2021年7月15日号(国際、政治)
2021.07.19
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年7月15日号
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発行日:2021年7月15日(木)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年7月15日号の目次
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★習近平の長演説を読み解く
★サイバー戦争(後半)
◇抑止力という名の軍事力(15)
◇近代史を闇の中から引き出すことで、中国の戦略が見えてくる(4)
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
無観客開催が東京五輪の落とし所となりました。
政府決定というより、追い込まれた末の苦渋の結論というべきでしょう。
今の状況で「観客を入れて開催すべき」とは言いづらい世相があります。
私は心の中では「有観客でも良いのでは」と思っていますが、メルマガでそう書くのさえ勇気が必要です。
こうした日本社会の「空気」の圧力は不気味です。
この空気に乗って“したり顔”で中止を叫ぶ有名人やコメンテータには、正直、辟易しています。
「満員の観客の声援の中で躍動する選手の姿を見たかった」が正直な気持ちです。
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┃★習近平の長演説を読み解く ┃
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「だれであれ中国を刺激する妄想をするならば14億中国人民が血と肉で築き上げた鋼鉄の長城の前に頭が割れ血を流すだろう」
7月1日、共産党結党100周年の式典において習近平主席は、上記のごとく全世界を恫喝する長演説をぶち上げました。
「なんとも品のない表現だな」と思われたでしょうが、あの表現は、国際社会に対してではなく、中国国民に対してだと解釈すると納得できます。
中国の歴史ドラマや映画をご覧になっている方は気づかれたかもしれませんが、表現を以下のように変えてみると分かるでしょう。
「中国に対して悪意を抱く者はだれでも、14億人の中国人民が築き上げた鉄壁の精神の壁に自らの頭をぶつけて自死することになるだろう」
中国の映画やドラマには、敗戦の責を負った将軍や大失敗した幹部が、壁や大きな石に向かって突進し自らの頭をぶつけて自殺するシーンがよく出てきます。
こうした場面を見る度に「あんなことで死ぬわけないよ」と突っ込みたくなりますが、あれがあちらの人たちの感覚なのでしょう。
そうです。
習主席は、中国の歴史ドラマに登場するあの奇妙な自殺方法になぞらえて、「中国に敵対する者は、みな、あのような死に様を迎えるのだ」と言っていたのです。
それと、これもよく見るシーンですが、敵対する相手から罵詈雑言を浴びせ掛けられた者が、怒りのあまり、口から「ブワーっ」と血を吐いて死ぬシーンです。
とにかく、中国人は、こうしたバカバカしいほどに大げさな場面が好きなようです。
ですから、習主席のあの誇大妄想的な長演説も、日本や米国に向けたものではなく、国内に向けたものと考えるべきなのです。
そう考えると、こちらが怒るだけバカバカしくなりませんか。
日本では、中国は孫子の兵法を生み出した国なので、外交上手と思っている人が多いようです。
例えば、尖閣諸島に連日、公船を侵入させるという既成事実を積み重ね、日本が疲れ果てたところで中国のものにしてしまうという、通称「サラミ作戦」がそうだとする意見が散見されます。
故武岡先生に師事して孫子を教わってきた限りにおいて、サラミ戦術というような戦術論は無かったように思われます。
むしろ、孫子の著者の「孫武」が今の中国の外交を評したならば、「なんと下手な外交だ」と酷評するはずです。
あの演説に感じる「自己満足」は外交を失敗へ導く道ですから。
尖閣に対する中国政府の本音は、「軍事侵攻は無理。さりとて尖閣侵入を止めれば国民から『弱腰』と非難される。このままズルズルといくしかないな・・」なのです。
日本は「たとえ軍事衝突に発展しようが、絶対に守り抜く」という決意を中国に示し続け、公船を撃退し、万が一中国が軍艦を動かしたら即座に自衛隊を投入するぞという姿勢を見せることです。
それが外交です。
習近平の長演説など「一考する価値のかけらもない」という態度で良いでしょう。
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┃★サイバー戦争(後半) ┃
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本章はタイトルに「戦争」という言葉を使っていますが、日本に関しては「攻撃を受けるのみ」という状態です。
「戦争」とは双方が攻撃し合う状態を表す言葉ですが、サイバー空間でも日本が他国を攻撃することはなく、中国やロシアから一方的に「攻撃」を受けているのが現状です。
中国のサイバー攻撃とは別に、ロシアや北朝鮮のハッキング攻撃も激化しています。
ただし、こちらの目的は、軍事機密よりカネ稼ぎ(つまり、泥棒)のようです。
米国の石油パイプラインがロシアのサイバー攻撃を受け、一時、原油供給に重大な支障が生じました。
米企業は約5億円の身代金を払い、ようやく復旧しましたが、今後、こうした攻撃はますます激化してくるでしょう。
2019年に設置された国連安保理の「北朝鮮制裁委員会の専門家パネル」によると、各国の金融機関や暗号通貨の取引所から盗まれたカネは累計2100億円に達しているということです。
北朝鮮に対する経済封鎖は、こうした外貨強奪によって骨抜きになりつつあるのです。
サイバー空間での戦闘は、中国やロシア、北朝鮮といった独裁国家が有利な情勢になっています。
なにしろルール無用の相手ですから、ルールを守る民主国家側は圧倒的に不利です。
ロシアは、2014年にウクライナのクリミア半島に軍事侵攻しました。
そして行なわれた住民投票で96・6%もの「編入賛成」を得たことを根拠に、ロシアはクリミア半島を自国領に編入しました。
今では、この住民投票が、ロシアのサイバー機関によって操作されていたことが分かっています。
ウクライナにとって致命的だったのは、同国の通信インフラの大半がロシア製品だったことです。
それにより、ロシアはいとも簡単に投票結果を操作することが出来たのです。
欧米各国が中国製品の排除を進めているのは、いずれ自国がウクライナと同様の悲劇に見舞われることを警戒しているからに他なりません。
ただし、サイバー攻撃は中国やロシア、北朝鮮の専売特許ではありません。
西側でもフランスなどは、かなり悪質です。
「対外治安総局」にサイバー部隊を置き、他国の自動車や製薬メーカーから技術情報を盗み出し、フランス企業に提供しているという話が聞かれます。
この「対外治安総局」は“西側の中国”とも呼ばれている組織です。
フランスは、どこかで戦争が勃発すれば、双方に武器を売る国です。
サイバーの世界でも同じということです。
このように、すでにサイバー空間は戦争状態なのですが、その中でひとり無防備に近いのが日本です。
日本は、世界各国から情報をどんどん盗まれているのです。
遅まきながら、政府は陸海空の共同部隊である「自衛隊指揮通信システム隊」を設置し、その隷下にある「サイバー防衛隊」が300人体制で24時間、サイバー攻撃に対処しています。
今年度中に、この部隊を防衛大臣の直轄部隊に格上げし、総勢800人体制に増員する予定です。
しかし、前号で述べたように、サイバー戦争においても憲法9条の縛りがあり、仕掛けられた攻撃への防御しかできない現実が重たいです。
攻撃を仕掛けてきた敵国のシステムやサーバーへ侵入し、日本への攻撃情報を得て事前に対策を取り、被害を最小限に防ぐということが憲法の縛りから出来ないというわけです。
このままでは、サイバー空間という「新たな戦場」での敗戦は必至の状況です。
しかし、今の国会に、こうした法整備の議論を期待することは・・ムリでしょうね。
自衛隊のサイバー部隊が秘密裏に超法規的活動を行うことを、“密かに期待する”しかないようです。
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┃◇抑止力という名の軍事力(15) ┃
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戦闘機同士の戦いというと、第二次世界大戦での空中戦の様子が目に浮かびます。
(実際には、映画やドラマでしか知らないのですが・・)
その時代、各国で「エース」と呼ばれた伝説的なパイロットの名前は、現代にも語り継がれています。
その一人、ドイツ空軍のエーリッヒ・ハルトマンが挙げた撃墜数350機という空前絶後の記録は、永遠に破られることがないでしょう。
というのも、現代の空中戦の大半は、相手を肉眼で視認することのない「見えない」戦闘であり、システムに導かれる電子戦闘だからです。
それでも、1対1の決闘シーンはロマン(?)を感じさせるのか、未来モノの戦争アニメでは、昔ながらのドッグファイト戦闘の場面が描かれます。
しかし、このような場面が実現する可能性は、ほぼゼロなのが現代の空中戦なのです。
冷戦時代、敵対する米ソ両国は高性能の戦闘機開発に血道を上げていました。
その象徴が最大速度競争です。
音速の2倍(マッハ2)を超える戦闘機が続々開発され、ついにはマッハ3という戦闘機も現れました。
しかし、現代では、そんな競争は影を潜め、マッハ2レベルの戦闘機が主流になっています。
相手を視認できない遠方から長射程ミサイルを撃ち合う現代の空中戦闘では、速さの効果が薄れただけでなく、大出力のエンジンを全開することは、敵の赤外線探知に早期に発見され、不利になるからです。
ゆえに、アニメに描くと、およそ“見栄えのしない”世界になっているのです。
現代の最先端戦闘機のF-22やF-35は、ステルス性能が売り物の第5世代機と言われています。
それに対し、「令和のゼロ戦」ともいえる次期国産戦闘機(F-3)は、第6世代戦闘機になるのではと言われています。
それは、第5世代機とどう違うというのでしょうか。
前号で述べた「ネットワーク網による連繋機能」を有することが最大の違いです。
超簡単に言うと、1機の有人機に数機(時には数十機)の無人機を組合せた集団戦闘能力の獲得です。
もちろん、こんな戦闘機は世界にまだ出現していません。
ゆえに、「日本が本当に開発できるのか」という疑問があるのも確かです。
また、米国は自力で開発するだろうという声が上がるのも当然です。
しかし、開発費用や技術的困難さから、「日本を利用して早く安く・・」と米国が考えるのも当然といえます。
日本にしても、共同開発によって、自衛隊だけでなく米軍にも売れるというメリットが見込めます。
同じ理由で、エンジンも日本のIHIと英国ロールスロイスとの共同開発という話が持ち上がっています。
そうすれば、EUにも売れるという皮算用もあるというわけです。
いずれにしても、戦闘機の開発が新次元に入ってきたことは確かであり、商売という側面も強くなってきたということです。
抑止力も単純な思考で考える時代ではなくなってきました。
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┃◇近代史を闇の中から引き出すことで、中国の戦略が見えてくる(4) ┃
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第1章でも述べましたが、この7月1日、中国は、共産党結党100周年を盛大(少々大げさなくらい)に盛り上げ、内外に習近平主席の存在を強く印象付けました。
その狙いは半ば達成されたといえますが、半ば裏目と出ています。
欧州各国は、一党というより習主席一人の独裁化が進む中国の危うさに、かつてのナチスドイツの影を見て一歩後ろに引き出しました。
とはいっても、全面的に米国の戦略に乗ることはできず、また中国市場という経済的なうまみを捨てることもできずに「ウイグルや香港での人権批判」だけでごまかしている状態です。
米国にしても中国との全面対決を避けたいのが本音ですから、次の一手には苦慮しているところです。
つまり中国を含めた全ての国が手詰まりなのです。
そうした中、なんで習近平は、あれほど派手な式典を行ったのか、毛沢東と同じ中山服(人民服ともいう)を着るという滑稽ともいえる演出をする必要があったのかを読み解くことが大事です。
中国共産党は、100年前の1921年7月に上海で旗揚げしましたが、当時の党員数はわずかに57名、結成大会の出席者は13名というさびしさでした。
そこにソ連からコミンテルン(国際共産主義同盟)の幹部2名が参加していました。
それから分かるように、この船出は、あくまでもコミンテルンの中国支部の立ち上げでした。
しかも、当時の中国は蒋介石率いる国民党の支配下にあり、共産党は鉱山や港湾での労働者のストライキを支援する程度の活動しかできていませんでした。
そこで、2年半後、ソ連の仲介で国共合作という連合を成立させました。
連合といっても、党員5万人の国民党に対し共産党はわずか500人でしたから、実体は吸収合併です。
実際、全員が共産党の党籍のまま国民党に入党しています。
こうした事態に不満を持つ者は多く、そのまま国民党に鞍替えする者、満州の関東軍と手をにぎる者などが出て組織は四分五裂状態になっていきます。
その中で過激派は労働運動を激化させていき、資本家とつながっていた蒋介石による大弾圧を受けることになります。
こうした過程にあって頭角を現してきたのが毛沢東です。
蒋介石による弾圧から逃れるために行った長征という過酷な逃避行を、多くの犠牲者を出しながらなんとか成功させたことで、毛沢東は今に至るまで建国の父として崇められています。
しかし、関東軍の一派とも手を結ぶなどの現実主義者でもありました。
盧溝橋事件の引き金になった闇夜の一発は関東軍によると言われていますが、共産党が仕組んだという説も根強く残っています。
私は別の見方をしていますが、その話は「どこかで・・」としておきます。
中国人民解放軍の空軍の基礎を築いたといわれる林弥一郎少佐など、戦後の国共内戦には関東軍将校も加わっていました。
生前の毛沢東は、こうした事実を隠すことなく旧日本軍将校たちへの感謝すら口にしていました。
もちろん、今の習近平政権は、そのようなことは口にしませんが、中国の反日の裏側は韓国とは違うということぐらいは認識しておいたほうが良いでしょう。
実は、日中戦争の前、英国は満州を国際連盟の5カ国(米英ソ中日)による共同統治の下に置くことを目論んでいました。
そのことを「日本が統治の幹事国になる」という条件で日本に打診していました。
当時の日本外務省はこの案に乗り気でしたが、78万人という大部隊に膨れ上がり、自信を深めていた関東軍の反対で拒否となってしまいました。
その是非はともかく、この目論見が成功していたら世界の歴史は大きく変わっていたかもしれません。
もっとも、歴史に「タラ・レバ」はありませんが・・
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<編集後記>
福島原発の汚染処理水の処分を監査するIAEA(国際原子力機関)の技術作業チームに中国と韓国が参加を希望しました。
両国の思惑は、以下の2つです。
第一に、今のような日本非難を繰り返しても国際社会から見向きもされないこと、第二に 自分たちが査察される場合に備え「どんなことが調べられるのか」という情報を得ようということです。
要するに自分勝手な理屈なのですが、もうひとつ、調査結果に対して“イチャモン”をつける材料を探そうという魂胆もうかがえます。
日本は、この問題に関しIAEAだけに応答すべきであり、悪意を持つ国への応答はすべきではありません。
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