2025年11月15日号(国際、政治)
2025.11.17
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2025年11月15日号
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発行日:2025年11月15日(土)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2025年11月15日号の目次
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◇台湾有事
◇高市政権の今後
◇米国の政治事情
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
台湾有事を巡る高市首相の答弁に中国が”かみつき”ましたが、反応の鈍さに焦ったのか、今度は日本への渡航自粛です。
騒ぐほどのことではないのですが、今号は、この話題から。
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┃◇台湾有事 ┃
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高市首相の衆院予算委員会での台湾有事に対する発言に対し、大阪駐在の中国の薛剣・総領事がSNSに「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」
と投稿したことで波紋が広がっています。
この総領事は間もなく任期が切れ中国に帰国すると思われているので、その手土産代わりに、このような発言をしたものと思われます。
帰国して「よくぞ言った」と褒められることを考えた上での“底の浅い”発言と考えます。
それより議論を呼ぶのは、首相の『これまでより一歩踏み込んだ』と受け止められる発言の真意です。
首相は、中国が台湾の海上封鎖を行った場合、それが「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と答弁しました。
この『存立危機事態』という言葉は、2015年に成立した安全保障関連法で新たに設けられた言葉で、「日本が外国から直接の攻撃にさらされていなくても、日本と密接な関係にある他国が攻撃され、これにより日本の存立(国民の生命、自由、幸福追求の権利など)が脅かされる明白な危険がある状態」を指します。
ここで想定されている事態には「北朝鮮による韓国攻撃」なども入りますが、メインは台湾有事であることは明らかです。
つまり、「台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できうる状況にある」ということです。
この有事に関して、これまでの政府答弁は「個別具体的な状況に即し情報を総合して判断することとなる」というような曖昧な言い回しに終始していました。
それを今回、高市首相は「中国が軍事力による台湾封鎖を行った場合は、その状況にある」と明言したわけです。
当然、中国は反発し、報道官声明で『台湾海峡への武力介入の可能性を暗示し、中国の内政へ乱暴に干渉した』などと日本政府に抗議し、高市発言の撤回を求めたわけです。
11月10日の衆院予算委員会で、このことを質問された高市首相は、答弁で「最悪のケースを想定したこと」で、「政府の従来の見解に沿ったものなので、特に撤回、取り消しをするつもりはない」と述べました。
注目すべきは「台湾有事」の首相発言が立憲民主党議員の執拗な質問に対して発せられたことです。
同党は、『してやったり』と思っているでしょうが、その執拗な質問が日本の国益に沿うものかどうかは、かなり疑問です。
高市首相は、政権が安定し経済効果などが出てくるまでは、領海やEEZ侵入などが起きない限り、過剰に中国を刺激することは得策ではないと考えていたはずです。
それを分かっていながら過剰に刺激的な質問を繰り広げた立憲民主党が、この問題の扇動者なのです。
この立憲民主党の姿勢は論外ですが、このような問題が蒸し返されるたびに、『戦争に負けるとは、こういうことなんだ』と思い、『次の戦争が起こり日本が勝利する日まで、終わることのない誹謗中傷を受け続けるのか』という憂鬱さを感じます。
読者の皆様が知っているとおり、中国は「孫子の兵法」を生んだ国です。
ならば、中国に対しては『孫子には孫子で返す』ことが肝要だと思います。
ただし、それには中国の歴史を、ある程度のレベルまで理解することが必要です。
そこで、読者の皆様には『釈迦に説法』ですが、概説したいと思います。
現代では、北京を首都とする中華人民共和国が国連の議席を得るだけでなく、常任理事国の地位すら得ていますが、1949年10月建国ですから76年の歴史しかありません。
一方の台湾の歴史は少々複雑ですが、中華人民共和国の領土になったことは一度もありません。
つまり、今の中国は、『大陸の中華人民共和国』と『台湾の中華民国』とに分かれた統治になっているわけです。
1971年に国連で中華人民共和国を唯一の中国代表とする決議がなされ、台湾政府は国連から事実上の追放となりました。
その後、1972年に日本が、1979年に米国が、台湾政府との正式な外交関係を断絶させたわけですが、日米両国とも、その後は台湾との関係を深めて現在に至っています。
つまり、政治体制がまったく違う以上、海峡を挟んで2つの国があると認識するのが当然です。
こうした延長線上に、今回の高市発言もあるのです。
この解説、次号に続けます。
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┃◇高市政権の今後 ┃
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誤解を恐れずに言えば、高市首相の台湾有事に関する発言は、すぐに忘れ去られるでしょう。
なぜなら、今や年中行事のような話題だからです。
2023年8月、当時の自民党副総裁の立場で訪台した麻生太郎氏は、台湾有事を念頭に置いた「戦う覚悟」なる発言をしました。
当然、中国は猛反発し、日本の野党も一斉に非難しました。
この麻生発言は、今回の高市発言など問題にならないくらい踏み込んだ発言でした。
しかし、2年経った今、みな、そんなこと忘れています。
今回も同様で、やがて忘れ去られる話題に過ぎません。
そんなことより、高市政権の命運を制するのは経済対策です。
経済政策に対する能力に欠ける立憲民主党が、意味のない幼稚な論争を仕掛けたことで肝心の経済対策に対する議論が深まっていません。
これからの議論の深まりに期待したいところです。
しかし、先日の国会での城内実 (きうちみのる)日本成長戦略担当大臣の答弁は“ひどい”ものでした。
立憲民主党の古賀之士議員の「時給1500円の達成目標はなくなったのか」の質問に対し、「なくなってはいない」とだけ答えれば良いのに「高市総理から賃上げ環境整備担当の私に、物価上昇を上回る賃上げが継続する環境整備に向けた戦略策定への指示があった。
この戦略の中で、最低賃金を含むこれまでの政府決定への対応について、経済動向も踏まえて具体的に検討していくということになります」と、何を言っているのか意味不明な回答を、それも“しどろもどろ”に答弁しました。
これに対し古賀議員は、米国ニューヨークの市長に当選したゾーラン・マムダニ氏の『時給4500円の公約』のように「明確な数字を挙げる」ことを要求しました。
城内大臣を“頼りない”と見たのか、高市首相が引き取り「今の段階で、明確に目標を示すのは非常に難しい。ちょっとでも上がっていくように、春闘の数字もあるし、それぞれの党で目標とされている数字もあるかと思うが、政府として統一したものは、今はございません」と答弁した。
また、財務大臣の片山さつき氏は「おっしゃる通り、実質賃金をプラスにしていくことは大変大事なことで当面の経済政策の肝中の肝だ。だが、総理も言ったように給料が払えるかどうかを全部国が決めてしまったら極めて社会主義的になる」と、やはり金額や時期の明言は避けた。
発足1か月も経たない新政権に具体的な金額や実施時期を無茶ぶりで求める立憲民主党も“ひどい”ですが、それを切り返せない新米大臣の未熟さは、今後、政権の弱点となる危険があります。
高市首相が、夫婦別姓などの話題に対し“そっけない”のは、このような未熟な大臣を抱えながら経済向上を果たす難しさを痛感しているからでしょう。
他の話題に関心を向ける余裕など無いということなのです。
となると、野党は、今後も高市首相の経済向上策の妨害に終始することは確実です。
政権がこの妨害に屈すれば日本経済は落ち込み、屈しなければ経済は向上するということになります。
高市首相には、このような妨害にめげずに、日本経済の復興に向けて全力を掛けることを望みます。
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┃◇米国の政治事情 ┃
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ニューヨーク市長選で、民主党の急進左派に属する34歳という若さのゾーラン・マムダニ下院議員が当選したのには驚きました。
同じ日に行われたニュージャージー州とバージニア州の知事選においても民主党が勝利し、1年前の大統領選の惨敗で分裂状態に陥っていた民主党が、急進左派を中心にまとまりつつあると分析されています。
一方の共和党は、トランプ大統領の暴走気味の政治に懸念を示す米国民が増えていることに危機感を抱き出していますが、自党の大統領を否定するわけにもいかず、沈滞ムードになっています。
こうした動きが、来年2026年の中間選挙にどう影響するかが注目されています。
日本でも急激に主役になってきたSNSを通じた若者の政治参加が、米国ではより早く大きくなり、今回のゾーラン・マムダニ氏のニューヨーク市長を生んだと分析されています。
私にしても、マムダニ氏についての情報は皆無だったので、急いで調べました。
分かったのは 「アフリカ・ウガンダ出身のインド系移民でイスラム教徒」という大変な異色さです。7歳の時ニューヨークに移住してきて、2018年に市民権を得たとなっています。
ということは、市民権を得て、わずか7年でニューヨーク市長ですから、驚きです。
マムダニ氏は、自身のことを『民主社会主義者』だと名乗り、自身と同じ移民や低所得の若者には高くて手が届かないものになってしまったニューヨークを、もう一度、市民の手に取り戻すことを選挙戦で掲げていました。
かつて大統領選に出馬したバーニー・サンダース上院議員も自身を『民主社会主義者』だと自任していましたから、マムダニ氏は、高齢の彼に代わる後継者のような位置付けになると思われます。
サンダース氏の支持者には、ハリウッド俳優や多くのミージシャン、そしてラッパーたちなど多彩な面々で溢れています。
サンダース氏の集会ではサイモン&ガーファンクル、ジョン・レノン、デヴィッド・ボウイなどの有名アーティストたちの楽曲が流れるように、中高年層からも幅広い支持を集めています。
こうした層の多くが、今回のニューヨーク市長選ではマムダニ氏に投票したと言われています。
日本では、ニューヨーク市長は東京都知事のように思われがちですが、米国では、それよりもはるかに大きな存在といえます。
米国民のシンボルの1人として、時にホワイトハウスにも物を言える立場だと言われています。
米国メディアは「今、ニューヨークは『新しい時代が始まるかもしれない』という期待感に包まれている」と報道しています。
ウォール・ストリート・ジャーナルなどは『グローバル資本主義の中心地ニューヨークで民主社会主義者のリーダーが誕生した。34歳という若いマムダニの勝利は、『地方選挙がこれからの国政に影響していく』と最大限の賛辞を流しています。
長らく分裂気味だった民主党が、この『民主社会主義』という概念のもとにまとまっていくと、来年2026年の中間選挙での勝利になるかもと報じられています。
こうした報道のように、もし中間選挙で共和党が大敗するという事態になれば、高齢も相まってトランプ大統領は急速にレイムダック化するでしょう。
せっかくトランプ大統領に気に入られたような高市首相ですが、ここは冷静に状況を把握して、あくまでも日本の国益第一で、米国の各層と適当な距離感で付き合うことが必要なようです。
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<編集後記>
日本は、唯一の被爆国として「非核三原則」を堅持していると言われます。
しかし、その昔、私が防衛関係の仕事で得た範囲に限られますが、「持ち込ませず」は、とっくの昔に破られています。
でも、日本を敵視する核保有国に囲まれている現状を考えれば、「それもやむなし」と思うしかありません。
「持たず」を堅持するのであれば、同盟国の核抑止力に頼るしかないのが現実解ですから。
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