒を平等に分配し直し、ゲームを再開するルールになっているのです。
くどくどと述べましたが、この「平等に分配」が社会主義の根幹なのです。
それによって経済を再生させる仕組みで、かのカール・マルクスが考え出したと言われています。
しかし、実世界の経済はゲームほど単純ではありません。
「分配」の前の「清算」が簡単ではないのです。
苦労して溜め込んだ利益を無条件で吐き出せと言ったら、誰でも抵抗するでしょう。
ゆえに、その昔、徳川幕府は強引に「徳政令」で武士の借金をチャラにしましたし、欧州では市民革命で、血を流しながら強引に実行しました。
しかし現代では、こうした手法は、独裁国家以外は不可能な話です。
仕方なく補助金バラマキとなるのですが、これは一過性の効果しかなく、根本解決を遠ざけるだけです。
どの国でも、富の偏在が進むことへの対処がうまくいかず、政治の不安を招く要因になっています。
岸田首相が打ち出した「新しい日本型資本主義」が、富の偏在の是正を目指しているのか、正直分かりません。
ところが、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「新社会主義にしか聞こえない」と批判しました。
なるほど、大資本家である三木谷社長は、岸田首相の主張に自分の富が削られる危険を感じたのでしょうか。
そこに大きな興味が湧きました。
岸田首相の「新しい日本型資本主義」の姿は、これから徐々に明らかになってくるでしょう。
それを確認しながら、本メルマガで解説していこうと思います。
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┃★今後の建設需要(21):ダンピング ┃
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昨年10月、「著しく短い工期による請負契約の締結禁止」を盛り込んだ改正建設業法が施行されました。
ダンピングを防ぐ目的で価格だけでなく工期にも制約を加えたのですが、これでダンピングを防げると考えた“官僚の浅知恵”としか言いようのない事態が起きています。
多くの応札価格が予定価格の下限に張り付き、抽選になることが頻発しています。
自治体によっては、くじ引き入札の割合が7割を超えていますし、中には100%という自治体も出る事態となっています。
最低制限価格を事前公表すれば当然の結果ですし、事後公表であっても、市販されている公共工事用積算ソフトの高度化で、積算能力がない会社でも比較的容易に最低制限価格を割り出せてしまうという背景もあります。
いくら法律を制定しても、「不当に低い」とか「著しく短い」という曖昧な表現では、発注側の担当者も判断に苦しみます。
法律の限界といえます。
そもそも、何を以て「ダンピング」と断定するかの明確な基準がありません。
驚異的に短い工程計画も、極端に低い受注価格も、完成物に齟齬がなく赤字を出さずに完成できれば、結果としてダンピング工事とはいえないはずです。
まして民間工事の施主にしてみたら、手抜きさえなければ、安い工事価格、短い工期は歓迎です。
極論ですが、たとえ事故が起きても、施主の責任が問われず、完成が遅れなければ、「知ったことではない」顧客が存在することも事実です。
私の経験でも、地中に埋められていた産業廃棄物が発見された時、施主のデベロッパーからは、「黙って、そのまま工事を進めろ」と言われました。
それは出来ないと断りましたが、施主の費用負担も工期遅れも出さずに処理することを求められました。
公共工事ですらも、こうした理不尽な要求は何度も受けました。
今は、昔よりは改善されているとはいえ、根絶されたわけではありません。
こうした中で、正当なコストダウンや工期短縮とダンピングの違いをどうやって判断するというのでしょうか。
それには、民間工事は別にして、公共工事に対する考え方を根本から変える必要があると思います。
極論をいえば、公共工事は社会主義の世界と考え、すべてを計画主導にするのです。
例えば、「この地区のこの種の工事を担当する建設会社は、A社とB社」と決め、計画発注を行うのです。
発注価格は「予定価格どおり」とし、競争を抑制するのです。
その代わり、工事途中および完成検査を第三者の専門家に委託して行い、その成績で翌年度の発注計画を決めていくというやり方です。
こうした社会主義国のようなやり方が別の不正を生むという懸念はそのとおりです。
そうした不正を防ぐ手段は情報の完全公開の徹底です。
要するに、市民の目に見えるようにして、最終判断を市民に委ねるのです。
なぜなら、真の発注者は納税者であり、公共発注者は、その代行者に過ぎないからです。
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┃◇これからの近未来経済(12):山なり多重回帰曲線型経営(その3) ┃
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新規創業した会社のかなりの部分は、すぐに消えてしまいます。
酷な言い方ですが、そうした会社は、そもそも起業すること自体が間違っていたといえます。
創業者の基本的能力、資金力、信用力、その全てに不足があったということです。
何より、事業を遂行する強い意志に欠けていたと言わざるを得ません。
そのような創業期の第一関門を抜けた会社の多くは、かなりの速度で成長していきます。
弊社のことで恐縮ですが、創業年の売上は、その後の2年で3倍になり1億円を超えました。
これが「山なり多重回帰曲線」の最初の上昇カーブです。
徐々に上昇カーブは鈍っていきますが、気持ちを緩めなければ上昇は続きます。
会社が市場から一定の認知をされた結果ということです。
しかし、このカーブもやがて山(ピーク)を迎えます。
市場のお客様は「飽きやすい」のです。
「絶品の味」と感じたラーメンも、食べ続ければ飽きが来るという理屈です。
弊社の場合、創業6年でこの山が来ました。
この山が来た時にやるべきことは「それまでの見直しと是正」です。
原価や経費が過大になっていないか、まだ開拓できる市場の広がりや奥があるのではないかを、「初心に還って」見直すのです。
この時期が「山なり多重回帰曲線」の「改善期」にあたります。
それを実直に行うことで、カーブは鈍りますが、上昇を続けることはできます。
しかし、やがて「改善」の材料も尽き、利益の上昇は止まります。
そこで、経営者は、次の経営戦略を練る必要に迫られますが、ここが最初の分岐点です。
あくまでも既存商品や既存サービスにこだわり一段と高いレベルを目指すか、新たな商品やサービスを開拓するかの戦略の選択です。
この段階を「山なり多重回帰曲線」では「改革期」と呼びます。
弊社の場合は、創業から10年で、ここに至りました。
弊社は、後者の「新たな商品、サービスの開拓」の道を採りました。
理由は単純です。
私の性格が飽きっぽく、新しいものを作ることが好きだったからです。
この判断は経営トップにしかできないことなので、トップのわがままが重要な要素になります。
正直な話、いま書いている「山なり多重回帰曲線」は、自社の経験や他社の事例を分析して出てきた考えであり、当時はまったく念頭にありませんでした。
つまり、この時点での私は、まだ「素人経営者」だったのです。
弊社は、創業時は建築設計事務所でしたが、半年でソフトウェアの受託開発を始め、1年後には「建設業向けパッケージソフトの開発・販売」との2本立てになっていました。
その2本の柱の成長が鈍り「新たな商品、サービスの開拓」の時期がきたとき、創業期から蓄えた経験や知識と、建設会社時代に得た実務経験を活かし、建設会社向けの現場指導や経営支援のコンサルタント業を始めました。
これが当たり、さらなる上昇カーブに乗ることができました。
しかし、そこで待っていたのが、前号で述べた第二の落とし穴でした。
原因は、現業部隊の社員の厚みに比べ、経営統治機構の社員が未熟でした。
つまり、ライン重視でスタッフ部門の人材不足を来していたのです。
この現象は、弊社だけでなく、急成長した新興企業に共通して見られる欠点です。
しかも弊社は、トップである私が新規事業のコンサルタントとして第一線に出ていて、不在状態でした。
経営管理の業務は、当時の専務に任せっきりという状態でした。
このツケが回った話は次号で。
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┃☆商品開発のおもしろさ(17):コンピュータの話(その2) ┃
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システム技術者であれば、フォン・ノイマンの名前を知らない人はいないでしょう。
(もっとも、若い方は知らないかも・・)
ノイマンはハンガリー生まれですが、両親はユダヤ系ドイツ人でナチスの迫害を避け、少年時代に一家で米国に移住しました。
彼は、まさに超天才少年で、6歳で8桁の掛け算が出来、8歳で微分積分をものにしたと言われています。
彼の記憶力と計算能力の凄さを物語るエピソードがあります。
電話帳のページを適当に開き、さっと眺めただけで電話番号の総和を言い当てたといいます。
彼の才能は数学だけでなく、44巻の歴史書『世界史』を読了し、一字一句間違えず暗唱できたとも言われています。
信じられない話には事欠かない天才ぶりです。
青年に達したノイマンは、プリンストン高等研究所の所員に選ばれましたが、選ばれた4人の中にはあのアインシュタインがいましたから、ノイマンは自他共に認める天才でした。
そのプリンストン高等研究所では、完成した初期のコンピュータの性能テストのために、様々な問題を作成していましたが、答え合わせのために正しい解答を作っておくことが必要でした。
そこで即席の力くらべとして、フォン・ノイマンがコンピュータと競争することになりました。
結果は、フォン・ノイマンの圧勝でした。
彼は、筆算でコンピュータより早く正確な答えを出したのです。
当時のコンピュータは1秒間に乗算2000回の処理能力しかなかったとはいえ、驚異の結果といえます。
当時の彼は、50行のアセンブリ言語のプログラムなら、頭の中だけで作成したり修正したりすることができたと言われています。
私がNECでSEをしていた頃は、アセンブリ言語でもプログラムの作成を行っていましたが、頭の中だけで作成・修正できたのは10行程度だったと思います。
50行は驚異の能力です。
終戦1年前の1944年8月、フォン・ノイマンは、世界最初の商用コンピュータENIAC(エニアック)のことを聞き、これを使えば、さまざまな分野の非線形偏微分方程式を解くことができ、あらゆる分野で全く新しい革新をもたらすことを確信しました。
驚くのはその後です。
ENIACを知った後、わずか2週間でプログラム内蔵型コンピュータの概念を作り上げ、翌年3月には現在のコンピュータの基本構成となる設計案を作り上げたといいます。
現代のコンピュータの全てが「ノイマン型」と呼ばれるようになる最初の業績でした。
こうしてENIACの演算回路の改良を行った彼は、次に計画されていた計算機EDVACの性能を格段に上げるため 新しい発想を練り上げました。
しかし、新たなコンピュータの開発は膨大な資金を必要とします。
プリンストン高等研究所といえども簡単ではなく、この資金集めのためのわかりやすい目的が必要でした。
そこで目を付けたのが、今年のNHKの朝ドラのテーマ「気象予報」でした。
気象予報のためには、非線形偏微分方程式を解く必要がありますが、時間的制約から、気象予報は経験と勘に頼るという職人芸の世界でした。
これを、コンピュータを使って計算すれば、客観的な数値予報ができると考え、国家的プロジェクトがスタートしていました。
気象の数値予報は、第一次世界大戦中に英国が手計算で挑戦しましたが、失敗していました。
その後、1948年にアメリカの気象学者ジュール・チャーニーによってコンピュータを用いた数値予報のための手法が切り開かれていきました。
しかし、その気象モデルを内部記憶装置の容量が小さかったENIACで計算できるようにすることが難問でした。
ここで、フォン・ノイマンが登場するのです。
この話は次号で。
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<編集後記>
私は、ほぼ毎日、浅草雷門の前を通って通勤しています。
土曜の夕方は人出が増えましたが、他の日はさほど増えていません。
深夜ともなると、ゼロに近い状態で、開いている店はほとんどありません。
非常事態宣言が長く続いたことで、人々の行動スタイルが変わってしまったことを実感します。
これを向かい風とするか追い風にするか、経営者の資質が問われる時代です。
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