2020年7月31日号(経済、経営)

2020.08.03


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年7月31日号
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発行日:2020年7月31日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2020年7月31日号の目次
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◇これまでの経済、これからの経済(12):アフターコロナをどう生きる
◇中国の思惑通りにはいかない(その4)
☆商品開発のおもしろさ(2)
◇今後の建設需要(8)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
米国での新型コロナウィルス禍は収まる気配がありませんが、財政出動は大胆でした。
今回の米政府の判断基準は至極単純です。
GDP(国内総生産)が10%落ち込むので、その分を広範囲の給付金支給でカバーするという考えです。
つまり、政府の資産を家庭及び企業に移転するだけなので、親子の貸し借りと同じで対外的にはなんの影響もないということです。
乱暴ですが、間違いとは言えない単純理論です。
 
日本は総額19兆円規模の民間への資金支給を行いましたが、この額はGDPの3.8%です。
米国の1/3程度なので、米国理論に従えば、まだ30兆円程度の財政出動は可能となります。
さすがに、ここまでは無理でしょうが、20兆円程度の第3次補正予算を組む議論は必要でしょう。
国会が休みの間、策を練っていることを期待します。
 
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┃◇これまでの経済、これからの経済(12):アフターコロナをどう生きる ┃
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新型コロナウィルスとの戦いは長期戦になりそうですが、企業としては、この長期戦を戦い抜く策と同時にアフターコロナの策も練っておく必要があります。
それには、まず、以下のことを考えてください。
今回のコロナウィルス禍は、自社だけに吹く向かい風ではなく、どの企業にもまんべんなく吹き付ける強風です。
ならば、自社の向きを変え、この風を追い風にする策を考えたいものです。
このようなことを言うと、「言うだけなら簡単だよ」と言われるでしょう。
しかし、発想の基本は“簡単であるべき”なのです。
なのに、「発想は難しい」と思い込んでいる人が多いのです。
 
では、今回の事態で考えてみましょう。
読者のみなさまがご存知のとおり、政府は様々な補助金や特別融資を次々と打ち出しています。
その数があまりにも多く、五月雨式に出てくるので、全体を把握することが難しいくらいです。
一見、支離滅裂に見える政策の羅列なのですが、何度もなんども読み返してください。
また、それを、日を改めて何回も繰り返してみてください。
今回の政策の意図や整合性、条件などが、次第に分かるようになってきます。
分かってくると、「結構、よく考えられた策だな」と思えるようになってきます。
そこまで読み込まないと理解できないことが問題ではありますが・・
 
ここで、ちょっと脱線を。
政策を立案する官僚の方々の多くは東大卒でしょう。
今回は、東大卒の長所、短所が浮き彫りになっています。
それは何か・・
政策を最初に読んだ時のわかりにくさは、彼らの短所のゆえです。
読み手も自分たちと同じように解釈できるはず(あるいは、“すべき”)という思い込みで作ってしまうのです。
そして、何回も繰り返し読んで理解してくると、彼らの長所が見えてきます。
ちゃんと整合が取れているのです。
「よく作ったもんだ」と、結構、感心しました。
しかし、読み手の圧倒的多数は、そこまで読み込めずに諦めてしまうので、彼ら官僚の努力は中途半端に終わってしまうのです。
東京大学は、今後、こうした弱点を克服できるような教育カリキュラムを検討して欲しいものです。
 
話を戻します。
今回の特別融資は、驚くほど借り手天国になっています。
経営者としては、資金に余裕があっても100%活用して良いと考えます。
弊社もそのようにするつもりです。
さらに、こちらから要求する前に金融機関がこの特別融資の提案を持ってきたなら、その内容を精査してください。
その内容こそが、金融機関から自社への客観的評価なのです。
また、それだけ、金融機関にとっても美味しい融資の仕組みになっているのです。
 
ところで、メインバンク以外からも提案が持ち込まれる可能性もあります。
その場合、各行の提案内容を見比べ、じっくりと比較検討してください。
場合によっては、メインバンクの切替えさえ考えたほうが良いかもしれません。
 
現在の事態が戦争状態だとしたら、なにより必要なのは兵糧です。
企業にとっての兵糧は資金に決まっています。
戦いがいつまで続くかわからない今、溜め込めるだけの兵糧を蔵に積上げたいものです。
しかし、問題は、この兵糧の使いみちです。
それを次回述べたいと思います。
 
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┃◇中国の思惑通りにはいかない(その4)              ┃
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中国が唱える「社会主義市場経済」とはなんでしょうか。
果たして、経済理論といえるのでしょうか。
無理に解釈すると、「経済は市場の論理で自由活動を原則とするが、その果実は社会主義で平等に分配する」とでもなるのでしょうか。
しかし、本質は「世界中で中国は自由に活動させてもらうが、果実の分配は中国政府が独占的に行う」ということのようです。
 
市場経済=自由経済といえますが、自由主義と社会主義は真っ向からぶつかり合う概念です。
経済における自由主義の本質は「弱肉強食」の世界です。
最終的に、一握りの成功者がその他大勢を富の力で従える社会となります。
産業革命後の欧州が典型的な例です。
現代でも、米国がそれに近い状態だといえます。
 
1800年代の欧州が陥った極端な自由主義経済の下で、大半の一般大衆は奴隷的な労働環境と貧困に喘ぎました。
自然発生的に「富の再分配」を求める声が大きくなり、マルクスのような経済理論家が社会主義理論を打ち出し、一気に大衆の支持を集めていきました。
以降、2つの理論はぶつかり会いを続けた結果、一定の妥協点に達し今日に至っています。
欧州は概ね社会主義的、米国は逆に自由主義的な妥協点という違いはありますが。
 
社会主義を極端化した共産主義は、ソ連において花開いたかに見えましたが、結局、独裁主義へと変貌し、崩壊しました。
ゆえに欧米は、中国も豊かになれば、そのようになると考えたのですが、中国を甘く見すぎていました。
中国は、2500年も前に孫子を始めとする多くの戦略理論を生み出し、磨き上げてきた国です。
欧米各国は、そこを軽視していました。
ゆえに、「社会主義市場経済」なる用語を打ち出した背景を真剣に考えようとせず、いずれ中国は民主化するはずと思いこんだのです。
 
しかし、ようやく欧米は、中国の意図に気がついてきました。
「社会主義市場経済」なる用語は、欧米に対する煙幕のようなもので、成り立つはずがないことくらい、当の中国は分かっているのです。
実態は、共産党独裁政権が利権を独占的に差配する経済なのです。
 
しかし、この煙幕の中で世界制覇を目指し推し進めてきた「一帯一路」が、中国の足を引っ張り出しています。
皮肉なものです。
この事態は、独裁者たる習近平主席の力不足が招いたことです。
彼は、孫子の兵法を完全には読み解いていないようです。
あれだけの大国を上意下達だけで動かせると錯覚した傲慢さともいえます。
次回は、この「一帯一路」について、少し解説したいと思います。
 
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┃☆商品開発のおもしろさ(2)                   ┃
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古今東西、最先端の商品が兵器であることに異論がある方は少ないと思います。
「兵器を商品とするなど、けしからん」と思われる方もおられるでしょうが、ここは善悪を論じる場ではなく、商品開発のおもしろさを論じる場なので、ご容赦ください。
 
ドイツが誇る自動車会社のベンツを知らない人はいないでしょう。
でも、ベンツの本当の凄さは、高級乗用車にあるのではなく、トラックにあります。
自動車通の方はご存知と思いますが、多目的トラックの「ウニモグ」の軍用車の中には、登坂能力60度(公式には45度)という驚きの性能を持つ車種もあるとか。
これが真実か否かは確認していませんが、とんでもない数字です。
私は、大学時代、冬はスキー場でパトロールのバイトをしていましたが、雪上車を運転して38度の斜面を下ったことがあります。
真っ逆さまに転げ落ちるのではないかと思う恐怖を味わいました。
また、スキーで60度の斜面を滑った経験もありますが、滑るというより落下している感覚でした。
そのような斜面をトラックが登るというのですから、「信じられない!」というしかありません。
この60度が本当でなくても、追随する競合車がないことから生まれた話といえます。
こうした神話を生み出す力がベンツの真の力なのです。
 
また、「商品開発の面白さ」は「ウニモグ」のような商品のユニークさと並んで、企業としては「儲かる」ことが大きな要素であることに異論はないと思います。
 
唯一無二と言われるほど優れた兵器には競合がないので、値段は売り手側の言い値になります。
私は、かつてSEとして最新の軍事システムの開発に関わった時、担当営業に聞きました。
「このシステム、どのくらい儲かった?」
彼の答えは「粗利80%」でした。
でも、この利益を“不当利益”だとは思いません。
所属していた会社が積上げてきたノウハウと経験、それとチーム員の頭脳と努力の結晶であり、競合はいなかったのですから当然の利益です。
民間案件では、なかなか、こうはいきませんが・・
 
商品としての兵器を論じる時、もうひとつ大事な要素があります。
「優秀な兵器とは戦場の要求から開発されるもので、机上の妄想や見栄からは生まれない」という要素です。
この要素は、我々の開発する民間商品にも当てはまる大事な原則です。
つまり、「優秀な商品とは市場の要求から開発されるもので、机上の空論や見栄からは生まれない」ということです。
多くの会社は「そんなこと分かっているよ」と言いながら、手前勝手な妄想や見栄が先行する例は後を絶ちません。
偉そうなことを言っていますが、弊社においても、そうした商品開発の失敗は山のようにあります。
一時は、それで倒産寸前まで追い込まれましたので、笑い話にもなりません。
でも、商品開発に失敗はつきもので、「失敗は成功の母」なんてことも言いますから、「どっちなんだよ」とツッコミを入れたくなりますね。
 
そんな失敗例に面白いものがあります。
「多砲塔戦車」という代物です。
普通、戦車の砲塔は1門だけです。
それを「海に戦艦があるのだから、陸の戦車にも複数の砲塔があってもおかしくないだろう」との発想で、実際にドイツで「5つの砲塔と4つの機銃座を持つ」戦車が造られました。
乗員は、実に11名も必要で、重量は69tもありました。
もちろん、結果は惨憺たるものでしたが、こうした失敗の積み重ねが、第二次大戦中、最強といわれるティーゲル戦車を生み出し、戦後のベンツやポルシェにつながっていくわけですから、まったくの無駄ではなかったわけです。
 
だから、企業も、時にはこうした「アホらしい」商品開発に挑戦することも必要なのだと思います。
ただし、財政的な余力を考えた上であり、撤退条件を絶対に守るという歯止めは必須ですが。
こうした夢想商品は、考えるだけでも面白いので、私は、時々、一人で設計したりしています。
こうなると、仕事ではなく趣味かもしれませんね。
 
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┃◇今後の建設需要(8)                      ┃
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九州を襲った今回の豪雨で、球磨川流域は多くの犠牲者、損害を出しました。
民主党政権時代にダム建設が中止された川辺川は、この球磨川の上流に位置します。
熊本県の蒲島知事は、今回の被害を受けて「ダムによらない治水を目指してきたが、費用が多額でできなかった。非常に悔やまれる」と述べています。
あの当時、国民の多くは民主党の掲げた「コンクリートから人へ」に賛同していました。
蒲島知事は、その流れに乗って川辺川ダムの建設反対を掲げて当選し、現在に至っています。
 
ダム建設中止の公約を支持したのは熊本県民なので、その点で知事を責めることはできません。
しかし「費用が多額でできなかった」は、言い逃れです。
川辺川ダムのコストは4000億円、便益は5200億円程度と見込まれていました。
しかも、中止までに既に2800億円が支出されていました。
単純計算ですが、残りの1200億円をかければ5200億円程度の経済効果が得られたはずとなります。
知事は、ダムの代わりに「ダムによらない治水」を掲げましたが、こちらの費用が掛かりすぎて、どの策も中途半端に終わり、今回の事態をもたらしました。
 
「ダムによらない治水」としての具体策は、遊水池、放水路、堤防を高く+広げることなどがありますが、数兆円の費用がかかり、しかも、立ち退く住居の範囲は広範囲に及ぶと言われています。
河川の流水量を調整するには、上流側に貯水施設を作る方法が最も有効であることは誰が考えても分かります。
かつ、一定の貯水量を確保するには、谷合にダムを設ける方法が最も安価であることも明白です。
ただし、ダムが満杯になっても増水することが考えられるので、脇へ水を逃がす放水路を併せて作ることが必要となります。
 
「ダムによらない治水」という格好の良い言葉に飛びつく候補者と、それに惑わされた選挙民という構図は各地で起きています。
どの地域にもいえることですが、知名度とか経歴、はては見た目で、技術&経済音痴の首長を選んでしまう例は枚挙に暇はありません。
さらに言えば、候補者一人を見て選ぶのではなく、候補者が有能な参謀となるブレーンを持っているか、どのような組織構想を持っているかで選ぶ必要があります。
地方政治といえども、しょせん一人で動かせるものではないからです。
有能なブレーン機構と機動的に動ける現場組織を構築・運営できるリーダーを選ぶべきなのです。
そのためには、選挙期間の延長や幅広い選挙活動ができるような公選法の改正が必要です。
 
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<編集後記>
台湾の李登輝元総統が亡くなりました。
97歳という高齢を考えれば、そう遠くない日と思っていましたが、感慨深いものがあります。
冗談抜きに、日本の指導者であったらと考えてしまいました。
李登輝元総統は、京都大学を卒業し、日本の軍人として終戦を迎えました。
台湾の総統の地位を継ぎながら、完全なる民主化を果たし、選挙で総統に選ばれました。
なかなかできることではありません。
 
さすがに中国は「元総統」という言葉は省きましたが、貶めるような言葉はありませんでした。
言わなかったのではなく、言えなかったのでしょう。
「人間の徳」というものを考えさせられた人でした。
 
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