2022年7月15日号(国際、政治)

2022.08.02


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年7月15日号
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発行日:2022年7月18日(月)
 
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2022年7月15日号の目次
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◇今後の政局はどう動くか(与党編)
◇韓国との関係
★民主主義の脆さ(その3)
◇軍隊という組織(3)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
選挙日直前、安倍元首相の銃撃・死亡という、まったく予想できなかったことが起きました。
参院選への影響は限定的でしたが、今後の政局に影響が出ることは確実です。
今号は、この話題から入ります。
 
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┃◇今後の政局はどう動くか(与党編)                ┃
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安倍元首相の衝撃的な死は、事件の特殊性に関心が集まっていますが、次第に今後の政局に関心が移っていくでしょう。
その予測を行う前に、今度の選挙結果を少し俯瞰してみたいと思います。
与党の大勝は予想範囲内でしたが、既存野党の退潮に歯止めがかからなくなっていること、および泡沫扱いされてきた政党が当選者を生み出してきたことが特徴の選挙だったといえます。
 
立憲と国民の2つの民主党、および共産党の衰退は、既存野党の先細りを意味しています。
この現象は、当選者数の減少以上に、得票数の減少に現れています。
2回連続でトップ当選してきた東京選挙区の蓮舫氏の4位などがその象徴といえます。
また、あまり報道されていませんが、既存野党のベテラン議員がかなり落選しています。
代わりにタレントやスポーツ選手あがりの議員が増えてきたのは「ちょっとなあ~」と思いますが、知名度でしか判断できない現状の候補者のお粗末さでは「しかたないか」と思うしかありません。
民主主義は「衆愚政治」と双子のような関係ですから、このような結果が今の日本と受け止めるしかないのでしょうね。
 
今後の政局の第一は、もちろん政権を担う自民党内の勢力図の変化です。
これは、選挙結果ではなく、安倍元首相の死去という異常事態によるものです。
安倍氏という大きな軸を失ったことで、最大派閥の安倍派は分解の危機にさらされます。
この機を狙い、旧宏池会の派閥が岸田首相を軸に再結集する動きが出てくるでしょう。
その仕掛け人が麻生副総理であることは、政治ウォッチャーの多くの見方が一致するところです。
麻生氏が岸田首相のバックアップに回り、安倍派の議員を岸田派や麻生派に誘導する動きが水面下で始まっているものと思われます。
そして、岸田首相の後釜狙いの動きも活発化してくるでしょう。
その候補に河野氏を挙げる向きがありますが、政界では、福田達夫氏の台頭を挙げる声が高くなりそうです。
河野氏と同様、祖父や父親から続く政治家家系ですが、祖父も父も総理大臣であった福田氏のほうが、党内主流に支持される割合が高く、年齢も55歳と59歳の河野氏より少し有利です。
また、時に過激な発言をする河野氏と違い、穏健派のイメージの強い福田氏は、麻生氏や岸田首相にとって、自らがキングメーカーとして存在感を発揮できる相手と考えるでしょう。
 
もちろん、国民から見たら福田氏はまったく見えていない存在で、知名度は河野氏に遠く及びません。
また、こうした旧態依然とした政治に反旗を翻す若手議員もいるでしょうが、小粒な人が多く、とても新たな流れを作れそうにありません。
はっきり言って“つまらない”政治が続きそうですが、それが自民党という政党であり、大きな変化を好まない日本人の気質に合っているのでしょう。
 
最後に公明党ですが、あくまでもコバンザメのように自民党の腹に付いていくつもりでしょう。
それだけ政権与党にいる旨味を知ってしまったのです。
また、減少気味とはいえ選挙での手堅い創価学会票があるかぎり、自民党の各議員にとっては切り離せない存在となっています。
 
それなら「野党に期待したい」ところですが、それは、次回解説したいと思います。
 
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┃◇韓国との関係                          ┃
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韓国では、安倍元総理の死去により、岸田政権が日韓関係の改善に舵を切るのではとの期待があるようですが、ムリだと断言します。
どのような国家関係であれ、歴史に加害者と被害者の概念を持ち込み続ける限り、改善は不可能だからです。
イスラエルは、ドイツによるホロコーストを忘れることはありませんが、ドイツに対して公然と恨みをぶつけることはありません。
米国に原爆を落とされた日本ですが、大半の日本人は、忘れはしませんが、米国を恨んではいません。
そうした国民意識が西側諸国の関係を作ってきたのです。
 
だれもが知っているように、1965年の日韓基本条約で、日韓両国は「国民の請求権を含めて一切の戦前条約を無効とする」ことを確認し合い、日本は多額の事実上の賠償金を払いました。
しかし、その後、韓国は「あれは違う、これも違う」と条約無視を続けてきました。
それに対し、歴代の日本政府は譲歩に譲歩を重ね、屋上屋を架す“つぐない”や謝罪を続けてきました。
この外交姿勢が間違っていたのです。
理不尽な要求をはねつける姿勢を貫き、国際条約を守り続ける国家であることと、韓国側の実態を国際社会にアピールし続けることが大事なのですが、それを怠ってきたツケといえます。
一方の韓国ですが、「日本を貶めたい」という韓国民の気持ちが下敷きにある限り、関係改善は期待できません。
 
そうした韓国民の姿勢を煽っているのが韓国マスコミですが、若干の変化が出てきているようです。
韓国の代表的な左派系新聞ハンギョレのキル・ユンヒョン国際部長の7月14日のネット配信記事を興味深く読みました。
安倍元首相の足跡を丁寧になぞって解説した内容です。
左派系ゆえの批判的な記述も散見されましたが、全体として抑制された客観的な内容で、驚きとともに感心しました。
「なるほど」と頷ける内容も多く、優れた記事と評価できるものでした。
それに比べて、ネット配信を含めて、日本マスコミの記事は物足らなく、日本の劣化のほうが気になります。
 
このような冷静な韓国側の流れが太くなっていかない限り、日本国民の嫌韓意識は一層高まり、両国関係は修復不可能なレベルに落ち込んでいくものと思われます。
 
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┃★民主主義の脆さ(その3)                    ┃
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民主主義は、個人の権利を最大限に尊重する政治形態である以上、個人の主張のぶつかり合いが避けられないという宿命的弱点を抱えています。
そのぶつかり合いが社会のいたるところで発生し、収拾がつかなくなると、最も安易な解決法が採られるようになります。
つまり、発言力に長けた一部の者の声(それは、いつも暴力的な声となります)に先導された民衆が暴力的な解決策を求め、それが現実化していくのです。
ほぼ確実に、そのような「衆愚政治」に陥り民主主義はあえなく頓挫するのです。
古代ギリシャの民主主義も、フランス革命によって起きた中世民主主義もそのように頓挫しました。
 
そうした民主主義の脆さを補うには、「法治国家」としての骨格を整えることにあります。
つまり、ルールづくりです。
今年の大河ドラマは鎌倉時代がテーマですが、北条氏による政治が軌道に乗ったのは、三代執権の北条泰時の時代です。
泰時が「御成敗式目」という法律を制定し、その運用を徹底したことによって、国が安定したのです。
 
現代でも、ルールづくりのあり方が国としての活力を左右することは同じです。
今の日本は、憲法だけでなく多くの法律(ルール)が、不安定さを増す国際情勢や経済停滞が続く国内の諸問題に適合しなくなっています。
すべてを一度に変えることは無理でも、例えば「10年で変える工程表」を作り、実行することはできるでしょう。
岸田首相は、こうしたことにリーダーシップを発揮して欲しいと思います。
「デジタル田園都市国家構想」なる意味不明な構想ではなく、「進化したテクノロジーで既存のルールを変える」というような、誰もが理解しやすい構想を掲げて、即実行することが大事です。
 
上記の理由で、少しだけ注目している政治家がいます。
デジタル副大臣と内閣府副大臣を兼務している小林史明氏です。
小林氏は、「テクノロジーの社会実装によりフェアで多様な社会を実現する」という政治信条を掲げています。
39歳という若さですが、「法令4万件の一括見直し」などという大々的な法改正の必要性を訴えています。
次号で、彼の主張するところを少し解説したいと思います。
 
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┃◇軍隊という組織(3)                      ┃
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ロシア軍は、欧米の軍隊より厳格なトップダウン式の指揮系統で動いています。
これは旧ソ連時代から続く伝統であり、独裁国家の軍隊の特徴ともいえます。
そのため、下級指揮官への権限委譲が少なく、細かな戦術的な意思決定まで、上級指揮官が行っていると言われています。
ゆえに、師団長クラスの将官が、命令を最前線にいる部隊に理解・実行させるため、自ら最前線に出向き、ウクライナの狙撃兵の餌食になっているのです。
こうした上級指揮官が欠けることによって、司令部の指揮能力は極端に低下し、その傘下の部隊全体の行動が行き詰まるという事態を引き起こしています。
さらに、こうした事態における部隊の再編成能力にも欠けることが指摘されています。
 
旧ソ連時代の話ですが、実戦演習において、一個大隊がまる1日行方不明になるという事態が生じました。
後で真相が判明して、呆れた実態がわかりました。
800名の大隊を指揮する少佐が、演習のさなかに心臓発作で急死したというのです。
しかし、誰も後を引き継ぐ者がいなくて、大隊は、捜索隊に発見されるまで、そこで停止したままだったというのです。
米軍や自衛隊であったなら、大隊の下部組織である中隊の指揮官(大尉か中尉)の誰かが大隊の指揮を引き継ぎ、その後の演習を継続したであろうと思われます。
 
さらにロシア軍には、正規兵不足を補うため「徴集兵」と呼ばれる臨時に集めた兵隊が相当数います。
これら徴収兵は、教育訓練の不足で規律とプロ意識に欠けています。
指揮官が倒れたりして統制の効かなくなった部隊にいる、こうした徴集兵が店舗や民家で略奪行為や犯罪行為を働いていると報道されています。
 
これらは、独裁国家に共通した問題であり、天安門事件などにおける中国人民解放軍の兵士の行動などにも同様の行動が見られます。
弱者に対して容赦がないのが、こうした国の兵士に共通する要素です。
彼らは、人間に対する尊厳より“上からの命令”絶対の教育を徹底されているだけなのです。
その上からの命令がなくなったら・・、法律の効かない戦場では、むき出しの野望だけが突出することになるのです。
 
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<編集後記>
ウクライナ情勢が硬直化していることで報道も減少気味です。
そのような中、飛び込んできた安倍元首相の狙撃事件ですが、犯人に思想的な背景はなく、宗教がらみの側面が出てくると、報道はそっちへ大きく傾き出しています。
こうしたマスコミの底の浅い姿勢は、多分にネットに誘導されている側面が強いです。
規制が緩いネット情報の拡散は、“いじめ”の構図と同じで、みんなで弱いものを探し出していじめる社会を加速させています。
 
<お詫び>
6/30号の「◇論理思考は大切だが・・」で、映画監督の河瀬直美氏の言葉を取り上げました。
河瀬氏の「瀬」の字は別の難しい漢字なのですが、文字化けしてしまうので、氏には失礼と思いながら、この字を使わせてもらいました。
ご了解ください。
 
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