2025年11月30日号(経済、経営)

2025.12.02


AL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2025年11月30日号
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発行日:2025年12月1日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2025年11月30日号の目次
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◇中国の反応の裏は・・
◇企業の投資(6):投資は怖い!
◇新車陸送の世界(8)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
中国は連日、激しい日本非難を続けていますが、いつまで続けるつもりでしょうか。
この裏側の事情を、政治的側面と経済的側面の両面で解説します。
今号は、経済面の解説を行っていきます。
 
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┃◇中国の反応の裏は・・                  ┃
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中国は「水産物の輸入停止」や「日本観光の自粛(禁止?)」という“お馴染み”の脅しを日本に掛けています。
しかし、効き目がないと思ったのか、高市首相への攻撃を強めています。
 
読者の皆様はとっくに分かっておられるでしょうが、中国政府は自国経済の崩壊が不可避な状況になり、相当に焦っています。
その焦りが、必死になって日本攻撃を激化させている主因で、台湾有事は、その”言いがかり“に過ぎないわけです。
しかし、中国による経済攻撃の影響は「無い・・」と感じます。
弊社の本社がある浅草では、この問題が発生する前から中国人観光客は減り出していて、代わりに欧米や中国以外のアジア、中近東からの観光客が増えています。
かつての爆買い風景は無くなり、今は徐々に落ち着いた観光地になっているように思います。
台湾政府の奨励で台湾からの観光客は増えているようですが、我々には大陸からの観光客との見分けがつきません。
ですが、以前のような騒ぎが少なくなっているので、「そうなのかな」と思うだけです。
もちろん、中国政府が声高に叫ぶような中国人に対する犯罪や嫌がらせなどは皆無で、みな普通に接しています。
このまま穏やかな観光地で推移していって欲しいものだと思います。
 
観光とは別に焦点になっているレアアースですが、マスコミ報道は過剰で誤りも多く、それにより誤解している人も多いのではと思います。
レアアースは、その「レア」という名称が誤解を招き、金銀のような「貴重で産出量が極端に少ない金属」との誤解が多いようです。
しかし、そうではありません。
地球上に、かなり多く存在しているものです。
例えば、ベトナムとブラジルの埋蔵量はそれぞれ中国の半分ぐらいあると言われています。
日本近海でも、南鳥島などの海域でレアアースを含む海底汚泥が大量にあることが確認されていますし、硫黄島の地下には大きな埋蔵量があるとされています。
 
ただ、採掘コストの問題と、精錬する際の環境汚染問題で、中国からの輸入が多くなっているわけです。
中国は精錬時の汚染などは「無視」なので住民の健康被害は深刻になっています。
ですが、中国政府はまったく汚染防止の手は打たずに安く精錬して世界に輸出しているわけです。
 
しかし、その中国が政治的に輸出を止めれば、輸入していた国は代替手段を求めるのは当然です。
そのことで、日本の採掘も軌道に乗る可能性が出てきています。
個人的には、ぜひ、そうした事態になって欲しいものだと思います。
すでに日本は、ベトナムなどに日本の環境技術で精錬工場を建設する計画を立てていて、中国依存からの脱却は時間の問題といえます。
 
以上述べたように、「水産物の輸入停止」や「日本観光の自粛」は、何の効果もなく、中国経済の失速は止まることがありません。
焦った中国政府は、家電購入補助金などの策で消費拡大を狙っていますが、効果はありません。
ついには「電気自動車も家電だ」として、この補助金対象に加えました。
すでに電気自動車購入には大きな補助金が付いていますので、『ただ同然』のような状況になっています。
それでも買えば、多額の維持費用がかかります。
たいした効果はないと言われています。
 
こうした補助金の大判振る舞いは、当然、公的債務の膨れ上がりを招きます。
次回、日本の債務と対比しながら、この解説を行いたいと思います。
 
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┃◇企業の投資(6):投資は怖い!             ┃
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前回、企業が内部留保を膨らませている現状の背景の話をしました。
新たに政権を担うことになった高市首相は、企業の内部留保の増大を批判するのではなく、この内部留保を投資に使うことを要請しました。
企業の批判ではなく投資を促す姿勢は良いと思いますが、「いまいち、インパクトがないな」とも思いました。
それは、企業に対し「これからは、カネを貯めるより使うほうが得だ」と思わせる政府の姿勢転換があまり見えないからです。
 
その最大の障害は、財務省が執拗に誘導し、これまでの岸田・石破政権が引きずられてきた「プライマリーバランス」です。
これは「税収と歳出はバランスさせるべき」という考えで、「そりゃそうだ」と思いがちになります。
ですが、それは国家の財政を「家計の財布」と同じだとする考え方で、正しいとは言えません。
良く知られた話ですが、一般家庭と違い、政府には通貨発行権(つまり、お札を刷れる権限)があり、不足分をいくらでも穴埋めすることが可能です。
勿論、政府がお札を刷るのではなく、政府は国債発行という形で市場から資金を調達します。
しかし、近年の日本は全額を市場から調達することが難しく、半分くらい日銀が引き受けることを続けてきました。
日銀は政府の子会社のような存在ですから、実質、政府が国債を買い戻しているようにも見えます。
ゆえに、1000兆円と言われる国債発行残高は、実質500兆円だろうという見方もできるわけです。
 
もちろん現在の状況を続ければ、いずれはハイパーインフレとなり経済破綻する危険があります。
しかし、その限界がいくらなのかという試算は「将来の経済発展をどのくらいに見積もるか」が下敷きになるので難しい問題です。
その問題の難しさから、財務省は「税収の範囲内の支出を」という「プライマリーバランス」に固執するわけです。
稼ぎの悪い亭主をどなって小遣いを減らす主婦のようなものです。
ですが、こうした主婦が悪いわけではなく、稼げない亭主が悪いのは当然です。
 
つまり、悪いのは財務省ではなく、稼ぎを増やせない政府(岸田政権、石破政権)だったわけです。
この亭主が高市政権に代わったわけです(女性首相なので、「亭主」ではなく「女将」かな?)。
高市首相は、財政を絞るのではなく、経済のもう一方の主役である企業に対し、積極的な投資(つまり、おカネを使え)を奨励したわけです。
だが、ここで従来型の補助金をばらまくことは間違っています。
(まだ、こうした政策は続いていますが・・)
先導役としての政府が、国債発行による公共事業投資を増やし、その効果がまんべんなく企業に行きわたるような政策で、二次、三次的な経済発展効果を促すことが肝心です。
 
企業は、効果が未知である投資は「怖い」のです。
ゆえに、投資を促すにはインフレ経済になることが必須です。
ところが、30年もデフレ経済が続いたことで企業の投資は委縮し、多くの企業経営者は投資効果が上げられずに退くはめになりました。
その様子を見ていた後継者も、どうしても投資に腰が引け、ずるずると半デフレのような経済が続いたのです。
 
こうした経営者の恐怖心を、逆に「この流れに乗り遅れることが怖い」と、インフレ経済に変えることが新政権に求められているのです。
大半の企業は、高市首相の中国の脅しに屈することのない姿勢を支持しています。
同様に、財政緊縮派による攻撃に屈することなく、大胆な経済政策を行うことを期待しています。
そうした新政権の姿勢が明確になることで、企業の投資意欲は上がります。
もちろん、企業側は、こうした効果が出ることをただ待つのではなく、積極的な投資に打って出るべきであり、金融機関は、その後押しをするべきです。
2~3年間、政府がこの姿勢を変えなければ、日本経済は再び上昇に転じることを信じます。
 
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┃◇新車陸送の世界(8)                  ┃
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学費稼ぎのため飛び込んだ新車陸送の世界は、想像をはるかに超える異様な世界でしたが、半年も経つと“いっぱし”のベテランのような走りをしていました。
どんなに無茶な運転をしても事故さえ起こさなければ警察は無視するという“とんでもない”現実の前に理性は吹き飛び、稼ぎを少しでも多くという一点に集中して車を運び続けました。
 
一方、我々とは別に、法規違反を繰り返し、暴走を続けている存在がありました。
そうです。暴走族です。
当然のように、陸送ドライバーにとって暴走族は“忌み嫌う”存在でした。
新米だった私は「無視すりゃ良い」としか思っていませんでしたが、何度もトラブっている先輩たちはそうではありませんでした。
 
ある夜中、埠頭から工場へ戻る途中、我々の乗っていたマイクロバスが、信号で止まっていた暴走族の車の横で止まりました。
そのとき、開いている窓から先輩の一人が暴走族の車に何か言いました。
それに対し、暴走族の車は何かを言い返しました。
次の瞬間、何人もの先輩が、座席の下から鉄パイプを取り出し、マイクロバスの窓から一斉に暴走族の車を全力で叩き出しました。
あっという間に、暴走族の車は“ぼこぼこ”になり、慌てたその車は、赤信号を無視して走り去って行きました。
あっけに取られている私に、横にいた先輩が言いました。
「暴走族の連中は、俺たちの邪魔ばかりするからな。あのくらいで済むなら安いもんだ」
私は『それにしても、やり過ぎじゃ・・』と思いましたが、もちろん口にはしませんでした。
このような暴走族とのトラブルは結構起きていて、あるとき、社長がリーダーに「お前らの気持ちは分かるが、警察沙汰にはするなよ」と言っているのが耳に入りました。
私は、『とても先輩たちのようなことは出来ないな』と思い、トラブルが起きたときも大人しくしていました。
 
ところが、ある夜のことでした。
出発前に私の運ぶ車に不具合があり、工場を出るのが大幅に遅れました。
最後に出るリーダーが私の車の横に止まり、「出られそうか」と声を掛けました。
私は「大丈夫です。もし大きく遅れるようなら、次の回は私を飛ばしてください」と答えました。
つまり、マイクロバスは私の到着をまたずに工場にトンボ帰りし、私は次の回は「埠頭でみんなを待っています」という意味です。
リーダーは「そうか、埠頭の入り口でお前を待っているから、なるべく早く来い」と言って出発していきました。
 
故障を直した私は、単独で、夜中の国道を全速力で飛ばしました
すると、どこからか現れた1台の暴走族が私に絡んできました。
ときに進路を妨害するような運転で、何度か接触しそうになりました。
私は冷静でしたが、ある考えが頭に浮かんできました。
『この直線が終わる先で、この道は緩やかな登りになり、大きく右にカーブしていく。そのカーブの頂点にガソリンスタンドがある。“こいつ”をそのガソリンスタンドに突っ込ませてやる』
 
私は、カーブの頂点に差し掛かるときに、相手の車の右にぴったりと付け、カーブを右に曲がれないようにしました。
そのまま、ハンドルを切らずに相手の車を外側に押し付けたまま全速でカーブを登っていきました。
目の前に明かりを消したガソリンスタンドが見えてきましたが、私は暴走族の車にカーブを切らせず外側に押し付けたまま、ガソリンスタンドめがけて真っ直ぐに突っ走りました。
そのとき、私の心理に灯ったのは殺意でした。
『こっちは必死に働いているんだ。なのに、遊んでいる暴走族がオレの邪魔をする。こいつを殺してやる』という冷静かつ冷血な殺意でした。
 
あわや2台ともガソリンスタンドに突っ込む寸前に私は右にハンドルを切り、ぎりぎりで衝突を避けました。
私にカーブの外側に押し付けられた格好の暴走族の車は避けられずにガソリンスタンドに突っ込んでいきました。
もし給油スタンドに突っ込んでいたら、火だるまになったかもしれません。
しかし、暴走族の車は、給油スタンドをかすめて、その先のコンクリートの塀にぶつかりました。
 
正気に戻った私は、車を止め、様子を見に駆け戻りました。
塀に突っ込んだ車の中から一人の男がよろよろと出てくるのが遠目に見えました。
私は、内心ほっとして、その場を去りました。
その後のことは、今も分かりません。
 
私が、人に対して明確な殺意を抱いたのは、後にも先にもそのときだけです。
しかし、あのとき、殺意を抱き、冷静に実行手順を頭に描き実行した自分に恐怖を覚えました。
そして誓ったのです。
『今後、どんな人間に対しても決して殺意を持たないようにしよう』とです。
 
リーダーは、本当に埠頭の入り口で待っていてくれました。
マイクロバスは出てしまったので、次の回でみんなが埠頭に来るまで、リーダーと2人、暗闇の中で待ちました。
私は暴走族の車とのことは話しませんでした。
私が「遅れてすみません。リーダーにご迷惑をお掛けしました」と言うと、
リーダーは、「お前が無事で良かったよ。焦って事故になったんじゃ、シャレになんねえからな」と、真顔で言いました。
私はその言葉に胸を打たれました。
そして、暴走族のあいつが死ななくて良かったと心の中で思いました。
こうして、また一夜が過ぎていくのでした。
 
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<編集後記>
弊社が申請した補助金が採択されましたが、前とき代的な追加資料の要求に呆れて辞退しました。
大企業と補助金コンサルタントばかりが儲かる現在の制度では、中小企業は食い物にされるだけだと思います。