2020年3月31日号(経済、経営)

2020.04.02


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年3月31日号
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発行日:2020年3月31日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2020年3月31日号の目次
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★経済減速の深刻化
★原油戦争の構図
★金融から経済は崩れる
◇これまでの経済、これからの経済(8)
 
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
「やはり」というか「やっと」というか、東京五輪が延期となりました。
IOCや日本政府に対する批判の声がありますが、批判者は「自分だったら、もっと有効な手が打てた」とでも言うのでしょうか。
そんなことより、これを機に肥大化した五輪を見直すべきと考えます。
エリートスポーツがカネ漬けになっている現状が、ドーピングの蔓延を招いています。
今回の延期を機に、五輪の縮小化も考えるべきではないでしょうか。
 
今号は、様々な視点でコロナウイルスの経済への影響を考えてみます。
 
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┃★経済減速の深刻化                        ┃
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新型コロナウイルス禍の経済への影響が深刻になりつつあります。
各国とも、今は感染を抑えることに必死で、そのため生ずる経済的損失には目をつぶっています。
しかし、終息時期が見えない中で、人の動きを強権的に押さえ込み続けることは経済の体力を奪っていきます。
このまま為すすべなく世界恐慌へと進んでしまうのでしょうか。
 
今は、世界各国が連携して恐慌を防ぐ必要があります。
しかし、そのリーダシップを取るべき各国のトップが軒並み力量不足です。
協力するどころか、非難合戦と責任のなすりつけ合いという情けない姿を露呈しています。
個々の企業は、自国政府を当てにするのではなく、自力での乗り切りを画策すべきです。
 
一部の評論家から、これを機にテレワークやネットでの仕事が加速し、働き方の効率化が促進されるといった意見が出ていますが、それは幻想に過ぎません。
日本で、働きが個として確立している人はごく少数です。
多くの情報がメールやネットでやり取りされているとはいえ、それだけでは仕事は回りません。
また、建設現場など、テレワークなど出来るわけが無い職場は数多くあります。
テレビ会議なども一般化してきましたが、遠隔では微妙なニュアンスは伝わりません。
テレワークを否定しているわけではありませんが、企業もそれほどの効果があるとは期待していないはずです。
 
それより人々の心理が冷え込んでいるマイナス面が大きいです。
今回のコロナウイルスの致死率は比較的低いほうですが、死への恐怖が人々の意識を縛っています。
そうした心理要因が必要以上に経済に打撃を与えることになります。
可能性の低い都市封鎖に怯えて、スーパーに買いだめに走るなどの行為は典型的な現象です。
本メルマガで何度か言及していますが、放射能騒ぎの時と同じ現象が今回も出ています。
しかし、いったん始まった心理パニック現象は容易には収まりません。
ワクチンの開発には1年以上を要すると言われていますので、それまで不況がさらに深刻化すると考えるべきなのでしょう。
少なくとも経営者は、その覚悟を持って乗り切り策を真剣に考える必要があります。
 
ただし、だからと言って縮み経営では、自社の未来を潰してしまいます。
1年を乗り切っても、その後に倒れたのでは意味がありません。
こんな時だからこそ、未来への投資を同時に実行できる経営者が、真の経営者だと考えます。
 
「カネが無いよ」と言われてしまいそうですが、「カネは銀行強盗をしてでも作る」ぐらいの気概と戦略を持たなければ優れた経営者とはいえません。
これから本格化するであろう経済停滞という津波を乗り越えることが出来れば強い企業となることは確実なのですから。
 
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┃★原油戦争の構図                         ┃
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コロナウイルス禍の影に隠れていますが、石油戦争が深刻な状況になっています。
世界の石油市場は、サウジアラビア、ロシア、そして米国の3つ巴の構図になっています。
温暖化対策という逆風と世界経済の低迷で石油はだぶついています。
そこで、サウジアラビアは、OPEC+会議を開催し、ロシアに追加減産を提案しました。
しかし、ロシアは追加減産を拒否しました。
この決裂を「サウジとロシアの共通の敵といえる米国に打撃を与えるために、わざと交渉決裂を演出した」という説が流れていますが、それは違っています。
ロシアの技術的な理由が原因です。
 
ロシアの原油鉱区の油層の圧力は低く、減産のためバルブを閉めると、次にバルブを開けても原油が出なくなります。
さらに、西シベリアの原油はワックス分が多く、流れを止めるとワックス分がパイプラインの配管内に付着し、詰まってしまうのです。
こうした理由でロシアの原油は減産が難しいのです。
それに、今のロシアは産油国であり、中東諸国のように原油輸出が命綱なのです。
ロシアの国家予算は、原油が1バレル42.4$で売れることを前提に組まれていますから、現状は完全に歳入不足となっています。
 
一方の米国経済は原油に頼っているわけではありませんが、シェールオイル業者の大半は中小企業です。
シェールオイルとは、頁岩層の中に含まれている炭化水素から採取した原油です。
このことは、かなり昔から分かっていましたが、採取する技術が難しく、経済的にも合いませんでした。
ゆえに、細々とした生産が行われているだけでした。
それが、2003年頃から油価が上がり始め、採算が合うようになってきました。
さらに、水圧破砕法という採取技術の向上によりコストが下がったことで、参入企業が増え、2018年に米国は世界一の産油国となったわけです。
しかし、シェールオイルの油井1本の寿命は約3年といわれていますので、次々に新しい油井を掘り続ける必要があり、コストを下げることが難しいのです。
現在は、バレル40$が損益分岐点と言われています。
 
サウジアラビアは、誰もが知る通り、石油が生命線の国家で、事実上国家運営になっています。
その国家運営のために必要な経常収支の均衡レベルは、バレル55$に設定されています。
つまり、バレル30$台に下がっている現状は、3者共倒れの構造なのです。
 
反対に、大口の消費国である中国、そして日本は油価下落の恩恵を受けるわけですが、コロナウイルスに直撃され、それどころではありません。
油とウイルスは、本来無関係の要素ですが、マネーゲームで無定見に伸び切った世界経済にダブルでダメージを与えています。
自国だけの利害で動くことが自国も疲弊させることが分かりきっているのに、知恵を出し合うことも出来ない現状が経済をさらに追い詰めているのです。
 
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┃★金融から経済は崩れる                      ┃
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大和総研の試算では、コロナウイルスが仮に4月で収まった場合でも、実質GDP(国内総生産)は0.8%のマイナスとなるとのことです。
これが1年程度継続した場合は、実質GDPのマイナスは3.1%(16兆3000億円)になるとしています。
同研究所以外のシンクタンクも似たような観測を流していますが、当然ながら悲観論一色です。
 
特に日本は、昨年10月に消費税率が10%に引き上げられた結果、10~12月期の実質GDPが前期比マイナス1.8%(年率換算でマイナス7.1%)と予想以上の落ち込みを見せた中でウイルス禍に見舞われたわけです。
増税で落ち込んだ個人消費と設備投資がさらに直撃されているのは当然です。
報道では「リーマンショック以来・・」というフレーズが多く聞かれますが、あの時は、直前まで世界経済は好調でした。
しかし、今の状況は真逆になっています。
景気後退期の増税という、あり得ない手を打った政府の無策をコロナウイルスが追い打ちを掛けた結果となっています。
 
慌てた政府は、緊急支援として、条件を大幅に緩和した融資を打ち出しています。
そもそも、中小企業の大半の資金力は脆弱です。
多くの企業は、この緊急融資を利用して一息付くでしょうが、その先の見通しがつかない恐怖にすぐに襲われます。
しかも、この融資で、企業の債務状態は一段と悪化します。
返済不能になる危険ラインをしっかりと把握出来ている企業は良いでしょうが、残念ながら少数です。
金融機関から聞く話では、1~2年の元金据え置きを希望する企業が結構な割合であるとのことです。
返済据え置きは、一種の麻薬です。
返済期間を延ばしてでも定額返済を組み込んだ資金計画は必須です。
 
世界経済に話を戻すと、近年、各国で民間債務の割合が上昇してきています。
過去の金融危機を分析している経済研究所によると、民間債務のGDP比率が5年間で18%増加し、全体で150%を超えると金融危機が起きるということです。
この数字に該当する国は、いまのところ、香港、カナダ、中国、フランスです。
シンガポールも、間もなくこの数字を超えると見られています。
アメリカと日本は、増加率は低いが全体では150%を超えています。
韓国は、この数字以下ということですが、家庭債務が180%を超えたといわれていますので、個人破産が経済恐慌の引き金になる恐れがあります。
 
過去の日本の場合、リーマンショックの時、その前5年間の増加率が20%で、全体で170%に達していました。
30年前のバブル崩壊時は、前5年間の増加率は28%で、全体では213%に達していました。
今回のような緊急融資対策が続くようだと、同じような状態を引き起こす可能性があります。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という有名な言葉があります。
今回のコロナウイルスが長引き、感染者、死亡者が激増するようだと、過去の経験値は通用しなくなります。
金融危機から経済危機を引き起こさないためには、歴史を深く読み解く必要があるのでしょうか。
各国国民は、自分への利益誘導や自分の感情を満足させるという考えを捨て、賢者となる政治を作ることを第一に考えなくてはならないのです。
でも・・出来るかな?
 
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┃◇これまでの経済、これからの経済(8)              ┃
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いま、世界経済はコロナウイルスショックで恐慌一歩手前の状態です。
しかし、パニックにならずに、冷静に経済状態を分析することが大事です。
たしかに各国株式市場の下落幅は世界恐慌と呼んでもおかしくない数字ですが、これも「調整局面」のひとつと考えれば頷けます。
これまでの株高は、世界的な金余りとベンチャーバブルが結びついた幻想経済といえるものです。
コロナウイルス禍により、そのバブル部分が消し飛んで正常な状態に戻ったと考えれば、納得がいくレベルなのです。
1990年代中盤から始まったIT・インターネットの一大発展も四半世紀が過ぎ、落ち着いてきています。
そのため、金余りの中で投資家が血眼になって探してきた有望な投資案件はほとんど残っていないのが現状です。
その結果、歴史的にバブルの始まりと言われているオランダでの「チューリップの球根」に類する案件にも手を出す状況に陥っています。
先に大量の資金を集めてしまったソフトバンク・グループのビジョンファンドは、まさにそうした典型的な例で、「有望ではない投資先」であるウィーワークに無理な投資を行い、大きな損失を被ったわけです。
 
今回のコロナウイルスショックが長引けば、同社の存続にも関わる重大局面を迎えるかもしれません。
稀代の戦略家である孫さんですから策は考えていると思うので、その策に注目しています。
もっとも、我々中小企業には遥かに遠い世界なので、参考にはなりませんが・・
 
コロナウイルスショックの終息はまだまだ見えませんが、いつかは終息します。
そこまで生き抜く資金対策は重要ですが、終息時に攻勢を掛ける準備や投資も必要です。
長年、孫子の兵法を師事してきた故武岡先生によると、孫子の骨子は3本の柱にあるということです。
その3本とは、人間性、合理性、中庸性です。
次回、今回のウイルス禍の乗り切りに、この3本がどう作用するかを述べたいと思います。
 
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<編集後記>
今号の「今後の建設需要」は休みです。次号より再開しますので、またよろしくお願いします。
 
新型コロナウイルスの影響で、解雇や内定取り消しが増えています。
この状況の中では、そうした企業を責める声もなく、売り手市場だった就職活動にも暗雲が垂れ込めています。
買い溜めの行列にもため息が出ますが、こうした中、卒業旅行に出かけ感染する学生にもため息です。
片や過剰反応、片や責任感の欠如といった世相を反映した行動です。
せめて、この現代のいびつさを「おかしい」と思う声が出ることを「良し」としますか。
 
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