2018年9月30日(経済、経営)

2018.10.02

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年9月30日号
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発行日:2018年10月1日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2018年9月30日号の目次
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★半開の国
★中国にとって米国は勝てない相手である
◇キャッシュレス社会
★企業における社長の力(3)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
セクハラ、パワハラの被害者は圧倒的に女性です。
当然といえば当然ですが、それを「当然」と言ってしまっては文明国家とは言えません。
セクハラもパワハラも、強者が弱者を虐(しいた)げる行為です。
すべての人が、どのような立場であれ同等の権利を有する社会を文明社会というのであれば、日本は、まだまだ「半開」の国です。
今号は、この話題からお送りします。
 
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┃★半開の国                       ┃
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文明国になり切れていない国を「半開の国」と言ったのは、福沢諭吉です。
彼の著書「文明論之概略」にその言葉が出てきます。
1875年の発刊ですから、それから143年経ちました。
日本は、果たして文明国になれたのでしょうか。
 
この本は、人類の精神の発達過程を表す“ものさし”として「文明」を解き明かした本といえます。
この本を読まれた方の多くが指摘しているのが、文明の発達段階を以下のように表現した部分です。
 
第一段階:衣食住が不安定。人に知恵なく、意思もない。「野蛮」の状態。
・狩猟が主体だった原始時代ですね。
 
第二段階:農業によって食料が確保され、衣食はある。しかし、知や文化が不十分。人と人が猜疑しあっている。社会のルールも不十分で、旧来の慣習によって支配されている「半開」の状態。
・古代から中世期、近代の入り口までの長い時間のすべてがこうした時代だったといえます。
 
第三段階:自然界の掟を熟知し、人間自らが積極的に、自らの意思によって世界を広げていく自助独立の人の世界。
・「現代」と言いたいところですが、果たして「文明国」といえる国がどれほどあるでしょうか。
「日本は?」と問われると、自信はないですね。
 
この本には、以下の気になる記述もあります。
「物事の外見を取り入れるのは容易。しかしその精神性を取り入れるのは難しい。日本でも、西洋の建物や法律の形を借りることは簡単だが、その神髄、本来の理念を理解するのは難しい。」
ここを読むと、日本は、まだまだ「半開」の国だなと思わざるを得ません。
 
セクハラ、パワハラが問題になるようでは、とても「文明国」と言えないことは確かです。
最近は、やたらと「女性の活躍を」という言葉が飛び交いますが、言葉だけで実態は遅々として進んでいないように思うのです。
昔に比べれば、女性の管理職や役員も増えてきましたが、欧米に比べれば、圧倒的に少数です。
さらに、その職域を技術系に限ってみれば、ゼロに近い状態です。
 
女性は、管理職になれそうになった時、「本当に自分に勤まるだろうか」と悩む人が多いといいます。
私だけの意見かもしれませんが、女性は失敗することを男以上に恐れるようです。
私がスキーの指導員をしていた時代の話です。
男性は「無理だよ」と言うのに、SAJ(全日本スキー連盟)1級のテストを受ける人が多く、逆に女性は「挑戦したら」と言っても受けたがらない人が多かったように記憶しています。
まずは、女性が意識を大きく持って欲しいと思います。
 
私が女性に奮起を促すのは、「文明論」に以下の記述があるからです。
「どの国にも超がつくほどのバカと超がつくほどの天才は少ない。
かわりに、賢くもなく愚かでもない人が大半を占める。これらの人が世論を作る。そして、その人らが時代を映す。
彼らの思考は平坦なので、異説や非常識を嫌う。
しかし、世の中を動かし、変えていくのは異説や妄説だ。そして、異説や妄説が新しい常識になる。
志あるものは、思うところを堂々と主張せよ」
 
いまだ根強い男性社会にあって、女性の感性、意見は「異説や妄想」と捉えられます。
だから、女性に社会やビジネスの中枢に入ってきて欲しいのです。
日本が文明国になるためにです。
 
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┃★中国にとって米国は勝てない相手である         ┃
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米中貿易戦争について、経済評論家がいろいろ解説しているが、中国の分が悪いことは明白である。
GDPに占める輸出依存度は、中国が24.1%、米国が9.4%。中国が勝てる道理は無い。
また、食料や石油を米国は輸出できるくらい十分に持っているが、中国は両方とも圧倒的に足りない。
巨大な人口は市場としての魅力が大きい反面、食料、エネルギーの確保には大きなマイナス要素になる。
 
中国が、欧米や日本から技術をただで搾取してきたことは事実である。
開発途上国がそうするのは止むを得ない事情といえる。
しかし、中国はやり過ぎた。
USTR(米国通商代表部)が2018年3月に発表した報告書には、中国政府が、中国に進出した米国企業に対し、保有する技術や知的財産を中国に移転するよう、さまざまな圧力と脅迫を駆使してきた実態を詳細に記述してある。
それでも、企業が黙っていたのは、中国政府の報復を恐れたからである。
それに対し、米政府は黙っていたわけではなかった。
オバマ政権時代、10回に渡る政府間協議の都度、中国に是正を要求してきた。
その度に中国は是正を約束したが、守られることはなかった。
 
対話を重視していたオバマ政権は、為す術も無く、中国のやりたい放題になっていった。
しかし、トランプ政権になって、こうした潮目が変わった。
好調な経済を背景に、トランプ政権は、満を持して中国への攻撃を開始したのである。
だから、そう簡単に矛を収めることはないであろう。
 
一方、中国の習近平主席にしても、ここで屈服してしまうと、自らの政権基盤が危うくなるため、引くに引けない。
こうして、戦略的打開策がないまま、中国は追い込まれていくことになる。
 
貿易戦争と並行して、米国は南シナ海の「航行の自由作戦」を強化するつもりである。
これが小規模な戦闘の発生につながるかもしれない。
貿易戦争での劣勢を隠すため、中国が軍事的な強攻策に打って出るかもしれないからである。
 
それはともかく、中国による技術のパクリや移転強制の被害を受けているのは、欧米だけではない。
日本もかなりのものである。
しかし、中国政府からの報復を恐れ、企業はもとよりマスコミも沈黙してきた。
先日、産経新聞が日中高官会談の取材を中国当局に拒否されるという異例の事態が起きたが、少しでも中国に対する批判記事を書くことが難しいのが現状なのである。
 
ただ、こうした中国政府の強硬姿勢が各国の反発を呼び、トランプ大統領の言動には辟易しながらも、中国を支持する国が現れないのである。
中国政府には猛省を促したいが、聞く耳があるかどうか。
10月の訪中で安倍首相がどんな話をしてくるのか、それによって中国政府の姿勢に変化が見られるのか。
期待は薄いが、冷静に中国の反応を見極めていきたい。
 
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┃◇キャッシュレス社会                  ┃
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日本でもスマホなどのキャッシュレス決済の利用が増えているが、まだまだ現金のほうを好むお店が多く、小口消費では圧倒的に現金決済のほうが多い。
それに対し、中国はあっという間にキャッシュレス社会になってしまったようである。
 
電子商取引大手のアリババが、子会社のアリペイを通じて行った「キャッシュレス都市ウィーク」というイベントでは、たった1日で楽天の年間取引額を超える金額が決済されたという。
対抗する騰訊(テンセント)は、やはり子会社ウィーチャットペイを使い、中国で「縁起が良い」とされる8月8日を「キャッシュレスの日」と名付け、アリババと同様のプロモーションを行った。
しかし、過熱を恐れた地方政府の中には、「支払いは消費者の選択を尊重する」とする圧力を掛けたところもあるという。
 
今や中国では、物乞いまでがQRコードをかざして小銭をねだるという驚きの光景まで出現している。
ちなみに、どうやるかと言うと、小銭を与えるほうは、物乞いがかざすQRコードを自分のスマホで読み取り、与える金額を入力することで、「欠けた茶碗に小銭を『チャリーン』と入れる」と同じになるというわけである。
 
しかし、これは都市部での話であり、農村部に住む2億とも3億とも言われる人たちは銀行を利用できず、こうした金融システムから完全に除外された格好になっている。
いずれ、こうした下層に沈む人たちが、社会不安を引き起こす要因になることは確実なので、中央政府は対策に乗り出すというが、広大な中国では大変な難題である。
 
キャッシュレス化の進展が遅いことで「日本はガラパゴス化する」と警鐘を鳴らす経済学者もいるが、そんなに騒ぐことかと思う。
私は、クレジットカードは使うが、スマホ決済には魅力を感じない。
というより、小口決済に現金以外を使うことに抵抗があるのだ。
それは「お店が嫌がるだろうな」という“忖度”である。
キャッシュレス決済の手数料はお店の負担になるだろうという気持ちからである。
同じように感じる年配者の方は多いと思う。
 
それに対して、若い方にはそんな躊躇は微塵もないようである。
私が「コンビニではちょっと」と言うと、「どこが?」と不思議がられてしまう。
「時代に付いていくのは疲れるな」と、正直思ってしまう。
 
でも100年、いや50年後には「現金って何?」となるのではないか。
そして、現金が消える時代には、ATMどころか銀行はみな消えているのではなかろうか。
私の予測では、2075年には完全にそうなっていると出ているのだが・・
 
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┃★企業における社長の力(3)              ┃
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電子商取引で大当たりしたアリババ・グループ・ホールディングの馬雲(ジャック・マー)会長が、引退を表明しました。
まだ54歳の若さですが、自分のビジネスモデルに「明日がない」と感じたからだと推測します。
 
米中貿易戦争の核心は「IT冷戦」とでも呼ぶべきハイテク争奪戦です。
アリババを始めとする中国系IT企業は、米国の技術を合法・非合法に利用してきたことで急成長を遂げました。
米国内に研究所を有する企業もたくさんあります。
トランプ政権が、こうした中国企業に対する締め付けを強化してくることは確実です。
つまり、中国系IT企業の明日には「暗雲が垂れ込めている」ということです。
マー会長の個人資産は数兆円とも言われています。
「もういいや、引退して、後の人生を楽しもう」と考えても無理はありません。
今後、こうしたベンチャー経営者が増えていくのではないでしょうか。
 
前回、「次回は、見極めた新たな方向に舵を切ることの難しさについて論じる」と予告しましたが、まさに、マー会長もここに直面したのでしょう。
 
新たな方向に舵を切ることに必須なのは、ビジネス環境の「自由度」です。
中国企業は、中国国内だけでなく、米国でも、その自由が失われつつあるのです。
大きな国内市場があり、多額の現金を持っている限り、倒産はないでしょうが、未来は嵐が待っています。
引退して、次の指導者に舵を任せることは賢明な判断だといえます。
 
さて、中小企業の経営者は、そんな優雅な引退はなかなか望めません。
しかし、間違いなく、日本経済は大きな曲がり角に差し掛かりつつあります。
安倍首相は、マジシャン黒田を使った金融マジックでデフレ下降をなんとか並行状態に戻すことには成功しました。
このご褒美が「総裁3選」なのですが、もうマジックは種切れになっています。
そして、次の策は・・ありません。
しかし、首相の後継者が明確になっていません。
候補といえば、石破氏、岸田氏ぐらいですが、その口から「なるほど」というような経済政策を聞いたことがありません。
巷では小泉進次郎氏を押す声がありますが、彼からも明快な経済政策を聞いたことがありません。
失礼ながら、まだ「小僧」です。大化けするまで評価はお預けです。
 
つまり、誰も「大曲りした先の日本経済」を語ってくれていないのです。
仕方ないので、中小企業の社長は、自分で予測し、自分で舵を切っていくしかありません。
そうなると大事なのは、舵を切る方向の見極め方と、舵を切るときの注意を忠実に守ることだと思います。
次回はこの話を。
 
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<編集後記>
大リーグの大谷選手は、トミー・ジョン手術(靭帯再建手術)を決意したということです。
この手術の最近の成功割合は高いですが、100%の保証はありません。
私も手術前に何度も「腕が動かなくなる危険性もある」と言われました。
 
ところで、この靭帯の役割ですが、一般には大きく誤解されています。
大谷選手に寄せられるネットでのコメントを読んでいると、それがよく分かります。
靭帯は関節の動きを助けるためのものではなく、曲がり過ぎを止めるためのストッパーなのです。
だから、靭帯がなくても動かすことには支障がありません。
靭帯を損傷している大谷選手が、がんがんホームランをかっ飛ばしている理由はここにあります。
バッティングは両腕で振るため、しっかり振っている限り、左バッターは左腕がストッパーの役目をし、靭帯への負担は軽くなります。
(だから、片手打ちはマズイですね)。
しかし、投手の場合は片腕を全力で振り切ります。
靭帯が断裂している場合、いっぺんで関節が壊れます。
ストッパーが機能しないからです。
大谷選手の手術の成功を祈ります。
 
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