2024年6月30日号(経済、経営)

2024.07.17


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2024年6月30日号
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発行日:2024年6月30日(日)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2024年6月30日号の目次
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◇円安で金利は上昇局面
◇2024年からの展望(2):責任あるAIってなんぞや?
◇これからの中小企業の経営(7)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
2024年3月の銀行・信金の貸出残高が600兆円を超え、名目GDPの591兆円を上回りました。
これが何を意味するのか。
読者のみなさま、考えてみませんか。
 
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┃◇円安で金利は上昇局面                  ┃
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ドル円が一時161円と、円安が一段と進みました。
日銀の対応が注目されますが、政策金利を上げるか否かの一点に関心が集まっています。
3月にマイナス金利が解除になったとはいえ、政策金利はわずか0.1%です。
実際、中小企業への貸出金利の多くは1~2%台で、高いとはいえません。
大企業への金利は「チンパンジー金利」と称される0%台ですので、痛くもかゆくもないでしょう。
 
そもそも、ほとんどの国民は「マイナス金利」とは何かが分かっていません。
読者のみなさまには釈迦に説法ですが、以下に簡単に説明します。
民間金融機関は「日銀当座預金」と称する口座を日銀に持っています。
この口座に対する金利をマイナスにするという政策が「マイナス金利」です。
これは、お金を預かる側の日銀が利息を払うのではなく、逆に「利息をもらう」ということです。
金融機関にしたら「預金したら利息を取られる」のですから、当座預金からお金を引き出すだろうと思われますね。
たしかに、それが政府の狙いで、そうして引き出された資金が民間企業に貸し出され、景気回復になるとの思惑がありました。
 
しかし、現実は真逆で、どの金融機関も当座預金を引き出したりはしませんでした。
「どうして?」でしょうか。
政府・日銀の政策が“へっぴり腰”だったからです。
日銀が金融機関から預かっている当座預金のうち「一定額を超えた部分に対する金利が-0.1%」と、対象となる預金が“ほんの少し”なのです。
しかも、この「一定額」も、預かっている預金の全額が分母ではなく、新規に預ける預金のその一部ですから、実質ゼロといえる額です。
これでは、お金が動くはずはありませんね。
こんな状態のまま、日銀は政策金利を0.1%に引き上げました。
その結果、金融機関が日銀に預けている「当座預金」に金利が付くことになりました。
ところが、民間企業が金融機関に預けている「当座預金」には利息がつきません。
「利息ゼロで集めたカネを日銀に預ければ0.1%の利子が付く」わけです。
金利は低くても、「日銀当座預金」の総額は560兆円です。
実に、毎年5600億円もの利息が労せずして金融機関のふところに入るのです。
こんなに安全で美味しい話はありませんね。
 
その一方、民間企業に対する貸出しや住宅ローンの金利は上がります。
しかし、多くの中小企業の経営状態は決して良いとはいえません。
円安による原材料費の値上がり、さらに人件費の上昇を吸収することに苦しんでいます。
この状態で金利が「1%上昇」すると赤字企業の割合が7%増えると言われます。
現在、70%の企業が赤字という状態なので、これが80%に近付くというわけです。
 
岸田首相は「賃金上昇と物価上昇の好循環を」と言い続けていますが、その好循環が出来ているとはいえない状況です。
この背景には、デフレ経済が30年も続いたことで、物価が上がることを“善”と理解し切れない国民意識が醸成され、その上に「政府は信用できない」という意識が上積みされているのです。
 
経営者の多くは「賃上げしたい、投資を増やしたい」と思っていますが、それが経営破綻を招く恐れがあり、腰が定まらないのです。
一方の庶民は、首相の言葉など信じられず、賃上げ分が消費ではなく貯蓄に回るという悪循環になっています。
岸田政権の小出しの景気刺激策では、効果が出ないばかりか、一方で増税ですから、ダメなことは当然です。
政府はそれを取り繕ろうと、SDGsだのカーボンニュートラルなどの浮ついた言葉ばかりを流します。
腰を据えて自らの政策を立案し実行できる、新しい首相が必要なのです。
 
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┃◇2024年からの展望(2):責任あるAIってなんぞや?  ┃
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最初にお願いです。前回のタイトルが「2024年からの展望(6)」となっていましたが、“2024年へ”が“2024年から”に変わりましたので、「2024年からの展望(1)」と読み替えてください。
アーカイブスのタイトルは、そのように変えます。
 
さて、本文です。
電卓からスーパーコンピュータに至るまでのすべてのコンピュータの中枢にある「CPU(中央演算装置)=人間の大脳に相当する」が理解できるのは、「0と1」からなる2進法の「機械語」だけです。
ゆえに、コンピュータに指示を与えるソフトウェアは、最終的に「“0と1”の機械語」に翻訳されてCPUに与えられます。
このアーキテクチャ(動作原理)は、世界最初のコンピュータと言われる「ENIAC(エニアック)」から現在のスーパーコンピュータ「富岳」に至るまで変わっていません。
 
以下の解説は少し長くなりますので、分かっておられる方は読み飛ばしてください。
最初のプログラムは、本当に「0と1」だけで組んでいましたが、あまりにも大変なので、「2の4乗」である16桁のコードでプログラムを組むようになりました。
しかし「0~9」の10種類の数字では足らないので、「10=A」、「11=B」・・・「15=F」と、10以上の数字はアルファベットで表現し、この16種類の数字の組み合わせでプログラムを組むようになりました。
これを「16進コード」と呼びます。
この16進コードを「0と1」の「2進法の機械語」に翻訳することを「compile(コンパイル)」と呼び、この翻訳を実行するプログラムを「compiler(コンパイラ)」と言います。
こうしてして「0と1」の機械語になった一連の命令がハードを動かすわけです。
実際、NECのSE時代、速度が要求されるプログラムは、この16進コードで組んでいました。
その結果、我々は、この16進コードを読む、書くだけでなく、口でしゃべる、聞き取ることまで出来るようになっていました。
つまり、自分の脳をコンピュータと同じ構造にすることが出来たというわけです。
実際、16進コードで夢を見た記憶がありますから、本当に脳がそうなっていたのですね。
 
この「2の4乗」コードのマシンが電卓です。
16種類あれば、数字と計算記号を表せます。
しかし、文字は無理なので、「2の8乗」にして256種類の表現ができるようにしたのが、初期のパソコンでした。
さらに、漢字を扱うため「2の16乗(これを2バイトといいます)」のコード体系が生まれました。
今でも、このコード体系は変わっていません。
 
JIS第1水準と呼ばれる当用漢字は全部で2965字ありますが、我々はこの半分くらいは暗記していました。
ゆえに、同僚とはこの16進コードで会話することもありましたから、他部署の社員からは「あいつらは宇宙人だ」と言われていました。
たしかに、16進コードで会話している人間なんて、ロボットか宇宙人ですから、気味が悪い連中と思われるのは当然ですね。
 
さすがに、この16進コードを使える人間は限られるし、生産性が上がらないので、さらに命令単位に言語化した「高級言語」と言われるプログラム言語が開発されました。
最初は「アセンブラ言語」と呼ばれる「move(動け)」とか「open(開け)」とかの原始的な言語でしたが、やがてFORTRAN(フォートラン)とかCOBOL(コボル)といった人間の言葉に近い高級言語が生まれ、普及していきました。
さらに、アセンブラ言語と高級言語の両方の機能を持つ言語である「C」や「PL/1」といった言語が生まれ、幅広い用途のプログラムが組めるようになりました。
 
また、大量のデータを効率よく扱うデータベース言語として「D-BASE」、「R-BASE」、「SQL」、「DB-MAGIC」といった言語が開発され、プログラム開発の生産性は飛躍的に向上して現在に至っているわけです。
 
こうしたプログラム言語の歴史を解説したのは、AIといえどもプログラム言語で記述されるので、根本の原理は変わらないからです。
ゆえに、私はAIを「人工知能」とは言わずに「AI-PG(プログラム)」と呼んでいます。
次回から、こうしたAIプログラムのことを解説していきます。
 
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┃◇これからの中小企業の経営(7)             ┃
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前シリーズで「経営者と従業員の意識のズレ」を書きましたが、こうした意識や考えのズレがあらゆるところに現れる時代になっています。
ネットで、IT企業の若い経営者による以下の発信を見かけました。
「skypeやzoomの会議で済むのに、クライアントから直接会って話をと言われると、イラっとする」
なるほどと思いますが、「リアルな直接会話の良さもあるけどな」とも思うのですが・・
「それは年寄りの感傷だ」と言われそうですが、ネット会議では、常にリアル感や緊張感の無さを感じてしまうのです。
それは、通信で生ずるタイムラグによる会話や意識のズレ、およびディスプレイ画面の平板さにあると思っています。
「それが年寄りになった証拠なんだよ」と言われてしまうと、話はここで終わってしまいますが、物理的にもネット会議には危うさが付きまといます。
それは、IT技術が発達途上の技術だからです。
 
本メルマガで何度も書いていますが、コンピュータメーカーでのSEが私の社会人としてのスタートでしたから、建設会社に転職してからも、コンピュータは完全に私の一部となっていました。
自分で開発したプログラムを使って建築設計や現場管理を行ったことで、大きな成果を上げることができました。
そうした経験から、企業全体のシステム構築に携わってきましたし、CADや3DCGは、日本では最初と思えるくらいの早い時期に使ってきましたから、私はIT信奉者です。
 
しかし、若い頃、必ず実現すると思っていた技術のうち実現したのは2割ぐらいです。
例えば、今のような2次元のディスプレイ画面に表現される「疑似3D」ではなく、本当に空中に立体像が現れ、それが動き、自由に扱える立体ディスプレイは実現できていません。
円筒のガラスの筒の中に立体像を映し出す「ホログラム」は、50年以上も前に実用化され、我々は大学で実際に使っていました。
しかし、円筒の中にしか像は投影できず、また動かすことはできませんでした。
研究室の仲間と「20年か30年もすれば実現するかな」と話していましたが、50年以上経っても実現の目途はまったく立っていません。
ネットの速度向上もカメの歩みのごとくです。
ですから、ZOOMなどのネット会議では、通信のタイムラグに自分の感覚や意識が狂わされてしまうのです。
会議内容が連絡や説明を聞くだけなら良いのですが、真剣な討議は無理だなと思うのです。
先ほどの若いIT企業の経営者などは、そうしたことを感じないのでしょうか。
「化石年代の“じいさん”の寝言なんて聞いてられねえよ」と言われることを覚悟して書いていますが、正直な感想です。
 
50年前の夢が叶えられる日は必ず来ると信じていますが、進歩の遅さには苛立っています。
ウクライナにおけるドローン兵器の進歩に見られるように、軍事システムは採算度外視ができるため、驚くような進歩を見せます。
50年前に担当した軍事システムも、現代の民間システム以上の性能でした。
天文学的な予算がつぎ込まれていましたから当然です。
しかし、民間システムは倍々ゲームでみんなが使うことでしか採算が向上せず進歩も遅いです。
その使い方、使われかた、そして使わせ方のバランスの取れた進歩が大事なのです。
今の政府は、このスパイラル型の進歩の仕組みが分かっていません。
あの“素人”デジタル大臣がドヤ顔で威張っているようではお先真っ暗ですね。
 
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<編集後記>
ロシア経済が破滅に向かっています。
経済制裁がボディーブローのように民生経済を圧迫し、国民の窮乏化が進んでいます。
さらに、中国とインドがロシアとの付き合いを危険視し、付き合いを縮小してきています。
戦争というものは、短期では軍事力がキーですが、長期になると経済力がキーになります。
かつての太平洋戦争が良い例です。
ウクライナ戦争も、そうしたセオリー通りになって終わるのでしょう。
その時、プーチンはどこに逃げるつもりなのでしょうか。
 
<追伸>
私がさぼっていて、新しく始めた「儲かる建設会社になろう」が進んでいません。
気合を入れて進めますので、本サイトにもアクセスをよろしくお願いします。
 
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